ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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 おし。31日の24時だから月1更新はできたな?な?


Hit And Run Ⅰ

――――師父(センセイ)のこと? えぇ、いいわよ。大歓迎。いくらでも話してあげる。

 

 

 

 えぇ、そうよ。師父(センセイ)。体術の、ね。知ってた? 若い頃の師父(センセイ)って、お世辞にも背が高い方じゃなくて、自分よりも何倍も大きな相手とばかり戦ってきたんだって。

 

 大きな身体ってね、それだけで十分に強いのよ。内包している質量も、筋量も、そこから生み出される慣性も遠心力も、全然違うの。それに、身体が小さいとさ、それだけで嘗められるし。今でこそ小虎(シャオフー)なんて呼ばれるのにも慣れたけど、当時のアタシにとっちゃ不名誉以外の何物でもなくてさ。ホント、最初に言い出したヤツ、どこの誰なのかしら……今からでも見つけ出してとっちめてやりたいもの。

 

 最初はね、アタシも「小手先の技術なんて~」って毛嫌いしてたんだけど、師父(センセイ)は"小ささを武器にできる方法"をたっくさん知ってた。何度も何度もひっくり返されてる内に、バカになんてできなくなったわよね……なまじ、それまで"それなりにやってこれちゃった"からさ、調子に乗っちゃってたのよ。なんでもできる人なんて、ありえないってのにね。

 

 そう。考えてみれば、当たり前なのよ。なのに、いつの間にかアタシたち皆が勘違いしてたの。『師父(センセイ)なら』って。だから、最後にあんな……あ~やめやめ、この話は後回しね。編集するにしたって、いきなり暗い話から始められたら、聞いてる方も面白くないでしょ?

 

 それじゃ、改めて。高1のアタシが数年振りに日本に戻ってきてた時にね――――

 

 

 

 少なからず浮かれ気分だった新入生たちがIS学園の濃密なカリキュラムの洗礼を乗り切り、5月の連休を経てガス抜きをしつつもその表情から余裕の二文字を消し去った頃。彼女たちの話題には「クラス代表戦」というフレーズが徐々に混ざり始めていた。

 

 各クラスの代表者によるトーナメント戦を実施し、互いの切磋琢磨を促すという目的で開催されているこのイベントであるが、その実、在校生たちの興味は優勝したクラスに用意されている"破格の賞品"にのみ注がれているようだった。

 

「学食のスイーツ食べ放題?」

「そうッ!! そうなのだよ織斑君ッ!!」

「はぁ……」

 

 ズビシッ、と人差し指をこちらへ突き付けながら普段に比べて数倍増しのテンションでそのようにのたまった彼女は、確か相川清香さんだったか、と一夏は記憶を辿りつつ生返事をした。

 

 言わば、馬たちの意思統一を図るためのニンジン、なのだろう。代表者が優勝したクラスには学食のデザートメニューが半年間無料という、年頃の乙女たちには夢のようなフリーパス権が与えられるという。そりゃあ血気盛んにもなるというものだろう。だが、そこまで甘味が好きという訳ではない一夏自身は、そこまで乗り気にはなれずにいた。

 

 確かにここの食堂のクオリティは高く、それはデザート類とて例外ではない。トレーニング後に糖分が欲しくなって何度か食べたこともあるから、「あたしらのためにも頑張ってもらわなきゃ」なんて彼女たちが躍起になる気持ちも解らなくはなかった。……そういう意味では、色々な意味でお世話になりっぱなしの箒やセシリアたちへのちょっとした恩返しくらいには、なるのかもしれない。

 

 箒には代表決定戦の後も引き続き近接戦闘の鍛錬に付き合ってもらっているし、この数週間で当初からは比べ物にならないほどまで射撃の腕を鍛えてくれたセシリアにはすっかり頭が上がらなくなっていた。そうなってくるとつい敬語を使ってしまいがちなのだが、彼女の方から「もっとくだけた態度で接してくださいまし。名前も呼び捨てで構いませんわ。そんな他人行儀な段階はとっくの昔に通り過ぎてしまったと、私は思っているのですけれど?」なんて言われてしまっては、応えないわけにもいかない。実際、こんなに"黒猫"に関して思う存分()()()人には会ったことがなかったし。

