ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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とうとう雪が降りました。
外仕事が嫌になる季節の到来です。
最近、仕事が一層辛くなってきました……


……それはそれとしてガラル地方とても楽しい。鋼ポケモン結構優遇されてて大満足。



To Be or Not To Be Ⅱ

――――『好きの反対は無関心』という言葉がある。

 

 何とも思っていない相手にならば、好かれようが嫌われようが、関係がない、と。だが、私にはどうにも、そうとは思えない。でなければ、私の苦しみに説明がつかない。

 

 "白騎士事件"の後、重要人物保護プログラムによって国内を転々とした日々。暗鬱にして惨憺たる日々。誰の心に残ることもなく。どこに腰を据えることもなく。ただただ、暴風の中の木の葉のように、激流の中の小枝のように翻弄される内、いつしか"ヒトなのだ"という自負すら、諦めた。私の意志に関係なく四肢を操る"見えない何か"は、私の耳元で延々と"篠ノ之束の妹であれ"と囁き続けた。誰も、誰一人として、"篠ノ之箒"を求める者は、いなかった。

 

 だからこそ、"篠ノ之箒"を知る一夏に、私は縋ったのだと思う。春先のあの教室で、確かに大人びた、しかしあの頃から変わらない横顔に、どうしようもなく泣きたくなった。思わず声をかけ、2人きりになろうと教室から連れ出した。話したいことが山ほどあった。会えた時には"あれを話そう""これを話そう"と色々考えていた。けれど、いざ向き合った途端にそれらは全て、いっそ清々しいまでに霧散してしまって、形容できない感情にどうにか輪郭を与えようと四苦八苦している内に一夏の方から話しかけられて、やはりしどろもどろに回答していたような気がする。

 

 そして、だからこそ、あの"道場での一件"を、最近になって有難く思うようになった。あのままでは、私は一夏に()()()()()()()()()()()()かもしれないと、そう思えてならない。"私の理想"を押し付けて、"私の未来"を背負わせて、いつかその重さでアイツを圧し潰してしまうのではないか、そんな不安さえ、今は感じる。私は、私が思っていた以上に"重い女"だったようだ。

 

「キミは、ちょっと真っ直ぐすぎるな、篠ノ之さん」

 

 一夏たちとの合同訓練の度に、忙しい筈の業務の合間を縫って監督として口を出すカデンソンさんに、最初は"技術屋風情が""面白くない"と唇を尖らせた。だが、そんな私の薄っぺらい評価は、“アリスター・カデンソン”という人物と触れ合う内にあっという間に覆された。披露される知識は技術的な面に留まらず、搭乗者への的確なアドバイスまでこなす。セシリアはBITの機動が以前よりも明らかにスムーズ且つ複雑化してきたし、鈴はずっと身のこなしが軽やかになった。何より、始めて間もない頃は竹刀の素振りさえブレて安定しなかった一夏の剣が、見違えるほどに速く鋭くなった。何故にそうも幅広く詳しいのかと尋ねても『昔取った杵柄、ってヤツさ』と、一向に謎は深まるばかり。

 

 そしてそれは、()()()()()()も同じで。

 

『―――そう、それが()()()だ』

 

 クラス代表戦時の無人機騒動、その最後。確かに耳朶を擽った、変声機を通しての“黒猫”の声。勿論、ただの偶然、という可能性もある。『3つ目』なんてありふれた言葉だ。私の知るものと同一である可能性の方は、決して高くない。

 

 けれど、私は何故か“黒猫(アレ)”がカデンソン先生なのだと、半ば確信に近いものを感じている。根拠はない。ただの勘だ。開けてもいない箱の中身を、経験則から当てずっぽうに言っているだけに過ぎない。

 

 なので。

 

「先生」

「ん? なんだい、篠ノ之さん」

「先生は、“黒猫”なのですか?」

 

 訊いてみたのだ。単刀直入に、ズバッと。

 

 ある日の合同訓練の片づけを終え、皆がシャワールームやら何やらへ向かったのを見送って、『質問がある』と整備管理棟、その管理人室で2人きりにしてもらって。

 

「…………」

 

 その沈黙が意味するのはいかなる感情か。表情は面食らったようにも、こちらを値踏みしているようにも見えて、尋ねてしまってから(早まったか? それとも取り返しのつかないことを?)と内心冷や汗ものだったのは、ここだけの話。

 

 やがて、傍らの湯呑から茶を一口啜ったかと思うと、先生は緩やかに椅子を廻して身体をこちらへ向けて、こう言ったのだ。

 

「そうだよ。だから、秘密にしておいてくれないかな」

「―――え?」

 

