ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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前回の更新後に今話のプロットを整えつつ全体プロットを見直す。
→あっ、放り込もうと思っていたフラグ、書き忘れた……(;'∀')
→今回の更新に……いや、タイミング的に前回の最後がベスト……(-"-;A
→えぇい、ままよッ(;`・ω・)φ

という訳で、前話の最後にちょっぴりだけ書き足しております。
今回の更新と合わせてどうぞ。
……今後はこういうミスを失くしたいものですが、また同じことをやらかすかもしれません。その時は生暖か~く、見逃してやってください(白目)



Pyrrhic Victory

―――そっすね。俺自身は、そこまで仲が良かった訳ではないっす。話だけなら一時期、アイツから耳タコレベルで聞かされてましたけど。

 

 何回か、ウチの店に食いに来てくれたこともありましたね。びっくりするくらい食うんすよ、あの人。“機械にガソリン・人体にメシ”ってのがウチの爺様(じっさま)の口癖だったんすけど、正にそんな感じで。

 当時のウチのメニューは一通り制覇されたんじゃねぇかな。あの食いっぷりは、見ていて気持ちよかったっすね。だもんで、“気のいいウチのお得意様”ってイメージが強いっす。あんまし来たことないのに。これ、逆に凄くないっすか?

 

 あのプライベートの気さくな感じを見てると、とてもじゃないっすけど“黒豹”とは結び付けらんないっすよ。片や“気のいい近所の兄ちゃん”、片や“冷酷な戦闘マッスィーン”って感じでしたから。滅茶苦茶イイ人でしたよ。初対面の生意気なガキンチョ相手にも、真剣に向き合ってくれて。衝撃だったんすよ。当時の俺にとっちゃ、爺様(じっさま)相手に真っ正面から説教するとか。“世の中にはこんな人もいるのか”って、信じらんなくて。

 “間違わない人はいない。大事なのはそれを認められるかどうかだ”だったかな。確か、こんな感じの内容だったと思います。今にしてみれば当たり前のことなんすけど、目から鱗でした。

 学生の内って、良くも悪くも、頂点は家長になっちゃうんすよね。一種の縦社会。どんだけ気に入られるかで、全てが決まっちまう。だからこそ、女尊男卑どうこう以前から、我が家での妹の発言力は高かった訳で……ハハッ、色々振り回されたっけなぁ。

 

 いかんいかん。歳食っちまうと無駄に話が長くなっつまっていけねぇやな。本筋に戻しましょうか。

 気になるようになったのは中学からっすね。丁度、あの朴念仁と知り合ってから。旗折り機とか上手いこと言ってたヤツもいたっけなぁ、懐かしいわ。男としてそれなりに自信あったんすけどね、アイツが隣にいるとまぁ~霞む霞む……どいつもこいつも俺なんかアウトオブ眼中ですよ。心ん中で何回、藁人形に五寸釘ブチこんだっけなぁ。

 

 で、アイツから色々と聞くまでは、やっぱり最初は俺も“IS使ったテロリストかなぁ”くらいにしか思ってなかったんすよ。そもそも俺、小耳に挟んだ程度にしか知りませんでしたし。まさか中の人が自分の周囲にいた、なんてち~っとも考えてませんでしたから、全部他人事(ひとごと)でしたわ。平和ボケ大いに結構ですけど、何事も度が過ぎると宜しくないんすねぇ。

 

 で、まぁ、それが“他人事(たにんのこと)”じゃあなくなり始めたのは、やっぱり“あの日”、ですかね―――

 

 

 

 

「お~お~、お互い派手にやられたなぁ」

「……なんなんだよ、お前」

 

 夕暮れの教室内。ぶすっとしたしかめっ面のまま、散乱した机や椅子を戻し、教科書やらノートやらを拾い上げては鞄にしまい込んでいたそいつは、嫌悪感丸出しの声でそう返してきた。手の甲や頬には幾つもの絆創膏。卸したてなのに埃塗れな制服の下には、恐らく何ヶ所も殴られた跡が残っていることだろう。

 

「ま、6人相手にこれで済んでるんだから、良い方じゃね?」

「茶化してるんなら、怒るぞ?」

「違ぇよ。ほれ」

「……これは?」

 

 肩越しにこちらを睨みつけてくる目つきは、爺様(じっさま)が酒瓶片手に見ていた時代劇に出てきた“壬生の狼”ってのを、なんとなく思い出した。

 投げ渡したのは掌サイズのプラスチック容器。中身はガキの頃から台所仕事で切り傷や火傷をこさえる度に世話になっている塗り薬。

 

