ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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久し振りの希望ヶ峰学園は、程よくシナリオを忘れていたお陰でなまら楽しかったです。大山のぶ代大先生は、本当に偉大ッスなぁ。


Feeling Lucky Ⅱ

 整備管理棟、管理人室にて。

 

「ご馳走様でした」

「お粗末様でした」

 

 丁寧に合掌して挨拶するお父様に、満足感を覚えながら返す。やっぱり、作った料理を美味しそうに食べてもらえるのは嬉しい。お母様に沢山協力してもらった甲斐があったというものだ。「太っちゃうよ~」なんて言いながら、失敗したものでも残さず綺麗に食べてくれたし、「“あっくん”はこれとか好きなんじゃないかな」なんて献立の相談にも何度も乗ってもらった。お陰で最近じゃレシピを見なくても自信を持って作れる料理がぐんと増えてきた。

 

「うん、ここまで上手くなってるのは予想外だよ。美味しかった、ありがとう」

「フフッ。これからも、こうして作らせてくださいね、お父様?」

「オイラはそりゃあ大歓迎だけど、無理はしなくていいからね?」

「無理なんかじゃありません。私がしたくてするんです」

「わかったわかった」

 

 私を落ち着かせるように両の掌を向けて苦笑しているお父様を見て、ムッと不満げにちょっぴり頬を膨らませる。お父様は私がどれくらいこの日を待ち侘びていたかを解っていない。

 あの日、私の世界の『殻』を壊して強引に引っ張り上げてくれた手の温もりを、今でもはっきりと覚えている。あの日から、お父様が私の生きる意味になったのだ。この人を喜ばせたい。この人の役に立ちたい。その一心で、生きてきた。勿論、普通の学校生活にだって憧れはある。普通に勉強したり、音楽や芸術に触れたり、友だちと遊んだり。けれど、今はそれよりも、()()()()()のだ。

 私の作った料理を美味しいと言ってくれる。お母様が用意してくれたこの水色のエプロンドレスを『似合ってる』と褒めてくれる。それだけで、私がどれほど温かな気持ちになれることか。空っぽになっている食器の数々を見るだけで、その満足そうな表情を見るだけで、私がどれほど心を弾ませていることか。

 

「片付けてしまいますね」

「手伝うよ。流石にこれくらいはさせて欲しいな」

「……解りました。じゃあ、一緒に」

 

 ちょっぴり迷ったけれど、一緒にやりたい、という気持ちが勝った。隣のミニキッチン(お父様が給湯室を改造したらしい)へと空いた食器を持っていく。お湯で濯ぎながらスポンジに洗剤を含ませ、その表面を滑らせていく。お父様は拭くのと後片付け担当だ。

 

「もう少し、お皿の種類を増やした方がいいかもしれませんね」

「今までは1人分あれば良かったからねぇ。大体は作ってもトーストとかスパゲティみたいな、お皿1つで済ませられるものばっかりだったし」

「悪いとは言いませんが、それでは栄養が偏ります。塩分糖分を控えて、緑黄色野菜の摂取量を増やしましょう。冷蔵庫の中のタッパーに日持ちする小皿料理を作り置きしてありますので、無くなったら教えて下さい」

「至れり尽くせりだな。ホント、どっちが親なんだか」

 

 お父様は困り顔になりながらも、手はひょいひょいと淀みなく動かして洗い終えた食器を拭いては収納棚に戻していく。それなりの量があったはずの食器はあっという間に洗い終えてしまい、エプロンの裾で両手の水気を拭う。そろそろ、お昼からじんわりと抽出していた水出し番茶が飲み頃のはずだ。冷蔵庫から水差しを取り出すと、茶葉の色がしっかりと濃く出ていた。

 

「食後のお茶まで完璧とは……はぁ~、これいいね。口の中がスッキリする」

「勉強、しましたから」

「ん、頑張ったんだな」

 

