ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
私「……ぬ? なんか妙にラチェクラのヒット数が伸びてる?(海外のサイトを開く)」
記事『The title of this book is The Art of Ratchet & Clank and it was written by Sony Computer Entertainment. This particular edition is in a Hardcover format. This books publish date is Feb 20, 2018 and it has a suggested retail price of $39.99.』
(原文まんまです。なまら簡単に翻訳すると『ソニーがラチェクラ公式アートブックを定価40ドルで来年2月20日発売』)
私「―――YEEEEEEEEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAH!!!!!!!!(感涙しながらの雄叫びで思わず力を込めてしまい飲んでたビールのグラスを握り割る)」
深夜でした。近隣住民の皆さま、マジすんませんした。
掃除大変でした。ノーパソがビール漬けにならなかったのが不幸中の幸い。
―――私は“篠ノ之箒”である。
今更になって自己紹介など、と思うかもしれないが、これが私という個人を言い表す固有名詞であり、揺り籠から墓場まで文字通りに付き纏う影法師に他ならない。そう、私は、この名前が好きではない。
IS学園2日目の早朝。昨夜の“不意打ち”により、結局はろくすっぽ眠ることも出来なかった私は、せめて雑念を振り払わねばと、日が昇る前から剣道場に籠り、ひたすら剣を振っていた。
昔からそうだった。元々、父は私に精神修養として剣を教えていた意図が大きかったというし、私自身も剣から受けた影響は大きかったと思っている。事実、剣を振っている間の私は、落ち込んだり、後ろめたくなってしまった気持ちを、竹刀が風を切る音と一緒に、自分の中から弾き出しているような、そんな感覚でいられた。
だが、今朝はその限りではなかったようで、どうにも気持ちが一向に晴れてくれない。続けても無駄そうだと悟ると早々に切り上げ、顔を合わせづらいのでそろりと部屋に戻ってみれば、書き置きには『先に出る』との表記で、またも肩透かし。さっさと汗を流し、朝食を終え(一応探したが食堂にもいなかった)、早々に教室に行っておいて、居眠りしないよう少しでも休んでおこうと思った時だった。
「ねぇねぇ、篠ノ之さん」
「……何だ?」
SHRの時間が近づくにつれ、程よく賑わい始める朝の教室。両の瞳を爛々と輝かせ、喜色満面に話しかけてくる彼女は、はて、名前は何だっただろうか。流石に昨日の今日で、ただの一度も会話していないクラスメイトを覚えているはずもなく、ようやく眠気に身を任せられそうだった私は若干の不機嫌を隠す気も起きず、胡乱げに顔を向ける。そして。
「篠ノ之さんって、篠ノ之博士の妹さんだって、本当ッ?」
あぁ、やっぱりか、と辟易する。いつかは来るだろうと、思ってはいたけれど。
「……あぁ、あの人は、私の姉だ」
「わぁっ、じゃあ本当に本当なんだッ!!」
「すごっ、ウチのクラス、有名人の身内が2人もッ!?」
「ねぇねぇ、普段の篠ノ之博士ってどんな感じなのッ!?」
聞き耳を立てていたのだろう、周囲の生徒たちが一斉に話しかけてくる。はっきり言って鬱陶しい。下手に嘘や誤魔化しで長引かせても、と思って素直に返答したが、これは早まったかもしれない。
女子特有の“暗黙の了解”というものは実に多岐に渡っているが、結局のところは“白けさせる=悪”という点に帰結する。過去の交友関係が広くも深くもなかった私でも、それくらいは知っている。今ここで彼女たちを強く突っぱねようものなら、この先、長らくの孤立は間違いないだろう。そうしてしまいたい衝動には、激しく駆られているのだけれど。
そんな私の葛藤も間もなく限界を迎え、彼女らを黙らせようと盛大に声を張り上げる為に大きく息を吸い、勢いのままに机を叩こうと拳を強く握った時。
「――あら、そういう意味でしたら、ここに“3人目”もいますけれど」
凛と教室に響く声。いつの間に来ていたのやら、昨日と変わらず嫋やかな微笑みで、セシリア・オルコットがそこにいた。
