ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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こころがしにそうです(白目)


To Be or Not To Be Ⅲ

ーーーーそれに違和感を覚え始めたのは、10人目あたりからだった、かな?

 

(……んん~)

 

 オーバスさんからの指示で、トーナメント登録までに一夏に接近を図った女生徒たちのリストアップを始めた訳だけれど、そのあまりの”手ごたえのなさ”に、僕は思わず眉根を寄せながら、彼女たちのプロファイリング資料を眺めていた。

 

 正直、1人や2人くらいは僕と同じような()()()がいるものと思っていた。その中でもはっきりと弱点を握っている僕に“首輪”をつけ、所謂二重スパイ(コウモリ)として使われるのが目的なのだ、と。けれど、この数週間で調べた全34名、びっくりするほど“何もない”のだ。ごくごく普通。後ろ盾ばかりか、何の変哲もなく、強いて言うなら『実家が多少の小金持ち』程度。僕が注意を払う必要性なんて、まるで感じないレベルの。

 

(そりゃあまぁ、いないに越したことはないんだけど)

 

 ちょっと肩透かし感は否めない。別に張り切っていた訳じゃなく、むしろ内心ビクビクと強張りながら仕事にあたっていたのだが、ここまでだとさすがに拍子も抜ける。そして、それ故に思うのは。

 

(オーバスさんは一体、僕に何を調べさせようとしていたんだろう)

 

 彼は思っていた以上に常識的だった。一方的に優位な立場にいながら決して無理難題は吹っ掛けず、『一夏に近づく女生徒調査』の他にも、『アリーナ周辺の通路の映像を撮ってきて欲しい』だの『学園の訓練機の運用傾向が知りたい』だのと、こまごまとした内容もちらほらとあった。正直、今でも『何故?』と首を傾げざるを得ない。

 

 まぁ、そのお蔭、と言っていいのか、トーナメントに向けての練習時間はきっちりと確保できたし、一夏の腕前は贔屓目なしでもだいぶ上達した。"雪片弐型"の扱いだけじゃなく、"吹雪"の命中率も今では2割に到達しつつある。そこ、低いと思うなかれ。動く標的相手に狙って2割当てられれば、それはもう『初心者卒業』と言っていいレベルなのだ。流石に狙った()()はまだ難しいが、"雪片弐型(日本刀)"を主軸として牽制や攪乱に使うのであれば、十分であると言えよう。

 

「……ん? どうした、シャルル。顔に何かついてるか?」

「ん、いや、なんでもないよ。緊張してないかな、って」

 

 試合開始直前。落ち着かないのか、立ち上がってその場で軽く足踏みをしたり、肩や股関節周りのストレッチに勤しんでいた一夏から声がかかる。

 

「おぅ。まぁ、緊張はしてるけど、それなりだ」

 

 腑抜けてもおらず、肩肘張ってもいない。呼吸も落ち着いてる。何より、目の奥が爛々と輝いてる。

 

「うん。いつも通り、いい緊張感だね」

「強いて言うなら、ちょっと心臓が煩いくらいかな。「早くアクセル踏めよ」ってエンジンをふかしてるみたいだ」

「楽しみにしてたもんね。まさか1回戦からぶつかるなんて思ってなかったし」

 

 そう。僕たちの初戦の相手こそ、何を隠そう『ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒ペア』なのだ。トーナメント表は公平に完全ランダムで選ばれた、と聞いてはいるけれど、これはちょっと“空気の読みすぎ”だと思う。どうせなら何戦くらいかしたかったな。傍でデータを取りたいって意味でも。

 

ーーーそれに、だ。

 

『ラウラ・ボーデヴィッヒ。彼女と試合することがあったら、アナタにちょっぴり注文があるんスよ』

『注文、ですか?』

『ちょっぴり難しい内容になってしまうんスけどね? お耳を拝借』

『…………え?』

『ワタシたちの予想通りなら、それで万事()()()()()ッスよ』

 

 グッ、と機械の足を持ち上げて敬礼のようなポーズをとるクモ型ドローンを思い出す。にわかには信じがたい。けれどこの数週間で、この丸っこいオモチャのようなモノの向こうにいる“オーバスという人物”は間違いなく悪人ではないと、そういう確信じみたものも確かに出来ていた。

 

『ただいまより、学年別タッグマッチトーナメント1年生の部、第1回戦を開始致します。両選手、入場してください』

「おっ」

 

 ピット内に淡々と流れるアナウンスに、一夏は一気に表情を引き締めながら、しかし高揚感を隠せないとばかりに歯を剥き出しにして笑みを浮かべる。僕はゆっくりと立ち上がり、その斜め後ろあたりで深く呼吸を繰り返す。

 

 そして、ゆっくりとアリーナへと降り立った。

 

(さぁて、鬼が出るか蛇が出るか)

 

 

 

 

 

ーーーーーとまぁ、この時の僕は想像だにしていなかったんです。

 

 そりゃそうですよね。想像なんかしてる訳ない。あの会場にいた全員、1人残らず同じだったことでしょう。

 

 そうです。もう語るまでもなく。今や知らぬ者などいるはずもない、“始まりの日”。

 

 あの日、あの時、あの場所、あの瞬間、僕たちの運命の歯車は、盛大に音を立てて回り始めたんです―――――

 




どうも、作者のGeorge Gregoryです。

すみません。
短めですが、メンタル維持の為にぶっこみました。
ちょっとリアルの方がヤバめになってきたので、次いつになるか見当つきません、ごめんなさい。

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