ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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 大変遅くなりまして申し訳ありません。

 色々ありました。
 人生初の尿管結石の激痛に悶絶して救急車で運ばれたり、入社4年目にして初の後輩が出来てしかも異性相手の新人教育に頭を悩まされたり、従妹の結婚式の司会を任された上に当日の朝になって体調崩れて栄養ドリンク決めながら乗り切って身内だけの二次会で『青コォオオオオオナァアアアアアアアアッ!! 新婦○○ォオオオオオオオオオッ!!』とか思いのままはっちゃけたり、地方出張で予約してたホテルに『予約されてないんですけど』とか言われたり、連休中に名古屋一人旅で”登山”してきたり。

本編どぞ。


Straight Jet Ⅱ

良かったんですか? 一声くらい、かけてあげなくて。

 

―――……気づいていたか。

 

まぁ、いらっしゃるだろうなぁ、とは。気配だだ漏れでしたし。

 

―――ウチの愚弟は、全く気付いていなかったようだがな。

 

それだけ、目の前の相手に集中しているって証拠ですよ。今ここで”常在戦場”を説くのは、流石に野暮かと。

 

―――ふんっ。……見込みはあるのか?

 

十分に。少なくとも()()()()()()今の彼にしてやれることは全部。

 

―――成程。つまり、これで負けても自己責任、という訳だ。

 

相変わらず辛辣ですねぇ。全力を尽くした結果なら、勝敗がどうあれ、それは称賛されるべきものですよ?

 

―――そうだな。()()()()()()()()()()()、な。

 

あぁ、懸念しているのはそこですか……確かに、そればっかりは見てみないと、ですね。

 

―――だろう? ……まぁ、精々ここで愉しませてもらうとするさ。

 

これは、嫌な参観日になりましたねぇ。後の三者面談が怖いなぁ。

 

 

 

 

 始まりを告げる号砲を鳴らしたのは蒼き雫(Blue Tears)の主武装であるエネルギーライフル"Star Light Mk.III"だった。

 

 ガンマンの早撃ちの如く()()()銃身が真っ直ぐ前方へ向けられたと同時、放たれた蒼い閃光が白式へと迫る。それを視認したと同時、一夏は咄嗟に背後へと身体を反らせながら回避を試みるが、流石に間に合わず右胸の装甲へ被弾、その勢いのまま地面へと落ちていく。

 

(うぉッ、速ッ!! )

 

 実物の光線を見るは勿論、味わう機会など今までの彼の人生にあった筈もなく、目の当たりにしたその一撃は、正直”視えなかった”と言うに等しかった。

 

(見てからじゃ遅いッ、白式が教えてくれた時点で動くくらいでないと追いつけないッ!!)

 

 墜落寸前でスラスターを点火、落下の勢いのままに方向を変え、地平を這う様に距離をとる。が、射撃武装を得意としている彼女がその程度を予想していない筈もなく、こちらの回避先を読んで正確に撃ち続けてくる。白式の警告に従い、慣性に持っていかれそうな身体を強引に振り回してどうにか回避し続けるが、真っ芯を捉えられていないだけで、既に数発の被弾によりSEは確実に削られていた。

 

 端的に言えば、IS同士の戦闘はこの数値化されたSEを0にすれば勝利であり、あまりに強烈な一撃を浴びると”絶対防御”という搭乗者の安全を守る為のシステムが作用、SEが大幅に削られてしまう。どうやら現時点ではクリティカルヒットは辛うじて貰っていないことが解るが、それでもこのままでは時間の問題だろう。それに、何より。

 

(彼女はまだ、ライフル()()使ってない)

 

 これがBT兵器により数倍に膨れ上がるというのだから、堪ったものではない。しかもアリーナ内には身を潜められるような遮蔽物など1つとしてなく、まともに呼吸を整える暇すらも許されてはいない。ほんの僅かでも動きを単調にしたなら、その瞬間に“鴨撃ち”が始まるだけだ。これは、思っていた以上に厳しい。

 

「何はッ、ともあれッ」

 

 1週間前に啖呵を切ったように、手持ちの札でどうにかするしかない。直ぐ様、展開可能な装備の一覧を表示するよう白式に要請して。

 

(……本当にこれだけなのか)

 

 前もってカデンソンさんから知らされてはいたが、改めて目の当たりにすると、その少なさに唖然とさせられる。まぁ、だからこその“この1週間”な訳だが。

 乾き始めた唇を舐めながら、《名称未設定》と表記されている近接ブレードを呼び出す。キィン、という高周波のような音と共に右腕から粒子状の光が溢れ、徐々に形を成していく。やがて現れたのは刃渡り六尺ばかしの巨大な刀。