 不意に、頭を撫でられた。整えた髪を乱してしまいそうなちょっぴりぶっきらぼうな手つきがとても嬉しくて、エプロンをギュッと握りしめて俯く。そうしていないと、衝動を抑えきれずに小躍りしてしまいそうで。

 

「お、お父様」

「ん?」

「私、頑張ります。お役に立ちます」

 

 だから、ずっと。そう続けようとした、その時だった。

 

 コンコン

「ん、来たかな」

「…………むぅ」

「そんな、あからさまに不満そうにしなくても。で、なんだって?」

「いいんです、もう」

 

 タイミングよく邪魔されてしまったのがどうにも気に入らなくて、ずんずんと気持ち大股で扉の方へと向かう。誰が来るかは知っていた。『約束がある』とお父様から聞いていたから。

 ガチャリ、と入口の扉を開けると。

 

「……え? あれ、カデンソンさん?」

「いらっしゃいませ、デュノアさん。お父様がお待ちです」

「あ、うん。お邪魔します」

 

 ちょっぴり間の抜けた表情で、シャルル・デュノアが立っていた。

 

 

 

 

「あぁはいはい、スカウト(いつもの)ね。やれやれ、もう候補生が来た時のお約束になってるけど、中でもフランスは特にしつこいな」

 

 フランス政府から預かってきたファイルを眺めながら、目の前の人物、アリスター・カデンソン氏は億劫そうに言った。

 "元"倉持技研第2研究室開発局長にして、"現"IS学園整備管理課主任。"Spyro"のシステム開発者だと知った時は、それはそれは驚いた。あのパッケージのスラスター制動の滑らかさと言ったらない。自分がプロのフィギュアスケーターにでもなったかのような、あの万能感。思わず記憶にある冬季五輪の金メダル選手の動きをトレースしてみようとして、あまりの滑らかさに調子に乗って連続回転、目を回して墜落したところを皆に大笑いされたのは未だ記憶に新しい。

 

「イグニッション・プランに乗り遅れて危機感を覚えてるのは解るけどさぁ」

「なんか、すみません」

「いやいや、君が謝る必要はないでしょう。まぁ、今日明日で育つもんでもないけどね。オイラにばっかり構ってないで、自分とこの若手の発掘に力を注げばいいのにとは思うよ。面白そうな研究してる“原石”なんて、パッと論文読んでるだけでも山ほどいるんだから」

 

 それは、自分自身も在野登用からの成功者だからこそなのかなぁ、なんて思う。倉持技研に入る前の彼は大卒資格を持っているだけのいち技術者だったという。何もないところから、自身の知識と経験だけであの"Spyro"のシステムを作り上げ、倉持技研へ乗り込んで『自分を雇え』と宣ったのだとか。余程の自信がなければできない真似だ。素直に凄いと思う。

 

「さて、書類(これ)に記入よろしく。太枠の中は全部ね。書き漏らしや間違いのないように」

「はい。それと、これを。父からです。僕の専用機の資料だ、と」

 

 渡されたクリップボードと交換するように、フランスを出る際に預かってきた封筒を渡す。回線を経由すると途中で盗まれる可能性があるため、こうするのが定番なのだそうだ。

 

「ん、確かに。確認させてもらうよ」

「お父様。私は外した方が宜しいですか?」

「一応、隣に行っててくれるかな。守秘義務があるからね」

 

 手早く開封して取り出したメモリを、早速コンソールに挿し込む。画面には僕の専用機"Rafale Revive Custum Ⅱ"のデータが表示されていく。

 

「ふむ。本体は機動力に特化させて、武器をガン積みしたバススロットに高速化処理。弾丸も火薬式実弾で統一することで燃費を良くしてるのか。なかなか()()()()()も積んでるね。いい趣味してるよ」

「何か、変でしょうか」

「いいや、何も。任せなさい。むしろ200%のスペックを引き出してあげよう」

 

 ドン、と左胸あたりを叩いてみせるアリスターさん。うん、この人なら本当にそれくらいしそう。

 

