ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
のべ70話以上。長かったです。皆さんにも相当お待たせしたかと。
さて、ここからがいよいよオリジナル全開になるので、俺の腕の見せ所に……緊張するなぁ(´・ω・`)
「ゴォォォォォォオオオオオオオイングッッッッッッッッ!!!!!!!! コォォォォォォォォォォォマンドォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!」
――――とある英国淑女は真っ赤に染まった頬に両手を添えながら黄色い声を上げ、とある中華娘は口をあんぐりと開けながらぐるぐると目を廻して混乱の極みに陥っていた。
"
――――とあるクラスの副担任は素っ頓狂な声を上げながら丸眼鏡がずり落ちるほど盛大に椅子から転げ落ち、滅多に感情を表に出さない担任でさえ、普段からは想像もつかないほど大きく瞼を開いて驚愕を露わにしていた。
やがて全身をバトルスーツが覆いつくすと、後頭部から展開したヘルメットが寸分違わずに噛み合って重苦しい金属音を鳴らす。同時、随所の排熱口から余剰エネルギーが蒸気として噴出、砂煙を高く巻き上げる。
――――とある生徒会長は"吃驚仰天"と書かれた愛用の扇子を放り投げながら深々と腰かけていたこれまた愛用の椅子から飛び上がってモニターに食らいつき、その従者もまた口に手を当てて“信じられない”とばかりに息を呑んだ。
久し振りの装着に不具合がないか全身の、特に関節の可動域の調子を確かめるために、柔軟運動をするように腕を回したり、膝を屈伸させたりする。本来なら敵の眼前でやるような真似ではないが、コイツはどうやら獣に近い感性の持ち主であるようだ。
――――その生徒会長の妹は観客席にて、危険と解っていながら“少しでも近くで見たい”と出来る限り大きく身を乗り出していた。その従者である少女も、普段から眠たそうに細めている両目を珍しくしっかりと開いて、これから起きるであろうことを見逃すまいとしていた。
"
――――そして、“少年”は、あの日からずっと追いかけ続けてきた背中を、憧れ続けてきた背中を、今にも泣き出しそうな顔で、見上げていた。
「ガッキーン、なんてな」
――――"黒猫"が、そこに、立っていた。
何の前触れもなく、黒い"暮桜"が動き出す。大太刀を振り上げ、袈裟に鋭く振り下ろさんとするその一撃は、記憶の中にある千冬姉のそれと重なって見えるほど遜色がない。そんな、"白式"の装甲をも容易く断ち切った刃は。
《ッ!?》
一発の銃声が轟いた瞬間、まるで弾かれたように真後ろへ跳ね返された。何に、は言うまでもない。彼が放った弾丸が正確にその刀身、その中心を捉えたのだ。
続けざまに何度も銃声が鳴る。その度に、黒い"暮桜"は腕を、肩を、膝を、脚を弾かれ、バランスを崩さないのがやっと、というような体勢で徐々にその巨体を後退させていく。それを追うように、徐に"黒猫"がゆっくりと歩いて近づいていく。それはまるで、じわじわと獲物を追い詰めている狩人のようだった。
「す、げぇ」
以前からカデンソンさんに"銃弾による近接攻撃の
やがて黒い"暮桜"の巨体がアリーナの壁面ギリギリまで追いやられると、"
《――――ッ!?!?》
瞬間、針の端部についている球体が回転、白光を放ったかと思うと刺さった針と針の間で強烈な電流が迸り、悲鳴のような金切り音が鳴り響いた。どうやらあれは“そういう武器”らしい。
「ッ、カデンソンさんッ!!」
「解ってるよ」
「相棒、腹部の少し下ッス」
「了解」
"黒猫"の右手に表れるのは、鮮やかなマゼンタに輝く刀身の"
「キャベツ畑のコウノトリ、ってなァ!!」
切断面に左手を突っ込んだかと思うと、引き抜いた先には。
「ッ、ラウラッ!!」
ぐったりと力の抜けたラウラが、まるで猫が首根っこを掴まれたようにぶら下がっていて。
「ほれ。預かっててくれ、王子様」
「え、ちょっ」
背中のバーニアを使って緩やかな放物線を描きながら俺の目の前に降り立ったかと思うと、割と乱暴に俺の方へラウラを押し付けてきた。
