ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

78 / 160
短めですが、キリがいいので。

※後から設定との齟齬に気づいた箇所があったので一部修正しました(2020.3.7)


Be A My Child Ⅰ

――――あの日も、私は整備管理棟のガレージルームで自分の専用機の開発に明け暮れていました。

 

 いつもよりも作業に集中できてた気がしますね。理由は、勿論“あの記者会見”です。アリスター・カデンソン先生。IS学園整備管理課主任で、元倉持技研第2研究室開発局長。そして、私たち姉妹の大恩人。

 

「かんちゃんかんちゃん、先生スゴいことになってるよ~?」

 

 そんな風に、いつもと何ら変わらない感じでガレージルームにやってきた本音が、スマホで映像を見せてくれました。何を隠そう、私はヒーローが大好きでして。アニメ、マンガ、特撮、ジャンル問わず。もうファンの皆さんは当たり前に認知してくれてるんですけど、当時の私はひた隠しにしてたんです。ほら、女の子の趣味としては少数派(マイノリティ)ですし、オタク趣味って、ひけらかすものじゃないでしょう?

 

 だからこそあの時は、凄く興奮しました。"黒猫"の頃からその活躍は知っていたんです。ほら、ウチって()()()()()()ですから。その手の情報は比較的簡単に手に入れられたんですよ。

 

 憧れないはずがなかった。そんなヒーローの正体が身近な、それも尊敬していた人物だった。気分はもう、物語の登場人物ですよ。ヒロインだ、なんておこがましくはなれませんでしたが……そうですね、主人公の日常に登場する、偶に見せ場があるような友人、くらいのポジションにはいるのかな、なんて。手を伸ばせば届く場所に、そんな“物語からそのまま出てきたような存在”がいた。夢のようでした。ヒーローショーなんて目じゃなかった。あんなにワクワクしたのは産まれて初めてで、居ても立っても居られなくなって、夜遅くまでずっとガレージルームに籠りっぱなしだったんです。気付けばもう門限も過ぎてて、寮監の先生にどう説明しようか、頭を抱えてた時でした。

 

 別のガレージルームに入っていく、デュノアさんを見かけたのは――――

 

 

 

 

 僕にとって"黒猫"――今は"黒豹"か――というISは特別な存在である。

 

 何せ、僕と母さんの命の恩人だ。僕たちだけじゃない。セーヌ川の氾濫を未然に食い止め、フランス中の何千万という人々の命を救った彼女(実際には彼だった訳だが)は“救国の英雄(ジャンヌ・ダルク)の再来”として、最早知らぬ国民はいない、というレベルにまでその名前が浸透していた。それ故か、近年のフランスにおけるISのイメージはガラリと変わり、翌年のIS関連職への就職希望者数が数倍に跳ね上がったという記録さえある。何を隠そう、僕もその1人だった。

 

「ISに乗りたい」

 

 そう伝えた時の母さんは複雑そうな表情で、けれど最後には笑って許してくれた。その時は『有事の際には兵役の義務が生じる可能性を気にしていたのだろう』と思っていた。それが的外れだったことを知るのは、大分後になってからになる。

 

 幸い、僕には素養があったようで、通っていた学校で行われた検査にてIS適性“A”であることが発覚。候補生の選抜にも通り、努力の甲斐あってどうにかその少ない椅子を勝ち取ることが出来た。そして、その後実施された専用機開発についてのカンファレンス、その面接にて、僕は初めて父であるデュノア社社長、Albert Dunois(アルベール デュノア)と出会った。

 

 ズラリと有名な国内企業の代表が並んで座る面接会場で、父さんは僕を見て少し驚いたように目を見開いて、名前を尋ねてきた。僕が名乗ると、「そうか」と小さく呟いた後は特に何もなく、そのまま淡々と面接は続いた。その数日後、デュノア社から僕の専用機開発を担当させて欲しいとの申し出があった、という知らせが家のポストに届いていた。

 

 当時のデュノア社は第2世代機"Rafale"の量産体制を整えて間もない頃で非常に勢いがあり、僕としてもとても嬉しかったけれど、それだけに『どうして向こうから僕に?』という疑問もあった。この頃の僕は彼が自分の父親だなんて知らなかったし、他にも優秀な候補生は大勢いた上に、その中には『是非デュノア社に』と希望している子もいたことを知っていたからだ。

 

「良いことじゃない。アナタの夢を叶えられる絶好の機会なんだから、逃がしちゃダメよ?」

 

 母さんからの強い後押しもあって、結局僕はその申し出を受けることにした。回答を送ると、早速その翌日にはデュノア社への呼び出しを受け、ほぼ1日かけてありとあらゆるデータを取られた。帰る頃にはへとへとだったけれども、同じくらい高揚感が凄くて、帰りの電車で夢見心地にうとうとしてうっかり降りるの駅を寝過ごしかけたのを未だに覚えている。

 

