ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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最近のVの人たちの配信見ててやりたくなってきてピ〇ールVer.の『JUDGE EYES』用意したはいいものの『レイトン教授』も途中で止まってるし『バディミッション』もやりてぇしいつになるやら。



Like The Wind Ⅵ

「総員散れェッ!!」

 

 最初に変化が起きたのはアタシから見て3時の方向、丁度ラウラの真正面に位置するゲート。そこから、津波のように大量のミサイルが飛来してきた。ラウラの随分と堂に入った鋭い指示に全員が自然と反応、各自のISを纏いながら四方八方へ散開―――しようとして。

 

「ッ、バカッ、突っ立ってんじゃないわよッ!!」

「あ」

 

 心身共に硬直、完全な棒立ち状態だった箒を片手で掻っ攫うようにして、瀑布のように降り注ぐ鉄火の雨をすれすれで潜り抜ける。全弾が地面で炸裂したのを確認して、安全圏で箒を放るようにして降ろし、叱咤を飛ばした。

 

「速く呼び出すッ!! 死にたいのッ!?」

「す、すまない」

『ハァッハァッ!! よく躱したじゃねぇか、お嬢ちゃんたちィッ!!』

 

 箒が慌てて"紅椿"を纏った直後、そのゲートの奥から揺らめく炎が近づいてくるのと同時に、聞くからに粗野な男のものと判る大声がびりびりと大気を震わせる。そして、その大声の主がゲートの中からのっそりと姿を現した。

 

 苔むした岩肌のような色合いをした、なんとも粗削りで大雑把な巨体。両肩には"S,Ragen(レーゲン)"にも劣らない大型の砲塔が2つ。先ほどのミサイルは、もしかしなくてもアレから放たれたのだろう。そして、揺らめく炎の正体、アタシらの腕どころか胴回りくらいの太さはありそうな巨大葉巻の煙を燻らせながら現れた、その顔は。

 

「「「ロボットォッ!?!?」」」

『サァッ!! 今宵の空も荒れ模様ッ!! 逃げ惑う挑戦者の悲鳴と、所により血の雨が降るでしょうッ!! 嵐を呼ぶ我らが鬼軍曹ォッ!! "Sheeeeeeeeeeeell(シェエエエエエエエエル) Shooooooooooooock(ショォオオオオオオオオオオオオック)"!!!!』

『アリーナに近い客席の皆様はご注意下さい。あまり身を乗り出しすぎると余波で焼かれてしまいますので』

『ンン~ッ、ボクってばパンもステーキもこんがり焼けてる方が好みなんだよねぇ~ッ』

『聞いてないわよダラス』

『ハァッハッハァッ!! ()()()()()()ッ!! ()()()()()()()()()()()()()ッ!!』

 

 "戦争神経症(Shell Shock)"と呼ばれたその巨大ロボットは、どこからともなく聞こえる男女のやりとりに随分と気を良くした様子で笑い、そして両肩の砲塔を天高く持ち上げた。そこからすかさず何発も放たれた、見るからに先ほどよりもずっと多いミサイルの群れは、高い放物線を描きながら再びアリーナ全体へと降り注いだ。あまりの密度にまともな逃げ場がなく、あらゆる方向から衝撃と爆炎にさらされ、まるで竜巻や渦潮の中で思い切り振り回されているような気分である。そんなアタシらに追い打ちをかけるように。

 

「背後から高熱源反応ッ!! ()()()()ッ!!」

 

 セシリアの焦った声に振り向くと、真逆のゲートの奥でこれまた巨大な緑の光がどんどん輝きを増していくのが見えた。見るからに解る。()()()()()()。途轍もないエネルギーが緑光(アレ)には溜め込まれている。その光がまるで()()()()()()()かのように一瞬、大きく煌めいた直後。

 

「ッ、上ッ!!」

 

 背筋を震え上がらせる直感に従って大声を張り上げ、全員揃って咄嗟に上空へと飛び上がったことで誰もいなくなったアリーナの地上を薙ぎ払うように、それはもう()()()()()()()()が通り過ぎていった。ほぼ縄跳びのようなタイミングだったので、躱せた、と理解していても尚、生きた心地が全くしなかった。

 

『ム。飛行能力持ちか。では次からはそれも計算に加えておくとしよう』

『彼こそはッ、寸分の狂いもなく淡々と稼働する冷酷非道な殺戮マッスィーンッ!! クールな回路(ブレーン)にホットな炉心(ハート)ッ!! 触れても触れなくても火傷じゃあ済まないぜェッ!! "Reeeeeeeeeactooooooooooooor(リィイイイイイイアクタァアアアアアアアア)"ッ!!』

