ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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これでお前とも縁が出来たなァッ!!


Dress For Success Ⅸ

 自分でも重々承知していることなのに、それを他人に指摘されるとあぁも腹が立つのは何故なんでしょうね。「そんなことも解っていないようなヤツ」と軽んじられているように感じるから、でしょうか。いや、まぁ、単純にまだまだ精神的に未熟だから、と言われればそれまでなんですが。

 

 エース・ハードライト。後に彼が『落ちぶれた元ヒーロー』だと聞いた時、あぁやっぱりか、とすんなり腑に落ちました。あの目は、あの笑みは、諦めてしまったか、受け入れてしまったか、あるいは()()()()()()()()()()()過去のある人間特有のものでしたから。

 

 今でこそそんなでもないですが、当時の私はこう、『お前らもいつかはこうなるんだよ』と見せつけられているように感じた、と言うべきでしょうか。それだけの強さがあれば未熟者(わたし)なんて簡単に一捻りにできただろうに、ひたすら皆の妨害や時間稼ぎに使われる一方で、それが特に私を苛立たせていました。えぇ、あれだけいいように弄ばれれば嫌でも伝わってきましたよ。『篠ノ之箒(おまえ)が弱点だ』と。

 

 そんなこと、言われなくても解っていた積りでした。なのに、えぇ、なまじ彼に嘗ての父の在り様が重なって見えてしまったからでしょうかね、当時の私は、彼がまともに私の相手をしないことに憤りを感じていたんです。どうです? 生意気でしょう?

 

 けど、一度点いてしまった火はなかなか消えなくて、そこにどんどん油が注がれるものだからどんどん燃え上がっていって、すっかりと私は頭に血が上ってしまって、何もかもを忘れさせられてました。任されていた役目も、()()()()()()()()()()()()、何もかも。

 

 けれど、()()()()()()()()()()()()()、ってことなんでしょうね―――

 

 

 

 

 私の人生には、いつだって劣等感というものが影のようについて回った。

 

 成績は良くて中の上。可もなく不可もなく。学力では逆立ちしたって姉さんには敵わないし、剣では千冬さんがいる。比較対象がおかしいのは自分でも解っているけれど、物心ついた時から2人とも傍にいたから他に比べるものがなく、限りなく狭い私の世界ではなかなかそれが更新させることもなくて、気が付いた頃には「どんなに頑張ったって一番にはなれない」という考えががっちりと凝り固まり、常に思考のどこかに癒着してしまって離れなくなっていた。

 

 だから、皆との出会いは1つ残らず衝撃的だったのだ。

 

高貴なる者の務め(ノブレス・オブリージュ)』を掲げ『情けは人の為ならず』を地で行く、セシリア・オルコット。微塵も臆することなく好意を真っ直ぐに伝え、一夏の為ならばこの命すら惜しくないとまで言ってみせた、ラウラ・ボーデヴィッヒ。報われないとか知ったことじゃあない、この想いに身を焦がす覚悟は出来ていると断言してみせたシャルロット・デュノア。あまりに似た境遇にありながら決して歩みを止めず、藻掻きながらも前へと進むことを諦めていない、更識簪。

 

 そして、誰よりも。

 

「この星の一等賞になる」

 

 それがどれほどの困難か知らないハズはないだろうに、超えてみせる、自分にならそれが出来ると信じて疑わない、凰鈴音。

 

 井戸の底の暗さや冷たさと、果てしない空の高さや青さしか知らなかった(わたし)に、皆は世界(うみ)の大きさや広さを教えてくれた。己が矮小さを知り、恥ずかしさで頭が茹りそうな日もあった。己が卑屈さを知り、悔しさで頬を濡らした夜もあった。けれど、それらを絞り尽くした翌朝の目覚めはなんだか妙に清々しくて、その度に学園へ向かう足取りが軽くなっていくのが解った。

 

 多分、面と向かって伝える機会(こと)はないだろうけれど、私は皆に相変わらずの劣等感と、それ以上に心からの感謝と尊敬の念を抱いている。「こうはなれない」と「こうなりたい」が不思議と反発することなく、心の中にそれぞれ程よい塩梅でぴったり納まっているような感覚がある。

 

 そしてそれはきっと、皆が『努力を努力と思わないほどの努力家』であるからだ。

 

