ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
いやぁ、こっからが本番だと思うと、楽しみでもあり、書ききれるか怖くもあり。
相変わらずの更新ペースですが、気長にお付き合い下さいませ。
「終わんねぇ~……」
「ぼやいてないで手を動かせよ、弾」
「そうだな。ぼやいた分だけ、終わる時間が伸びるだけだ」
季節は夏、真っ盛り。夏季休暇に入った我々“私設・楽器を弾けるようになりたい同好会”メンバーは猛暑を避け、文明の利器の恩恵の下で快適に夏季休暇の課題を片付けるべく、朝一から駅前に立つ大型図書館の一角を借りて課題との
……いや、正確に言うなら、既に集まった3人中、俺を除いた2人はTKO判定によって完全勝利をとうに収めており、後は俺が残りのラウンドをどうにか消化し切らねば、という状態である。一夏は読書感想文用に明治時代の文豪コーナーから見繕ってきた小説に目を通し始めているし、数馬に至っては去年からドハマりしているスマホのアプリを始めているようだった。
「ん? 数馬。そのゲーム、新作か?」
「あぁ。“
「確か、今まで公開されたゲーム全部で全国ランキングに名前が載ったんだっけ? スゲェよなぁ。俺は精々、“
「いや、あれはあれで充分凄いことだぞ。全体の構造を把握して最低回数でのクリアが求められるパズルだからな。ランキングで同率順位が大量に発生するのは、ある意味当たり前さ」
確か、“
「それにしても、制作がたった2人とは信じられないほど凝った内容なんだよな。何者なんだろう、この“B-5429”さんと“XJ-0461”さんは」
「明らかに本名じゃないよな。元プロのクリエイターが作っている、って言われても違和感ないけど、案外マジでそうなのかも」
「……なぁ、お二人さん。教えてくれる気は更々ないわけ?」
悪戦苦闘中の俺そっちのけで盛り上がる2人にボソッとツッコミを入れると、呆れたような視線をこちらへ向けてきた。
「別に難しいところなんてないぞ? 普段しっかり板書して、教科書を読み直せば解る問題ばかりだろう?」
「大体、さっきこの辺の公式を使えば解けるってページまで教えたじゃないか」
「解んなくはねぇんだよ、ただ単に面倒臭ぇんだよ。まだこんなにあると思うよさぁ」
「……なんだ、心配して損した」
がっくりと両肩を落とし、机の上、一向に文字の増えないノートへと顔を突っ伏す。両腕を勢いのまま突き出したものだから、静かな館内にカラカラと音を立てて転がるシャーペンが妙に響いて、より虚しさを際立たせる。
「大体よぉ、数学なんて将来の役に立ちそうもねぇ科目ナンバーワンじゃねぇか」
「いや、そうでもないぞ。進路によってはむしろ必須科目だ。なぁ、一夏」
「――ん? なんだ、一夏。お前、後期からは理数系クラス志望か?」
「まぁ、な。行けるもんなら、って感じではあるけどさ」
俺たちは普段、あまりその手の話をしない。大抵は対戦ゲームだったり、週刊誌の回し読みなんかをしながら、昨夜のテレビ番組だの、苦手な教師の愚痴だの、他愛のない話ばかりで盛り上がる。多分、この勉強会の後も俺の部屋にて同じような展開になるのだろう。大抵はここにもう1人、中国製の暴走ツインテ豆タンクが加わるわけだが、今日は実家の手伝いがあるとかで泣く泣く断念したそうな。
入学式の日こそ、それなりの衝撃ではあったが、うん、
「推薦狙いで藍越行って高卒就職、が第一志望ではあるんだけどさ。工学系の方に進んでみたくもある、っていうか」
「確かに一夏、理数系の成績、良い方だもんな。教え方も上手いしよ、教師目指すのもありなんじゃね?」
「言えばいいじゃないか。もう少しだけ勉強させて欲しいって。むしろ、お姉さんは進学に賛成派なんじゃなかったか?」
「ん~、でもなぁ。そもそも高卒就職したいってのが、千冬姉に任せきりが嫌で早いところ自立したいって理由からだしなぁ。……ん、これにするかな」