『観客席は放射能遮断シールドで守られていますが、度重なる戦闘による破損での不具合が頻発しておりますこと、ご了承ください』

『大丈夫さファニータ。今日だってちゃんと、メンテナンスボットたちが「ヨシッ!!」って見て回っていたんだから』

『……見て回っていただけなの?』

 

 イチイチ喧しくて集中力を削がれてしまう会話をヨソに悠々とゲートから出てきた姿は成程、"原子炉(Reactor)"と呼ぶに相応しい風貌であった。“注意”を喚起する警戒色の黄色で全身を統一していて、その随所随所に排熱機構らしき部品が窺える。そして、何よりも目を惹くのは胴体。"Shell Shock"とやらよりも二回りほども大きく、そして見るからに強固且つ重厚な球状のそれは、誰がどう見たって明らかに原子炉()()()()である。そんな胴体を支え動かす為だろう、手足の逞しさ(ロボット相手に『逞しさ』という言葉を使うのも少し違う気もするけれど)が尋常じゃあない。さっきのレーザーだけでも十分に脅威なのに、純粋な力比べでも分が悪そうだ。

 

 さぁ、どうする。息つく暇なんてまるでない。どちらも『面』に等しい極めて危険な制圧射撃による、()()()()()()()()。両方とも発射するまでに大きな隙があるのに、それを絶妙なタイミングで交互に行うものだから、なかなか攻めに転じることが出来ない。一度始まってしまえば切れ間なく飛んでくるミサイルの群れを躱すなり迎撃するなりで挙動にある程度の指向性を強制的に持たせられたところに、まったく別の高火力で広範囲な爆撃が飛んでくる。嫌らしいほど効率的。箒で纏めて塵取りでポイ、ってワケだ。

 

「皆ァッ!! 1ヶ所に固まって集まってたら一気に終わっちゃうッ!! ここはバラけたまま凌いで先にどっちかを―――――うわぁッ!?」

「ッ、シャルロットッ!?」

 

 開放回線(オープンチャンネル)を通してのシャルロットからの通信が突然乱れた直後、何かそれなりの質量を持った金属質なものが叩きつけられたような轟音がした。そちらを見ると"RRCⅡ"がアリーナ壁面に、胴体部を踏みつけられたようにして身動きをとれなくされていた。

 

「くっ、そぉッ!!」

 

 シャルロットは咄嗟に"Rain of Saturday(連装ショットガン)"を展開、至近距離での連射を叩き込む。炸裂する度に発火炎(マズルフラッシュ)と白煙が視界を塗り潰して、彼女を踏みつけている巨大な影の主の姿がよく見えない。けれど、あの距離なら流石に少しは、と思っていたのに。

 

「―――へぇ?」

 

 シャルロットが間抜けな声を漏らしたのも無理はない。カランカランと足元から聞こえる音に恐る恐る視線を下すと、小銭入れをひっくり返したように散らかった排莢、だけでなく、放たれたハズの弾丸がど真ん中でキレイに両断されたものまでもが一緒になって転がっていたのだ。あの距離で全弾を、防ぐだけでなく、切ったっていうのか。それも正確に半分に。そんな末恐ろしい真似をいとも容易くやってのけた()()()の顔は。

 

「む、虫ィッ!?!?」

『その鋭い爪に切れぬものなしッ!! 待ち受けるのは千切り細切れ微塵切りッ!! 狙われたら最期、"Dread Zone"きっての名ハンターにして天才シェフッ!! "Evisceratoooooooooooooooooooooor(エビサレイタァアアアアアアアアアアアア)"ッ!!」

『両腕のチタニウムブレードはアリーナの壁だろうが何だろうが溶けたアイスのように切り裂きます。戦闘中に彼に近い客席の皆様は、今からでも保険に入っておくことをお勧め致します』

『今から保険なんて入れるのかよ、と思ったそこのキミッ!! チケット売り場の真向かいにある受付で申し込めるゾッ!! 今なら先着10名まで限定、半額の

1,000,000ボルトキャンペーン実施中だ、見逃すなァ(ドンミスィ)ッ!!』

『出血大サービスよねぇ。いろんな意味で』

 

 全身を血のような緋色をした機械的な装甲に包んだ人型の昆虫、そうとしか言い表しようのない姿をしているソイツは、蟷螂(カマキリ)のような大きく鋭利な爪、ではなく、両腕に仕込んでいるのだろう金属製のブレードをこれ見よがしに伸ばし、そして―――

