ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
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Ao
THE TON-UP MOTORS
「では本日より、格闘及び射撃含む実戦訓練のカリキュラムを開始する」
「「「「「はいッ!!」」」」」
1組と2組の合同訓練だけあって、アリーナに全員が集まり、学校指定の同じISスーツを身に纏ってズラリと整列するその様子はそれなりに壮観であった。1人残らずピッと背筋を伸ばし、黙して指示を待つこの光景は、いつ見ても『授業』というより『教練』という気がしてならないのは、きっと自分だけではないだろうと思う。
「まずは改めてどのようなものか『実演』を交えて、学園のレベルを体感してもらおうか。オルコット、凰、前へ」
「?
「え、アタシ?」
と、不意に名前を呼ばれたのに驚きつつも前へと出ていく。同じく鈴さんも自分の顔を指さしながら不思議そうな表情で出てきた。
「専用機持ちならば、直ぐにでも始められるだろう?」
「そりゃまぁ、そうですけど。それじゃ、"
「起きなさい、"
基本的に体育会系な鈴さんがノリノリで舌なめずりしながら"
「それで、セシリアと戦えばいいんですか?」
「まぁ待て。対戦相手なら今来る」
"双天牙月"を召喚しつつ肩を回して気合を入れながら尋ねる鈴さんに、織斑先生がそう続けてピットの方へと視線をやる。釣られてそちらへ皆が視線を向けると、ピットから徐々に近づいてくる1つの機影。緩やかな放物線を描くようにふわりと跳んできたそのラファールに乗っていたのは。
「え、山ピー先生?」
「や、山ピーは止めて下さいッ!!」
不意に生徒たちの中から聞こえた声にちょっぴり涙を滲ませているのは、その大きな丸眼鏡が特徴的な我がクラスの副担任であった。普段は黄色やクリーム色みたいな暖色の、ふわりとした大きめのワンピースを好んで着ている彼女だが、当然ながら今はISスーツに身を包んでいる。深い紺色の生地が肌にぴっちりと張り付いており、その胸部に聳え立つ『連嶺』の絶大な存在感をこれでもかとばかりに強調させていた。思わず自分のそれと見比べてその
「―――ナニヨアレ? メロン? スイカ?」
先ほどまでの意気が嘘のように、鈴さんが親の仇を見るような憎悪すら感じさせる冷たい目をしていた。声をかけることすら躊躇われるほどの迫力で、思わず数歩後ずさってしまう。
「さて、小娘ども。惚けていないで始めるぞ」
「……え?」
それは、もしや、ひょっとしなくても。
「山田先生はこれでも元代表候補生であり、実力も確かだ。お前たち相手なら、2対1でも造作もないだろう。胸を借りるつもりで思い切り負けてこい」
「む、昔の話ですよ。結局候補生止まりでしたし」
「……へぇ~、上等じゃないッ!!」
照れ臭そうに頬をかいている姿からは全く実力が想像できないのだけれども。こちらを挑発するような織斑先生の
「最近、アリーナで
「……御存知だったんですか?」
「当たり前だ。担当クラスの生徒が出した申請書に、担任が目を通していない訳がないだろう」
その苦笑にクラスメイトたちが『ほぅ』なんて恍惚のため息を漏らし、
「試してみろ。山田先生は中距離・遠距離射撃の腕前もなかなかのものだ。盗めるものなら盗むといい」
「……はいッ!!」
そう言われてしまっては、俄然やる気も出るというものである。今にも『ガルルル』なんて唸り声をあげそうになっている鈴さんに困り顔で両の掌を向けている山田先生は、こちらに気付くとニッコリといつも通りに微笑んだ。その表情に『確かな自信』を見て、仄かに背中に寒気を覚える。これが噂に聞く“武者震い”というヤツなのかもしれない。
