ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
カップよりは袋めん派です。もやしと豚ひき肉を塩胡椒で炒めたのをのっけて、真ん中に生卵。ジャスティス。
クラス代表選初日。アリーナAピットサイド、ロッカールーム内。
「よしッ」
やれることはやった、と鏡に写るISスーツ姿の自分を見て、短く息を吐いて気合を入れ直す。
我ながら濃密な1週間だった。のほほんさんに
「今なら、“衝撃砲”相手でも簡単にはやられてやらねぇ」
俺には『俺なりの躱し方』があるのだと知れたのは大きかった。その切っ掛けをくれた
「夜にまた、お礼の手紙、書かないとな」
なんせ、ずっと続けていた文通を、受験時期の身柄拘束から学園生活が落ち着くまで、忙しさやら何やらにかまけてサボっていたので、久し振りに電話した時は相当に拗ねられた。悪いのは明らかに俺の方なので、それから小一時間は平謝りである。
「1度拗ねると、長いからなぁ。暫くチクチク言われ続けるよなぁこれ」
そんな風に呟きながら、一緒にあちこちを駆け回っていた頃には何度も見たあの微笑ましい表情を思い出して、苦笑する。一緒にいた頃ならばご機嫌取りに好きな料理やお菓子でも作ってやれたのだが、今となっては海を隔てて遥か彼方、経度に換算すれば地球3分の1周程にまで距離が離れてしまっている。
現代には携帯電話という文明の利器もあるというのに、
「眠いだろうに、色々と相談に乗ってもらったしなぁ」
なので、拗ねているとはいえ、いきなりの電話に直ぐに応えてくれたのは正直驚いたし、ほぼ半日近い時差があるにも関わらず、その後何度も早朝からの(向こうにとっては真夜中の)長電話に付き合ってくれたのには、『ありがとう』以外の何物でもない。放っておいても日付が変わる前には眠気に負けて就寝するようなヤツだ。そろそろ電話を切り上げようかと言う頃の舌足らずな口調から、受話器の向こうでうつらうつらと船を漕ぎながら必死に睡魔と戦ってくれていたのだろうことは、想像するに難くない。貴重な睡眠時間を削りながら一緒に色々と考え、教えてくれたというのに、あえなく負けました、などという情けない報告はしたくない。
「箒にも、セシリアにも、カデンソンさんにも、そんな無様は見せられない」
何よりもそれは、俺自身が見せたくない。上半身から順番に、入念にストレッチをする。強ばった身体を程良く、小気味好く、解していく。すると、背後からコンコンと戸を叩く音が聞こえた。声からしてセシリアのようだ。
「一夏さん、そろそろですわよ」
「おぅ」
短く答えて、すっくと立ち上がる。いつになく身体は軽い。程よい緊張感は時にパフォーマンスを向上させることすらあると言う。きっと、今の俺はそういう状態なんだろう。
「練習は本番のように、本番は本番として、楽しめ」
それはいつだったか、練習の最中にカデンソンさんがかけてくれた言葉。不思議なほど胸にスッと入って来たそれは、いつしか自身に火を点けるキーワードになっていた。
ドアの向こうから、いくつもの壁を隔てて尚、鼓膜を揺さぶる大歓声。俺たちの前の試合が決着を迎えたらしい。
「っし。行くか」
そう呟いて、俺はロッカールームを後にした。
「こっちに来てていいんですか?」
「向こうは両手に花なんだ。むしろオイラは邪魔だろうさ。それに、
「そーですか」
Bピット内。準備を終えたアタシを出迎えてくれたのは腕組みして不敵な微笑みを浮かべたカデンソンさんだった。ズイと近寄り、下から睨み上げる。この数週間の経験で得た
「思う存分、暴れてくるといい。尤も、一夏くんが簡単には暴れさせてくれないだろうけれどね」
ニィっと笑みを浮かべる。それこそ上等ってヤツだ。この学園でトップを獲れないようでは
それに何より、今のアタシには