 

「―――ヒィッ!?」

 

 徐にシャルロットの心臓目がけて真っ直ぐ突き出してきた。シャルロットは物理シールドで防ごうとするが、そのシールドも蒸かし芋に竹串をそうするかのようにあっさりと貫かれたのを認識した瞬間に強引に流れを逸らし、辛うじて頭スレスレの位置にずらすことに成功する。しくじったと解ると、"Eviscerator(はらわたを啜る者)"と呼ばれたオオカマキリは直ぐ様、もう片方のブレードを伸ばしていて。

 

「させんッ!!」「させませんわッ!!」

 

 それを"S.Regen"と"B.Tears"が、それぞれ阻害する。"AIC"が今にも刺突せんと構えられた腕をピタリと止め、"StarLight Mk-Ⅲ(エネルギーライフル)"と"BIT"が()()()を始める、が。

 

「な」

 

 百歩譲って、実弾を切り裂くのは解る。だが、光線を切り裂くってのはどういうことだ。まるでただ()()()()()()()()()()()()()って風に構えられたブレードに触れた瞬間、エネルギービームであるハズの"StarLight Mk-Ⅲ"の一撃が霧散していく。分子レベルの微細な高周波振動か、あるいはそれ以外の未知の()()()()か。何にせよ、それならそれで。

 

「アタシがやるッ!!」

 

 "龍咆(衝撃砲)"の連射をしながら、腕部の"崩拳(小型衝撃砲)"のチャージをしつつ距離を詰める。そして、未だ片腕を封じられて身動きの取れないでいる"Eviscerator"とやらの()()()()()に叩き込んでやろうとして。

 

 

 

「よそ見は禁物、だろーがよ」

 

 

 

 ふっと、視界に影が落ちた。

 

 ほんの拳大、小さな小さな影を落とすボール状の何かは、キレイに自分たちの目の前に緩やかに落ちてきながら、収まりきらない中身が溢れ返ろうとしているように急速に点滅と膨張をしていた。それを自然と目で追ってしまいながら、自分は()()()()()()()()()()()()を知っているような、なんてことを場違いながらも考えていて。そういえばゲートは()()あったじゃあないかってことにも今更になって気が付いて。

 

(やっば――――)

「皆ァッ!?!?」

 

 次の瞬間には、もう遅かった。

 

 シャルロットの逼迫した声の直後、大型重機に轢かれたかのような衝撃が全身を襲う。勢いよく突っ込んでいた分、余計に反動が大きくて、二転三転と視界がシェイクされる。あぁ、自分が今、盛大に地面を転がってるんだと解る。やはり、さっきの影は手榴弾の類、つまり爆弾だったってことなんだろう。

 

 ようやく勢いが止まっても尚、余りの衝撃に這い蹲ったまま動けないでいる。"甲龍"は強制解除され、アリーナの地面の冷たい感触が全身を痛みや熱を余計に浮き彫りにする。起き上がろうにも、麻痺していてまともに力の入らない四肢ではなかなか上手くいかない。

 

「やれやれ、アイツの教え子だっつーからどれほどのもんかと思えば。期待外れも甚だしいぜ」

「な、んですって」

「くぁッ」

「が、はァ」

「きゃあッ」

 

 辛うじて視線をもたげた先には、次々に墜落、ISが強制解除されていく箒・ラウラ・セシリアをまるで気にもしないで堂々とアリーナの真ん中へ、観客を煽るように大袈裟な身振り手振りを交えながら歩いていく全身赤ずくめのスーツを着た筋骨隆々の男が1人。

 

『決まったァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!! 奇跡のグランドマッチを締めくくったのはやはりこの男ッ!! 我らが"Dread Zone"のグランドチャンピオンッ!! "Ace(エース) Hardlighhhhhhhhht(ハードライトォオオオオオオオオオオ)"ッ!!!!」

『場外の売店では299ボルトで彼のカンフーアクションフィギュアが大絶賛販売中です。皆様こぞってお買い求めください』

『ンン~、僕も欲しく、なっちゃうッ!!』

『流し目やめてちょうだいダラス、気持ち悪いわ』

 

 殊更に大きな声を出すアナウンスがキンキンと頭に響くのに顔を顰めながら、視線だけを巡らせて辺りを見回す。絶対防御を易々と貫通するだけ破壊力があったのは身をもって体感している。()()な鍛え方をしてきた積りはないし、それは皆も同じだろうに、全員ボロボロの満身創痍だ。

