ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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 久し振りにガッチャマンクラウズを見直しました。タツノコプロはやっぱスゲェっすな。最近はアニメ作品が多すぎて本当に限られた作品にしか目を通せません。最近だと円盤まで買ったのはSSSS.GRIDMANくらいです。元々グリッドマン世代でもありましたし。あれは久し振りに毎週心待ちにリアルタイム視聴しましたね。


……どうでもいいけど、俺の好きなアニメって大抵“隠れた名作”扱いされてるんですよね。何故だ。


Hit And Run Ⅴ

「初めましての人もいるので改めて。織斑一夏です。よろしく」

 

 初めて見た()()()は、思っていた以上に普通の少年だった。日本人であれば珍しくもない黒髪に黒目。背丈も特に高いということもなく、強いて言うなら、同年代にしては穏やかに笑う子だな、と。真面目な努力家。天才ではなく秀才タイプ。基本的に物腰は柔らかく静かで、他の男子に比べて少々大人びて見えた。

 

 でもまぁ、その程度だ。普通とはちょっとだけ違う、ごくごく普通の少年。言われなければ誰も彼と“戦乙女”を結び付けたりはしないだろう。そう、思っていた。

 

 

「―――お前ら、くだらない真似してるんじゃねぇよ」

 

 

 放課後、()()()()()()()へらへらと笑いながら掃除当番をアタシ一人に押し付けようとしてきたクラスメイトたちは、しかし彼の普段からは想像もつかないほど底冷えした言葉に強制的に足を止められていた。三日月のように鋭く細められた目つきは刀剣のそれすら彷彿させられて、それはただの11歳の少年が放てるようなものではないことは、明白だった。普段、アタシがどれだけ文句を言っても暖簾に腕押しでしかなかった彼らが、そのたったひと睨みで完全に委縮してしまっていたのである。余談だが、後に中学で知り合うことになる彼の悪友も、出会った時に同じようなことを感じたらしい。アタシがおかしいわけじゃなかったんだ、とちょっぴりホッとさせられた。

 

 そこから、クラスメイトたちの間で徐々に『織斑一夏は怒らせるとヤバい』という噂がにわかに流れ始め、話半分に聞いていた彼らが変わらずアタシ相手に粋がっている場所に彼が出くわし、再び雷が落ちる、といったサイクルを何度も繰り返す内に、当初に懸念していた通り、アタシに向いていた矛先が徐々に彼の方へと向き始めた。

 

 アタシと同じようにいつの間にか持ち物がなくなっていたり、机に傷や落書きが増えていたり、その悪質さはアタシの時と何ら変わりはなくて、でありながら彼は“何でもない”と言わんばかりに隠された持ち物はサラッと見つけ出し、教科書の落書きは知らない間に築いていた先生方とのコネで新品を用意してもらい、ノートは予習済みのが家にあるから問題ないと言ってのけ、服や靴の汚れやほつれに至っては自分で洗い落としたり直してしまうのである。最初は解っていながらどうにもできなかった後ろめたさしかなかったアタシも、ここまで見事にやり返しているのを見てしまうと『次はどうするんだろう?』なんて心の中でワクワクしてたりもしていて、思えばこの頃から既に少なからず好意を抱いていたのだろうと思う。

 

 学校に行くのが辛くなくなった。学校に行けば、一夏がいたから。何度も絡まれているのを助けてもらう内にちょっとずつ話をするようになって、勉強や日本語を教えてもらったり、登下校を一緒にするようになって。ウチの料理が食べてみたいと言って我が家に来た時なんて、両親の喜びようといったら凄いのなんの。採譜(メニュー)に載せたこともないような高級食材まで用意しようとしだして、2人して“そこまでしなくても”と必死に止めた時の話は、今でもアタシたちの()()()()だ。

 

 しかしやがて、そんな“相手するだけ無駄”と言わんばかりの態度に痺れを切らしたカースト上位の連中が、いよいよ物理的な手段に出たのである。

 