「夏目漱石の『吾輩は猫である』か。良いチョイスだな」
「教科書くらいでしか聞いたことなかったから気になったんだけど、結構読みやすくてさ。じゃ、借りてくる」
そう言いながら苦笑しつつ、本を閉じて近くのカウンターへと持って行った。どうやら読書感想文の本は決定したらしい。ジャンルを問わず、本の虫とすら言って良いレベルの活字中毒である数馬は、タイトルを見て何処か満足げに微笑んでいた。どういう形であれ、本読みは自分の好きな作品の読者が増えるのが嬉しいらしい。以前、教室でそんなことを喋っていたのを思い出す。
「ま、これで解き方は解ったし、後はゆっくり気長にやるわ。始業式まで後2週間あるしな」
「去年もそう言って放置して最終日に“かちかち山”と化したのはどこの誰だったっけか? ……まぁ、そろそろ昼時だしな。一旦メシでも食いに行くか」
畜生。数馬の野郎、嫌なことを思い出させやがる。遠回しに叱咤激励してくれているのは解るんだけどな。去年も結局、最後は俺ん家に集まって色々手伝ってくれたことだし。
「お? 弾、今日はもう止めるのか?」
「おぅ。目途はついたしな、この辺にしとくわ。帰ろうぜ、母さんがまたお前ら連れてこいってさ」
「またあの甘いカボチャ煮の定食か? 毎度ゴチになっておいて言うのもなんだが、嫌いでなくても流石にそろそろ飽きてくるぞ?」
「俺は結構好きだけどなぁ。付け合わせの煮魚に鷹の爪がピリッと効いてるのなんか特に」
各々、広げていた勉強道具をカバンにしまい込み、図書館を後にする。
外に出た途端、肌を撫ぜる熱気に思わず顔を顰めながら、爪先を翻したがっている脚を懸命に前へと進める。
「早く行こう。一刻も早く日陰に入りたい」
「「賛成」」
猛暑にげんなりと萎れつつも、家路を歩き出す。高々十数分の道のりをここまで遠く感じさせるのだから、夏の到来は毎年、素直に喜べない。まぁ、“目の保養”には抜群にもってこいな季節ではあるわけだが。
呑み込まれそうなほど澄んだ青空より、燦々と照りつける太陽。皮膚はじりじりと炙られているようで、これは今夜の風呂は地獄だろうなぁ、などと考える。
14の夏が、もうすぐ終わろうとしていた。
「『今夜は弾たちと外で済ませます』か」
着信したメールを開くと、見慣れた食堂で、見慣れた顔ぶれが、見慣れたカボチャ煮にかぶりついている写真が表示された。弟が中学に上がってから、すっかり当たり前になった、微笑ましい光景。
悪いところだけが自分に似てしまったのか、浅く広い付き合いはまだしも、年月を経ても長く付き合っていけるような友人を、1人でもいいから作って欲しいものだと思っていた。その心配を取り越し苦労にしてくれたこの2人、特に最初の1人になってくれた五反田少年には、密かに感謝している。
中学の入学式の日。一応は有給を申請したものの多忙を理由に受理されず、“ならばせめて夕食だけでも一緒に”と半ば意地で定時に仕事を切り上げ、自宅で弟の帰りを待っていた。
最初は久し振りに手料理でも、と思っていたのだが、冷蔵庫の中身を確かめ、精々が“煮る”“焼く”程度の技量しか持ち合わせていない自分では荷が重いと判断、外食に変更しようという結論に至れた自分を褒めたい。我ながら英断であったと思う。女としては、非常に情けないが。
しかし、間もなく日が暮れる時間になっても、帰ってくる気配がない。何かあったのかもしれないと携帯にかけようとすると、インターホンの音。
入学式の後ならば精々、部活見学くらいしかないであろうに。用もなく余りに遅い帰宅は感心しないなと、説教の1つでもくれてやるために玄関へ向かうと。
『あ、あれ? 千冬姉、帰ってたんだ』
『お、お久しぶりです、千冬さん』
『……一夏、その赤毛の少年は、どうしたんだ?』