 

 何にせよ、期待されている以上は頑張ろうと思うし、自分自身、鍛錬の成果がどれほど出ているのかどうか、知りたくもあった。以前よりもずっと白式が身体に馴染んできたし、武器の取り扱いにも慣れてきた実感がある。特に"吹雪"はまた実戦で使ってみたい。

 

 そして、何よりも。

 

()()()を、もう一度)

 

 どこまでも広い青空を、思うままに。その想いは募るばかりで、うずうずして仕方がないのだ。剣道場で竹刀を振るっていても、訓練場で引鉄を引いていても、心はどこか、あの彼方へと向かっている。いつだったか、束さんが瞳をキラキラと輝かせて「あの向こうへ行ってみたいんだッ!!」とはしゃいでいた時の気持ちが、今なら痛いほど解る。あの人はずっと、あの頃からずっと、きっとどこかで今も変わらず、あの向こうにしか、興味はないんだろうなぁと、そう思う。

 

「まぁ、やれるとこまで頑張ってみるよ」

「ちょっ、頼りないなぁもぉ」

「私たちのスイーツタイムのためにも頑張ってよ織斑君ッ」

「それは勿論。俺だって、勝ちたいもの」

 

 嘘はない。勝てば勝った分だけ俺の飛べる時間は増える。VRルームの臨場感もそれは凄いものではあるけれど、あの日あの瞬間にはどうしても負ける。自分が風と一体になる。使い古されたフレーズだけれど、いざ体験してしまうとそうとしか言えなくなるのだから、不思議だ。

 

 理由としては不謹慎かもしれないが、そもそもクラスメイトたちも完全に私欲で囃し立てているのだし、負けたところでデメリットがあるわけでもない。全力で挑んで負けたのならそれは仕方のないことだし。そう思いながら、詰め寄ってくる彼女たちを落ち着けようと苦笑いをしながら立ち上がって。

 

 

 

「―――このクラスの代表者はいるかしら?」

 

 

 

 教室の外から、妙に耳に馴染む声が聞こえた。勝気で、自信に満ちていて、少し前までは毎日のように耳にしていた声。自ずと視線はそちらへ惹かれる。少し大きめのリボンでツインテールを結んだ栗色の髪。がっちりと腕を組んでの仁王立ちはほんの少しでも身体を大きく見せるためらしいが、相変わらずまともな効果を発揮していないらしい。ニヤリと不敵に吊り上がる唇の隙間から覗く八重歯も、煌々と輝く翡翠のような碧眼も、何もかもが別れたあの頃のまま。

 

「やっほ、一夏。元気してた?」

(りん)……」

 

両親の離婚をきっかけに祖国へ帰ったはずのもう1人の幼馴染が、そこに立っていた。

 




サブタイトルの元ネタ
『ラチェット&クランクFUTURE2(PS3)』のスキルポイント
“ヒットエンドラン(Hit And Run)”
 ベルリニウス・セクターの宇宙空間にて、クァンタム・リフレクターを展開したアフィリオン(戦闘機)の体当たりで敵機を10体撃墜すると獲得できる。
 FUTURE2は惑星以外にもやりこみ要素が至る所に隠されているので、とても冒険のしがいがありました。


 どうも。作者のGeorge Gregoryです。

 たいへん短いですが、最低でも月1更新だけは守っておかないといつまでも放置しかねませんので、今回はこの辺にて。

 仕事の忙しさが本当に頭おかしいレベルになってきて転職を真面目に視野に入れている平成元年生まれのアラサーに皆元気を分けてくれ(/・ω・)/


 それでは、また近い内にお会いできることを願って。
 よいお年を。そして、あけましておめでとうございます。

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