《――――ッッッッッッ!!!!》
言語ですらないのに、その“雄叫び”には大きな憤怒や、喪失感があるように思えた。黒い"暮桜"は力任せに電流を放つ針を引き抜き、傷口を黒い気泡で塞ぎながら傍らに落ちていた大太刀を拾い上げ、その頭部で目のように深紅の光を強く灯した。それは、まるで強い警告のようでも、ヤツの強い憤慨を現しているようでもあった。
「カデンソンさんッ、後ろッ!!」
「あぁ、大丈夫大丈夫」
「もう
そう言って彼は、いつの間にか右手に握っていた深緑色のランチャーを掲げて見せる。すると、黒い"暮桜"の眼前に上空から“何か”が5つほど着弾したのが見えて。
《――――ッ!?》
「発射」
次の瞬間、そこには一本足で立つ砲台が黒い"暮桜"を囲むように並んでいて、"黒猫"のフィンガースナップを合図に光線による一斉射撃を開始した。ヤツが足掻くように身を捩っても、その砲台は自動的にその動きを追ってその砲口の向きを変える。一体どういうメカニズムで動いているのか、全く見当もつかない。
《――――ッッッッ!!》
躱そうとしても躱せないことに痺れを切らしたような
「遅いって」
《ッ!?》
既に、"黒猫"はヤツの懐深くに潜り込んでいて。
「そぉらッ!!」
巨大なモンキーレンチの一撃が下顎を捉え、ヤツは大きく仰け反るように天を仰ぎ見る。そして、そのガラ空きの横っ腹を更なる一撃が捉え、あの巨体がまるでピンボールのようにアリーナの地面を跳ねて行った。どんな膂力をしているのか、と威力を想像して背筋に寒気を覚える。
《ッ、ッ》
何度か派手に転がった後、ようやく止まった黒い"暮桜"が必死に立ち上がろうとしている姿は生まれたての小鹿すら彷彿とさせられる弱々しさで、既に余力もないのか四肢にまるで力が籠もっておらず、微弱な痙攣すら起こしていた。先ほどまであれほど自分たちを追い詰めていたはずの、暴力の塊のようなアイツが。
「だから、遅いって」
そんな黒い"暮桜"に向かって、"黒猫"がディスク状の何かを射出した。それが僅かに空いたその巨躯と地面の隙間に滑り込んだ次の瞬間。
《―――――――ッッッッ!?!?!?!?》
竜巻が、全てを呑み込んだ。
突如発生したその竜巻は、確かに射出され、今も激しく回転しているあのディスクを基として発生していた。その勢いはとてつもなく強く、ヤツの巨体すら容易に持ち上げ、徐々に空高くへと巻き上げる。
「アドリブに弱いのは旧式AIの悪いところッスね」
その直下、"黒猫"が高々と掲げる右腕は、土埃色のバレル状をした見たこともない銃火器へと変わっていて。
「――――なぁ、
それが徐々に回転を始めた。先端部の蒼いジェネレーターらしき部分が3ヶ所展開し、回転が速まるほどに彼の周囲で、これほど距離が離れているにも関わらず肌をビリビリと刺激するほどの放電現象が発生、徐々に強まっていく。
やがて、恐らくそれが最大にまで達した頃、"黒猫"がそれまで俯けていた顔を上げる。それは、仮面の中にあって尚、不敵に微笑んでいるのだろうと、声色で察することが出来た。
そして。
「――――
全てを、紫電が埋め尽くした。
光が網膜を。轟音が鼓膜を。正に“
「……あれ、ひょっとしなくても、宇宙か?」
聞いたことがある。空が青く見えるのは大気と、大気に反射した太陽光によるものなのだと。小惑星の通過などで一時的に大気が消失すると、そこには遮るものが何もなくなり、ほんの少しの間だけ地球上から肉眼で宇宙を見ることが出来る“穴”が空くのだと。
「よっ。無事かい、一夏くん」
誰もが未だ極光の残滓が消えない視界で唖然と空の“穴”を見上げる中、"黒猫"の頭部装甲を解除しながら、こともなげにカデンソンさんが声をかけてくる。
うん、間違いない。カデンソンさんだ。"黒猫"が、カデンソンさんだった。未だにその事実を半ば認識しきれていない自分がいる。そりゃそうだろう。“あの日”からもう何年も憧れ続けてきた人が、まさかこんな近くにいたとか、信じられないのが当たり前じゃないのか。
差し伸べられた手を呆然と見つめ、暫し言葉を忘れる。完全に頭がついていってない。そんな自分を見て、カデンソンさんは視線の高さを合わせるようにしゃがみ込みながら苦笑して。