「では、はじめッ!!」
「先手、必勝ォッ!!」
織斑先生の号令の直後、"双天牙月"を連結させ振り回しながら鈴さんが突撃するも、山田先生は実に滑らかな軌道で直上へと回避する。それが『飛び上がった』というよりも、風に乗って『舞い上がった』ように見えて、ほんの僅か見惚れてしまった。
「そのたわわに実った乳ィ、捥イデヤルッ!!」
「全力で行きますわッ、山田先生ッ!!」
「ま、負けませんよッ!! 私だって先生なんですからッ!!」
果たして、ただでさえまだまだ拙いのに
「さて。アイツらが健闘している間は、そうだな……デュノア。山田先生の使っているISを説明してみろ」
「あっ、はい。わかりました」
そんなこんなで始まった空中戦を皆が見上げている中、視線を逸らさないままに隣のデュノアさんが千冬姉に言われて説明を始めた。
「山田先生が使用されているのはデュノア社製のIS『
「マルチロールチェンジ、ってなんだ?」
「装備によって格闘・射撃・防御みたいに自由にスタイルを変えられる、ってことだよ。山田先生のはショットガンとアサルトカノン、アサルトライフルの3つを自由に切り替えることで近距離から遠距離まで満遍なく対応できるカスタム、みたいだね。それにしても先生、命中精度が凄いな。近接攻撃を躱した直後で不安定な体勢なのに確実にショットガンを叩き込みつつ、オルコットさんのBIT攻撃にもアサルトライフルでしっかり対応してる」
「おわぁ~……俺じゃああんなの、あっという間にボッコボコの
俺の質問にも難無く答え、そのまま3人の戦闘の解析まで始めてくれたので素直に耳を傾けることにする『蝶のように舞い蜂のように刺す』ってのはああいうことなんだろうなぁ、なんてことを、繰り広げられている戦況を見上げながら思った。俺の理想の形の1つでもあるから、スラスターの制動を見ているだけでも興味深くて仕方がない。
「あ。でも凰さん、ちょっと攻め方変わってきたね。連結してた近接武器をまた分割して、手数で押す方にコンバートしたみたい。あの両肩で細かく鳴ってるのは、噂の“衝撃砲”ってヤツかな」
「あの威力で弾幕張られると、なかなか思うように動かせてもらえないんだよな。下手に当たるとそのままコンボ決められてSEゴリゴリ削られるし」
「成程。凰さんが大きな動きを封じながら誘導して、オルコットさんのライフルとBITで確実に仕留める戦法なのか。あの2人は、コンビ組んで長いの?」
「いや、最近一緒に訓練し始めたばっかりだったハズだぞ。俺も聞いてはいたけど、実際に組んでるところは初めて見た」
「ほぅ。日が浅いにも関わらずあの連携か。拙い部分も多いが、悪くないな」
「っと……ラウラ、いきなり抱き着くなって」
トンッ、と脇腹の辺りに軽い衝撃を覚えたかと思うと、即座に胴回りにギュウッと腕が回される。俺としては最早、飼い猫にじゃれつかれているに近いような、とっくに慣れた感覚な訳だが、やはり周囲にはそうは見えないみたいで、特に『今朝のアレ』を見ていない2組の皆は解りやすくざわついていた。
「良いではないか。ドイツにいた頃はこれくらい普通だったろう」
「ドイツにいた頃は、な。ここ、IS学園。今、授業中」
「むぅ」
「アハハ……仲、良いんだね」
「うむッ。私とアインは仲良しだッ」
唇を尖らせながら渋々離れてたのも束の間、デュノアさんの苦笑しながらの言葉に満足げに胸を張るラウラに、こりゃあまるで反省していないな、とため息を吐き、しかし同時にそれが微笑ましいとも思えて、つい口元を緩めてしまう。
整えている風でもなく、腰の近くまで伸ばしっぱなしの綺麗な銀髪。医療用のものではなく本物の、20世紀の戦争映画に出てくる大佐なんかが着けていそうな真っ黒な眼帯。“黒兎”なんて部隊名におあつらえ向きな、綺麗に澄んだ真っ赤な右の瞳。