 日々の勉強や鍛錬を、皆は『やらなければならない』ではなく、『やりたくてやっている当然のこと』であったり、『この程度では努力と呼ぶのも烏滸がましいレベル』であったり、『日々こなさないと落ち着かない生活の一部』のように認識している。私は、強いて言うならば『努力と呼ぶのも烏滸がましい』と『生活の一部』が半々くらいであるが、それでもまだまだ『やらなければならない』という感覚の方がずっと強い。それはきっと、形や感覚こそそれぞれ違えど、ISに自ら進んで関わった皆と、()()()()()()私との、入口の差にあると思っている。第一印象と言うものは、覆すのがとても大変だ。それ由来の嫌悪感や苦手意識があると更に。

 

 けれど、それが何も()()()()()()()だとは限らないじゃないか。

 

「オーケーオーケー、昨日よりずっと上手くなったじゃない」

「その調子ですわ箒さん。イイ感じ、です」

「いいぞ新兵。そのままもう1セット追加だ。今の貴様なら出来る。気張ってみせろ」

「頑張れ箒~ッ!! これに勝てば鈴との対戦成績通算10勝目だよ~ッ!!」

 

 そんな、本当に些細な労いや励ましの言葉がじわりじわりと積み重なって、ある日突然、その数値(ゲージ)正負(プラスマイナス)()()()と反転させてしまうことだって、あったっていいじゃあないか。

 

「解る。解るよ。どれだけ足掻いたって敵わない人が近くにいるとさ、真面目にコツコツ、ってのが途端に馬鹿々々しくなっていく感覚。でもさ、それですっぱり諦められるんなら、こんなに苦しくなってないよね」

 

 そんな、傷の舐め合いのようではあれど、確かな理解者を見つけられたことを喜んだって、いいじゃあないか。

 

 初めて、心から離れ難いと思える友だちが出来たんだ。一緒にいると楽しくて、こんな私に親身になってくれる、大事な大事な友だちなんだ。そんな皆に『負けたくない』だけじゃなくて、『喜ばせたい』と、『力になりたい』と、『報われて欲しい』と思うことの、何が悪い。

 

「努力が必ず報われるとは限らない、ってよ?」

 

 あぁ、そうだ。その通りだ。そんなこと、言われなくたってよく知っている。

 

 きっと、彼は()()()()()で私に言っているんじゃあない。正しく篠ノ之箒(わたし)という人間の性格や過去を推察し、逆上させて()()()()()を作る為。()()()()()()()()。例え最強でなくとも、手段を選ばずあらゆるものを利用することで最善にはなれる。そういう本気(たたかい)もあってもいいんじゃあないかと思う。けれど、それとは全く別の理由で、今の私はこの怒りの感情にブレーキをかける積りがない。

 

()()()()()

 

 鈴も。セシリアも。シャルロットも。ラウラも。簪も。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あんなに優しくて、眩しくて、温かい皆の努力が報われないなんてことがあってたまるものか。

 

「シャルロット。下がっていてくれ」

「ほう、き?」

 

 "空割"と"雨月"を握り直し、緩やかに立ち上がる。今の精神状態ならきっと()()()()()。何の根拠もないけれど、そんな気がする。

 

「大丈夫だ。少し休めたし、それに」

 

 それに、今はこうも思うのだ。

 

「コイツは、私の手で倒したい」

 

 篠ノ之箒(わたし)は自分の為だと酷い醜態を晒してしまうクセに、大切な誰かの為ならばこんなにも純粋に怒りに染まれるのだな、と。

 

 

 

――――One-off Ability《絢爛舞踏(ケンランブトウ)》Activate

 

 

 

 




 どうも、作者のGeorge Gregoryです。

 ゼンカイジャー完走の勢いでドンブラザーズ最新話まで一気見したらOP・EDが延々と脳内リピートされるようになりました助けて下さい。桃井タロウを幸せにし隊。俺のショートケーキのイチゴやるよ……

 本エピソード、本当はもう少し速く畳む積りだったのにどんどこ伸びて来てるのはここたけの話。今回短めですけど次の更新分ほぼほぼ出来上がってて近日中に放り込むんで許してちょーよ。

 いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの動力源です。
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