ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
「……………………」
あんぐり、と。それはもう見事なくらいに、全員の口が力なく開いていた。普段の教室であれば、これ幸いと飴玉やマシュマロなんかを悪戯で放り込むくらいはしていたかもしれないが、とてもそんな状況じゃあなかった。というか、全くそんな方向に思考回路が働かない。あの千冬姉でさえ、驚きに目を大きく見開いて固まってしまっている。
「さぁ、皆に挨拶だ」
『ハジメマシテ~ッ!! ワタシ、アフィリオンッ!! ヨロシクね~ッ!!』
宇宙船である。もう1度言おう。宇宙船、である。フォルムこそ完全に戦闘機のそれだけれど、
なんとも心震わす言葉を俺にくれて直ぐに、カデンソンさんは『
「モチロン、
そう言った次の瞬間、まるで何もなかったハズのその空間からじんわりと溶け出してくるようにして、深い紺色にまるで血管のように鮮やかな光の
しかも。
『やっとミンナとおハナシできた~ッ!! ず~っと見てるだけで寂しかったんだ~ッ!!
「いや、だって、ねえ。シカタナイダロ?」
『ほらまたァッ!! もう聞き飽きちゃったヨ~ッ!!』
喋る。それはもうよくお喋りになられる。
そりゃあクランクさんを作った人なのだから、これくらいは不思議じゃないって言われてしまえばそれまでではあるんだけど、それにしたってなんだって音声も口調もギャル調なんだろうか。「趣味? 趣味なの?
「コイツならまぁ、軽くとばしてニューヨークまで30分ってとこですかね」
「は……?」
更なる衝撃発言に、今度こそ千冬姉までもがぽかんと口を開けた。弟である俺でさえこんな顔は見たことがない。うわ、片眉がひくついてるよ。激レアにも程がある。
「え、っと。日本~ニューヨークって大体11,000kmで、それを30分だから、大体時速22,000kmってことで」
「おおよそマッハ18、だな。主要な戦闘機がマッハ2~3。
俺が大体の数字で脳内計算していると、隣でラウラが補足してくれながら、立ち直ってからの彼女にしては本当に珍しい弱音を吐いた。つまり、ミサイルよりも早く飛べるってことで、しかもあのサラッとした言い方から察するに多分、まだ『上』がある。それも余裕で。そりゃあ宇宙速度くらい朝飯前かもしれない。というか千冬姉、今からアレに乗るってことか。メチャクチャ羨ましいんですけど。
「大丈夫、なんだろうな」
『ダイジョーブダイジョーブッ!! チョー安全運転でお届けするヨ♪ アタシに任せてッ!!』
「……そのテンションはどうにかならないのか。その、
『ンー? それってひょっとして―――』
「―――ワタシのことかな? ちーちゃん?」
「が」
完全に油断していたところに予想外の登場で、千冬姉の顔がついに盛大に歪んだ。アフィリオンの運転席からひょっこりと現れたのは、他の誰でもなく。
「来たぜ、ヌルリと☆」
「な、にをやっているんですか姉さんッ!?」
「何をって、オシゴトしに来たのだよ?」
その衝撃でようやく再起動を果たした箒の大声に、束さんはエプロンドレスのスカートをはためかせながらヒラリと中庭に舞い降りて、「イェ~イ」とカデンソンさんとハイタッチをした。
「仕事って、一体何の仕事を」
「だって、私でなきゃ調整できないでしょ、"
「な、何故調整の必要が」
「ンモー、箒ちゃんもそっと考えよーよ。束さんこれでも『無駄』って解ってることはしない主義なんだヨー?」
困惑しながら問いを続ける箒につんと唇を尖らせ、少しいじけたような口振りでそう言う束さんの反応。それを聞いてピンと来た。つまりは。
「"
「
ズビシッ、と勢いよく俺に向かって指差しをしながら、今にも奇妙な冒険を始めそうなポーズをする束さん。そんな束さんを見て、頭痛を堪えるように額に手をやる千冬姉。気が付けば、先ほどまでの沈痛な空気はすっかり霧散していた。
「"
「誰がワトソンですか。……あの、"展開装甲"って、何です?」
