ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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いよいよ始めた『大逆転裁判』がシャーロキアン殺しすぎて止まらなくて更新遅れました(まだ『2』の途中)

仕事の愚痴やら映画や本の感想やら、色々垂れ流しているだけのアカウントですが、良ければ暇つぶしにどうぞ。……既に特定された方もいらっしゃるみたいですけれども(笑)
『Twitter:@TougezakiGeorge』


To Be or Not To Be Ⅰ

『あぁッ!! ジャニスッ!! ボクの可憐な"蜂蜜漬けのさくらんぼ(Honey Cherry)"ッ!! どうしてキミはそんなにもボクの心を狂わせるんだッ!!』

『あぁッ!! ランスッ!! アタシの素敵な"ジャコウブドウ(Muscat)"ッ!! それはアタシが嘗てアナタにかけてしまった、先祖代々伝わる黒魔術のせいなのよッ!!』

『なんだってッ!? もしかしてキミは、あの夏の日に出会ったサイボーグ魔術師だったのかいッ!?』

『えぇッ!! その通りよッ!! あぁッ、ランスッ!! あのサバトの夜の記憶を、アタシが消してしまったのよッ!!』

 

「―――にゃんとッ!? ここに来て更に新展開ですとォっ!?」

 

 ラジオから大音量で流れているドラマ番組の思わぬ展開に、私はボリボリ齧っていたスナック菓子を咥えたままガタッと椅子を鳴らして前のめりになる。巻き込んだメモやら研究資料やらがパラパラと音を立てて辺りに散らばったような気がするが、知ったことではない。ボリボリ咀嚼したのをすっかり温くなったジュースで飲み干しながらラジオを鷲掴みにしてジィッと睨みつける。

 

 いつからか詳細不明のチャンネルから聞こえだした謎の"言語"。3日ほどで解析を終えたので翻訳パッチを作成し当て嵌めてみれば、なんと流れ出したのは()()()()()()であった。"あっくん"や"らっちゃん"曰く、自分たちの銀河系で実に10000話以上制作されている大長編シリーズで、コアなファンも多いのだとか。

 

 大衆向けの、それもメロドラマなんて、と最初は思っていた。けれど、時間ならば有り余っていることだし、折角の"空の向こうの文化"なのだから、と聴き始めてみると――――これがなんとまぁ、存外面白くてドハマりしてしまった訳である。

 

 ぶっちゃけ、話の構成は地球のそれと大差はない。男女が睦み合ったり、時に喧嘩したり、そこに第三者が現れて場をかき乱したりと、特に王道から外れる様な奇特な展開がある訳ではない。けれども、まぁ、一々出てくる単語が()()なのである。

 

「吸血ゾンビにサムライ忍者の次はサイボーグ魔術師と来ましたか……一体どのような……またらっちゃんに聞かなくては」

 

 更に驚きなのが、この吸血ゾンビだのサムライ忍者だの、彼らの銀河系には実在しているばかりか、なんなら戦ったことすらあるらしい。その時の戦闘データなんかもう垂涎ものでして。

 

「おっと、ヨダレが」

 

 ぐしぐしとエプロンドレスの裾で拭い、先の展開にしっかりと耳を澄ます。まさかこの篠ノ之束に飽きさせもせず5000話以上ぶっ続けで聴かせるとは。らっちゃんが、グラメルネット?とかいう通販で調べてくれたけど、コンプリートBOXには実に30000本以上ものエピソードが収録されているらしい。しかも、今も尚、新シーズンが製作され続けているんだとか。たばねちゃんおったまげ、である。

 

「ヌルッフッフ、こりゃまた堪りませんなー……っと、そろそろ"約束の時間"かな~?」

 

 クルリと椅子を廻し、床を蹴ってガラガラーッとキャスターを使ってコンソールの前へと一気に移動。一際のドヤ顔でカチャカチャカチャのスタタターンッ、とキーボードを連弾。「よろしくおねがいしまぁ~~~~~すッ!!」の一声と共にエンターキーをポチっとな。後は鼻歌混じりに学園のカメラへハッキングして。

 

「――――さぁて、お楽しみは俺からだっぜ★」

 

 ズビシッ、と無駄に洗練された無駄なポーズを決めながら、私は()()()()()()()()を確保するのだった。まる。

 

 

 

 

 

「ん……やっぱり、凄い人」

 