「織斑、お前いい加減にしろよ」

「調子乗ってんじゃねぇよ」

「空気読めよ」

「それともお前、コイツのこと好きなのかよ」

 

 放課後の教室に2人揃って包囲網を敷かれ、随分と拙い語彙力で色々と捲し立てられてこそいたが、その内容は結局のところこの4つに尽きていた。まぁ、最高学年とはいえ小学生なのだから、あれが精々の限界だったのだろうと思う。

 

 隣に彼がいたからか。それとも、何度もやり込められている皆を見たからか。多分、その両方だと思う。あれだけ怖かった皆が全然怖く見えなくて、そうでもしないと“普通”になれないその在り方が、滑稽にすら思えてきていた。むしろ『好き~』の下りは『もしそうだったら嬉しいかも』なんて場違いなことを考えていた気がするし。

 

 そんなアタシの隣で、一夏はまるで“どこ吹く風”とばかりに黙々と帰り支度を進めていて。

 

「おいッ、聞いてんのk―――」

 

 やがて、そんな風なことを言いながら、1人の男子が彼の肩に手を伸ばそうとした、その時だった。

 

「―――ぁああああああ痛い痛い痛い痛いぃいいいいいいいッ!?!?」

 

 それは、お手本のように綺麗な動きだった。何度も何度も繰り返して自分自身に染み込ませたような、明らかな“努力の産物”だった。

 

 見るも明らかな人数差を鼻にかけて無防備に伸ばされた手首を掴んだように見えた瞬間、まるでそういう風に作られた機械のように体がぐるりと回転、完全に関節を背中で極められていたのである。そんなアクション映画のような動きを見せた一夏少年は顔色一つ変えずにぐるりとアタシたちを囲んでいる連中を見回し、対してあっという間に“場の空気”を塗り替えられた彼らはすっかりと勢いをなくして目の前の出来事を信じられずに目を白黒させていて。

 

「調子に乗ってるのはどっちだよ。いい加減しつこいぞ」

 

 その時の一夏の驚くほど冷え切った目を見て初めて、アタシは知った。本当に心の底から()()た時、人は声を荒げたり暴れ回ったりはしない。静かに、冷たく、鋭く、その怒気を研ぎ澄ますのだと。『ガスコンロの火が青いのは物凄く高温になっているからだ』と理科の授業で習った記憶がこの時ふいに頭の中を過ったのを今でも覚えている。

 

「気に入らないなら陰口くらい好きにすればいいし、こっちからは何もしない。でも、お前らの方から何かしてくるんなら、その時は知らないからな?」

 

 それ以上の言葉は要らなかった。子どもは自分への害意にひときわ敏感だ。自分では敵わない、逆らってはいけないと一度でも思ってしまったなら、ただただ空気に流されていただけの彼らにそれを覆すほどの理由や気骨があるはずもなく、全員が完全なへっぴり腰になっていた。

 

「行こうか、凰さん」

「あ、う、うん」

 

 そして一夏はアタシの手をスッと優しく取って、そのまま教室から連れ出してくれた。物凄くドキドキさせられた。その日の帰り道、アタシは一言も喋ることができずに、一夏に手を引かれたまま後をついていくだけだった。16ビートも真っ青なくらいに激しい動悸がその間中ずっとアタシの中身を沸騰させているみたいで、いつもの交差点で別れてからも、家に帰って自分のベッドに潜り込んでからもそれが治まる気配は全然なくて、ご飯の時間になっても降りてこないアタシを訝しんで様子見にきたお母さんに『熱でもあるの?』と真顔で訊かれたくらいなのだから、それがどれほどのものだったかは、察して欲しい。

 

 これが、いつまで経っても色褪せない、アタシの大切な思い出。今のアタシの“始まり”であり、アタシにとっての“ヒーロー”を見つけた日。この日を境にアタシへのいじめはすっかりと鳴りを潜め、一部のクラスメイトたちが遠巻きにアタシたち2人を見ながらひそひそと内緒話をしているくらいの軽微なものになった。学校生活は以前からは思いもよらないほどに平穏なものになり、アタシたちが『鈴』『一夏』と呼び合うような頃にもなると、交友関係もグッと広がって毎日が楽しくなっていた。

