ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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『Bohemian Rhapsody』を映画館にもう3回観に行きました。IMAX最高。
 はい、QUEENの大ファンです。保育園の送り迎えの車内BGMでした。
 おかげで意味も解らず洋楽を口ずさむ園児が出来上がり、保母さん方や小学校の先生方を大層驚かせたそうです。祖父母に面倒を見てもらってたから時代劇も大好きだったしなぁ……専ら、同年代のクラスメイトたちより年配の先生方との方が楽しく会話出来てた記憶があります。



Hit And Run Ⅲ

 昼休み。学生食堂にて。

 

「――――何よ。じゃあホントに代表候補生相手に善戦したっての?」

「あれは、善戦って言っていいのかな……気になるなら映像見せてもらえよ。アーカイブに保管されてるらしいし」

(きっと、彼女ですのね。“ツインテ豆タンク”さんは)

 

 会話から察せるほどの親密度の高さと身体的特徴から、その特定は難しくなかった。恐らく、いや、間違いなく、彼女が一夏さんが時折口にしていた小学校高学年~中学時代の女友達なのだろう。

 あの後、織斑先生の出席簿による制裁に悶絶した彼女は、涙目でビシッと一夏さんを指差しながら『お昼に食堂ッ!! いいわねッ!!』と言い残し、しかし「さっさと行け」とばかりにギロリと織斑先生に睨まれるや否や、踵を返して自分の教室へと戻って行った。

 

「へ、へぇ~、そ、そうなんだぁ~……直ぐにチェックしないと」

「で、いつの間に代表候補生になんてなってたんだよ。お前、中2の頃までISになんて一切興味ない風だったのに」

「聞きたいのはこっちだってのよ。いきなりテレビでアンタの顔を見た時、そりゃあもうビックリしたんだからね?」

 

 そして今、食堂の入り口でラーメンをトレイに載せたまま仁王立ちで自分たちを待ち受けていた彼女を連れ立って着席、こうしてことの成り行きを見守っている。

 学園に編入するにあたって、予め目を通していた資料の内容を思い出す。学園に既に在籍している、また、同期として入学する可能性のある各国の候補生のリスト。その中に、彼女の名前もあったのだ。

 凰鈴音。その名はここ最近になって、私たちの世代の間でにわかに広まり始めているものだった。ISに関わり始めて僅か1年でありながら、何の後ろ盾もなしに候補生の地位まで上り詰めた期待の新星。戦闘時の記録映像を何度か見たこともあるが、正直に言うなら“相手にはしたくないタイプ”だ。“あの動き”を相手取るには、とてもではないが()()()()()()()()()()()

 

(ですが、一夏さんのようなスタイルならば)

 

 鍛え方次第では十分に通用するだろう。元より彼のスタイルは剣道をベースにしている。となれば、まず打つべき手は。

 

(放課後、早速()()()ですわね……それにしても)

 

 話に花を咲かせる2人を他所に、密かに彼の隣を陣取り淡々と箸を動かしているようで、その実、視線を忙しなく動かしながらしっかりと耳を傾けている私の向かいの席のクラスメイトを見やる。やはりというか彼女、篠ノ之箒さんは、平静を装えないほどに動揺しているようだった。

 

(自分だけのアドバンテージだと思っていた『幼馴染』が自分以外にもいたと分かってショック、といったところでしょうか……まぁ、時期と年数からして『幼馴染』と呼んで良いのか、少々疑問はありますけれど)

 

 ここ数週間で、彼女とはそれなりに親交を深められたと思っている。気になる殿方が一緒で、既に宣戦布告も済ませたとはいえ、私は彼女との関係をただの“恋のライバル”で終える気は毛頭ないのだ。

 昼休みや放課後になる度に、一夏さんの特訓スケジュールに関する相談を理由に何度もお茶に招待し、自分が折れた方が早いと判断した彼女が渋々ながら応じてくれた時は、思わず彼女の両手を掴んではしゃいでしまい、目を白黒されてしまったのは今でも記憶に新しい。未だにじとっとした恨めしげな視線を向けられることが多いが、以前よりかはずっと警戒心を緩めてくれたように思う。

 そんな彼女であるが。

 

「い、一夏。そろそろどういう関係なのか、説明して欲しいのだが……まさかと思うが、つ、きあっている、という訳ではあるまいな?」

 

 どもりながらも割と棘のある言葉で尋ねる篠ノ之さん。視線を2人へと戻すと、反応は綺麗に分かれていた。

 

