ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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投稿が滞っていた理由
・夏前の冷房修理ラッシュで仕事クッソ多忙化
・『ダークフェニックス』見るために空いた時間で過去の『X-MEN』劇場版全部見てた
・AP半減にかこつけて種火周回しまくってた
・『逆転裁判』が面白過ぎた
・メンタル再度ズタボロにて心療内科でもっと強い薬貰ってた(多分最大の原因)

最低でも月1更新だけは守っていきたいと思います……(薄弱な決意)



Feeling Lucky Ⅴ

────実のところ、僕はISに携わるようになるまで、父の存在を知りませんでした。

 

 フランス東部ブルゴーニュ地方、セーヌ川のほとりにディジョンという町があります。ブルゴーニュと聞くと真っ先に赤ワインが思い浮かぶでしょうけど、ディジョンは『他に何があるの?』と皆が真顔で言うくらいマスタードでも有名なんですよ。黒いラベルの『MAILLE(マイユ)』で調べてみれば、きっと「見たことある」ってなるんじゃあないかな。そんなディジョンという町で、僕は13歳になるまで母さんと2人で暮らしていました。

 

 母さんは観光局に勤めていて、休みの日には色んな場所へ連れて行ってくれました。黒い聖母像やフクロウの彫刻で有名なノートルダム教会。フランドル・ネーデルラント地方出身の芸術家たちの作品で彩られたシャンモル修道院。ちょっぴり遠出して観に行ったニュイ・サン・ジョルジュのイチョウ並木は、とても綺麗な黄金色をしていたのを、今でもはっきりと覚えています。

 

 小さい頃は、父がいないことが不思議でなりませんでした。無邪気に何度も尋ねては母に苦い顔をさせてしまって、その度に「あぁ、僕はいけないことをしているんだ」と子ども心に自責の念に駆られた。その内、それを“当たり前のもの”と受け入れられるようになって、少しでも家計の助けにしようとご近所さんのブドウやからし菜の収穫を手伝ったり、個人商店の店番なんかでちょっぴりずつお小遣い稼ぎをし始めた頃に、()()は起きました。

 

 フランスに暮らす人々なら知らない筈もない、1910年1月28日。セーヌ川で大洪水が起こり、パリでは最大水位が8.62mにも達して約2万戸が浸水。完全に水が引くまで、実に1ヶ月以上を要したそうです。オルセー美術館の窓も割れに割れたそうで、当時の水位を示す線が近くのアパルトマンの入り口に記録されているのを、母から聞いたことがあります。そして、あの春。『歴史は繰り返す』とばかりに再び、局所豪雨によって水源から発生した鉄砲水が石灰質の谷を巻き込んで巨大な土石流を引き起こし、セーヌ川流域全てを呑み込まんと迫ってきていると、テレビやラジオがけたたましく避難勧告をしていました。

 

 当時、僕はそれを、連日の悪天候で休校になった平日の昼間に、母と一緒に家のリビングで聞いていて、手当たり次第に荷物を纏め、瀑布のように叩きつける大雨の中、少しでも高い場所へと必死に走り続けていました。後から知ったことだけれど、この時の降雨量は例年の優に数倍を記録していたそうです。

 

 ディジョンからセーヌ川水源までは僅か30㎞しか離れてなくて、いくら迅速に報道されたと言えど、『限界がある』のは当時の僕にだって解っていました。だからこそ『一刻でも早く』『少しでも高く』と、決して運動神経の良い方ではない母さんの手を引いて、もう自分でも恐怖からくる涙なのか、顔を濡らす雨粒なのかも判別がつかないほど必死に避難所へと向かっていた、その時でした。イヤホンで聞きっぱなしだったラジオから戸惑ったような声が聞こえて、思わず水源の方の空を見上げたのは。

 

 そして、僕が“Infinite Stratos”という存在に、心からの憧れを抱くようになったのは――――

 

 

 

 

「ふい~、さっぱりした~。思わず長風呂しちまったよ。やっぱり広い湯船は最高だな」

 

「―――あれ? シャルル、まだ戻ってないのか?……なんだコレ。メモ?」

 

「なになに? 『整備管理課での手続きが長引きそうなので先にゴハン食べてて下さい』」

 

「あれま。まぁ、それならしょうがないか。1人……ってのもあれだし、誰か誘ってみるかな。確か、アリーナでアイツら訓練してたはずだし、声かけてみるかな」

 

 

 

 

 

 整備管理棟、ガレージルーム。自分の“RRCⅡ”用に割り当てられているハズの室内を覗き込んで誰もいないことを確認すると、僕は直ぐに中へと入り、後ろ手で扉を閉めてロックをかけた。

