ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
コレクションを売り払っただけで部屋が倍は広くなり、この数日だけで6万も儲かりました。
……まぁ、購入した時の定価はその数倍だった訳ですが。収集癖持ちの性です(白目)
カリフォルニア州バーバンク出身。最終学歴不明(大卒資格所持)。
4年前、汎用型機動力パッケージ"
男性の活躍を快く思わない
『
そう、彼は『やりたいことがあるから』と、推薦状を手にこの学園へと赴任したという。
『後進育成のためだ』だとか、『学園のアーカイブなら世界中の論文が直ぐに読めるからだ』だとか、色々とそれらしい憶測が飛び交ってはいるものの、彼自身の口からそれが明かされたという話は未だ耳にしたことが無い。事実として、彼が整備主任となってからの整備科の成長には目覚ましいものがあるし、これだけ偏った男女比の環境下でありながら彼の浮いた噂や悪評が流れたことは殆どない。精々が新聞部の根も葉もないゴシップや、男嫌いの女生徒たちがでっち上げた嘘八百程度のもので、そのどれもが七十五日を待たずして霧散していった。それくらい、彼の職務への実直さや面倒見の良さを誰もが好ましく思っているのだ。
故に、私も気づかぬ内に彼への警戒を緩めていたのだろう。日頃から仕事でそれほど関わることもなく、弟の機体を彼が担当すると最初に聞いた時も『大丈夫だろう』とほぼ無条件に信用していたし、実際に彼の整備士としての仕事は完璧と呼んで差し支えないものだった。搭乗時間が2時間にも満たないばかりか、剣道からも年単位で離れていたズブの素人を、僅か1週間で代表候補生相手に善戦させる。ひょっとすると、指導者としてさえ自分よりも優れているのではなかろうか、と背中にほんのり冷たい汗を感じながら、教室へと向かう朝の廊下にて、改めて彼に関する資料に目を通して、思う。
(あまりにもまっさらすぎる)
親類なしの前科なし。補導暦ばかりか交通違反の1つも、逆に表彰暦すらもなし。決してありえないことではないし、悪いことでもない。なんなら自分たちも親類に関しては似たようなものだ。
だが、これだけ綺麗に整えられてしまっていると、却って“細工”の可能性を疑わない訳にもいかない。
(間違いなく“協力者”がいる)
となると、俄然怪しいのが身元保証人の『
何にせよ、悪意こそ感じられないものの、手放しに信用するのもはばかられるという、なんとももやもやしたグレーゾーンに、彼はいるわけだ。
(悪人ではない。それだけは確かだ。だが)
どうにも第六感が『あの男には何かがある』と囁いてならない。過去に何度もこれが働いて窮地を乗り切れた実績があるが故に、簡単に心配無用と切り捨てることができない。教師でありながら学があるとは言えない私だが、腕っ節と“人を見る目”にはそれなりの自信があるのだ。他ならぬその“目”が、彼を完全には信用しきれないと警鐘を鳴らしている。
(一夏に何か……いや、あの試合の時、Aピット内で私も白式の稼働データは確認している。だからこそ『噂に違わぬ仕事ぶりだ』と思ったんじゃあないか)
なんということは無い、喉に魚の小骨が引っかかっているような、そんな小さな違和感。時折、こういう自分が嫌になる。疑っている内は敵は見つかるが、信じなければ味方は増えない。そう解ってはいるものの、大切に抱えてきたものは、いつの間にやら随分と私の中で大きくなってしまっていて。
(ままならんな)
いい年頃なのだから、そろそろ良縁の1つでも結んでこいというのに。姑としては多少意地の悪い役回りになってしまうかもしれないが、基本的にあいつの男女交際には賛成しているのだ。妙に異性にモテるようで、鈍感なのかわざとなのか、本人はその好意に応える気配が全くない。篠ノ之なんぞあれだけわかり易く嫉妬心を剥き出しにしているし、小学校後半から中学時代には家族ぐるみで外堀を埋めに来た猛者もいたではないか。……まぁ、それだけ仲睦まじい姿を見せられていただけに、あの別れはあまりに唐突で、少なからず衝撃だったのだが。
そう、確かあの娘は別れ際に、結構な爆弾を置いていった覚えがある。あいつ自身にその自覚はないのだろうけれど。そんなことをふと思い出して。
『───』
「……む?」
思い浮かべていた声が自分の担当クラスから聞こえてきて、『あぁそういえば』と思い出す。今日からだったか、と。
「やれやれ、さぞ舞い上がっていることだろうが」
ちょいと釘を刺しておかねばな、と改めて身なりを正し背筋を伸ばして、私は1-Aの教室の扉を開けた。
「久し振りね、一夏」
「鈴……本当に鈴なのかッ!?」
久し振りのその姿は、まるで写真からそのまま出てきたのではと錯覚する程に、別れたあの頃のままだった。
「思ってたより元気そうじゃない。女の子に囲まれてちょっとは参ってるかなと思ってたんだけど」
「まぁな。正直、居心地はいい方じゃあないけどさ」
「ふぅん。背、伸びた?」
「お前が縮んだんじゃないか?」
「ぬっ殺すわよ」
「ぶはっ」
「ふふっ」
茶化すような声色で、悪戯っぽい笑みを浮かべて下から顔を覗き込んでくる、この角度。不満げにツンと尖らせる唇の形。身長なんかでいじられて不機嫌になった時の眉間の皺の入れ方と、刺々しい声の低さ。思わず笑えてくるほど、何もかもが変わっていない。それが堪らなく、嬉しかった。