「塗っとけ。効き目は保障する」

「――お前、その顔」

 

 受け取ろうとこちらを振り向いて、そこで初めて俺の様子に気づいたらしい。制服は長袖に丈の長いスラックスだから割と隠せているんだが、流石に顔を殴られた痕は誤魔化しきれないか。帰ったらまた雷が落ちるんだろうなぁ~……帰りたくねぇな~……

 

「ヌハハッ。1発も貰う気なかったんだけどな~、いいの貰っちったぜ」

「なんで」

 

 呆然とこちらを見ている。まぁ、解らんだろうなぁ。他人の喧嘩にいきなり加勢する理由なんて。

 

「アイツら、俺と同じ小学校でさ。昔っから無駄に大人数でつるんでは、いっつも弱い者いじめしてたんよ」

「なんだよソレ。カッコ悪ぃ」

「ホントにな」

 

 目をじとっと細めての、余りに予想通りの反応に、思わず笑ってしまいながらも、屈みこんで拾い集めるのを手伝うことにする。ご丁寧に筆箱までぶち撒けられたのか、あちらこちらにシャーペンやら消しゴムまでもが散らばっている。

 

「ホレ。これで全部か?」

「悪い、助かる」

「いいってことよ。えぇっと、織斑(おりむら)一夏(いちか)っての?」

「あぁ。えぇと、お前は?」

「隣のクラスの五反田弾(ごたんだだん)だ。弾でいいぜ」

「そか。じゃあ、俺も一夏でいい」

 

 拾い上げたノートに書いてある名前を読み上げる。

 後で知った事だが、事の発端は今朝の入学式の後、教室での自己紹介だったらしい。この地域での“織斑”という苗字に男女問わず大勢が食いつき、本人が肯定するもんだから更に沸き立った。クラスメイトが有名人の身内。しかも知名度は世界規模。自分たちくらいの年頃なら、一種のステータスってヤツだ。休み時間になった途端にたちまち人だかりが出来上がり、しかも人柄までいいと来れば、そりゃあ人気者にもなるだろう。中学1年の初日にして一躍、時の人である。

 そしてそれが、連中の気に障った。癇に障ってしまった。

 

「俺の赤毛さ、お袋からの遺伝で、ちょっとした自慢なのよ。黒く染めろって五月蠅い教師もたまにいるけどな」

「あぁ、確かに。言われそうなくらい見事に真っ赤だな」

「だろ? 地毛なのに染めろってのも変な話だよな」

「随分長く伸ばしてるんだな。邪魔にならないのか?」

「慣れるとそうでもないぞ。それに、まぁ、願掛けみたいなのもある」

 

『よぉ、“裏切り者”の弟クン』

 よくもまぁ、そこまで妬みと嫉みと僻みに満ち満ちた下らない台詞を吐けるものだと思う。放課後、忘れ物を取りにたまたま教室の前を通りがかった時、わざわざ呼び出したのか、それともたまたま教室に居残っていたのか、あのバカどもはそんなことを言いながら、そいつに突っかかっていた。いつまで小学校と同じ積りでいるのだろうか。既に自分たちが幅を利かせられていたような環境ではないというのに。

 

「妹が1人、いるんだ。くせっ毛なんだけど、俺と同じ、真っ赤な髪してんのよ。で、“女尊男卑の(こういう)”世の中になる前から、っつか、小さい頃から勝ち気で腕白なヤツで、間違ったことが大っ嫌ぇでさ」

 

 予想していた以上に反応は早く、そして苛烈だった。明確に、部屋の気温が数度下がったかのような錯覚。すぅっと細められた双眸は、刀剣のような鋭さを帯びて、ヤツらの喉元へと突き付けられた切っ先を幻視させられた。

 つい数週間前までただの小学生だったヤツが出せるようなものじゃないことは、見ただけで判った。つい数週間前までただの小学生だったヤツに耐えられるようなものじゃないことは、見るまでもなかった。絵に描いたような“蛇に睨まれた蛙”。教科書に載せられるんじゃないか、ってくらい綺麗に整った構図だった。

 

「ある日、泥塗れの埃塗れで帰って来た。いつもみてぇに外で遊んで帰って来たっつって、風呂場に直行したんだけど、目の周り真っ赤にして、明らかに泣いたような跡もあってさ」