 

 そして、時間が流れるに連れてアタシの“気持ち”もどんどん強くなり、しかしそれを明かすのを躊躇ってしまう程度には心地好いような絶妙な距離感になった頃、アタシは“それ”を知ることになる。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということを―――

 

 

 

 

───あぁ。やはり自分は彼女が苦手である。

 

「ん~、このレアチーズケーキ、ストロベリージャムの加減が絶妙ですわね」

 

 放課後、学食のテラス席。真向かいに座って頬に片手を添えながら甘味に舌鼓を打っているセシリアを見ながら、箒は改めてそう思った。

 

 一夏のクラス代表就任以降、互いの親睦を深める為に、と余りにしつこくまとわりつかれるのに辟易して思わず承諾してしまって以降、定期的にこのような茶会に(いつも自分と彼女の2人だけだが)招かれるようになった。茶会と言っても話す内容と言えば基本的に一夏の育成方針や進捗確認など、互いの情報のすり合わせの側面が強いので、正しい呼称はブリーフィングの類になりそうなのだが。

 

「思い切って'10年のダージリン、セカンドフラッシュにして正解でしたわ。このほのかに甘く優しい香りが、互いの邪魔をすることなくチーズとジャムの余韻を綺麗に流して―――」

「―――そろそろ本題に入ってくれないか」

 

 食堂の甘味の質は確かに素晴らしいものであるし、オルコットが各スイーツに合わせた紅茶を自分で淹れては随分と美味そうに講釈を垂れ流すのも決して珍しいことではなかった。が、今日はそれを黙って受け入れられるほど、自分に精神的な余裕がなくて、付き合いで自分も頼んでいた南瓜団子のお汁粉、その最後を嚥下して自分からそう切り出した。

 

「一夏のクラス代表戦に向けて今後の鍛錬の方針を話し合うのだろう。さっさと済ませたい」

「むぅ。ノリが悪いですわよ、篠ノ之さん。お茶は淑やかに、優雅に愉しまなくては」

 

 ちょっぴり面白くなさそうな表情でケーキを切り分けていたフォークを一旦止め、オルコットはこちらへと向き直る。その目は先ほどまでの恍惚なそれとは既に異なっており、瞳の温度がすぅっと冷たくなる。元より碧眼なのも手伝って、平常時の彼女の眼は透き通って見え、静まり返った清流を思わせる。射手(スナイパー)としての顔だ。この切り替えの早さは、素直に羨ましい。

 

「コホン。一夏さんですが、先日のアリーナでの実践訓練にて、瞬時加速(Ignition Boost)の習得もそう遠くないと判断致しました。カデンソン先生に今月分のVRルーム使用申請は既に済ませています。射撃の腕も、まぁ、牽制として使えるくらいには。そちらは?」

「間合いや感覚は、もうとっくに取り戻せている。元々、目の良さで“後の先”を得意としていたからな。尤も、本人は千冬さんのように押せ押せで攻めたがってはいるが」

 

 気を付けないと心が逸ってリズムが崩れる。最近は頻度も下がってきたが、フェイントを織り交ぜると面白いくらいに引っかかる。その癖、本人は“自分がまだまだ弱い”ということを素直に受け入れていて、いざ模擬試合なんかをすると様々な奇策に出てくる。その時その時の“全力”を出さんとばかりに。

 

「下地は出来た、といった具合だ。今後どう伸ばすかは、まだ決めかねている」

「ふぅむ、そうですか……」

 

 そこで、オルコットは立てた人差し指を頬にあて、考え出す。彼女の癖、のようなものらしい。実際、私が面倒を見れているのは近接戦闘に関することのみで、ISに関することは全て彼女と一夏の担当メカニックであるアリスター・カデンソン整備主任だった。本当であれば全て私が面倒を見たいところではあったが、代表候補生として優先的にアリーナを借りられる権利があったり、この学園におけるIS関連のトップである主任に張り合えるような“何か”が私にあるはずもないので、渋々だが受け入れている。

