ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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なんか、ジャンプの某作品でマルチエンディング方式を公式がやるとか。
俺としては『ハーレム系でない限り報われるヒロインは1人』という古めかしい価値観が未だこびりついていたりするので、『これも時代かなぁ』と爺臭い感想を抱いてしまう次第。いや、凄い事だと思うし選ばれなかったヒロイン推しへの救済にもなりますから、良いことだとは思うんですけどね? かく言う俺も『なんで東城じゃなくて西野に行ったァッ!?』とか『手乗りタイガーより先にばかちーと出会っていればあるいはッ!!』とか連載当時に悶えた口でして。なんでかなぁ、俺が好きになるのはメインヒロインじゃないんだよなぁ(だからこそ二次創作を漁るようになった)。

……PSP版『とらどら!』のばかちー√は100%より90%ENDの方が好きです。
喜多村英梨さんは俺にしては珍しく真っ先に名前を覚えた女性声優さん。



Be A My Child Ⅱ

――――母さんについて、医者の先生には心臓弁膜症、その中でも大動脈弁狭窄症というものに分類される、と説明を受けた。

 

 要するに、心臓の中には血液の逆流を防ぐ弁があり、狭窄症はその弁の開きが悪くなって血流そのものが妨げられる心臓病だという。主な症状は胸全体を圧迫されるような痛み、動悸や息切れ、そして意識を失って倒れる失神。今回の騒動は、どうやらこれに該当するらしい。

 

 弁膜症の危険なところは、症状がじわじわと進行するために身体が痛みに慣れてしまい、自覚症状がないと感じられてしまうことが多い点。そして、最初は血管内のみの異変が長期間に渡って心臓全体に負担をかけ続けると、やがて心臓の筋肉のしなやかさを奪い、心不全を引き起こす可能性がある、という点にあるのだと。

 

 そして、母さんは少なくともこの症状を、既に10年近く、僕に隠していたのだと。

 

「あ~あ、とうとうバレちゃったか」

 

 病室の母さんは、まるで悪戯が見つかった子どものような軽さで、なんてことのないように言った。

 

 生まれつき免疫機能が弱く、よく体調を崩しては両親や友だちに申し訳ないと思っていたこと。それ故にこの初期症状も“いつものこと”と思い、医者に通い始めたのもここ数年になってからであること。弁膜症の手術自体は然程難しくないものの、心臓への施術であることに変わりはなく、生来の虚弱体質も相まって“成功する見込み”は薄いとの診断が下されたため、投薬による症状の緩和や進行の抑制によって心臓への負担を和らげ続けていたこと。

 

「実は、あなたを産んだ時も『母体共に無事なのが奇跡』ってくらいに言われてたのよ。せめてあなたが独り立ちできるまでは、って思ってたんだけど――――」

 

 その続きも、その後どうやって家まで帰ったかも、よく覚えていない。ただ、『次に倒れた時は本当に危ないかもしれない』という医者の言葉をひたすら頭の中で反芻し続けていて、覚束ない足取りだった気がする。自分の家の鍵も上手く挿せなかった。

 

 そして、母さんの寝室で入院中の荷物を纏めている最中、クローゼットの奥に大事にしまわれた、古ぼけた1枚の写真を見つけた。若い頃の母さんの隣にいる男性を見て、そこでようやく理解した。何故、数いる代表候補生の中で、デュノア社が僕を選んだのか。どこか恥ずかしそうに頬を赤らめている表情は、面接会場での見定めるような厳しいそれとはまるで違ったけれど、確かな面影があったから、直ぐに解った。解ってしまった。デュノア社社長、Albert Dunois(アルベール デュノア)が、僕の父なのだと。

 

 翌日。仕事の予定は入っていなかったけれど、母さんのいない家にいたくなくて、病院に荷物を置いたら、事情を話しに会社に向かった。あまりに色々なことがありすぎて、この辺からの記憶は、正直あやふやだ。 

 

「顔色悪いよ? 大丈夫?」

「ちっと休んだ方がいいんじゃねぇのか?」

 