 階段を上った先、覗き込んだ第一アリーナの観客席は、春先のクラス代表決定戦の時以上の賑わいを見せているようだった。見渡す限りの人、人、人。学園にはこんなにもいたのか、と正直驚きを隠せない。けれど、まぁ、納得だ。()()()()()()()を早々に見られるとは思っていなかったし、これを見逃すような生徒は、この学園にはまずいるまい。私だってこうして、わざわざ足を運んできた訳だし。

 

「えっと、本音は……すみません、ちょっと、通して」

 

 確か、東側の結構前の方だって、ショートメールには書いてあったけれど。立ち見でごった返す人の群れを掻き分けながら、あの特徴的な癖っ毛頭を探す。暫く視線を右往左往させながら進むと、いつもの眠そうな目つきをした幼馴染を見つけた。

 

「あ、かんちゃ~ん!! ここ、とっといたよ~!!」

 

 こちらに気付いて、()()()代わりにしていたダボッと余った袖をブンブンと振りながら自分を呼んでいる彼女の元へ向かう。空いた隣の席をポンポンと叩いているので、少々縮こまりながら腰を下ろした。

 

「わ、結構いい席じゃないの、ここ」

「んふふ。かんちゃん的にはこの辺がいいでしょ~?」

 

 中段よりも少し上。アリーナ全体を見回すにはちょうど良い高さだ。大抵の生徒はなるだけアリーナに近い席で、なるだけ()()()()()で観たいだろうけれど、私としては戦況を満遍なく観察できるこの辺りがとても好ましい。

 

「それで、始まるまであとどれくらいなの?」

「ん~っと……あと、5分くらいかな~」

 

 聞けば、エキシビションに移る現在時刻と、手元のトーナメント進行予定表を見比べて答えてくれた。周囲の生徒たちは誰も彼もが今か今かと待ち侘びており、互いを見やっては「ねぇ、どっちが勝つと思う?」なんてありきたりな談議に花を咲かせている。まぁ、無理もない。私もこの対戦カードじゃなきゃ、わざわざ“弐式”の開発を止めてまで見に来る気もなかったし。

 

「かんちゃんは、どう思う~?」

「……正直、難しいと思う」

 

 努力は認めるけれど、如何せん相手が相手だ。本物の戦場を知る軍人、それも(階級)持ち。連携の心得だって充分に持ち合わせているはず。けれど、それは『完全な個人戦であれば』という前提条件下であり。

 

「可能性があるとすれば、"連携"、だと思う。お互いにどんな作戦を組んできてるか次第、かな」

「んふふ~」

「……どうしたの、本音」

「ん~ん。かんちゃん、勝って欲しいんだな~って」

「~~~~ッ!?!?!?」

 

 言わ、れて、みれば、確かにそうだ。当たり前のように"彼"の視点で話していた。カッと一気に熱くなった頬を隠すように両手をやり俯く私を、本音は微笑ましそうに、いつもより気持ち目を細めて見下ろしていた。

 

 確かに、頑張っているのは知ってる。こないだの中国の候補生の時には、ちょっとだけ協力もした。でも、それはなんでだろう、と考えてみる。想像していたような人柄と違ったから? 立場を鼻にかけず、女尊男卑にもめげず、直向きに努力できるのは素直に好ましいと思う。けれど、決してそれが全てではなくて。

 

「良かった~。ちょっと心配してたんだ~」

「心配?」

「うん。かんちゃん、専用機のことで()()()()あったでしょ~?」

「……あぁ、そういう」

 

 そっか、本音にも気にかけられていたんだ。ホントに視野狭窄になってたんだなぁ、と痛感する。

 

『キミは、自分が思っている以上に、愛されているよ』

 

 あの日。専用機開発の協力を申し出てきた時。にべもなく断った私に、困ったような微笑みで"あの人"が告げてくれた言葉。当時はとても信じられなかったけれど、いろんなゴタゴタが片付いて、精神的な余裕も持てるようになって、そしてようやく気が付いた。“私が気が付いてなかっただけなんだ”ってことに。

 

「うん、解ってる。"彼"は別に悪くないって」

「そっか~。それならいいんだ~」

 

 心地好さげに鼻歌なんかを歌いながら、袖の中からビスケットを取り出して頬張り、ジュースのストローを啜る本音。昔からいつもそうだ。何も考えていないようで、この子はいつも適度な距離から、煩わしくない程度に、手を差し伸べてくれたり、そっと背中を押してくれていたりする。"家同士の繋がり"があるとはいえ、今まで付き合いが続いているのは、この何とも言えない心地よさがあるから、なんだと思う。