「イギリスのディアナ・ウィリアム夫妻と言えば、聞いたことがある方もいらっしゃるのでは?」
「あ、ニュースなんかで見たことある。宝飾・アパレル業界中心に色んな事業展開してるって」
「えっ、あのブランド、セシリアさんの実家が経営してるってこと? 超お嬢様じゃん」
「ふふっ。私のグラビアの仕事は、お母様の商品の宣伝も兼ねておりますの」
上手い具合に彼女の方へクラスメイト達の意識がシフトしていったのに密かに安堵し、ぶつけどころを失くした握り拳を解除して、完全に噴きこぼれる寸前だった身体の強張りを解除する。
どれほどの好成績を修めても『流石はあの人の妹さんだ』。逆に、成績を落とそうものなら『あの人の妹さんなのに』。認めてもらうためだけではないにしても、報いて貰えない努力ほど空しいものはないのだと痛感させられた瞬間に、この“篠ノ之”という名前を、好きになれなくなった。誰もが私を見ながら、私を見ていない。私を通して、あの人しか見ていない。これでは、私は。
(幽霊も、同然じゃないか)
机上で腕を組み、顔を突っ伏す。残り時間は少ないが、少しでも眠っておきたい。眠ってしまいたい。そう思った瞬間に予鈴が鳴り、織斑先生が来室。あれだけ姦しかったクラスメイトたちがあっという間に着席し、しんと静まり返る室内で1人舟を漕ぐような真似が出来るはずもなく、致し方なく姿勢を正して待つ。
やがて、後数分で始業ベルが鳴ろうという頃。
「……あれ、ひょっとして、遅刻?」
「遅刻ではない。が、今後は5分前行動を心がけるように」
「はい、織斑先生」
余りに厳粛な教室内の様子に驚きながらそそくさと入室する一夏の着席を合図に、鬱々な2日目の学園生活は始まった。……何をしに行っていたかは知らないが、先ほどの騒ぎの場に一夏がいなかったことには、少し、ほっとした。
良くもなく悪くもなく平均的。現代文・古文はそれなりに得意なので、大抵は中の上、調子が良くて上の下。私の学力は、大体そんな感じ。“蛙の子は蛙”とは言うけれど、“鳶が鷹を生む”こともあるだろうし、その逆もまた然り。悲しいかな、私はその後者であるようで、ましてやつい先日までごくごく普通の中学に通っていただけの15歳が、ISに関する専門的な知識など持ち合わせているはずもない。
今日も今日とて、板書だけはちゃんととっておいたものの、IS関連の授業はさっぱり解らなかった。元々、志望して
それだけに、妙に気になることがある。
(一夏はどうして、あぁまで真剣に学べるんだ……)
同じような境遇であるはずの一夏は昨日の様子を横目で見て居た限り、四苦八苦しながら辛うじて食らいつこうとしているようだった。休み時間の度に教科書を開き、真面目に板書のノートへ書き足している横顔は、その、悪くはなかったが。
兎も角、昨日に比べて、今日の授業中の一夏はどこか生き生きしているように窺え、見るからにモチベーションが改善されている。ノートの上を軽快にペンが走り、黒板と机上を行き来する瞳には昨日まであった筈の曇りや陰りの類が見受けられなかった。
昨日の放課後から今朝にかけて、何かがあったのは間違いない。最初はオルコットを怪しんだが、食堂で『決闘が終わるまで援助は受けない』と言い切っていたのを思い出す。となれば一体、誰が。
そう思うと、確かめずにはいられなくなり、放課後になるや否や、嬉々として教室を出て行った一夏の後をこっそりと追いかけ。
「ここは、確か、整備管理棟?」
迷うことなく真っ直ぐにやって来たのは、校舎の隣、アリーナとの間に建つ施設。確か、学園が保有するIS及び周辺機器の全てを管理している場所だったはずだが。
呆然と見上げている間にもぐんぐん奥へと進んでいく一夏の後の慌てて追う。すると。
「……あの人は?」
ズラリとISが立ち並ぶ格納庫らしき場所、そのど真ん中で、一夏は誰かと話している。草臥れたブルゾン姿からすると、どうやら整備員のようだが。
「――あなたも、カデンソンさんに何か用事?」
「んなぁっ!?」
「っ、ご、ごめんなさい。びっくり、させちゃった?」
と、全く意識していなかった為、突然の背後からの声に過剰反応してしまい、跳ねるように距離を取って背後を振り返る。そこには、色素の薄い空色の髪に、下フレームのみの丸い眼鏡をかけた女生徒がいた。
「い、いや、なんでもない。それで、カデンソン、というのは」
「今、織斑くんと話してる人。
専、用機、だと? 確かに、世界唯一の男性操縦者である以上、用意されてもおかしくはないが、2日目にして早くもか?