 開発室の皆に報告したら、揃って母さんと一緒に、僕のことを心配してくれた。普段僕のトレーニングメニューを組んでくれてる恰幅のいいフィジカルトレーナーには「ダメダメッ、ダメーッ!! そんなん面構えじゃ仕事になんてなりゃしないよッ!!」と怒られてしまい、溜まりに溜まった有給の消化を正式に命じられた。無理を言って社員寮の一部屋を借り、けれど何をしていいのかも判らず、暇さえあればトレーニングルームで身体を動かすことで必死に頭の中を空っぽにしようとしていた。

 

 それから、たった数日後のことだった。『織斑一夏』のニュースが全世界を駆け巡り、そして父さんから『IS学園への潜入』を命じられたのは。

 

 

 

 

「ほい、そこの自販機で買ってきた。どっちがいい?」

「あ、ありがとうございます。それじゃ、紅茶の方で」

 

 そう言って差し出してきたペットボトルの片方を受け取ると、カデンソンさんはドサッと僕の隣に腰を下ろした。今はガレージルームの隅っこのベンチに並んで座っており、そんな僕を見上げるようにクランクさん(結局「さん」付けが一番落ち着いた)がちょこんと地べたに座っている。

 

「悪いね。本当ならいつもみたいに管理人室にしようと思ったんだけど、今あそこでクロエが寝ててさ」

「流石にここ数日の疲労が出たみたいッスね。学園に着くや否や「疲れました」と相棒の背中に。今は仮眠用のベッドで、相棒のブルゾンを抱えて熟睡してるッスよ」

「アハハ……何というか、本当にお父さん大好きなんですね」

 

 クロエさんとはそこまで話した訳じゃないけど、言葉の端々に“そういう発言”が紛れ込んでて、その度に微笑ましくも複雑な気持ちになったものである。

 

「それで、僕に謝りたいこと、でしたっけ? 何なんですか?」

「エェ。こちらの予想以上の危険に晒してしまったッスからね」

 

 言われて思い浮かぶのは、先日のVTシステムの一件。やはり意図的に巻き込まれたのか、と思いながらも、それが悪意によるものではないのか、と少し安心する。けれど。

 

「一般の生徒には知らされてないんだけど、実はここ数日で、何名かの生徒が何の前触れもなく失踪してるんだ」

「…………はい?」

 

 その、余りに予想外の言葉に、一瞬思考が停止した。

 

「キミに作ってもらったリスト、覚えてるかな?」

「え、あぁ、一夏に近寄ってきた女の子の?」

「それッス。実はこっちでも別にリストを作ってたッスよ。他国からの工作員である可能性のある生徒のリスト。で、アナタのリストにあった、表立って解りやすく接触してきた生徒は除外して、残った生徒にはワタシが独自に監視網を敷いていたッス」

「で、その中でも特に怪しい動きをしていた1人に注目してたんだけど……()()()()()だった。トーナメントが近くなったら定期的にアリーナの観客席周辺を巡回してもらったの、覚えてるかい?」

「あ、はい」

 

 渡されたカメラを片手に、観客席や周辺通路、トイレの個室の中まで事細かにチェックさせられた。特にトイレの時は他に誰か来ないか冷や汗ものだったのを覚えている。

 

「何か仕掛けるヤツがいるんじゃないかと思ってね、キミに直接見て回ってもらってた訳だ。ここのセキュリティシステムだけじゃどうしても限界があるし、例えキミが見逃しても、映像に残しておけば後から見つかるものがあるかもしれないからね。……で、前日の夜のことだった。アリーナ東側のトイレの個室の1つに、()()を見つけた」

「で、予め見張っていたらアナタたちの試合が始まる直前になって、チェックしていた生徒がその個室へ入っていったッス」

 

 もしや、僕は今、とんでもない話を聞かされているのではなかろうか。背筋にほんのりを寒気を覚え、乾き始めた喉を潤す為に紅茶を一口飲む。

 

「一夏くんの"白式"はオイラが担当してる。キミの"RRCⅡ"は除外。篠ノ之さんの"打鉄"は整備管理課(ウチ)でメンテしてるし、直前に確認も出来る。可能性があるとすれば、ボーデヴィッヒさんの"レーゲン"だった」