 てっきり誤魔化すなり煙に巻くものと思っていた私はこの時点で相当に面食らってしまい、人差し指を立てて、悪戯がバレた子どものようにウインクしながら微笑む先生に、完全に言葉を失ってしまって。

 

「―――()()()()()()のかな?」

「あ、え、えぇ?」

「まぁ確かに、一夏くんという前例から『男ではない』とは一概に言い切れないけれど、オイラの忙しさはキミもよく知ってると思うんだけどねぇ」

 

 それこそ世界中飛び回ってる暇なんてないんだけどなぁ、なんて腕組みしながらブツブツと呟く姿には、少なくとも訝しさはないように見えて、私の混乱は更に極まっていく。

 

「まぁ、そこで飾り気なく真っ直ぐに訊いてくるあたり、なんとも篠ノ之(キミ)さんらしい」

「あ、りがとう、ございます?」

「褒めてはないよ。まぁ、それがキミのいいところでもあるんだけどね。……何にせよ、今オイラが"YES(はい)"と言おうが、"NO(いいえ)"と言おうが、信じられないだろう? ()()()()()()じゃない、この手の質問ってさ」

 

 更に一口、茶を啜る。そして、すぅっと目を細めた。それだけで、私の身体は一層の緊張に強張り。

 

「――――で、『仮にオイラが"黒猫"だったとして』、キミは何が知りたいのかな?」

 

 その質問で、なんとなくだが、解った。あぁ、この人は()()()()()()()()気もなければ、()()()()()()()気もないのだ、と。

 

 そして、思わぬ形で私は知ることになる。この世界は、私が思っていた以上に遥かに悪意が、そしてそれと同じくらいの、あるいはそれ以上の善意にも、満ち溢れているのだと――――

 

 

 

 

「――――おい。やけに静かだが、大丈夫か?」

「っ、あ、あぁ」

 

 こちらを心配そうに覗き込む銀髪眼帯のクラスメイトの声に我に返る。第1アリーナBピット内。とうにIS用のスーツに着替え、試合の開始時刻を待っていたところでふと、1週間ほど前の()()()()()()()()()()()()を思い返していた。

 

「なんでもない。少し、関係のない考え事をしていただけだ」

「そうか。……緊張の色は見えるが、ほどよく力みも抜けているようだな。他に考え事をする余裕があるなら、いい具合と言えるだろう」

 

 フン、と軽く胸を張って言うその姿は、いっそ微笑ましい。この数週間、彼女と鍛錬を共にしてよく解ったことだが、今まで出会ってきたどんな人間よりも驚くほどに()()がない。思ったことは竹を割ったように、いっそ無遠慮なほど端的に言う。しかしそこには確かな実力が伴っており、指揮官としての経験も活きているのか、特に近接戦闘に関しては目から鱗が落ちるようなことが何度もあった。初めて国際交流というものに価値を見出した瞬間である。

 

「戦術はしっかり叩き込んできたか?」

「問題ない。そもそも、私の役割は単純明快だ」

「うむ。新兵に複雑な指令を下すなど、愚昧極まりないのでな。確か、この国の司令官(Kommandant)の言葉だと聞いているぞ。『やってみせ 言って聞かせて させてみせ 褒めてやらねば 人は動かじ』と」

 

 ……あぁ、山本五十六か、と少し遅れて気付く。大方、千冬さん辺りが教えたのだろう。言葉に違わず、彼女は事あるごとに私に手本を見せ、実践させ、成功すれば「よくやった」と必ず声をかけてくれた。その度に、長らく味わった覚えのないこそばゆさに面映ゆくなり、口元をもごもごさせながら言葉を練るものの、結局纏まらずに呑み込んだものである。

 

「大丈夫だ。これは"試合"だ。負けて失う物もない。恐れるものなど何もないッ!!」

 

 黙り込んだのを緊張が強まったと思ったのか、激励の言葉をかけてくる。こういうところも素直に好ましく思う。少なくとも、彼女のような人間ばかりだったなら、私の性根がこうも捻くれることもなかったのだろうか、などと思う程度には。

 

 と。

 

『ただいまより、学年別タッグマッチトーナメント1年生の部、第1回戦を開始致します。両選手、入場してください』

 

 アナウンスが聞こえ、すっくと立ち上がる。ラウラの表情が一気に引き締まったのを横目に見ながら、1度ゆっくりと深呼吸をした。そして。

 

「行くぞ、篠ノ之箒新兵」

 

 その言葉に強く頷いて、私たちはアリーナへと躍り出た。

 




 どうも、作者のGeorge Gregoryです。

 一気に寒くなりました。初雪も観測されました。設備修理業として、嫌なシーズンの到来です。

 ちょっと精神的にヤベーことになってて今回かなり短いですけど、ご勘弁下さい。

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

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