 

 ()()()()()()()をズルいと思う。年相応の少女のような面を見せたと思えば、実力によって確かな結果を残している。温和な人柄で何事にも真摯。八方美人でありながら、それを決して鼻にかけず、不快にも思わせない。自分には、決してできない真似だ。

 

 スタイルもよく、脚なんて自分よりも長い。髪はさらさら、瞳はくりくり、肌も真っ白でシミなんてあるはずもない。自分も手入れはしっかりしている積りだが、敵う自信は欠片もない。早い話、自分が彼女に勝っていると自信を持って言える部分がないのに、そのくせ彼女を嫌いになれない、嫌える要素がないのだ。

 

 最初は、粗探しの積りもあって、この茶会を受け入れた。話していればその内、()()()()()()も見つかるのでは、と。だが、話せば話すほど、自分にはないものを見せつけられるばかりで、ましてや彼女には一夏と()()()()()まであると言うではないか。それはそれは楽しそうに、ネットの記事や動画なんかを見ては話に花を咲かせているのを間近で見せられて、何度歯がゆい思いをさせられたことか。

 

 でありながら、こんな無骨極まりない私にも、気さくに話しかけてくる。正直な話、茶会(これ)に限って言えば、少なからず嬉しい側面もあるのだ。広く浅く、なんて器用な真似事が私に出来るはずもなく、交友関係の狭さなんて言うまでもない。精々が“隣の席”やら“同じ班員”程度が限界だった。相手にとっての私も、恐らく同じような印象しか残っていないはずだ。そういう付き合いしか、私はしてこなかった。してこれなかった。『重要人物保護プログラム』によって全国各地を転々とさせられていたのもあって、中学校生活なんてものは、最早“なかった”と言い切ってしまっていい程度の記憶しかない。

 

 故に、だからこそ、この茶会を煩わしいと思いながらも、手放しがたいと思っている自分もいて、その板挟みがまた、じわりじわりと私の心を苛むのだ。

 

「やはり、凰さんの基本戦法を鑑みて、近接戦闘の訓練に比重を置いた方が良いですわね。篠ノ之さんは、長物を扱った経験はおありですか?」

「っ、いや、薙刀(なぎなた)を軽く触ったことがある程度で、とてもじゃないが()()()とは……正直、それならまだ徒手の方が()()()、と思う」

「です、か。そうなると、カデンソン先生に調整を施してもらって、VRルームでの訓練時間を長めに確保した方が―――」

 

 そんな私の葛藤など、目の前の彼女が知るはずもなく。かぶりを振り、もやもやをしまい込んで、話を続けようと思った直後だった。

 

「―――ちょっと、いいかしら」

 

 その栗色のツインテールが、視界の端にチラリと映ったのは。




 どうも。作者のGeorge Gregoryです。

 どうして『更新頻度が落ちます』宣言してからの方が更新頻度上がってるんですかね(白目)……マジレスすると、割と現実逃避が入ってますよね。いざ時間のある時に『書こう』とPCの前に座っても全然書けないのに、ふと仕事中とか寝る前にとかにぶわっと沸いてきてスマホに纏めだしたらものの数分で複数回更新分のプロットが出来たりするし。これだから名作をコンスタントに世に送り出す小説家や脚本家の方々を心よりすげぇと思うんですよね。せめてものリスペクトとして私は本屋で新刊を買い、円盤を買い、映画館で観るのです。

 今後は文字数をこれくらいにして、頻度の方を上げて行こうと思っています。質を気にしすぎるといつまでも話を進められそうにないので。そうなってくるとエタってしまいそうですし。なので皆様、短くても、ほんの一言でも構いません。物書きにとって、読者からの反応が何よりの“百薬の長”です。オラに力を分けておくれ。

 それでは、また近い内にお会いできることを願って。

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