 迫りくる光線を、身を翻しながら躱す。見上げる先、中空に佇む彼女まで目算約30m。今の自分には数kmにも思えてしまうような遠い距離だが。

 

「一丁、やってみますか」

 

 まずは、言われた通りに、だ。

 刀の柄を強く握りしめ、丹田に力を込める。蒼穹の中に佇む青藍のドレスを纏った淑女を見上げて、自分を鼓舞するようにニィと笑ってみた。ぎこちなくなっているんだろうなぁと思いつつも、ちょっぴりワクワクしている自分がいることに気が付いて、それが妙におかしくて、笑えた。

 

 

 

 

(上手く躱しますわね。動体視力はなかなか)

 

 手を抜いている訳ではなかった。『この程度で終わってしまうならそれまで』という積りで、まずは主武装のみでの様子見から入ることは、試合を始める前から決めていた事だった。そしていざ、蓋を開けてみれば―――成程、卸したての一張羅でこれほど”踊れる”のならば、今後の成長次第では面白く化けてくれるかもしれない。少なくともこの短時間で、そう期待させるだけの素養(もの)は見せてくれた。

 で、あるならば。

 

「奏者を増やしても大丈夫そうですわね」

「―――げっ」

 

 まずは軽快に三重奏(Trio)から。両肩部に格納されている独立稼働ユニット“ブルー・ティアーズ革新型試作機(Bluetears Innovation Trial)”を2機、稼働させる。やはりしっかり下調べはして来ていたようで、私の両脇に待機させた2機を見た瞬間に、彼は表情を苦々しく曇らせていた。

 

「さぁ、激しく華麗に、踊りましょう?」

 

 挟みこむようにBIT2機を左右に布陣、彼を“交点”とするようにその銃口が鳴る。咄嗟に直上へ逃げる彼を狙い、SL Mk.III(ライフル)で追い打ちをかけるが、高くアーチを描くような軌道で距離を取りながら回避してみせた。これは少し、予想外だった。

 

(近接武装を展開しておきながら、更に距離を?)

 

 あの日本刀らしき武装を手にした時点で、多少の被弾を覚悟で攻めに転じる気になったのかと踏んだのだけれど。それとも、何か他に意図があるのだろうか。

 

 勢いのままアリーナへ着地し、両脚を大きく広げ、地に伏せるように低く体勢を落としているのが見える。陸上のクラウチングスタートを思わせる、力を溜め込んでいる姿勢。動きが止まった瞬間に数発叩きこんでみるが、振るった刀に全て弾かれた。そこで、あぁ、成程と合点がいった。

 

()()()()()()()()()()が狙いですか。素人なりにしっかり考えてきていますのね)

 

 ISの搭乗者はハイパーセンサーによって360度を同時に見渡すことが可能であり、本来であれば『死角』という概念は存在しない。しかし同時に、ISの操縦に必要なのは何よりも『想像力』であり、幼少期から無意識の内に積み重ねてきた“ヒトの視界”への慣れがその邪魔をする。要するに、『性能として可能か』と『それを実行に移せるか』は全くの別問題なのだ。

 相手からの距離を取れば必然、それだけ広い視界が確保出来る。同時に、自分が地面に立つことで、警戒しなければならない範囲が360度から180度になる。そして、近接武器を手にしておきながら距離を取ったということは。

 

(これは、()()()()

 

 そう判断したと同時、純白のISがその翼を広げ、刀を顔の横で水平に構えた。引き絞られた弓の弦と、そこへ番えられた矢のようだと、そう思った。

 その瞬間を見逃すまいと、スコープを覗き込む。こちらを真っ直ぐに睨め付ける双眸は、猛禽のそれを彷彿とさせた。

 そして。

 

 

 若鷹が、蒼穹(そら)へ、飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ぶっちゃけ、近づいて殴る以外の選択肢はないね。

 

 少々時は遡って。

 箒との実戦訓練が始まってから数日が経過し、徐々に竹刀での立ち回りを思い出してきた頃の放課後。呼び出されたVRルームにて、カデンソンさんはあっけらかんとそう言った。

 

「この数日でオルコットさんの過去の戦績とか映像データを調べてみたんだけど、一夏君。前に彼女の公式PR動画見たって言ってただろう? あの時、自分が何て言ってたか覚えてるかい?」

「え? えっと……戦闘っていうよりは、狩猟っぽいなぁ、と」

「そう。それ、あながち間違いって訳でもなさそうなんだよね。じゃ、ゴーグルをかけてみてくれるかな」

 