「それ、は、つまり」

「お察しの通り。その次の日、“前々から気に入らなかったのよね~”だとか言ってる女子連中とアイツらがつるんでるの、見ちまってさ。そん時に、ついカッとなって、思いっきり。アイツら、俺の顔を見た時、ちょっとビビってたろ?」

「あぁ、そう言えば」

 

『俺の事はいい。千冬姉を悪く言うな』

 なんて清々しい憤怒なのだろうと思った。生意気だ、なんて言いながら逆上し出した連中が複数人で押さえ込み袋叩きにしようとするが、どこにそんな力があるのか、強引に引っぺがして反撃を叩き込む。それでも、数の暴力ってのはどうしようもなくある。流石に1vs6の人数差を引っくり返すのは難しい。アクション映画のような1人無双シーンってのはそうそうあり得るものではないのだ。

 そして、気が付けば、野郎どもに思い切り背後から助走付きのドロップキックをお見舞いしている自分がいた。

 

「こんだけ伸ばしとけば、俺の方が“目立つ”だろ?」

「――プッ」

「クハッ」

 

 誰かのことで怒れるヤツに、悪いヤツはいない。家族を貶されて怒れないようなヤツは論外だ。そこに男だとか女だとかは関係ない。きっと、それはコイツも“同じ”なんだろうと、直感的にだが解った。

 顔を見合わせ、思わず噴き出す。あぁ、久し振りの感覚だ。波長だとか歯車がカッチリ噛み合う、この感じ。コイツとはきっと、長い付き合いになる。

 

「しかし、さっきのアレ、どうやったんだ? こう、相手の手首をガッて掴んで捻ってたやつ」

「あぁ、アレか。俺、小学校の時に色々あってドイツにいたことがあってさ、そこで軍の人に教えてもらったテクニックの1つだな」

「ブハッ!! ドイツッ!? ってか、軍ッ!? お前一体どんな人生送ってんだよッ!?」

 

 放り出したままの自分の鞄を拾い上げながら、話の先を促す。一夏も仕方がないみたいな表情をしながら持ち物をまとめ、肩から提げていた。

 

「姉ちゃんが出稼ぎ中だってんなら、ウチでメシ食ってけよ。定食屋なんだ」

「あぁ、それでこんな軟膏持ち歩いてたのか。全然ヒリヒリしなくなったぞ、凄いなこれ」

「だろ? お袋が買いだめしてて家に山ほどあるから、それやるよ」

「マジか、サンキュ」

 

 上履を下駄箱に放り込み、玄関を抜けて正門へ。間もなく日は沈み、夜に差し掛かろうという頃合い。橙色から藍色への鮮やかなグラデーションの中、ポツポツと点り始めている電灯が、徐々に日が長くなりつつあるのを教えているようで。

 そんな単純な暗さと、久し振りに気の合う友が出来たという歓びが、つい自分を不覚にさせたらしく。

 

「――ん?」

「どうした、一夏」

「いや、なんか足音が」

 

 背後を振り向き、立ち止まって素っ頓狂な顔をしている一夏へと声をかけた、次の瞬間。

 

「――一夏に怪我させてんじゃないわよこの麻婆春雨頭ぁあああああああああッ!!」

「はぐぉっ!?」

「だ、だぁああああああああああああんッ!?!?」

 

 後頭部に走る衝撃はさっきの不意打ちのお釣りなんですかね、などと明後日の方向へ迷走する思考回路の混乱を感じつつ、明滅する視界に辛うじて映ったのは、某2000の技を持つ平成初代の黒くて金色な両足キックの体勢で宙を舞う謎のツインテール美少女と、そんな自分たちを見てあんぐりと口を開ける親友(予定)の間抜け面だった。

 

 怪我の原因が自分にあると誤解していたツインテールがそれに気づいて実に見事な土下座をかますまで、あと10秒。

 そんな彼女の謝罪を受け入れつつの『そんなに心配するってことは~』的な揶揄によって自分が彼女の好意を知るまで、あと25秒。

 知られたことによって彼女が顔を完熟トマトよろしく真っ赤に染め上げ『違うのよ今のは~』的な消極的弁明を始めるまで、あと37秒。

 そんなあからさまな恋愛感情を向けられているというのに意図的なのか天然なのかまったく気づいていない様子のド阿呆に呆れ返るまで、あと51秒。

 こんなバカ騒ぎがこれからも続いていくのだろうと思い溜息を吐きつつも明日からの中学生活に心を躍らせるまで、あと―――

 