 

 何だ。何なんだ、これは。気が付けば知らない場所にいて、ワケの解らないヤツらと戦わされて、あまりにも一方的に叩きのめされて。こうしている間にも"福音"が回復しきってどことも知れぬ場所へと消えてしまうかもしれないというのに。

 

「あ~、まだ状況が理解できてねえって(つら)だなァ?」

「く、はな、せ」

「ヒヒヒッ、いい面構えだ。ガッツがある。そういうヤツほど、へし折り甲斐があるってもんだ」

「な」

 

 顎を持ち上げられて、そして額に感じる冷たい金属の感触。視界に移るのは引き金と、嫌らしい笑みと、無骨な銃身が落とす影。そして。

 

「ゲームオーバー、だぜ」

 

 確かに、頭を撃ち抜かれる感覚がした―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――そう。確かにそういう感覚がしたのに。

 

 

「ヤッホーッ!! 気分はどうだぁい? 聞こえるかぁい?」

「は」

 

 なんで生きてる。誰だお前は。そして、だから、ここは一体どこなんだ。 

 

 

 




 補足説明

・『ターミネイト4(Terminate 4)』/出典『4』

 今までに何度か説明もしましたが、『4』の舞台となるグリーマン・ヴォックス主催の非合法極まりないテレビ番組『ドレッドゾーン』にてEXターミネーターと呼ばれていた四天王的存在。構成メンバーは以下の通り。

1、シェルショック(Shell Shock)
 最初に立ち塞がる惑星クロノスのボス。『正義の処刑執行人』なんて異名を持ってはいるものの、喋りが大変にお下品な上に卑怯もラッキョウも大好物。本名“イワン・フォン・シェルショックトンペルク”。機銃やミサイル、誘導機雷を体中に仕込んでおり、ステージ中を一気に焦土に変えてしまう。
 尚、名前の元ネタである『Shell Shock』とは第1次世界大戦に端を発する心身症の1つを指す言葉で、長期間に渡って戦争のような激しい戦闘環境下に置かれることで精神を病んでしまうことを意味する。日本語だと『砲弾ショック』『戦争ショック』と呼ぶことも。

2、リアクター(Reactor)
 チタニウムトーナメントのボス。融合原子炉を体内に持つ発電ロボット。元は気弱な数学教師だったところを女に振られ、心を掴むためにドレッドゾーンに参加。戦い自体は正々堂々と正面から挑むタイプ。銃撃の他にも巨体を生かした格闘攻撃を多用する。
 名前はそのまま『Reactor(原子炉)』から。

3、エビサレイター(Eviscerator)
 プラチナムトーナメントのボス。バイオ技術の粋を尽くして作られた昆虫型グラディエイター。両腕のチタニウムブレードは勿論、遠距離武器も豊富に兼ね備えた戦闘マシン。メンバーの中で最も影が薄いのは、4人中唯一一切セリフがないからかもしれない(なのでそもそも喋れるのかどうかも判らない)
 名前の『Eviscerator』は直訳すると『〈動物などの〉腸を抜く人』『〈議論などを〉骨抜きにする人』となる。海外のゲームではよくモンスターの種族の前置詞なんかに使われるので、イントネーションとしては文中で使った通り『はらわたを啜る者』になると思われる。

4、エース・ハードライト(Ace Hardlight)
 ラチェットが戦うまでのグランドチャンピオン。嘗ては大人気ヒーローだったが落ちぶれ、どういう経路を辿ってか『ドレッドゾーン』にて勝つためには手段を選ばない冷酷かつ残忍なヒーローに。しかし根の部分は変わっていなかったようで、ヴォックスには頭が上がらず仕方なく従っていた一面あり。尚、番組ファンからの人気もそれほどではなかった模様。ちなみに唯一、『FUTURE』にて生存が確認されているキャラでもある。
 『Hardlight』とはコンピュータ用語の1つで『被写体の輪郭や印影のコントラストを強調する効果』を指すそうです。作者も軽く勉強したくらいの知識しかありませんので、詳しい人がいたらその人にちゃんと訊いてみてください。
 
 どうも、作者のGeorge Gregoryです。

 最後ニ出テキタノ、誰ナンダロウナ~……

 まぁ、どういう場所なのかはもう皆さんお解りのこととは思いますが、もうちょっとだけ続くんじゃよ。急ぎ目で書くので待っててくんろ。アナウンサーの2人についても次回にて。

 では。
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