 

「はぁ……」

 

 力なく安堵の息を吐き、背中を扉に預けてズルズルとへたり込む。寮の脱衣所からここに来るまでの道中、とにかく緊張の糸が張り詰めっぱなしだった。こっちに向けられる視線の全てが怪しく見えてしまって、平静を装うだけで精一杯だった。何人か声をかけてきた女生徒たちにも、変な受け答えをしてしまっていたように思う。何せ“あんなこと”があった後だ。こんな短時間で完全に持ち直せるはずもない。

 

『―――フム。ここなら、大丈夫そうッスね』

 

 そう言って、僕の襟元から()()()はぴょんと飛び降りて、部屋の中をグルリと見回していた。掌サイズの円盤に、4本のカギ爪のような脚。まるで子どもが描いた落書きのクモような姿をしたソイツは、背中に小型とはいえ、十分な威力を思わせるビームガンを背負っていた。そして、そのカメラアイがモールス信号のように明滅すると、くぐもったような誰かの声が聞こえてくる。独特の語尾や抑揚からして、機械音声でなさそうだ。加工しているだけで誰かの肉声だと思う。

 

 やがて室内の確認を終えると、カメラアイに付随した銃口がこちらを向いて、背筋にうっすら寒気が走る。撃ってくる気はないみたいだけれど、銃口を向けられていい気はしない。

 

「……あなた、何者、なんですか?」

『雇われエージェントッスよ。今の任務は、言わなくても解るッスね?』

「…………」

 

 そこは、推測するに難くなかった。あの時、あの場所にいた理由。考えるまでもない。

 

 考えてみれば、彼が今まで“僕みたいな目的を持った人間”の被害に全くあってこなかったハズがない。なのに今まで無事だった理由は、“こういうこと”だったのだ。

 

「僕を、どうする気ですか?」

『ン~、どうするッスかねぇ。現行犯、見ちゃったッスからねぇ』

「今まで僕以外に、あなたに見つかった人は?」

『その辺は、ご想像にお任せするッスよ』

 

 なんとも思わせぶりな言い方に、更に動悸が乱れ、焦燥感が募る。

 

『あぁ、そうそう』

「……?」

『管理人室のコンソールに仕込んだシステム、隠蔽工作が杜撰すぎッスね。アレじゃあ()()()()()()って言ってるようなモンッス』

「なっ」

 

 あの時点で既にこの人にはバレてたというのか。背中をドッと冷たい汗が流れた。つまり、僕は。

 

「泳が、されてた?」

『二ヒヒ。マァ、有り体に言えばそういうことッスね。ちなみに、あのコンソールには“こういう事態”に備えて、ダミーしか入ってないッスよ』

 

 そこで、僕は完全に言葉を失い。

 

『この程度、ワレワレが想定してないハズがないッス。彼のISの稼働データは常に完全独立(スタンドアローン)のHDDに記録しているッスよ。学園のライブラリに接続されているあの部屋の機材には、それらしく見える偽のデータと、一般公開されている程度の機体情報しか入ってないッス』

「じゃあ、僕のやってたことって」

『エェ。骨折り損のくたびれ儲け、ってヤツッスね』

 

 今度こそ、完全に身体から力が抜けた。足元が崩れ落ちていくような脱力感に、糸の切れた人形のようにだらりと両手を床に落とし、思わず視線を虚空にさ迷わせる。

 

『サテ。それじゃあ、アナタの今後に関するお話ッスけど―――』

 

“考え込む所作”を再現するかのように、そのクモは胴体を傾けて斜め上を見上げるような動きをした。こんなミニマムサイズでありながら、どれほどの技術が詰め込まれているのだろうと驚嘆する。

 

 いっそ一思いに断ち切ってくれと思いながら、まるで海底に沈められたような息苦しさに耐え続ける。十三階段を上る罪人も、このような心持だったのだろうかと想像して、最早歯向かうような気概もなくして粛々と“執行”を待つ。やがて、実際にはものの1分にも満たなかったであろう、長くて堪らない沈黙の後。

 

『───取引、するッスよ』

「……取引?」

『エェ。幸い、アナタは未だ“男子学生”としてここにいる。今のアナタの立ち位置は、ワタシの任務をこなすにあたって最適の立ち位置ッス』

「僕に、寝返れって?」

『断れる立場ではないと思うッスけどネェ。直ぐに当局へ突き出さないだけ、まだ良心的では?』

 

 その通りだ。今や僕はギロチン台に繋がれたも同然であり、その縄を握っているのはこのクモ型ドローン、その向こう側にいる“誰か”だ。

 