改めて視線を向ける。山吹色の髪に琥珀色の瞳をしている彼は、柔和な微笑みでコンソールを操作しながら、一夏との会話に華を咲かせている。一夏も全く気兼ねしていないようで、私の知る頃のような、気を許した表情を浮かべていた。
素直に、羨ましいと思った。もし、もしもだが、私がISに造詣が深かったなら、あるいは、操縦者としての実績が少しでもあったなら、あそこにいたのは、私だったりしたのだろうか。そんな現金な考えで、あれだけ忌避していたISに平然と関わろうしている浅はかな自分に嫌気がさす。
「昨日、彼の勉強を見てあげたって言ってた。多分、その時に懐かれたんだね……何か、急ぎの要件? 整備とかなら、私でもちょっとは解るけど――」
「あっ、ま、待てっ」
「――……無視は、酷くないかな。やっぱり、私なんか……ううん、何百回裏切られても、だ。頑張ろう」
格納庫の奥へと向かって行く2人の後を追いかける。何やら後ろから聞こえた気がするが、構っている暇はない。見つからないよう物陰を経由しながら追いかけて行けば、何やら自動扉の向こうに消えていくのを見て、慌てて走り出すが間に合わず、致し方なくどうにか聞き取れないかと扉に耳を当てるものの。
「ぬぅ、全く聞こえないか……」
かなり分厚い扉のようだ。覗き込めるような窓も一切ない。周囲の壁を無駄に叩いたりするものの、当然ながら全く反応があるはずもなく、そのまま暫く扉の前で張り付いたままでいると。
「――つけの練習相手が、ここにさ」
「――んなっ!?」
「……何やってんだ、箒?」
突然扉が開き、バランスを崩して室内へと倒れ込んでしまう。咄嗟に両腕を突き出し、なんとか顔の直撃を免れながら見上げてみると、ニヤつきながら(彼女にはそう見えている)こちらを見下ろしているカデンソン整備主任と、何やら大きなゴーグルらしき機械を外しながらぽかんとこちらを見ている一夏の顔があった。
「篠ノ之さん、だよね。ちょっと、付き合ってやってくれるかな、一夏君に」
「な、何を――」
屈みこみながらそう尋ねてくる顔がどうにも胡散臭く見えて、咄嗟に突っぱねそうになって。
「―――彼にいいとこ、見せたいんだろう?」
その小さな呟きに、全てが止まった。なんだ、その言い方は、まるで。息を呑み、動きを止め、呆然とする私を見て、カデンソン主任はゆっくりと立ち上がり。
「一夏君、場所を移そう。ジャージとかは持ってるかい?」
「はい、持ってますけど、何処に行くんですか?」
笑みを深めて、こう続けた。
「剣道場、さ」
すみません、前回”前後編”と言いましたが、もそっと続きます。
UA40000・お気に入り登録600人突破、有難う御座います。日間ランキング6位の表記には目を疑いました……(;゚Д゚)
来月半ばに資格試験本番を迎えておりますので、今月中にもう1話更新したら、試験終了までそちらに集中したいと思います。それまでにプロットを書き溜めておいて、終わったらガバーっと更新したい所存。
それでは、また近い内にお会いできることを願って。
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