「ンフフ~♪ 解らないことを素直に訊けるのは美徳だぜェいっくん♪」
おんどりゃあッ!! などと暑苦しい
「まず。第1世代機とゆーのは、そもそも『ISの完成』を目的として作られた
「え、あ、は、はい、そこまでは」
一瞬俺たち、特に俺・千冬姉・箒の中で、束さんが
「ほんでね、それらを踏まえた上での第4世代機は『パッケージ換装を必要としない万能機』ってゆーワケ。『付け替える』んじゃあなくて『切り替える』の。そのカナメさんちのキモちゃんがつまり"展開装甲"。要するに、変形ギミックってことね。OK?」
「お、おっけぃ」
脳内では『今現在は世界各国でやっと第3世代型の試験機が出来たくらいじゃなかったっけか』などの疑問が嵐の如く吹き荒れちゃあいるけれど、やっぱりこれもどうにか吞み込んで先を促す。
「で、その試験運用もバッチリパーペキだったので、"
「試験運用なんて、いつの間に」
「あにをゆーか。お試しプレイをしてくれたのはキミなんだぞ、いっくん」
「へ?」
呆ける俺に束さんは、その身長差から下から見上げる形でグイッと勢いよく顔を近づけて来た。角度的にたわわにも程がある胸元の谷間が思い切り見えそうになって、ちょっと後ずさりながら視線を逸らす俺に「ンフフ~や~らし~んだ~♥」などと小声で呟く束さん。おのれ確信犯め。恐ろしい。お陰で背後からそれだけで切り刻まれそうな殺気が飛んできていて出元を確かめたいけど振り返りたくない。
「"
「はいッ!?」
「で、そこから更に改良を加えたのが"
イタズラ大成功、みたいな子どもっぽい笑顔と共にそんな爆弾を投下してくれたもんだから、いよいよこの場にいる全員が完全に静まり返り、言葉も出せなくなってしまっている。なんかもう、あれだ。破天荒にも程がある。
まだまだ素人の俺でもこれが
「まーでも? さっきのは"
「……解った。それで、その調整とやらにはどれくらいかかるんだ」
「7分、んにゃ、5分もあればいーかな」
「直ぐに始めろ」
「リョーカイ♪」
「千冬ね―――うごッ」
「織斑先生だ愚弟。では本作戦は織斑・篠ノ之両名による目標機の追跡及び撃墜を目的とする。作戦開始は現時刻より30分後。私はこれより別行動をとらなければならないが、総員尽力して作戦にあたってくれ」
いつまでも呆けてしまっている俺への
「何かあった時は覚悟しておけ、束」
「何も起こらないなんてことはないよ、ちーちゃん」
そのたった二言の交差には、千冬姉の指示を受け迅速に準備を始めていた全員の足を一瞬止めてしまうほどの、途轍もない迫力があった。
「さ~さ~諸君、急がなきゃだ。時間は待ってはくれないゾ~?」
どうも、副反応は大したことなかったものの気怠さで結局接種の翌日の日中(つまり昨日)丸々寝て過ごした作者のGeorge Gregoryです。消化にいい食い物だの、解熱鎮痛剤だの、イロイロ用意したんだけどな。いや、必要ないに越したこたぁないんですが。
準備段階の描写がもう少し続きます。俺としても早く戦闘描写に入りたいところではありますが、今まで通りグッと我慢。必要な下ごしらえを怠っては、美味いメシは作れないのです。
そうそう。前回の更新でようやく最近の目標であったお気に入り登録人数1400人を達成しました。偏に読者の皆様のおかげです。ありがとうございます。といっても何故かちょいちょい減ったりもするので油断はできませんがね~……ホント、何故なのかしら(´・ω・`)
最近は更新頻度を上げようと思って、4000~6000文字前後でキリのいいところで放り込んでますが、どうでしょうか。尤も俺の筆のノリ次第なのでまた直ぐにへたれるかもしれませんが、今年中にせめて臨海学校を終わらせたいので、なるだけこのペース維持していきたいところです。
では、また近い内にお会い出来ることを願って。
いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの動力源です。