完全に気絶しているのか、だらりと力なく伸びた両手足を弟と、確か小学校高学年からのクラスメイトで馴染みの中華料理屋の娘だったか、2人に抱えて我が家に運ばれてきたのが、彼との初対面だった。
『なんであんなに怒ったのか解んねぇけど、妹さんが今日は帰ってくるな~的な話になっちゃってさ。明日は休みだし、今晩泊めてやろうと思って』
『あんな話を蒸し返されて怒らない訳がないでしょうが。思い出したくもなかったでしょうに。男子ってそういうところがダメよねぇ』
『そういうもんかなぁ。俺はすっげぇ良い話だと思ったんだけどなぁ』
その会話の内容で、概ねの事情を察した。
詳細を聞くに、どうやら半分以上は彼の自業自得のようだ。端的にしか聞いていないのだが、なんでも、余り知られたくない過去話を勝手に話されたのを知った彼の妹による“制裁”らしい。しかもその妹がウチの愚弟に一目惚れしてしまったが故に、それはそれは凄まじい怒り様だったそうな。
最近は足早に大人びてきたものだと思っていたが、こういうところを見ると未だに歳相応に幼いのだと再確認させられる。「お前が“
愚弟は何故か異性を惹き付けるらしく、それに伴って大多数の同性から嫉妬の感情を買いやすいらしい。その為か、今まで親しい同性の友人の話をあまり聞かなかった。作ろうとして出来るものではないのは、私自身もよく解っている。あぁ、よく、解っている。
自分のことならば妥協も出来るというものだが、弟のことになるとつい余計に考えがちなのは、最早私の悪癖と言っていいだろう。
ともあれ、“あの日”から私が不在の日でも外出の際はしっかり連絡を寄越すようになり、以前ほど他人の事情に直ぐに首を突っ込むような無茶な真似もしなくなったらしい。真っ直ぐに育ってくれたことそのものは素直に喜ばしいのだが、どうにも人が好すぎるきらいがある。
第2回モンド・グロッソ以来、決して少なくない悪意に見舞われてきた。事情はどうあれ、国の威信を懸けた決勝戦を辞退した事実に変わりはなく、マスコミはこぞって私を“臆病風に吹かれた裏切り者”と取り上げた。つい先日までは“優勝確実・今年も世界を獲るのは日本の戦女神”なんて謳い文句ばかりを並べ立てていたというのに。そして、その余波は一夏にも及んだ。
自宅への落書き。郵便受けや下駄箱に腐敗物や小動物の死体。およそ1年振りに戻った小学校でも、少なからず悪質な陰口を叩かれていたようだ。……ドイツ軍でのトレーニングの甲斐があってか、殴る蹴るの物理的被害は全くと言ってなかったらしいが。
……こういうところが似てしまったからでもあるのだろうか。だとしたなら、少なからず原因は自分にあるのかもしれない。少々、潔癖に接し過ぎたかと、若干の不安に駆られる。
しかし、それでも。
「織斑先生」
「山田君か。キミも休憩かね?」
「はい。一息入れようかと。……弟さんですか?」
「あぁ。今日は同級生と集まって課題を片付けているらしい」
「わぁ。いいですね、素敵です」
『辛くないって言えばそりゃあ嘘になるけど、こんなんで俺が負けちゃったらさ、優勝を捨ててまで俺を助けに来てくれた千冬姉の判断が間違いだったってことになっちゃうじゃん』
どうにも、この年頃は子どもでもあり、同時に大人でもある、とでもいうのか。歳相応の幼さを見せたと思えば、歳不相応に大人びている部分も持ち合わせている、不安定で不思議な年頃。”教師”としての月日は未だ浅いが、それでもこれを生業としてきた諸先輩方の偉大さを思い知る。彼女も、その1人だ。
山田真耶。誰よりも射撃を得手としていた国家代表時代の後輩は、知らない内に後進の育成という立派な目標を見出していた。
全寮制であるが故に、大半の生徒が実家へと帰省している夏季休暇中。静まり返った職員室内に、処理を終えたであろう書類の束を抱えて入ってきた彼女は、私の携帯を覗き込んで微笑みながらそう呟いた。
「確か今、中学2年生でしたっけ」