 

「おりむ~、すっごく頑張ってるからね~」

「……うん。そうだね」

 

 私が勝手に、彼に奇妙なシンパシーを感じているのは事実だ。形は違えど、"優秀な姉"がおり、それ故に"多くの偏見"に晒され、"結果"を求められている。そんな酷く一方的な境遇に、彼は文句を言ったって良い筈だ。だのに、彼は不貞腐れるでもなく、胡坐をかくでもなく、目を輝かせてひたすら真っ直ぐに空を目指している。まるで年端もいかぬ子どものように。

 

 ――――あぁ、そうか。そういうことか。『私と同じような境遇(だと勝手に思っている)の彼の努力が報われずに終わって欲しくない』んだ。それは、遠回しに私の努力も否定されてしまうような、そんな気がしてしまうから。

 

「……なんか、ちょっと罪悪感」

「?」

 

 咥えたストローからチュゴーなんて音を立てながら、小首を傾げてこっちを見る本音に「なんでもない」と返す。それは、私も少なからず彼を『色眼鏡で見ている』ということじゃあないか。それは、私が何よりもされて嫌だったことじゃあないか。

 

 でも。だけど。それでも。だとしても。

 

「むつかしく考えすぎだよ、かんちゃん」

「え?」

 

 逆接ばかりが埋め尽くしていきそうな思考の渦を、そんな呑気な声が遮る。導かれるようにゆっくりと顔を上げると。

 

「応援するのに、ちゃんとした理由なんていらないよ? 頑張って欲しいから、でい~んだよ」

「――――――」

 

 あぁ、まただ。知らず知らずの内に、欲しい言葉をくれる。ズブズブと沈んでしまいそうな気持ちを引っ張り上げてくれる。姉さんと盛大に擦れ違って思い切り拗らせていた時期も、何度も「放っておいてくれ」と突き放したのに、いつも傍らにそっと寄り添ってくれていた。今だから解る。酷いことをしたと。そして、これほど有難いこともないのだと。

 

「だから、一緒に応援しよ?」

「……うん」

『ただいまより、学年別タッグマッチトーナメント1年生の部、第1回戦を開始致します。両選手、入場してください』

 

 突如響くアナウンスに、アリーナ中からワッと歓声が沸く。そして東西2つのゲートが開き、躍り出るのは色とりどりのIS4機。シンプルに近接特化の"打鉄"を纏う篠ノ之さんは緊張混じりに顔を張り詰めさせて。陽光を照り返すオレンジが眩しい"Rafale Revive Custum Ⅱ"を纏うデュノアくんはどこか不敵そうな笑みで。曇り1つない漆黒の"Schwarzer Roegen"を纏うボーデヴィッヒさんは隠し切れないほどに目を輝かせて。そして。

 

「……頑張れ」

 

 そんなボーデヴィッヒさんを前に、本当に嬉しそうな笑顔で"白式"の"雪片弐型"を正眼に構える織斑くんに、私は小さく呟いた。

 

 




サブタイトルの元ネタ
『ラチェット&クランク2(PS2)』のスキルポイント
"アリーナの伝説(2B or not 2B hit)"
 惑星マクタールのメガコープアリーナでB2ブロウラーという敵にノーダメージで勝利することが条件。ガラメカをしっかり強化していればさほど難しくはない。
尚、『To be or Not to be』は直訳で『あるかどうか』となり、シェイクスピアのハムレットでは『生きるべきか、死すべきか』と翻訳されていることで有名。

 どうも、作者のGeorge Gregoryです。

 色々ネタを確かめるために『INTO THE NEXUS』をやりなおしてみたら、“ランスとジャニス”は10,000とんで972話ですってよ……あれから続いてるんならこれくらいはいってるだろう、という天文学的憶測からこんな数値になりましたとさ(聞いてねぇ)

 はい、いよいよトーナメント開催です。もうちょいで、この作品で書きたかった“2つ目の山”に差し掛かろうという頃合い。更新ペースを上げたいところですが、会社が、仕事が……とうとう三十路に突入した身体は如実に体力の衰えを訴えかけてきているのです。ぐぬぬ。

 あ、ハニーチェリーとマスカットの下りは、最近久し振りに全話見直した某アニメのバカップルキャラから頂戴しました。スパロボ再参戦ありがとうございます(今更感)。

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

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