「恐らく、最も避けたい事態は『何のデータも得られずに試合が終わること』だったハズッス。で、あれば」

「……僕たちが圧倒的有利なまま試合が終わろうとしたら」

「そう。何かがあるとしたら、その瞬間だろうと思っていた。ボーデヴィッヒさんの性格からして、キミたちが相手ならまず自分はフォローに回って、篠ノ之さんと一夏くんを戦わせるはず。そうなれば自然、彼女の相手はキミになる」

「そして、アナタの機体にはお誂え向きの武装が搭載されていたッス」

 

 そしてどうなったかは、語るまでもない。

 

「まさかVTシステムが出て来るとはねぇ……まぁ、ドイツに対して絶好の交渉カードになったけど」

 

 二ヒヒ、と歯をむき出しにして笑う表情はとても“正義のヒーロー”がしていいそれではなく、「あ、あはは……」と思わず苦笑がこぼれる。

 

「で、全部片付けて、後はその生徒を人気のない場所に誘導して確保、話を聞かせてもらおうと、思ってたんだけどね」

「自決、したッスよ」

「じ、けつ?」

「口内に猛毒のカプセルを仕込んでいたッス。何の躊躇いもなく命を絶てるということは、即ち『既に報告を終えている』か、あるいは」

「……『他にも仲間がいる』?」

Exactly(その通り)。だから直ぐに監視対象だった他の生徒をあたってみたら」

「一人残らず、学園から消えていたッスよ。余りに統率が取れすぎているッス」

「立つ鳥跡を濁さず、だっけ? それだけの工作員があっさりを自決を選べる時点で、()()()()()よね」

「忠誠心にせよ、洗脳にせよ、極めて危険ッス」

 

 そう、それは“補充できる”“それだけ人材の厚みがある”という何よりの証左に等しい。

 

「何より気になるのは、最期に言い残した『帝国に栄光あれ』ってフレーズだ」

「帝国、ですか?」

「1979年、中央アフリカ帝国のボカサ1世が無血クーデターによって国外追放されたのを最後に、この地球上に“帝国”を冠する国家は存在していないッス。新興宗教か、帝政の復活か、新国家の独立か。何にせよ、ロクな目的じゃないのは間違いないッス」

「ここには()()()()()に絶好の“餌”がてんこ盛りだからね。……とまぁ、そういう訳で、だ」

 

 と、そこでカデンソンさんは身体ごとこちらへと向き直って真剣な表情になり、クランクさんもその横へと並んで両方のカメラアイのシャッターを八の字に細めて。

 

「釣れた獲物が予想外に大きすぎて、守るべきキミたちを危険に晒した。完全に甘く見たオイラたちのミスだ。ゴメンよ」

「申し訳なかったッス。レディを危険に晒すなど、紳士として失格ッス」

 

 深々と、頭を下げた。

 

「い、いえ、そんな、そもそも一夏のデータ目的で近づいた僕だって―――――」

 

 ―――――待った。え、今、クランクさんは何て言った?

 

「……どうしたッスか?」

「え、いや、あの、今、僕のこと、“レディ”って」

 

 まさか。まさかだけど。

 

「いつ、から?」

「最初からッスよ? そもそも男女では基礎代謝が異なるッスから」

「……カデンソンさんも?」

「あぁ、うん。オイラ、鼻が利くからさ、匂いで。デオドラントで上手く誤魔化してるみたいだけど」

 

 そのポカンとした表情は、明らかに『え、バレてないと思ってたの?』と素で思っている顔で。

 

 

 

「――――う、嘘だぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?!?」

 

 

 

 僕、本名“Charlotte Dunois(シャルロット デュノア)”は、飲みかけのペットボトルを取り落とし、真っ白になった頭を両手で抱えて大声で叫んでしまうのだった。

 

 

 

 




 どうも、作者のGeorge Gregoryです。

 食パンは1度いいものを食べるとなかなかランクを落としづらい食材だ、というのを最近身に染みて感じております。多加水パン美味いんだけど2枚で俺が普段食ってる食パン1/2斤分くらいの値段普通にするんですよね……

 試しに今回初めて、特殊エフェクト?とかいうのを使ってみました。雰囲気に合うかどうか、今後も色々試行錯誤してみようかな、と思います。結構フォントも変更できるみたいですね。折角ですから、使えるものは上手く使っていきたいところ。

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

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