ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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ハンバーグ師匠となかやまきんに君は出てくるだけで笑えるから卑怯だと思います。



Be A My Child Ⅲ

――――あの時は、言われた意味を一瞬理解できなかった。

 

「僕が、男として?」

「そうだ。性別を偽った上で、学園へ編入してもらう」

 

 デュノア社の業績が近年になって伸び悩み始めているのは知っていた。その要因はいくつもあるけれど、端的に纏めれば以下のようになる。

 

 現在、欧州連合では“統合防衛計画(Ignition Plan)”というものが進行している。簡単に言ってしまえば『欧州全体に配備する次世代機の競合』であり、現在そのトライアルに参加しているのは"Tears"typeのイギリス、"Ragen"typeのドイツ、そして"TempestaⅡ"typeのイタリア。3国の中では実用化でイギリスが僅かにリードしているものの未だ難しい状況にあり、来年度のIS学園にはその実稼働データ収集の為にイギリス・ドイツ両国から代表候補生が入学する予定、とは聞いていた。

 

 対してフランスは、2年前にデュノア社(ウチ)が"Rafale Revive"をリリースして以来、開発については停滞期に陥っていた。勿論、"Rafale"が他国の機体に比べて劣っているなどとは思わない。結果的に第2世代機としては最後発となってしまったが、安定した性能と高い汎用性、豊富な後付装備による“多様性役割切替(Multi-Role Change)”は、操縦者のイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器の搭載、即ち必然的に『個人に特化した機体』である第3世代機には決して真似できない大きな特徴だ。故に、デュノア社は開発費用を取り戻す為に専ら"Rafale Revive"の営業に力を注いでおり、それも最近は成果が得られず、しかし第3世代機の開発に回せる余裕もない、という一種の悪循環に落ちていた。

 

 故に、それを打開するため、つい先日発見された世界初の男性操縦者である織斑一夏少年の稼働データが欲しい、というのは解る。そこまでなら、まぁ、解る。

 

「君を、私の妾腹の子として公表する。そして、彼の後に発覚した男性操縦者である、として学園への転入時期を少しずらす。それまでに、君には男としての立ち居振る舞いを身に着けてもらう」

 

 淡々と告げるその顔には『有無を言わさぬ』とはっきり書いてあった。そして。

 

「ご家族のことは聞いている。この話を請けてくれるなら、私が知る限りで最も腕利きの医者がいる病院を紹介する。手術費用も我が社で見る」

「……そんなことが、出来るんですか?」

「出来る。重要人物保護プログラム、聞いたことはあるかね?」

 

『国家にとって重要な人物及びその血縁者を保護するプログラム』。成程、確かに男性操縦者の身内、と認定されればそれくらいの無茶は通るかもしれない、とこの時は思った。今にして思えば随分と乱暴な気がしなくもないが、それでも、この時の僕にはこれが“Les cailles roties lui tombent dans la bouche.(思いがけない幸運)”だと思えてならなかったのだ。

 

 僕はロクに考えもせず、ほぼ反射的に頷いていた。その後、話はとんとん拍子に進み、翌日から直ぐに男装の為の訓練が始まった。唯一の救いだったのは、その為のメンバーがいつもの開発チームの面々だったことと、皆が深く追求せずに励ましてくれたこと。『アンタも大変だねぇ。男気を見せたんさいッ!!』とフィジカルトレーナーにちょっとズレた励ましを貰いながら背中をバンバン叩かれたのは、妙にインパクトがあったのではっきり覚えている。

 

 普通ならきっと、『馬鹿な真似をした』と思われるのだろう。けれど、僕には他に縋るものもなかったし、何より母さんのことで()()()()()()()()だった。

 

「フフッ。そう。私は(めかけ)、かぁ」

「母さんは、それでいいの?」

「うん。だって、こんなにいい病院を紹介してもらって、お金まで面倒見てもらっちゃったら、ねぇ?」

 

 紹介された病院で久し振りに会った母さんは、以前よりずっと血色が良くなっていた。症状も以前より落ち着いていて、手術の日程も詰めている最中なのだという。そして、寝室にあった写真のことを尋ねると、あっさりと社長が僕の父親であることを認めた。

 

「父さんのこと、今でも好きなの?」

「えぇ。私のことをちゃんと愛してくれた人だもの、嫌いになんてなるはずないわ。それに、お父さんは何も悪くないから。私が勝手に、あの人の前からいなくなっちゃっただけだもの」

 

 母さんが言うに、2人は学生時代に出会ったらしい。母さんがアルバイトとして働いていた洋菓子店(patisserie)に、当時大学の工学科に在籍していた父さんがお客さんとして通っており、顔馴染みから付き合うようになったという。

 

「あの人の実家、昔は小さな町工場でね。お金がないのに、ご両親が頑張って学費を出してくれたんですって。だから沢山勉強して、自分の手で経営を立て直すんだって、いつも言ってたわ」

 

 そうやって徐々に惹かれ合っていった2人が()()()()()()になるのは必然のことだった。だが、世の中はそう上手く出来ていないようで、父の実家の経営は卒業を待たずして悪化、倒産寸前にまで追い込まれる。退学も已む無しか、と考えていた時、ご両親の下に投資を持ち掛けてきた女性が現れたのだそうだ。但し、『父さんとの婚約』を前提条件として。

 