「べ、別に付き合ってるわけじゃないわよッ!!」

「そうだぞ。ただの幼馴染ってだけだ」

 

 凰さんは頬を赤らめながら食い気味に、一夏さんはニュートラルなまま否定。嗚呼、これだけで彼女の3年間の苦難やら煩悶やらが推し量れるというものである。またか。またなのか。

 

「箒が引っ越していったのが小4の終わり頃だったろう? 鈴とは小6の頃からの付き合いで、中2の終わりに中国に帰ってったから、丸1年振りになるのかな」

「……そうね。その通りね」

「? 何で睨んでるんだ?」

「何でもないわよッ!!」

 

 恨めし気な視線をふっと戻し、すっかり伸びきっているであろうラーメンを一気に啜る凰さんが、正直不憫に思えてならなかった。

 

「で、こっちが箒な。前に話したことあるだろ? 小学校からの幼馴染で、俺が通ってた剣術道場の娘」

「あぁ、この娘が……初めまして、よろしくね」

「う、うむ」

 

 凰さんは値踏みするような目つきでじろじろと篠ノ之さんを観察し、篠ノ之さんはそれに躊躇いながらも挨拶を交わす。友好的な雰囲気ではないのが目に見えているのに、良かった良かったと言わんばかりに微笑んでいるのだから、一夏さんに意図はなく、単に鈍感なだけなのだろう。基本的には好ましい人だけれど、こういうところだけは本当に宜しくない。篠ノ之さんだけでも大概だというのにこの人は。

 

「で、本題だけど、一夏」

「何だ?」

「IS、アタシが教えてあげようか?」

 

 ニヤッと唇を吊り上げながら問う凰さんに、ピシッと篠ノ之さんの方から何かがひび割れるような音がした気がした。成程、彼女が学園に来た理由、ひょっとするとそもそもISに携わるようになった理由も()()か。

 ガタッとテーブルを揺らがせながら、不安げな視線を一夏さんへと向ける篠ノ之さん。しかし、その心配は。

 

「そりゃ嬉しいけど、お前、2組の代表なんだろ?」

「えっ、えぇ、そうね」

「なら、答えはNOだ」

 

 断られるとは思ってもいなかったのだろう。目をしばたたかせながら、ポカンと口を開いてしまう凰さんを見て、篠ノ之さんもあからさまに胸を撫でおろし、私も笑い声がこぼれてしまうそうなのを耐えるが。

 

「理由を、聞いてもいいかしら?」

「これからクラス代表戦があるんだろう? なら、出来るだけ手の内は見せたくない」

「ふふっ」

 

 あまりに予想通りの返答に、堪え切れなかった。ギロリと睨まれてしまっても無理はない。甘んじて受け入れよう。

 

「それに、ISなら普段から箒とセシリアさんにみっちり教えてもらってる。油断してると痛い目見るぞ?」

「へぇ? 一般学生と、素人に追い詰められる程度の候補生なんかで大丈夫なのかしら?」

 

 恥をかかされた、とでも思ったのだろう。負け惜しみにしか聞こえないのでさして気にもならず、そのまま食事を続ける。篠ノ之さんも表情を若干顰めさせているが、言い返すほどではないとも思っているようで、口は噤んでいた。

 そして。何より。

 

 

 

「―――鈴」

 

 

 

 瞬時にして、周囲の空気が2度ばかり冷えたような、そんな錯覚。似たような威圧感を、この学園に来てから自分たちの教室で何度か味わった気がする。流石に血縁といったところだろうか。

 怒っていた。それはもう、怒っていた。誰が、誰に、だとかは、言うまでもないだろう。

 

「な、何よ?」

「お前、知ってるよな。何よりも、俺がされて嫌なこと」

「そ、れは」

「1回だけなら聞き流す。頭、冷やせ」

「っ……ご馳走様」

 

 話は終わりだ、とばかりに目を伏せて食事に戻る一夏さん。凰さんはバツが悪そうに黙り込むと、残りの麺を一気に啜り、丼を抱えたと思うと残ったスープを飲み干してトレイを持ち、席を立って行ってしまった。

 一夏さんが『されて嫌なこと』。聞いたことはないけれど、彼の人柄と、今の反応。想像するに難くなかった。そして、それを顕わにしてくれたのが、堪らなく嬉しかった。

 

「その、ごめんな、2人とも。空気悪くしちまって」

「お気になさらず。ですわよね、篠ノ之さん」

「あ、あぁ」

 