「ん? どうしたアイン? 私の顔に、何かついているか?」
「いや。
「……変わらないさ。だって」
そこで一区切りすると、ラウラはじっと俺の顔を見て。
「『
「―――そうか。そうだったな」
「「「「「~~~~ッ!?」」」」」
その満面の笑顔に見惚れたのだろう、会話を聞いていたクラスメイトたちが一緒になって感嘆の声を上げた。無理もない。“黒兎隊”の隊員も1人残らずこの笑顔に
「―――皆様、そろそろ試合が終わりますよ?」
「えッ!?」
と、そんなカデンソンさん(娘の方)の一言で試合のことをすっかり忘れていたのを思い出し、改めて空へと視線を戻す。つい先ほどまで鈴とセシリアが上手く追い込んでいたように見えていたが、山田先生がセシリアの射線上に絶妙なタイミングでグレネードを投擲、その爆破に鈴を巻き込みつつ、硝煙によって上手いことセシリアの狙撃への妨害も同時に行っていた。そのため、2人は完全に攻め切れず、いたずらにSEを消費し続けてしまい。
「あっ」
「決まった、ね」
次の瞬間、グレネードの爆撃で体勢を崩した鈴がショットガンで吹き飛ばされ、終始後方で援護に徹していたセシリアに激突したかと思うと、いつの間にか2人の周囲をぐるりと円を描くようにダメ押しのグレネードが放られており、その1つを山田先生の狙撃が正確に撃ち抜いて。
――――ドォンッ!!
「カハッ!!」
「キャアッ!!」
「ふぅ、なんとか勝てましたぁ~……」
腹の底を揺るがすような爆音の後、SEを削り切られた2人がアリーナへと墜落。山田先生が肩部の武装コンテナにアサルトライフルを収納しながら、悠々と降りてくるのが見えた。
「序盤の勢いは悪くなかったが、攻めのパターンが少なく、途中から単調になってしまっていたな。まぁ、山田くん相手に5分もったなら、即席コンビとしては十分に合格点だろう」
「す、っげぇ」
どこか自慢げにも聞こえる千冬姉の講評を聞きながらも、安心したように額の汗を拭い、ズレた眼鏡の位置を直している『いつも通り』の山田先生に驚嘆する。それはクラスメイトたちも同じなようで、『こんなに強かったんだ』『山ピー見直しちゃったかも』なんて声がちょくちょく後ろから聞こえてきた。
「さて、これで諸君にも本校教員の実力がよく解ったことだろう。今後は敬意をもって接するように。ではこれより各専用機持ちをリーダーとしてグループ分けを行い、本格的な実習へと移る。出席番号順に8人毎の班に別れろ」
「「「「「はいッ!!」」」」」
「カデンソン。お前には専用機の都合上、山田先生の補助を命じる。まずは訓練機の用意を手伝ってこい」
「解りました」
「鈴ッ、セシリアッ、大丈夫か~ッ?」
「手伝うぞ、アイン」
ぱんぱんと手を叩きながらの指示を受けて、ざわつきながらもクラスメイトたちが分かれていくのを見て、俺は取りあえず倒れたまま呻いている鈴とセシリアに手を貸そうと駆け出した。ラウラもちょこちょことヒヨコみたいに後をついてきたので、手伝ってもらうことにした。
「……これは、
そんな俺たちの背中を見つつ、デュノアさんがそのように小さく呟いていたことになど、気付かずに。
どうも。作者のGeorge Gregoryです。
明日で丁度本SSが投稿2周年を迎えます。ここまでコンスタントに続けられているのも、ひとえに読者の皆様のお陰です。
先日、めでたくUAが90000を突破し、100000も目前に。お気に入り人数も1000人を超えました。今後とも末永くお付き合い下さいませ。勿論、感想・意見・誤字報告等々、いつでもお待ちしております。
それでは、また近い内にお会いできることを願って。
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