「オイラとしても教え子同士が戦うのは―――いや、待てよ。そうか。そもそも教え子をとったこと自体、ここに来てからが初めてか、オイラ」
「ちょっ!? え、アンタ、あのカリキュラム、前例があるって!?」
「あるよ。ちゃんと、それは」
嘘だッ!!と盛大に叫びたいところをグッと堪えてじとっとした視線を向けるが、どこ吹く風とばかりに口笛をかますだけだった。この人、富みに富んだ語彙力でいつもその辺をはぐらかすのだ。自分でも調べてはみたものの、社交ダンスやレース編みをISの実践的な鍛錬法として提唱しているような人物は見つからなかったし、プロファイリング資料を調べてみてもこの人に
「実際、それなりの手応えを感じたからこそ、君も素直に受講してくれたんじゃないのかい?」
「そ、れは、まぁ」
しかし困ったことに、この人の講義を受けてからというもの、驚くほど"甲龍"が
「君たちは言わば、“きょうだい”弟子ってことだね。時系列で言えば一夏くんの方が先だけど、君の方が先にコマンドーのカリキュラムを受講した訳だから……この場合はどっちが先になるのかな?」
「どっちでもいいです」
そこは心底どうでもいい。ほら、またこの人のペースになりつつある。"甲龍"を起動、身体を預けて立ち上がる。見慣れた高さ。しかしこの1週間、アリーナがクラス代表戦の調整作業に入っていたため、まったく"甲龍"には乗れていない。VRルームでの鍛錬は欠かさず続けていたので、この1週間でもその切れ味は更に増しているハズだ。
嗚呼。認めたくないけれど、悔しいけれど、あの頓珍漢な鍛錬のお陰で、アタシは今、"甲龍"に乗るのが楽しみで楽しみで仕方がない。少なからず『夢のための道具』として機能してくれればいいと思っていたこのコが、今となっては我が半身のようにすら思える。
「行ってらっしゃい。楽しんでおいで」
「……言われなくても、そのつもり」
見なくても解る。ニヤついている。からかうような、しかしその実、今この瞬間においてはこの世の誰よりも『アタシへの信頼』が詰め込まれた言葉が、トンと軽く背中を押してくれる。どこか懐かしい、翼が生えたような感覚。そう、あれは、確か。
(―――ううん。そういうのは後だ)
地を蹴るようにしてアリーナへと躍り出る。途端、間欠泉のように一斉に沸き立つ声の波濤。まるで吹雪や津波のようだ。
同じくしてAピットから一夏が出てくる。へぇ、あれが"白式"か。文字通り、病的なまでに真っ白だ。眩しさすら覚える。その後ろで、ピットから覗く影2つ。1人は自信ありげに彼の背中を強い眼差しで見送る金髪碧眼のお嬢様。もう1人は、どこか不安げに揺らぐ視線でこちらを見ている濡れ羽色の大和撫子。ちょっぴりイラッとするけれど、直ぐに忘れる。
『両者、規定の位置まで移動してください』
アナウンスに従い、アリーナの中央にて仁王立ちのまま向かい合う。
じり、と踏み込みやすいように踵の位置をずらし、開始の合図を待つ。一夏は視線をギラつかせたまま姿勢を低く、より前屈みに。それは、獲物を定めた狼のようでもあって、その視線の先にアタシが定まってると思うと、少しゾクッとした。そして。
『それでは両者、試合を開始してください』
「行くぞッ、鈴ッ!!」
「一夏ァアアアアアアアアッ!!」
ピーッと鳴り響くブザーと同時、アタシたちは激突した。
どうも。作者のGeorge Gregoryです。
だからなんで更新頻度落ちる宣言した後の方が捗るのって(真顔)
インターバル的な前回に引き続き導入編になりますので、ちょっぴり短め。それでも色々ちりばめました。収穫をお楽しみにどうぞ。
作業用のDEADPOOLは脳汁ドッパーで最高だぜ……たまに執筆の手、止まるけど(ぁ
それでは、また近い内にお会いできることを願って。
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