 笑みを深めて、ジェスチャーでゴーグルを着用するように促してくるカデンソンさんに従う。すると。

 

「―――うぇッ!? ちょっ、えぇッ!?」

 

 殺風景だったVRルームだったはずがいつの間にか、円形のだだっ広いアリーナステージのど真ん中に、自分は立っていた。慌てて見渡してみれば、広さは半径100mほどだろうか。肌を撫ぜる風の匂い、足裏が転がす砂利の音、何もかもが現実のそれと遜色がない。つい、勢いのままゴーグルを外して視線を向けると、にんまりと笑みを深めているカデンソンさんがそこにいた。

 

「これぞ、ウチのVRルームの真骨頂さ。ほら、ゴーグル戻して」

「は、はい」

 

 衝撃を拭い切れぬままにゴーグルを戻す。するといつの間にか、アリーナの中空に真っ青なISの姿があった。

 

「今から君に、オルコットさんの戦闘データをVR化した映像を()()()()()()()()()()見せるから、改めてよ~く観察してみるように」

「観察って―――うぉわああああああああああああああああああああああああッ!?!?」

 

 直後、頭上の蒼き雫(Blue Tears)が前触れもなく動き出しBITを展開、多分そこに相手がいるんだろうなぁ、って位置―――具体的には自分の背後あたりの空間へ向けてビームを撃ちまくり始めた。VR映像だと解っていても目の前を轟音と共に光線が通り過ぎていけば、そりゃあ普通にビビる。……ビビるよね? 俺、別におかしくないよね?

 

「一夏く~ん? 映像なんだから、避けても意味ないぞ~?」

「そんなこと言われましてもッ!!」

 

 気圧されちゃうんだから仕方がない。距離を取ろうにも蒼き雫(Blue Tears)がどう動くか解らないものだから、下手に動くと却って射線上に出てしまうんじゃないかと思うと、結局動けそうになくて直立不動の立ち往生。暫く腰に力が入らないまま恐る恐る見上げていると上空へと移動していったので、そこでようやく少しだけ余裕を取り戻し、映像の彼女の動きを仰いでいると。

 

(―――あれ?)

 

 自分がネットで調べて出てきた映像は、それなりに編集が加わっていたとはいえ、基本的に“彼女の対戦相手の視点”からの構図が多かった。その為、蒼き雫(Blue Tears)の長射程とBT兵器による“意識外からの不意打ち”のイメージが強く焼き付いていた。

 だが、改めて、その様子を“外”から見てみると。

 

「……カデンソンさん」

 

 振り向いて、視線を向ける。後ろでこっちの様子を見ていたカデンソンさんは、何かを期待するような目を自分に向けていて。

 

 

 

「ひょっとして、()()()、ですか?」

「―――勘のいい生徒は大好きだぜ、一夏君」

 

 

 

 それはもう見事なくらい、ニヤリって感じの笑顔だった。

 

 

 

 




 どうも、お久しぶりです。Geroge Gregoryです。

 少々短めですが、キリの良いところまでで更新とさせていただきました。あまり長い間放置してしまうと、読者の皆様をお待たせしてしまいますし、何より私自身のテンション維持にも関わります故に。

 IS同士の本格的な戦闘描写は今回が初めてですが、いかがでしょうか。アニメを見直しながら私なりに味付けしてみましたが、皆様のお気に召していただけることを願うばかりです。

 気が付けば1話投稿からすでに1年以上が経過しました。投稿当初はこんなにも多くの方からご感想を、そして同時にこんなにも多くのラチェクラファンから好意的な反応を頂けるとは露ほども思っておらず、嬉しさのあまり張り切っちゃった結果が当初の高速更新だったりします。あの時期は丁度、仕事もそこまで繁忙期ではなかったのもありますが。

 この短期間でまぁ~色々ありまして。大体前書きに書いてある通りなんですが、特に久し振りの救急車搬送は堪えました……尿管結石は”男が人生で味わう可能性のある痛み”トップ3に入るそうです。他の2つが気になるところ。皆様も気を付けましょう。食生活、特に水分摂取が重要だそうですよ。

 さて。この“Straight Jet”は然程長引かせる積りはありません。予定通りならば残り2話くらいで終わらせます。早いところ“豆粒チャイナタンク”登場まで持っていきたいところ。色々と脳内メモに残してあるネタは、やはりメインヒロイン5人が揃っていなければ書きづらいものばかりでして。かといって本編を疎かにしてしまっては本末転倒なので、今しばらくは丁寧に“下拵え”させて下さいませ。  

 それでは、また近い内にお会いできることを願って。

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