『悪くはないお話だと思うッスよ? しっかりと勤め上げてくれたなら、その時は問題のない範囲での情報の提供もヤブサカではないッス』

「そ、れは」

『ワレワレとて、四六時中スグに彼を守れる場所にいられるわけではないッス。その点、アナタなら常に彼の傍にいることが出来る。その対価として、ワレワレは彼の情報をアナタに提供する。ちゃんとした取引ッス。何なら、念書とか用意してもいいッスよ』

「…………」

 

『取引』と聞いた時は最悪の展開だと思ったが、これに偽りがないなら、彼(?)の言う通り『悪くはない』。むしろ、下手にコソコソと忍んで色々仕込む手間、それに伴うリスクを避けることにも繋がる。

 

『サァ、どうするッスか?』

 

 信じられない、と疑う自分も確かにいる。けれど、今の自分の立場上、この提案を蹴ったところでメリットがない。それならば、いっそ。

 

「……わかった。貴方に従う」

『二ヒヒ。取引成立ッスね』

 

 いっそのこと、虎穴に飛び込んでやろうじゃあないか。

 

 キュイン、なんて機械音を鳴らしながら、クモの脚が1本、こちらへ向けて伸ばされる。何事かと数瞬考えて、握手を求めているのかと行きついてその先端を摘まむようにすると、キュインキュインと上下させ始めた。ちょっぴりカワイイと思った。

 

 そして。

 

『では、今後やりとりはガレージルーム(ココ)でするッス。時間は、消灯の30分前に。ワタシのことは、そうッスねぇ……では、“Orvus(オーバス)”と』

「オーバス、さん」

『エェ。では、Ms.デュノア。アナタに最初の指令を与えるッス』

 

 

 

 

 

『次の学園別トーナメントで、織斑一夏少年と“チーム”を組むッスよ』

「……“チーム”?」

 

 こうして、僕たちの奇妙な協力関係は始まったのだ。

 

 

 

 

 




 補足説明

・“ボットロングラブ(Spiderbot Glove)”(出典『2』)
 英名の通り、小さいクモ型の自爆するロボットを射出、自在に操れるガラメカ。地続きであれば、遮蔽物に隠れながら遠くの敵を攻撃できるという利点はあるが、初期段階ではさほど威力がないので強化がとても面倒くさい。尚、原作では制限時間があり、ジャンプも出来ない。ビームガンが搭載されるのも強化後。どちらかと言うと、攻撃よりもギミックを解くのに多く使われる。

・“オーバス(Orvus)”(出典『FUTURE2』)
『知っとるか? この宇宙はな、素敵なユーモアでいっぱいなんじゃ』
 『Storm The Front』の時にも説明しました“グレート・クロック”の前管理人(故人)にして実質的なクランクの『父親』。ブラーグのロボット工場に人為的にバグを起こしてクランクを製造させた。『1』のラスト手前では、その工場の製造機のAIらしきものとの会話シーンがあったりするが、ひょっとするとあれもオーバスからのメッセージ……は、流石に考え過ぎかな(『FUTURE』以降の設定はどうにも後付らしきものが多いので)
 宇宙の時の流れを司る種族“ゾニー”のリーダーであり、いつかクランクがグレート・クロックを訪れ自分の全てを受け継いでくれると知って、沢山のビデオメッセージを遺していた。彼が時空の修正に使っていた錫杖は『FUTURE2』にてクランクの手に渡り、最後には管理人ロボット“シグマンド”の手に託されている。

 どうも、作者のGeorge Gregoryです。

 大体前書きの通りです。夏冬前はアホかってくらい忙しくなるんです、この業界。だから早い内に直せってこちとら早期に見積出してるのに皆揃いも揃ってギリギリになってから焦って「1ヶ月以内に終わらせて欲しいんですけど出来ますよね?」とかふざけんじゃねーぞ納期ってのは最短で工事にとりかかれる期間なんであって絶対にそれまでに終わらせられるってことじゃねーんだぞウチだって業者さんだっていつでもフリーってわけじゃねーんだ頭下げまくってそれでも無理だったのに「そこをどうにか」じゃねーんだ大体2年前の見積いきなり引っ張り出してきて「お値段変わりませんか?」とか一度値引きした見積に対して「もっと安くなりませんか?」とかいくらなんでも図々しいと思わねーのかテメーらは(ry

 久し振りに書いたので文体がめちゃくちゃになっていなければいいのですが……いずれちゃんと修正したものを投稿しなおしたい(´・ω・`)

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

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