 父さんは相当に悩んだという。まだ母さんのことを伝えていなかったのもあって、ご両親は大層喜んだらしい。それはそうだ。経営資金と息子の良縁が揃って舞い込んできたのだから、こんなに美味しい話はない。当時の従業員は皆、親子同然の付き合いをしてきたベテランばかりで、今でもデュノア社の幹部役員や株主として経営に関わっている人は多いのだという。父さんはそんな人たちを、母さん1人の為に切り捨てられず、毎日頭を抱えて悩み続けていたのだという。

 

 だからこそ、自分から身を引いたのだと。

 

「その時にはロッティ、あなたももうお腹にいたのよ。それを知ったら、あの人は絶対に私から離れられなくなっちゃうでしょう?」

 

 そこまで聞いて、僕は何も言えなくなってしまった。父さんの葛藤も、母さんの決断も、解ってしまったから。そして、僕自身も、母さんの為に決断をしたばかりだから。

 

「でも、どんな形にせよ、あの人があなたを自分の子だと認めた。“今”じゃあ、自分の首を絞めるだけのはずなのに、ね」

「それって、どういう?」

「言えないわ。だって、あの人が何も言ってないんでしょう? それじゃ、私が言っちゃうのはダメ、じゃない?」

「それは、そうかもしれないけど」

 

 母さんにとってはそうでも、僕にとってはやっぱり『デュノア社社長』でしかない。ましてやこのご時世に『性別を偽って学園へ行け』なんて言われたばかりなのだ。

 

 返答に窮する僕を見て、母さんはいつものように穏やかに微笑んで、こう続けた。

 

「信じてあげて。あの人は、絶対にあなたを悪いようにはしないから――――」

 

 

 

 

「――――で、後はもう知っての通りです。転入初日にクランクさんに早速バレて、今日まで色々と雑用三昧、と」

 

 気付けばいっそ清々しい気分で、僕は全部を吐露していた。父さんから『男装の産業スパイとして潜り込め』と言われてから、覚えている限りあったことを、全部。キンキンに冷えていた筈のペットボトルの紅茶はもうすっかり温くなっていて、口に含むと妙に甘ったるく感じられた。

 

「フム。ちなみに、あなたが今知っているデュノア社の現状は、先ほどのお話の内容が全てで間違いないッスか?」

「え? はい、そうです、けど?」

 

 いつの間にか僕の膝の上にチョコンと座っているクランクさんは、こちらの顔を覗き込むようにしてそう訊いてきた。昼に記者会見の映像を見た時から思っていたが、本当にロボットなのかと疑いたくなる()()()()がある。成程、こんなにも優秀なAIを開発できるのなら、先生が篠ノ之博士に気に入られるのも解る。

 

「それにしても、会った瞬間にバレてたなんて、ちょっとショックです……あんなに頑張ったのになぁ」

「話を聞くに半年程度ッスよね? それでこれなら十分すぎるッスよ。ワレワレが特殊なだけッス。……まぁ、学園側も一部は解ってて泳がせていたみたいッスけどね」

「あ、あははは……」

 

 このコルセットに加えて中に沢山着込むことで女性特有の凹凸を誤魔化すローテク、本当に息苦しくて堪らないのだ。ISスーツの時なんて更に全身圧迫されるようなものだから、シャワールームくらいしか肩の力を抜ける場所がない。なのに、まさかその我慢や苦労が完全に無駄だったとか、僕の目からハイライトさんが休暇取ってベガス辺りにでも旅行に行っちゃいそうである。

 

 そんな風に乾いた笑いを溢していると。

 

「……先生、どうしたんですか?」

「ん? いや、ちょっと報告を待ってる案件があってね。そろそろ来るはずなんだけど――――お?」

 

 カデンソン先生がじっと手元のスマホに目線を落としていた。穏やかに微笑んでそう返してきた直後、着信音らしきSEが鳴り、先生は直ぐにメールらしきものを開いて目を通す。そして。

 

「―――――――」

「……先、生?」

 

 にんまり。そんな感じに先生は唇の端を吊り上げて嬉しそうに笑うと、すっくと立ち上がって「ふぅ~……」と肩の力を抜くように大きく息を吐いた。

 

「相棒。その反応は、()()()()()()ッスか?」

「あぁ。万事解決だ」

「?」

 

 安堵したような声色の2人(と言っていいものか)の間で視線をさ迷わせながら首を傾げていると、先生はスッと僕の前に屈みこんで。

 

「んぇ?」

 

 ポン、と頭に手を乗せられ、髪型が崩れないくらいそっと優しく撫でられた。意味が解らずポカンとしていると。

 

「お疲れ様。全部終わったよ、シャルロット・デュノアさん」

「全、部?」

 

 そう言うと、先生は手元のスマホを操作し始め、ベンチに置いた。画面を見ると、どうやらビデオ電話で誰かを呼び出しているようだった。

 

 そして、その回線が繋がった瞬間、表示されたのは。

 

 

 

 

「シャル、ロット」

 

「え、と、父さんッ!?」

 

 

 

 

 僕の知る凛々しさなんて欠片もないほどに泣き崩れた父、Albert Dunois(アルベール デュノア)が、そこに映っていた。

 

 




 どうも、作者のGeorge Gregoryです。

 最近とうとうVTuberの動画を見始めました。といっても"桐生ココ"さんのだけなんですけど。偶に流暢な英語喋るあたり、中の人本当に英語圏の人っぽい。そして『龍が如く』好きに悪人はいねぇ。

 このご時世にトイレの個室に吐瀉物ブチ撒けて素知らぬ顔で帰っていったこないだのクソ親父、テメェの顔覚えたからな……吐くならせめて便器に吐いてけ、何故床にブチ撒けた(憤怒)

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

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