 頬を赤らめてもごもごと口を動かす篠ノ之さんの反応はたいへんに可愛らしく、また私も平静を装えているか自信がなかった。確かに彼は態とやっているのかと思えるほど自身への好意に鈍感ではあるが、決して空気が読めないわけではないし、何よりも。

 

「鈴も、普段はあんなこと言うヤツじゃないないんだけどさ。俺もついカッとなっちまったし……さっさとメシ食っちまうか。次、アリーナだろ。急がなきゃ」

「えぇ」

「う、うむ」

 

 そう言って苦笑しながら、すっかり冷めてしまった味噌汁を飲む一夏さんを見て、あぁ、やっぱり好ましい人だなぁ、と。自分の目に狂いはなかったな、と。私は、強くそう思い返した。

 

 

 

 

「何よっ、一夏のヤツ。こっちの気も知らないでっ」

 

 ズンズンと廊下を突き進む。険悪な表情なのが自分でも解る。それが証拠に、ひしめき合っているほどの廊下の人混みが、自分を境に綺麗に左右に割れていくのだから。

 やがて、そのまま人気のないとこまで来て。

 

「――――はぁ。やっちゃったなぁ、失言した。後で謝りに行かないと」

 

 自覚はあるのだ。何ということはない。短気は損気。それだけの話。言う通りだ。『身内を貶される』のは、何よりも嫌っていたではないか。

 

「取り敢えず、何にしても放課後か。まずは一夏とオルコットの試合ってヤツ?」

 

 一夏自身は認めていないし、私自身もあぁは言ったが、代表候補生は決して生易しい努力でなれるものではないし、実力があっても認められない者が何人もいるような世界だ。

 嘘だとは思わない。そもそもそういう嘘が吐けるようなヤツじゃない。だからこそ、とても興味がある。

 

「えぇと、そういうのが見れるのって……整備管理棟ってとこでいいんだっけ?」

 

 懐に入れっぱなしだった学園の案内図を取り出して、鈴はひとまず放課後の予定を取り決めた。

 

 

 

 

「ではこれより、ISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、前へ」

 

 昼休みが明けて第5時限目。第1アリーナ。1-1のメンバーは全員がIS用スーツに着替え、織斑千冬教諭の前にて整列していた。

 

「ISを展開しろ。目標は1秒だ」

「「はいっ」」

 

 一夏は右腕のガントレットに、セシリアは左耳のイヤーカフスにそれぞれ手を添えて意識を集中させ、心の中で呼びかける。キィン、と甲高い音を立てて、この数週間ですっかりと馴染んだ感覚が全身を纏っていく。解放された光の粒子が全身を包み込むまで約0.7秒。上出来と言っていいだろう。

 

「よし。上昇して上空20mで待機」

「「はいっ」」

 

 ふわりと浮遊するような感覚に身を任せ、行き先へと視線を向けて、イメージするのは以前、カデンソンさんから学んだ『浮かんだ船と推進器』の構図。実際にアリーナで訓練できた回数は片手の指にも満たないが、VRルームのお陰でイメージだけは十全に整えられるようになった。そして、実際には空を飛んでいるのだけれど、空を“泳いでいる”という風に考えた方が、それまでに比べて大分スムーズに動けるのが、この数週間で解ったのだ。

 

「基礎動作だけならすっかり初心者卒業ですわね、一夏さん」

 

 自動車で言うなら徐行運転程度の緩やかな速度で所定の位置を目指す俺と並ぶようにして、セシリアさんが微笑みながら話しかけてくる。この数週間、彼女は約束を違うことなく、何度も俺の練習に付き合ってくれた。代表候補生の権限でアリーナを使える時は積極的に誘ってくれたし、VRルームでの訓練でも銃器を扱うコツだとか、随分と熱心に教えてくれた。お陰で"吹雪"の扱いにも慣れてきたし、命中率も……まぁ、的に当てられるようにはなってきたのだから、進歩しているといって差し支えない、と、思いたい。

 

「まだまだだよ。あの試合の時はもっと速く動けてたし」

 

 拳を開閉させながら、以前よりも体に馴染んでいる機体の、鼓動? 呼吸? みたいなものに耳をすませる。初めて身に纏った時から思っていたのだが、どうにも機械らしからぬ温かみを感じるのだ。神経と同期しているからなのか、俺自身の血管が伸びて、この機械の手足と同化しているような気さえする。『血は鉄の味がする』とは言うけれど、これはどういう理論からなんだろうか。

 

「やはり、一夏さんは理屈を叩き込むよりも感覚で覚えた方が良いのかもしれませんわね。カデンソン先生にアリーナの使用頻度をもっと上げてもらえるかどうか、訊いてみましょうか」