「あぁ。身内である分、生徒たち以上に接し方が解らないまま、今まで来た。色々、迷惑をかけているだろうに、寂しがらせただろうに、我が儘1つ言わん」
「いい子じゃないですか」
「そうだな。少々、いい子過ぎる」
「もっと、我が儘を言って欲しい、ですか?」
「……それくらいしても、罰は当たらんさ」
彼女とは候補生時代からしのぎを削り合った仲でもある、つい口が滑りやすい。酒の入った席や、他に誰もいない場ならば、尚の事。
“そういう目”になっている自覚はあった。普段の私ならば、“戦乙女”でありこの学園の教師である私ならば決して見せない、姉であり親としての目。揶揄されるのは嫌いだが、認めている。あぁ、私は世間一般からすれば十分なブラコンなのだろう。当たり前じゃあないか。唯一の家族だぞ? 大切に決まっている。
「砂糖なし、ミルク多め、だったな」
「あ、ありがとうございます。頂きます」
携帯を閉じ、彼女の分のインスタントコーヒーを淹れる。小型カップのミルクを添えて差し出すと、両手で受け取り、自分の席に腰かけた。丁度、私の向かいの机である。
「ん? それは?」
「これですか? また出たんですよ、真っ黒なヒーローさんが」
「……あぁ。“黒猫”か」
問えば、机に並べられた資料の中から、どこか嬉しそうな口調で、写真のついた報告書を差し出してくる。目を通して見ると、つい先日もニュースで大々的に取り上げられた欧州の土砂災害現場、その凄惨さを物語る写真の数々と、現場を駆け回るレスキュー隊の面々。それだけならば、テレビに出回っている映像と、何ら変わりはない。
問題は、その次のページ。連日の豪雨により緩んでいた地盤が土石流と化し、風光明媚な村々を呑み込まんとする迫る中、縦横無尽に疾駆する黒い影。余りの高速が故に残像を帯びて、まるで漆黒の流星のようだった。
“黒猫”。いつしかそう呼ばれるようになった、謎の黒いIS。どこから嗅ぎつけているのか、その鋭敏な嗅覚を以て非合法な研究施設を破壊して回ることから各国政府内でも反応は、お互いがお互いの差し金ではと疑い合っている過激派と、自国の膿を摘出してくれるならばと様子見のスタンスをとっている穏健派に二分化していた。まぁ、過激派が“どういう連中”で構成されているかは、想像に難くないが。
政府側の報道規制によって、少なくとも公共の電波にて、その姿が放映されることは殆どない。が、人の口に戸は立てられないように、実際に“黒猫”によって救われたり、現場に居合わせた人々が撮影した写真や動画がSNSなどを通じて次々に全世界に配信されている。一時期、検閲により大量に削除されたが、結局は“いたちごっこ”が始まっただけだった。
「一体、どんな人なんでしょうか? 私は、いい人なんだと、信じたいですけど」
「少なくとも、敵ではないだろうさ。今のところは、だがな」
「でも、私、ちょっと嬉しいんです」
「嬉しい?」
「はい。不謹慎なんでしょうけど、やっとISを、兵器じゃなく、本来のパワード・スーツとして使ってくれる人が、現れてくれたんだなぁ、って」
「……そう、だな」
確かに、“黒猫”が世間に姿を現して以降、ISの人命救助への有用性を謳う声が増えた。何せ、これだけの“成功例”を見せつけられているのだから。
学園への入学希望者は年々、増加の一途を辿っている。それも、以前までのようなISをステータスとしてではなく、夢を叶えるための道の1つとして捉えている学生の割合が、ずっと。
だが、“違う”。違うのだと、私は知っている。ヤツは、“黒猫”は、ISではないと。
(生みの親が直々に否定している。嘘という可能性も、0という訳ではないが)
自分の作品について冗談は言うが、決して嘘や誤魔化しはしないヤツだ。アイツにしては珍しい電話口の狼狽え様からしても、本当に知らない存在、なのだろう。
(一体、何者なんだ、お前は)