――――まだまだだな、少年。
その無骨な手にくしゃっと乱雑気味に頭を撫でられた途端、何故か涙が溢れ出して止まらなくなってしまった。
「そこまでだッ!! 両手を上げろ、"黒猫"ッ!!」
溢れる涙を拭って、ようやく気付く。いつの間にか自分たちを中心に教員部隊が包囲網を敷いていた。どうやらようやくアリーナの隔壁が解放されたらしく、観客席の生徒たちも浮足立った様子ながら少しずつ避難を進めていた。
「織斑くん、下がってッ!!」
「"黒猫"は、その、国際指名手配犯ですのでッ!!」
「まさか、学園内にいたなんて……大人しく投降して下さいッ!!」
圧倒的有利な状況にあるはずの教員たち全員が、1人残らず顔を青くして冷や汗をかいている。無理もない。先ほどまでの彼の戦いを見て尚「勝てる」と思うようなヤツがいたら、そいつは愚かどころの話じゃない。いくら学園の教員とはいえ、10人程度が束になったところで敵う筈がないことは明白だからだ。
けれど。
「はいはい。解ってますよ。逆らう気なんてありませんってば。……あ、でも1個だけ」
「な、なんですかッ!?」
銃口以上に声を震わせながらの問いに、驚くほど自然体のカデンソンさんはピッと人差し指を立てて。
「"黒猫"じゃなくて、"黒豹"ね。そこんとこ、よろしく。いやぁ、これず~っと言いたかったんだよね~♪」
そんな茶目っ気たっぷりのウインクを最後に、カデンソンさんは抵抗する素振りもなくあっさりと教員部隊に連行されていった。
(―――失敗か。しかし、データは十分に取れた)
そう判断するや否や、直ぐにこの場を離れることを決める。
(何より、“最重要ターゲット”が学園にいることが判った。これが何よりも大きい)
避難する生徒たちに紛れ、静かにアリーナ出口へと急ぐ。後は機を見て、可及的速やかに“あの御方”へ報告を―――
「―――いいえ。そうはいきません」
背後からのその声に足を止める。そこで、ようやく気付く。つい今しがたまで人混みの中に紛れていた筈の自分が、いつの間にか
「えぇと、どうしたのかなカデンソンさん? こんなところに1人で」
「惚けるだけ無駄です。あなたが知っていること、洗いざらい吐いていただきます」
「……私に、何をした?」
「答える必要も義理も、私にはありません」
クロエ・カデンソン。“
「あなたの専用機、医療用だなんて真っ赤な嘘なのね? こうなると"Great Clock Company"とやらも俄然
「御託は結構。あなたがそれを知る機会は、永遠に失われますので」
「えぇ。そうね」
その肯定で初めて、彼女の眉が僅かに疑念で歪む。恐らく先ほどまでの『人混みに紛れていた』という認識は、彼女の専用機によって途中から歪められていたものなのだろう。即ち、その能力は対象への精神干渉の類。となれば、こちらの意志に関係なく、能力を使用された時点で自分の持つ情報は全て彼女に渡ってしまうに違いない。
で、あるならば。
「――――なっ」
「ふふ、予想外、だったかしら?」
“こういう時”の為に常時仕込んでいる奥歯のカプセルを噛み砕く。中身は、言うまでもない。遠ざかる意識の中、驚愕に顔を歪める彼女の顔を見て、ほんの少し溜飲が下がる。
急速に体温が下がっていく。四肢は麻痺し、心拍は弱まり、とうに五感はその機能を放棄した。全てが遠ざかっていく中で、自分を特定できた理由は解らないが、彼女が自分にかまけている内に
「てい、こ、に、えい、こ、あれ」
「“帝国に、栄光あれ”?」
「―――――――」
「……まさか、躊躇いなく自決するとは。仕方ありません。お父様のリストから他の方を当たってみましょう」
―――――数日後、学園から数名の女生徒が何の音沙汰もなく姿を消したことが発覚した。不思議なことに、その生徒の学籍こそ確かに存在するものの、在校生の誰もがその顔を覚えておらず、一体いつからいなくなっていたのか、そもそも本当に在籍していたのかすら曖昧で、そのことに僅かな疑問すら抱かなかったのだという。
――――見つけたッ!! やっと見つけたぞッ!! やはり来ていたか、あの忌々しいロンバックスめぇッ!!