「いつもありがとな、セシリア」

「どういたしまして、ですわ」

 

 人差し指を立て、斜め上を見るようにして色々と考え始めてくれているセシリアさんに礼を言う。何から何までお世話になりっぱなしで、本当に頭が上がらない。

 理論に関しては教科書を一通り読んでみたものの、反重力力翼がどうのとか、流動波干渉がこうのとか書いてあった気がするが、自力ではまるで理解できそうになかったので、放課後またカデンソンさんに訊いてみようと思っている。

 

『一夏ッ!! いつまでそんなところにいるッ!! 早く降りて―――いだッ!?』

『勝手に山田先生のインカムを奪うな馬鹿者。織斑、オルコット、順番に急下降と完全停止をやってみろ。目標は地上10センチだ』

「了解です。では一夏さん、お先に」

「おぅ」

 

 見下ろした先、綺麗に千冬姉の拳骨を食らって箒がうずくまっている頭のつむじの向きまでもが綺麗に見える。これでもかなり機能制限がかかっているというのだから、ハイパーセンサーの性能は計り知れない。……これで宇宙空間を自在に見渡せたら、どれほどの絶景だろうか、と心底憧れる。

 セシリアさんはドレスの裾がふわりと舞うような優雅さで“蒼い雫(Blue Tears)”を翻し、地上へと降りていく。到達した頃合いで『おぉ~』なんて歓声が聞こえたあたり、見事に成功したのだろう。流石である。

 

「おし、行くか」

 

 再び思い浮かべるのは、競泳のプール。スタート地点で水中に屈みこみ、身体を丸めて力を溜め込むような、そんなイメージ。そうして、足をグッと伸ばすと同時、頭の中でプールの壁を蹴る。

 ドンッ!! と音を立ててスラスターに火が点く。グングン地表が近づいてくる。

 

(ここだッ!!)

 

 急速反転。両足を突き出して空中を“蹴る”。慣性に身体が思い切り引っ張られていき。

 

 ガガッ!! ガガガガッ!!

「うわっとっとッ!?」

「馬鹿者。減速が遅い。轍を作ってどうする」

 

 もろに両足がアリーナの地面を抉り、つんのめりながらも必死に機体の勢いを殺そうと踏ん張る。舞い上だった土煙の向こうから、千冬姉の呆れ交じりな声が聞こえた。

 

「お前の機体は近接特化型だ。速度の緩急は戦法の要。何よりも優先して習得しろ」

「は、はい」

「抉った地面は授業後、自分で直していくように」

「うぇッ!?」

「では各班に分かれ、順番に訓練機へ搭乗。駆け足ッ!!」

「「「「「はいッ!!」」」」」

「は、はぁい」

 

 自業自得、なんだけど、正直かったるいなぁ。土、どこから持ってくればいいんだろう。そんなことを考えながら、体勢を直して足元を見た。チラリと視線を向けたら箒には目を逸らされ、セシリアさんには「あはは……」といった風に弱々しく笑われた。どうやら手伝ってくれる気はないらしい。そりゃそうだ。

 

(まぁ、力仕事ですからね。頑張りますよっと)

 

 後でカデンソンさんに『放課後少し遅れます』って連絡しとかなきゃなぁ、なんて思いながら、千冬姉の授業に戻るべく、俺はちょっぴり重たく感じる足を引っ張るようにするのだった。

 

 




 どうも。作者のGeorge Gregoryです。

 バレンタインデー? ナニソレ美味しいの?な14日は体調崩して寝込んでおりました、ハイ。金に余裕があればすすきのにでも繰り出そうかと思っていたのですが……金もなけりゃ時間もない。

 だんだんと賑やかになってきました。基本的に感覚で書くタイプなので、プロットを決めていてもなかなか書き出せない日があったりします。進む時は1時間で10000文字とか余裕で行くんですけどね……なんか前にも同じような話したような?(若年性ほにゃららの可能性)

 PS3の2代目コントローラーのLボタンが逝きました。遊び過ぎかしら。今の機種にしてからもう7年経つしなぁ。ちなみに前のはRボタンが逝きました。ハイ、間違いなくラチェクラの遊び過ぎです。後は神喰とかDMCとかダクソとかマベカプとかバイオとか。どちらも好きですが、ドラクエよりかはFF派だったりします。推しはⅡ・Ⅳ・Ⅹ。ディシディアでもフリオニール・ゴルベーザ・ジェクトばっかり使ってました。

 それでは、また近い内にお会いできることを願って。

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