ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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 最近、10連を2回ほど無償石で回したら★5鯖が普通に出てきて焦った(司馬懿と孔明1人ずつ)


Feeling Lucky Ⅰ

「じゃあ、改めて宜しくな、デュノアさん」

「こっちこそ宜しく、織斑くん」

 

 夕食後。1年学生寮の一室にて。案の定、デュノアさんは俺と同室になった。大した量もなかったので荷解きはすぐに終わり、今は俺が淹れた緑茶で喉を潤していた。

 

「紅茶とはまた違うんだね。渋味の中にほんのり甘味がある。不思議な感じがするよ。甘いものとよく合いそう」

「気に入ってもらえたら良かった」

 

 以前セシリアに勧めた時は、砂糖や蜂蜜を入れていた。どうやらそういう飲み方が向こうじゃポピュラーらしい。なので今回も一応用意したのだけれど、デュノアさんは「要るかどうかは飲んでみてから決めるよ」と、そのままストレートで飲んでいた。

 

「なんなら今度、抹茶も試してみるか?」

「それって、確か畳の上で正座して飲むやつだよね。淹れられるの?」

「流石に自分じゃ淹れらんないよ。駅前にさ、コーヒーみたいに飲める店があるんだ。前々から気になってたから、今度付き合ってくんないかなぁ、って」

「そういうことなら、喜んで。……あぁ、そうだ。織斑くん」

「ん?」

「タイミング逃しちゃってなかなか言えなかったけど、僕のことは“シャルル”でいいよ」

「そか。じゃあ、俺も“一夏”でいいよ、シャルル」

「うん。解ったよ、一夏」

 

 柔らかな笑みを浮かべるシャルルを見て、整った中性的な顔立ちも相まって「はぁ~」と感嘆の息を漏らす。既に学園中で『王子様』なんて呼ばれ始めているのも、こりゃあ仕方ないなぁ、と。休み時間の時だったか、俺たちの教室に見物に来てた3年生の先輩に歯の浮くような台詞言ってたもんな。えぇと、確か。

 

「『僕のような者のために咲き誇る花のひと時を奪うことはできません。こうして甘い芳香に包まれているだけで、もう既に酔ってしまいそうなのですから』」

「それ、ひょっとして昼間の僕の真似?」

「めちゃくちゃ決まってたよな。イヤミっぽく聞こえないのが凄い」

「やめてよ、照れくさいなぁもう」

 

 あはは、と困ったように眉を寄せながら湯呑みを傾けている姿さえ、様になっている。

 

「さて。これ飲んだら汗流して寝る前に軽く復習かなぁ。シャワー室を使う順番どうする? 俺はどっちでもいいけど」

「後でいいよ。僕、お風呂場ではゆっくりしたいタイプだから、先に入っちゃうと一夏を結構待たせちゃうだろうし。それに、この後ちょっと出る用事もあるから」

「ん? 門限までそんなにないぞ? 忘れ物でもしたのか?」

「ううん。僕の専用機のことで、ちょっと整備管理棟に。初日の夜に、って前もって連絡してるんだ」

「あぁ。シャルルは専用機の管理、学園に任せるんだっけか」

「うん。その手続の書類を書きに。すぐに終わるから、先に入っててよ。僕は戻ってきてからゆっくり使わせてもらうから」

「わかった。そういうことならお先に」

 

 そう言ってお茶を飲み干すと、徐に立ち上がって上着を脱いでハンガーにかける。クローゼットから替えのシャツとトランクスを引っ張り出して自分のベッドに放ったところで。

 

「あ~……一夏?」

「ん? なんだシャルル?」

「その、ここで脱ぐの?」

「……あ~、悪い。ちょっとだらしなかったな」

 

 いかんいかん。つい癖でやっちまった。

 

「今日から1人部屋じゃないんだもんな。気をつける」

「ううん、こっちこそ。細かいこと言って、ゴメンね?」

「いやいや、いいんだ。今後は着替えもシャワー室ん中で済ませる。共同生活なんだから、お互いに歩み寄らないとな。それよりも、()()

 