――――許さんッ!! ようやく軌道に乗り始めた我が計画の邪魔はさせんッ!! “
――――下賤で醜い毛玉種族めぇッ!! 今度こそ絶滅させてくれるッ!! 全能の“帝
――――――"Ratchet & Clank:Infinity Sphere"―――――――
……To Be Continued
補足説明
・"「ゴーイングコマンド―(Going Commando)」"(出典『4』)
所謂“変身時の掛け声”。『4』ではボス戦やイベント戦などの直前でラチェットがこのフレーズを叫び、バトルスーツを身に纏う変身バンクが入る。ちなみにこの変身バンク、実は日本版ROMにしか存在しない。“特撮”という独自のヒーロー文化が根付いている日本ならではの改変である。
……余談であるが。『2』の原題でもある『Going Commando』、直訳すると『コマンド―部隊入隊』みたいなニュアンスになるのだが、実はスラング(俗語)で『下着を履いていない状態』要するに『ノーパン』という意味だったりもする。これは“コマンドー部隊は衛生上の問題から行軍中に下着は身に着けない”というところから転じており、アメリカのコメディドラマ『Friends(1994~2004)』の主要人物の1人Joseph Francis Tribbiani, Jr.が使ったのを切欠に世に広まったそうな(情報源は海外在住の日本語教師をしている友人)。
・"テスラスパイク(Tesla Spikes)"(出典『FUTURE2』)
地面に複数本投げつけると、その間の空間に高圧電流を流してそこを通過する敵にダメージを与える設置型の攻撃ガラメカ。本作では相手にブッ刺しているが、ゲーム本編では針自身に攻撃判定はない。作者はコロシアムステージなどで適当にばら撒いて敵を誘導しながら他のガラメカで攻撃、などの運用法でよく使用していた。
・"レーザーソード(Laser Sword)"(出典『3』)
『3』のポーズ画面にて十字キーで『→→↓↑↑↓←←』と入力すると、近接攻撃のオムレンチがこのレーザーソードになる、という『3』の隠しコマンド要素。実はほんの少しだけ攻撃範囲が広くなっていたりする。
・"ホーダインセッター(Mini Turret Launcher)"(出典『4』)
フィールドに向けて弾丸を射出すると、着弾地点で弾丸が変形、小型の砲台になって自動的に敵を狙い弾薬が切れるまで連射を続けるサポート型攻撃ガラメカ。『2』『3』にも"ホーダイングラブ(Miniturret Glove)"というグラブ状のガラメカがあり、その技術をパk(ゲフンゲフン)影響を受けて作ったらしい。
・"トルネイダー(Tornado Launcher)"(出典『FUTURE』)
ディスク状の弾を射出すると、その弾を中心に竜巻が発生、敵やオブジェクトを巻き込んで破壊しまくる広範囲攻撃ガラメカ。発射後の弾の軌道はコントローラーを傾けることである程度の操作が可能。強化後は竜巻に雷による追撃が加わる。
・"ゾディアック(Zodiac)"(出典『2』)
使うと画面内の敵全員に強力なダメージを与える『2』の2大最強ガラメカの1つ、なの、だが、最大弾薬数が4つと少なく連射性に乏しい上、弾薬1発が他のガラメカに比べてかなり高価なので、使いどころが限られてしまう。よってもう1つの方が使われがち。本作では長時間チャージを必要とするゴン太ビーム砲。
どうも、作者のGeorge Gregoryです。
これにて本当に下拵え終了ッ!! さぁこっからがくっそ大変だなぁッ!! でも同じくらいくっそ楽しみだなぁッ!!
かなり駆け足になってしまった気もしますが、それはそれ、俺ァこだわり始めると延々と悩んでしまうタイプなので、まずはしっかり完結目指して、着実にシナリオを進めることを第一目標にこれからも頑張りますので、どうぞ今後ともお付き合いよろしくお願い致します。
……あ、最後に出てきた黒幕的なヤツですけど、シリーズファンなら誰か解りましたよね?(笑) 解っても(一d一)でお願いしますよ?
さて、気付けはメシも食わずに1日中延々と書いてたので、今からメシ食ってきます腹減った(>'ω'<)
では、また近い内にお会い出来ることを願って。
Twitterとリンクさせて更新報告/予告した方がいいですか?
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