証言通りであるならば、コイツは私たち姉弟の恩人であり、親友の“夢”を守るために、全世界を相手に今もたった1人で“戦っている”ことになる。
(目撃例は50件を超え、ISとの戦闘例も既に両手の指では足りない。ただの1つの黒星もなく、平均するとIS1機相手に僅か10分足らずで勝利していることになる)
現行最強の兵器を、非公式試合でもまず見られないほど、一方的にやり込める実力。初めて、コイツの戦闘の映像を見た時、思わず目を疑った。そして、どうしようもなく。
(お前相手なら、私でも)
心が躍った。躍らせてしまう、自分がいた。
コイツ相手なら、私も本気で戦えるのではないだろうか。ずっと封じてきた、手加減してきた実力を、コイツ相手なら思う存分振るえるのではないだろうか。そんな、心胆が騒ぎ疼いてしまう自分が心底、嫌になる。
これではまるで、飢えた鮫も同然ではないか。そんなに、そんなにも、血の匂いが恋しいのか。
(日頃、散々自制を説いてきた私が、このザマとはな)
「織斑先生? どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。そろそろ仕事に戻るとする。山田先生は、ゆっくり休むといい」
「あれ、この後にまだ何かありましたっけ?」
「募集していた整備員の面接がな。万年人手不足だろう、あの仕事は」
「あぁ、そういえば。いい人だといいですね」
つい、凝視してしまっていたらしい。眉間の皺を揉み解し、資料を戻して席を立つ。
姉弟揃って煙の臭いを嫌っているので全く吸わないが、こういう自嘲的な気分の時に、煙草というものを吸いたくなるのだろうと思う。流石に昼間の仕事中から、酒を呷る積りはない。呷りたくは、あるが。身体に悪いものは、得てして心に良いのだ。
嗚呼。叶うものなら、1度でいい。どのような形でも構わない。
「“黒猫”。お前とは一戦、交えたいものだ」
この時の私は、思いもしていなかった。その機会が、そう遠くない未来に、待ち受けていることを。
――――メッセージは1件です。再生します。
『ヤホヤホ~ッ!! らーくん、そっちの調子はどうかな~? ――あ、今は“らーくん”じゃなかったね。メンゴメンゴ♪
こっちは順風満帆前途洋々視界良好レッツゴーオンッ!! って感じだね。万事、
調査の方もゆっくりとだけど進んでるよ。らっちゃん、流石に元エージェントなだけあるね。潜入・捜査・いずれも~、マッハ~ッ!! こっそりごっそり持って帰ってきてくれちゃったよ~。
……嫌な予感とか想像って、本当に当たっちゃうものなんだね。キミの言ってた通りかもしれない。だとしたら、私はソイツを許せない。絶対に。
“計画”、進めるよ。もう、キミたちに言われたからじゃない。ここからは、私自身の意志で進める。決心は出来た。覚悟も決めた。――でも、1つだけ、いいかな。
私ね、やっぱり信じたいんだ。最初に見限ったのは私の方だけど、とっくに消えたと思っていたけれど、ただ、ほんの少し、ほんの少しだけ、燻っていただけなんだって、解っちゃったから。
だから、我が儘、言わせてくれないかな。もしもの時の責任は、私がとるから。お願い、信じさせて欲しい。キミが教えてくれたように、世界は、人は、そんなに悪いものではないんだ、って。
急がなくていいから、返事、待ってるね。……アハッ。不思議な気分だなぁ。思い出したよ。誰かに何かを頼むのって、凄く不安で、でも、凄く楽しみだったりするんだったね。“あの時”のちーちゃん以来だよ、こんな気持ち。
くーちゃん、“お父さん”に会いたがってるよ。今、料理のお勉強頑張ってる真っ最中なんだ。最近、すっかり試食三昧で、体重計に乗るのが怖いんだよねぇ~、アハハ~……キミの好みに合わせてるから味付け濃いのばっかりなんだぞ。どーしてくれる。
忙しいんだろーけど1回帰ってきなさい。これはお願いでも我が儘でもなくて、雇い主としての業務命令です。いーね?