 

 

 

――――メッセージは1件です。再生します。

 

『よぉ兄ちゃん。俺だ、島倉(しまくら)だ。いつものヤツ、いつもんトコに届けてあるぜ。受け取んな。代金はいつも通りに頼むぜ。

 しかし相変わらず羽振りがいいよなぁ兄ちゃんは。こんなん届けるだけでこんだけ稼がせてもらえるんだからよぉ。今後ともよろしく頼むぜぇ。なぁに、お得意様(金のなる木)を金で売っ払うようなバカな真似はしねぇさ。安心してくんな。

 ところでよぉ。未だに謎なんだが、どうして初対面ん時に俺がオウムを飼ってるなんて解ったんだ? それも口癖まで。電話越しに聞こえちまったんかねぇ。近くで仕事の電話してる俺も悪ぃんだがよ、いい加減どいつにも『バーカッ!! バーカッ!!』言っちまうのはそろそろ矯正してぇところだぁなぁ。

 後よ、あん時の「今度は何を集めさせるんだ? ソウル? ツノ? それとも設計図?」って台詞もよく解んねぇんだがよ。俺ら、間違いなくあん時が初対面だよなぁ? 仕事柄、どっかで出会っていても不思議じゃあねぇが、一度でも取引した相手ならそうそう忘れたりしねぇんだがなぁ。

 まぁいい、その辺は次に会った時にでも話すとしようや。報告は以上。今後とも”清く正しく密輸入”運び屋・島倉を御贔屓にな。またなぁ』

 




サブタイトルの元ネタ
“クランク&ラチェット(PSP)”のスキルポイント
“ヒーローチックビクトリー(Pyrrhic Victory )”
 ボルテア美術館の最後、厳重な警備や赤外線レーザーを掻い潜るシーンの、最後の最後のパートでのみダメージを受けてクリアすると獲得できる。
 原題を直訳すると“ピュロスの勝利”となる。これは、古代ギリシアのエペイロス王で、戦術の天才と謳われたピュロスでさえ、ローマ軍に勝利するためには多大な犠牲を払わねばなかった、という故事を転じて、成果と対価が釣り合わない”割りに合わない勝利”を意味している慣用句である。
 まぁ、要するに“骨折り損”的なニュアンスで使っておけばよろしいかと。

 補足説明

・“某2000の技を持つ平成初代の~”
 A New Hero, A New Legend. 最近、Amazonビデオで全話見直したばっかりなもんで、脳内再生余裕でした。解らない人は『仮面ライダークウガ』で検索。名作です。
 特撮が大好きです。ライダー・戦隊・ウルトラ含め、殆どの作品には目を通しています。作業用BGMは専らラチェクラを始めとしたゲームのサントラか、私が自分で編集している特撮歴代主題歌メドレーフォルダ。カラオケに行くとゴレンジャーから最新作まで延々と歌い続けたりしています。

・“スマッグラー”(初出『FUTURE』)
 ポララ銀河の密輸入業者。カウボーイのようなウエスタンスタイルの服に真っ黒な眼帯が特徴的。行く先々でギミックを動かすためのガラメカやキーアイテムを売ってくれる。いつも肩に赤いオウムの”プロット”を乗せており、何故か会計はそのオウムが任されているらしい。……どうやって帳簿つけてんだか。
 他にも収集アイテム(『FUTURE』ではリヴァイアサン・ソウル、『NEXUS』ではガーガソンのツノ)を高値で買ってくれたり、設計図を集めて彼の下へ持っていけばその作中における最強の兵器を組み立ててくれたりする(『FUTURE』『FUTURE2』)。何気に多芸な男である。


 捏造及び妄想を多分に含んだ今回の更新でした。こんな調子でIS本編へ少しずつ早送りしていきます。ここから暫くの間、メイン視点はIS側です。補足説明も多分、こんな感じになるのではないでしょうか。
 前書きでもちょろっと説明してますが、前話“Family Values”の最後にほんの少しだけ書き足しをしております。元々組み込む予定だったのをすっかりと忘れ、暫く仕事が忙しくて執筆の事が脳内から抜け落ちており、改めて再開した時にやっとこ思い出して“どうすんべ……”と悩んだ末が今回の同時更新でした。繰り返さないようにしますので、良ければ再度、前話をチェックしてみて下さい。……今から反応が楽しみです。

 では、近い内にまたお会いできることを願って。

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