ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
嵐ノッブは30回『人間無骨』してもらったけど、イチバン回りたかった光ノッブあんまできなかったなぁ。
「―――ここ、どこだ?」
微睡みから目を覚ますと、全然知らない場所にいた。
果てない
その感覚につられて見下ろしてみれば、いつの間にかいつもの制服姿になっているばかりか、ご丁寧に濡れないようズボンの裾を折り返しているし、手には脱いだ靴がある。全くそんな記憶はないのだけれど。夢遊病ってこういう感覚なんだろうか。
そして、燦々と降り注ぐ太陽の光も、鼻腔を擽る潮の香りも、直感的ではあるのだけれど、昨日や昼間のものとは違う、明らかに異質であると感じている。ここはどこなんだろうか。日本どころか、下手すると現実世界でもないんじゃあないだろうか。そこに思い至ったところで、あぁ、そういうことか、と腑に落ちてしまった。
「俺、マジで死んじゃった……?」
あの時、咄嗟に取った行動に対しての後悔はない。例え100回同じ状況にされたって、100回同じ選択を俺はするだろうという確信がある。けれど、思い残すことが全くないか、と問われれば、割と結構あると答える。
例えば、毎週欠かさずチェックしている特撮番組や週刊誌の連載の続きだとか。今度の休みに弾たちと計画していたラーメン専門誌に載ってた店の弾丸ツアーだとか。それに、まぁ、彼女だって出来たことがないし、
それに、何よりも気がかりなのは。
「俺、ちゃんと守れた、よな」
あの後、箒は無事だったんだろうか。俺のことを『自分のせいだ』と責めてはいないだろうか。"福音"は。鈴たちは。千冬姉は。ニューヨークは。
「……まぁ、もう死んじまったんだから、気にするだけ無駄なんだろうけど」
俯いた先、鏡のような水面に映る自分の顔は、酷く自嘲的で見るに堪えなかった。酷い顔だ。教室でこんな顔をしているヤツがいたら、問答無用で早退を勧めるような顔。まぁ、死んでるんだから当たり前なのだけれど。
今になって気が付いたが、ここは全くの無風で、水面には波が1つも立っていない。あれだ。以前、絵葉書だか旅番組だかで見た、『天空の鏡』とか呼ばれているっていう、雨が降った後のウユニ塩湖の景色。あるいは、そう。
「昔遊んだゲームに、こんな場所があったっけな。大人編になってから3つ目の神殿だったっけ。こう、自分の影みたいなヤツがボスとして出て来てさ」
そんなことを考えていたから、だろう。
《―――――》
「うぉあッ!?」
不意に背後から聞こえた声に、随分と大袈裟に反応してしまった。てっきり、ここには誰もいないと思っていたものだから。
振り返った先には、ポツンと小さな白い影が見えた。俺は何故だかその影が無性に気になって、ゆっくりと歩き出した。水底にはどうやら細やかな砂があるようで、一歩一歩を踏みしめる度に指の間を舞い上がったのが水と一緒に通り過ぎていって、何とも言えないくすぐったさがあった。
そうして歩いて行った先に、少女がいた。
《―――――♪》
踊るように歌い、謡うように躍るその姿は、ただただ『白』と言う他になかった。小さな身体を舞わせる度にふわりと膨らんで揺れる髪も、着ている簡素な無地のワンピースも、空を漂う雲のように真っ白。軽やかで澄んだ歌声はまるで聞いたことのない言語で、けれど彼女が心から楽しそうに歌っていることだけは解った。
不思議とそれを邪魔する気が全く起きなかった俺は声をかけもせず、傍らにあった流木の上に腰を下ろした。流木は随分と長い月日が流れて樹皮が剥がれ落ちたのか、それとも元々そういう木なのか、これも芯まで真っ白で、それがより今この時の現実味のなさを後押ししていた。
《―――♪ ―――♪》
地球には多種多様な言語があるが、そのいずれもがヒトが扱うものである以上、最低限の共通項が存在する。それは例えば、意思や感情の伝達手段であること、ひいては文字と音韻・形態素・単語とを結びつけるものである等が挙げられるけれど、もっと根本的に言ってしまえば、母音と子音で構成されている点である。ヒトが発するものである以上、ヒトの喉で再現させられるものでなくては成立しない。
けれど、
そうなってくると、彼女は一体誰なんだろうか、という疑問も出てくる訳だけれど、きっと俺を害するような存在ではない、むしろ味方というか、長年連れ添ったような安心感があるというか、そんな、これまた直感でしかない、けれど外れているとは微塵も思えない確信があった。
多分、その理由はきっと。
《―――――♪ ――――♪ ――――♪》
俺はこの声を、ずっと前から何度も、ずっと傍で聞いて来たような気がしてならないからだろう。
アメリカ国家代表操縦者、
軍属でもある彼女の下にも当然、"
"
しかし、こうして暴走が起きた。そこから導き出される答えはたった1つ。この暴走は