 その後、デュノア社での僕の仕事と言えば、ひたすら開発チームの皆と新規の換装装備(パッケージ)の稼働テストやデータ収集ばっかりで、大半の候補生が経験するであろうグラビアみたいな表に出る仕事は、何故か全くと言っていいほどなかった。まぁ、僕としては別に苦じゃなかったし、むしろ少しでも多くISに乗れるのはありがたい、なんて思ってたくらいで、全然気にしてもいなかった。それなりに給金も出るようになって、決して裕福ではないながらも女手1つで育ててくれた母に、これから少しずつ返していこうと、そう思っていた。

 

 

 

――――そんな日々が2年ほど過ぎた、去年の暮れのことだった。いつものメンバーと研究室でデータ収集に勤しんでいた僕の元に、母が勤務先で倒れた、との電話が入ったのは。

 

 

 

 

 

 

「時間通り、だよね?」

 

 既に門限を過ぎた午後10時。僕はこっそりと寮監の目を盗んで、整備管理棟の、僕に割り当てられたガレージルームを訪れた。理由はシンプルなもので。

 

“本日22時。ガレージルームにて”

 

 あの事件以来、プッツリと連絡の途切れていたオーバスさんから、久し振りの呼び出しをくらったからである。後ろ手に扉を閉じ、電灯のスイッチを入れてみても待ち人の姿はない。メッセージと現在の時刻を確認してみても、僕が間違っている様子もない。もう暫く待ってみた方がいいかな、と思った、その瞬間。

 

『ピッタリ、時間通りッスね』

「……いきなり後ろから登場するの止めてくれませんか、心臓に悪いです」

『ウヒャヒャヒャ』

 

 悪戯成功、とばかりの嫌らしい笑い声が真後ろ、丁度僕の後頭部辺りから聞こえる。振り向けば、扉の内側にすっかり見慣れたクモ型ボットがピタッと張り付いていた。

 

「それで、今日はどういうご用件ですか?」

『ン~、それがッスねぇ――――』

 

 と、普段なら手短に用件を伝え、最低限のやりとりで済ませるはずの彼にしては珍しくどもるような物言いに、仄かに首を傾げながら続きを待つ。すると。

 

 

 

 

「――――今日は、アナタに謝るために、呼び出させてもらったッスよ」

 

 

 

 

 背後。頭上からそのような声と共に、パラパラとまるでヘリコプターのプロペラのような音が耳朶を擽る。見上げた先、電灯が明るく照らす中、ポツンと墨を1滴落としたような小さな影が、徐々に大きくなっていく。やがて、明るさに目も慣れ始め、その影の正体を明確に視認した頃。

 

「初めまして、と改めて言うべきッスかね?」

「……やっぱり、オーバスさんは貴方だったんですね」

 

 昼間の"黒豹"、即ちカデンソン先生の記者会見で見た、Clank(クランク)と呼ばれていたランドセルサイズのロボットが、頭部から展開した大きなプロペラを器用に使って、僕の眼前にフワリと軽やかに降り立ち。

 

「と、いうことは」

「あぁ。つまり、()()()()()()さ」

 

 どこに隠れていたのか、ガレージルームの奥から今や時の人となった"黒豹"のパイロット、アリスター・カデンソン先生が、姿を現した。

 




サブタイトルの元ネタ
“ラチェット&クランク2(PS2)”のスキルポイント
“ストーンマニア(Be a Moon Child)”
 惑星グレルビンの氷河平原に点在するムーンストーン101個を全て回収すると獲得できる。所謂換金アイテムであり、スタート地点付近の爺さんに渡すと全部で23万ボルト、くらいには、なったはず。終盤のステージなので、出現する敵の強さもかなりのレベルになっているが、その分もらえる経験値も多いのでガラメカの強化にもうってつけだったりする。また、サポートガラメカの"マッパー"を入手した後だと、マップを開いた際にどこにあるか全部表記されるので、1・2個取り逃してひたすらさ迷う、なんてこともないよう配慮がなされている。

 どうも、作者のGeorge Gregoryです。

 MCU作品と水曜どうでしょうのDVD・Blu-rayが最近の作業用BGMです。

 『アイアンマン』最推しではありますが、同じくらい『アントマン』推しでもあります。ロボやメカと同じくらい昆虫大好きだし、スコットのあのラッキーボーイとコミュ強者を兼ね備えたパーフェクトダディ感は、ホント世の男皆が見習ってもいいレベルだと思うんですよ……何気に頭もいいし。いや、前科持ちではあるんですけど(笑)

 どうでしょうはリアルタイムで『シェフ大泉夏野菜SP』を父と見て以来、もうライフワークです。最新作は仕事の都合上、リアルタイムで見れていないので、弟に纏めて録画したものを焼いてもらってます。まさか2020年にもなって新たにシェフ大泉を見られるとは思わなんだ。

 さて、ようやくシャルにスポットが当たります本エピソード。『これでもか』と詰め込みまくった彼らのヒーローっぷりを、是非とも楽しんでいただきたいところ。シャルに関してはこのシリーズを書き始めた当初から設定を練っていたキャラでもあったので、ようやく解禁出来て個人的にも反応が楽しみでワクワクしております。……同じくらい怖くもありますが。

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

Twitterとリンクさせて更新報告/予告した方がいいですか?

  • YES
  • NO
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。