「凰鈴音。1年振りに帰ってきたわ。どう? 嬉しい?」
「あぁ。お前こそ、元気そうでよかったよ、
「そっ、そう。なら、良かった」
即答すると、面食らったようにどもってから、ほっと胸を撫でおろすようにする
「まぁいいわ。アタシ、今日から隣のB組だから、よろしく。お昼、一緒に行きましょう?」
「おぅ、そうだったのか。いいぜ。……あれ、お前ってISに興味あったっけ?」
というか、何故にこんな5月なんて中途半端な時期に転校を? 俺の記憶にある限りでは、彼女がIS関連のニュースなんかに興味を持っていたような覚えはないのだけれど。そんなことを考えながら尋ねると、鈴はじとっとした目つきで俺を見上げるようにしてきて。
「あんたのせいでしょうが(小声)」
「な、何だ?」
「べっつにぃ~……アタシ、中国の代表候補生なのよ。ここに来たのもそれが理由」
「マジか」
「マジよ」
そう、淡々と言いながら左手を掲げる鈴。手首に桃色のラインが入った黒いブレスレットが見える。恐らく、これが専用機の待機形態なのだろう。どんな機体なんだろうか。後でカデンソンさんに頼んだら調べてくれるだろうか。
「で、あんたの顔を見るついでに、このクラスにいるっていう
「喧嘩腰なのは相変わらずかよ」
「やるからには
「えぇと……あぁ、いたいた。セシリアー?」
室内を振り返り、見るからに俺の知己ってことで興味が湧いていたのだろう、こちらをじぃっと観察していたクラスメイトたちの中で、「私ですか?」と言わんばかりにきょとんと自分を指さしている彼女を首肯しながら手招きする。
「どうかしましたか、一夏さん」
「こいつ、凰鈴音って言ってさ。俺の幼馴染なんだけど、中国の代表候補生らしくて、同じ候補生のセシリアに挨拶しに来たって」
「まぁっ。それはそれはご丁寧に、ありがとうございます」
セシリアはぱぁっと表情を輝かせると、両手でスカートの裾を摘み上げて“いかにも”なお辞儀をして見せた。流石、所作が堂に入っている。
「同じ学び舎の仲間同士、仲良くして頂けると嬉しいですわっ」
「え、えぇ、よろしく」
多分、俺と同じように
「と、取り敢えず。アタシ、2組の代表になったから、今度のクラス対抗戦、
「あら。それはそれは。(一夏さんの指導を)頑張らなくてはいけませんわね」
「えぇ。精々、(
渾身のどや顔と共に目一杯胸を張って自分を大きく見せるポーズ。どことなくコアリクイの威嚇を彷彿とさせられた一夏は微笑ましさからニッコリと笑い、そこではたと気付き。
「―――あ。鈴。1組のクラス代表なら俺だぞ」
「―――はぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」
「―――うるさい。邪魔だ」
「―――え、千冬さ、へぶッ!?」
そして、ずっと教室の出入り口前を陣取っていたことに気付かず、鈴が張り上げた大声に我がクラスの担任が出席簿による真っ向唐竹割をお見舞いする結末は、自明の理であった。
補足説明
・『スパイロ・ザ・ドラゴン』(Spyro the Dragon)
1998年にInsomniac Gamesが開発したPS用ソフト。マリオ64などでおなじみとなった3DCG構成のフィールドマップを縦横無尽に駆け回るアクションゲーム。
主人公である小さなドラゴン・スパイロが火を吹いたり滑空したり体当たりしたり、とシンプルなアクションながら奥の深いゲーム性があり、作者もなまらやりこみました。
PS4にてHDリメイクもされたので、皆様も是非。
・Dan Johnson(1974-2006)
Insomniac Games社員。ラチェクラの開発にも深く携わっており、隠し要素や開放できるラチェットのスキン(見た目)、トロフィーなど、ゲーム内の随所に彼の姿が散りばめられている。生来、足が悪く、5作目『激突!ドデカ銀河のミリミリ軍団/Size Mutter』の開発中に不運な事故で亡くなっており、エンドクレジットの最後には彼の冥福の祈る一文が追加されている。
どうも。作者のGeorge Gregoryです。
補足説明の続きみたいな内容になりますが、カリフォルニア州バーバンクとはラチェクラの開発元でありますInsomniac Gamesの現所在地だったりします。"Spyro"の開発がVer.3までなのは、Insomniac Gamesがスパイロシリーズを担当したのが3作目まで、という部分に起因していたりもします。理由はその後のシリーズ作品の版権がソニーから他社へ移行しているため。
転職を決意しました。最近になって心療内科に通い始め、心が折れそうになるのを奮い立たせながら徐々にその準備を始めています。つきましては更新頻度が間違いなく落ちてしまいますので、たいへん申し訳ありませんが、皆様にはお待ちいただく時間が増えてしまうと思われます。アマとはいえ物書きのライフラークのですので、筆を折ることだけは絶対にありえません。どうか、今後とも気長にお付き合いくださいませ。
それでは、また近い内にお会いできることを願って
Twitterとリンクさせて更新報告/予告した方がいいですか?
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