んじゃ、通信しゅ~りょ~。翼に風をッ!!』
「……追い風を祈る、とでも返せばいいのかな?」
苦笑と共に録音メッセージを切る。ここまで1つの惑星に長居したのが久し振りなせいだろうか、すっかりこの地球という星を気に入ってしまったらしい。特に、サブカルチャー関連。娯楽のレベルは、自分たちのそれを遜色ないと言って良い。
「“面接”が終わったら、1回顔を出しに行くか」
履歴書の入った封筒から視線を持ち上げ、改めて目の前の立派な建造物を見上げる。まるで学び舎とは思えないほどに巨大かつ厳重な正門には、こう刻まれていた。
『国立IS学園』
サブタイトルの元ネタ
“ラチェット&クランク オールフォーワン(PS3)”のトロフィー
“接続!(Connected)”
ゲーム内で1度でもオンラインプレイを始めれば獲得できる。
たまに潜ったりしても海外勢ばかりなんですよねぇ……時間帯のせいでもあるんでしょうか。最近、大体帰宅が22~23時ばかりですしねぇ。
補足説明
・“スパイシリンダー(Tresspasser)”、“エレクトライザー(Electrolyzer)”、“スパイボーラー(Infiltrator)”、“ハッカー(Hacker)”
全て『1』~『3』で登場するパズル系のガラメカ。文章で書くと物凄い量になるので、どういうものかに関しては動画を探された方が早いかと。あまり難しくないミニゲームをクリアすることで、鍵が閉まっている扉を開けたり、動かないリフトを動かしたりすることが出来ます。
本作ではアプリとして登場。その意図は、いずれ解ります。
・“アジマス・コード(Azimuth Code)”(初出『FUTURE』)
惑星ファストゥーンにある遺跡の名前であり、どのような経緯でそのような名前になったかは不明。シナリオにおいてはラスボスの待ち受けるダンジョンとなった。後々に出てくる“とある人物”の名前と同じであることを鑑みると、ひょっとすると”彼”の先祖が何らかの形で関わっているのかもしれない。
・“B-5429”と“XJ-0461”
どちらもクランクを言い表すコードナンバー。
“B-5429(初出『1』)”は惑星カルトゥのロボット工場における、戦闘用ロボットとしての製造番号。“XJ-0461(初出『FUTURE2』)”は彼の父にあたるグレート・クロックの前管理者、オーバスがクランクを呼ぶ際の表記。
本作における正体は、まぁ、ある程度想像がつくと思います。
前書きにもさらっと書きましたが、次回からIS本編に突入します。これから散りばめたフラグを回収しつつ、更に風呂敷を広げていきます。
久しぶりに産みの苦しみを味わうのが、ちょっぴり不安でもあり、同時に楽しみでもあります。こういうところ、やっぱり自分は文章を書くのが好きなんだなぁと、そう思います。……仕事にするのは、真っ平御免ですが。これで食べてる人たち、本当に凄いですよねぇ。
今のところ、なんとかギリギリ週1ペースで更新出来ていますが、この調子だと多分、もっと頻度は落ちます。目標は現状維持ですが、もう少しすると仕事の関係で資格の勉強なんかも本格化させなければならなくなりますので。
では、近い内にまたお会いできることを願って。
Twitterとリンクさせて更新報告/予告した方がいいですか?
-
YES
-
NO