「あの~……勝手に変な武装足したりなんて、しないですよね?」

「ん? そんなの、技術者として当たり前じゃないか。……まぁ、昔のオイラだったら、やってたかもね?」

「あ、あはは……」

 

 その悪戯っぽく笑う目がどこか、フランス(じもと)()()()()()が『ちょっとこれ試してみてくれないか?』と言いながら実用性度外視趣味全開な試作品を持ってにじり寄ってくる時のに似ている気がして、つい引き攣った笑みを浮かべてしまう。

 

「それを書き終わったんなら、今日はもういいよ。そこら辺にでも置いておいて。オイラはこのデータを、ゆっくり見せてもらうからさ」

「わかりました。それじゃあ、失礼します」

 

 コンソールから一切視線を逸らさずにそう言うカデンソンさん。こういうところはやっぱりこの人も研究者なんだな、と改めて思う。その目つきはとても真剣で、表示されるデータの一字一句まで見逃すまいと鋭く研ぎ澄まされていた。そしてそれは、僕にとっても()()()()()()()だった。

 深々と礼をして、部屋を後にする。明かりの少ない夜の廊下を、やや早い足取りで歩く。そして、管理人室からかなり離れたガレージルームまで来てから、徐に懐から文庫本サイズのタブレットを取り出す。周囲を見回し、人目がないことを確認して、開け放たれたままになっているガレージへと入り、その隅に身体を縮こまらせて起動した。表示されたのは『NOW LOADING』の文字と、その真下で徐々に伸びていくタスクバー。現在7割弱と言ったところか。そして、やがてそれがフルになった瞬間。

 

「────よし」

 

《和名:白式》

《型式:XX-01》

《世代:第三世代》

《所属国家:日本》

《分類:近接格闘型》

《装甲:多重ナノ構造ハイブリット・ハニカム構造》

《装備:近接特化ブレード『雪片弐型』・複銃身式拳銃『吹雪』》

《仕様:バリアー無効化攻撃『零落白夜』》

 

 次々に表示されていくデータの数々。機体の基礎数値に始まり、過去の起動履歴、その際の稼働状況や各数値の変動。その度に行われた修正に至るまで、ありとあらゆるデータが閲覧できている。あの管理人室のデータをコピー、()()()するように、さっきのメモリに仕込んでおいたシステムがちゃんと作動してくれたのだ。

 

「上手くいったよ、父さん……」

 

 最初にして最大の関門を越え、ホッと胸を撫で下ろす。まだ動悸が激しいままだ。正直、ずっと平静を保つのに精一杯だった。()()アリスター・カデンソンであるなら、あるいはバレてもおかしくないと。あの人が『研究者気質』で本当に良かった。

 

「後は、本体の方からもデータを……」

 

 こっちはこっちで相当に難しい。時間もかかるだろう。けれど、やらなくちゃ。だって。

 

「僕は、そのためにここに来たんだから」

 

 乱れそうな呼吸を落ち着かせて、すっくと立ち上がる。間違っても『異変』を悟られてはならない。僕は何食わぬ顔で、誰一人にも気づかれることなく、成すべきことを成さねばならないのだから。

 

「大丈夫だろう、僕。嘘をつくのには、慣れてるじゃないか」

 

 自分に言い聞かせるようにそう呟いて、僕は一夏が待っているであろう自室へと、歩を進めて行った。

 

 

 

───フムフム。では、ワタシも()()()()()()ッスよ、覆面さん(Undercover)




 どうも、作者のGeorge Gregoryです。

 GW特別セールだとかで3部作が3000円で売ってたので、1しか遊んだことのなかったダンガンロンパをやりこんでました。『1』を初見で遊んだ時の数少ない自慢は、ノーヒントで黒幕の正体に気づいたことです。好きだなぁと思ったキャラから死んでくのは、3回目くらいでもう笑ってましたが(笑)

 ようやく『1』が終わったので、ここからは完全初見の『2』『3』。いやぁ、実に楽しみです(*´ω`*)

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

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