これだけでも万死に値すると言うのに、ニューヨークにて謎の大規模停電、そしてSNSにて拡散が止まらない『謎の影』。必然、上層部からはそちらの解決を命令された。
緊急時に戦力を出し惜しんでいるような場合ではないってことくらい、頭では解っている。けれど、許されるのなら、今すぐにでも"福音"を直々に止めたその足で黒幕を炙り出し、
「ンだ、こりゃあ……」
ニューヨーク州全体での大規模停電、と聞いてはいた。とはいえ、そんな事態、20数年生きてきて全く起きたことがなく、どこか現実味のないものに感じていたのも確かだった。そして、ニューヨーク州が近づいて来るに連れて、困惑を覚えると共にようやく、徐々にその実感を覚え始めていた。
真っ暗だった。コールタールをぶち撒けたような
度重なる開発による大規模都市の夜光はいとも容易く空の星々を呑みこみ、宇宙からでさえ正確に街並みが把握できるほどの光量だと聞く。それがぷっつりとなくなってしまっているのだから、それだけこの暗闇の濃さというか、重さというか、そういったものを余計に強く感じてしまっているのだろうことを鑑みても、それだけで説明のつかない
ニューヨーク州には大小含めて600近い発電所が存在する。その中で自然環境に依存する太陽光・風力発電は安定供給を期待できないとしても、火力・水力・原子力発電が軒並み
加えて、この
「まさか、な」
そんなことを考えた、その瞬間。
「ッ」
ほんの一瞬、まるでSF映画のワンシーンのように、不気味な青白い光が夜空を煌々と照らし出した。あの方向は確かロングアイランド島、クイーンズ地区の辺りだったと記憶している。確かめに行かなければなるまい。何よりも、未だに網膜に強く焼き付いている、照らし出された高層ビル街の影に混じっていた、酷く
専用機"
月光が反射する海面で、ぼんやりとロングアイランド島の輪郭を捉える。戦場で何度も実感したことだが、月の光も案外バカにできない。そもそも、文明の利器が発展・普及するまでの間、我々ヒトはこの月明かりの下で夜を生きていたのだから。
同じく微かに輪郭の見える自由の女神を目印に、搭載している4基のスラスター全基を更に噴かす。間もなく到着する、と基地へ通信を飛ばし、そろそろ先程の影の主を視認できる距離だろうか、などと考えて。
「―――――は?」
思わず、言葉を失った。
変電所から顔をもたげたその巨体は、何と言い表せばいいものか少し戸惑うが、強いて言うなら
そして、何よりも目を疑ったのは、その顔だ。
夜闇の中で誘蛾灯のように淡く光る眼は3対6個が左右でそれぞれ三角形を描くように並び、象牙のように巨大な2本だけでなく、びっしりと鋭い犬歯の生え揃った口に、麺類でも啜るように何本も加えられているのはどうやら切断された送電ケーブル。まさかアイツ、電気を奪っているのではなく、
どんな兵器だろうが、操っているのも乗っているのも
「あ~あ~、やっぱり"
――――そう、思っていたのに。
「おま、えは」
「ヤァどうもハジメマシテ、虎柄が素敵なお嬢さん」
「害虫退治に、ちょっと手ェ貸してくれない?」
いつの間にか自分の隣にあの"黒豹"がいて、さも『こんなのは大したことじゃない』って調子で、そんなことを宣いやがったんだから。
サブタイトルの元ネタ
【ノーモアヤードガンズ(The Law Can't Touch Me)】:出典『C&R』
“カジノ「ペテンしパラダイス」”のラチェットステージで、アリーナ上に設置された銃火器ギミックからダメージを受けずにクリアすると獲得できるスキルポイント。かなり豊富な種類が四方八方にあるので、こまめに周囲を見回さないと獲得は難しい。
補足説明
・『ジーグルート(Light-Eating Z'Grute)』/出典『A4O』
電気を食べて生きる巨大生物。単なる食事、というだけでなく傷ついた体まで電気を食うことで治してしまうので、大都市なんてのは彼らの絶好のご馳走兼独壇場。出典作品である『A4O』ではその特性を使ってネファリウスが冒頭のステージであるルミノポリスを大混乱に陥れるし、最終決戦では更に厄介な事態を引き起こす。
『A4O』には他にもルミノイド(Lumenoid)という、エイとカブトガニを足して割ったような外見をした発電器官を持つ生物が登場。ルミノポリスの随所には彼らを中で飼うことで発電機の役割を果たす生け簀(?)が設置されており、ジーグルートがそれをぶっ壊しながら彼らをポテチのようにポリポリ食べてくシーンが見られる。
どうも、作者のGeorge Gregoryです。
そんなに引っ張る積りはありませんが、手を抜く積りもありませんので、正直何話ぐらいになるか解りません。が、まぁ、やりたい放題させるので、今回もまたゆるりとお付き合い下され。
ではまた、近い内にお会い出来ることを願って。
いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの動力源です。