 バスタオルを抱え、放ったシャツやらを拾い上げて、ピッとシャルルに指を指す。指された本人は不思議そうに首を傾げている。顔立ちも相まって同い年とは思えない幼さにちょっぴりドキッとした。

 

「昼間、鈴にも言われたろ? 悪いこともしてないのに謝るのはなしだ。今のは俺のミスなんだから、『気をつけろよ?』くらいの上から目線で丁度いいんだって」

「あぁ、うん、ゴメン」

「ほらまた」

「あ~……そうだね。僕も、気をつけるよ」

 

 なんか癖になっちゃってるみたいだ、と困ったように頬を掻きながら微笑むシャルルにこちらも微笑んで返す。

 

「じゃあ、俺は先にシャワー浴びるから。なるだけ早く戻ってこいよ? 少しでも遅れると、千冬姉がまた雷落としちまうからな」

「うん。ゆっくりしてくれていいからね」

 

 そう言って俺はシャワー室に入り、直ぐに服を脱いで熱めのシャワーを頭から思い切りかぶった。

 

「ふぅ~……シャワーもいいけど、やっぱり湯船に浸かりたいよなぁ」

 

 話によればこの学園寮の大浴場、それはそれは立派なものだという。『男と同じ湯船に入るなんて言語道断』なんていう女生徒たちの意見で俺たちには使うことが許されていないが、山田先生が『流石に可哀想なので』と最近色々と交渉してくれているらしい。無理なら無理で仕方がないとは思うけれど、俺も“平たい顔族(にほんじん)”の端くれなのだ。風呂好きの因子はDNAに深ぁ~く刻み込まれている。ぶっちゃけ、入れるものなら入りたい。かといって風呂のためだけに外出許可とるのもなかなかに面倒くさい。銭湯って結構高いし。

 なので。

 

「山田先生ホント頑張って下さいお願いします」

 

 目の前の鏡に向かってパンッと音を立てて合掌し、拝んでみた。けれど、子どもが風呂場で巫山戯て『滝行ッ!!』なんてやってるみたいな構図なのがなんか笑えてきたので、直ぐに辞めて頭を洗い始めるのだった。

 

 

 

 

「…………焦った。顔に出て、なかったよね?」

 

 シャワー室に彼が入っていくのを見届けて、ホッと胸を撫で下ろす。いきなり目の前で脱ぎ始められたのにはかなり動揺した。表情筋を動かさないようにするのに精一杯で、受け答えもぎこちなくなってしまっていた気がする。変に思われなかっただろうか。

 

「あれくらい、見慣れてると思ってんだけどな……やっぱりチームの皆とは違うんだ」

 

 予測してなかった訳じゃないのに、まさかこんなに取り乱すとは。今もちょっぴり動悸が乱れている。一気に乾いた喉を、彼が淹れてくれたお茶で潤す。

 

「ふぅ」

 

 日本茶、特に緑茶に豊富に含まれるアミノ酸にはリラックス効果があると聞いたことがある。茶葉を発酵させずに作られるから、茶葉本来の成分をあまり損なわないんだとか。

 

「……『悪いこともしてないのに』、か」

 

 空っぽになった湯呑をシンクに置いて、カバンから1冊のファイルと、1通の無地の封筒を取り出す。そして。

 

「────()()()()、一夏」

 

 僕は、部屋を後にした。

 




 サブタイトルの元ネタ
『ラチェット&クランク3(PS2)』のスキルポイント
“ゴールデンラッキー(Feeling Lucky?)”
 惑星ホロウッド(元ネタは勿論ハリウッド)のステージ内にあるスロットマシンでジャックポットを当てる。こればかりは完全な運ゲーなので出るまでひたすら回すしかない。ちなみに1回10ボルト。

 どうも、作者のGeorge Gregoryです。

 本章では金銀コンビの金色にスポットを当てます。前章、上手いこと区切れなくて結局Ⅸまで行きましたからね……今度はきっちりわかりやすくまとめて行きたいところ。

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

 ―追記―

 とある読者の方からセシリアのお茶への反応についてご指摘頂きましたので、一部訂正しました。今後もこのような矛盾点などありましたら、遠慮なく教えて下さると俺も勉強になります。是非、どんどんお教え下さいませ。

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