ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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 なんか衝動的にやりたくなって学生時代遊んだPCゲームを引っ張り出してきたんですけど、12年前って書いてあって、時の流れの速さに暫く硬直してしまった三十路のおっさんです。

 マジナーコイモーマジナーユメモーゼンブーテーニーイーレータイー



Dancin' With The Stars Ⅰ

――――そりゃあもう、しっちゃかめっちゃかでしたよ。

 

 丁度、1週間の臨時休校期間が終わって初日の朝でした。珍しく千冬姉のいないSHRで、正に疲労困憊って感じの山田先生が「えぇと、皆さんに、新しい、転校生を、紹介しますねぇ……」って切り出したんです。で、いよいよカミングアウトした訳ですよ。

 

Charlotte Dunois(シャルロット デュノア)です。改めて、宜しくお願いしますッ」

 

 何もかもふっきれたような満面の笑顔でしたね。お陰で教室は阿鼻叫喚。クラスメイト皆、鼓膜が破れそうなくらいの悲鳴を上げて、中には血涙まで流している娘もいたような気がします。そりゃあそうでしょうね。当時のシャルの“王子様”っぷりはそれこそ、下手な少女漫画のヒーロー以上に人気がありましたから。余りに凄かったもんで、そのカミングアウトで逆に()()()()()()()娘も何人かいて、その後も猛烈にアタックされ続けてたらしいです。またそこでスパッと断らずに“王子様”しちゃうから余計にヒートアップしちゃって、一種の()()()()()()になってましたね。あれはもう、殆ど反射でやってますよ、シャルは。骨の髄まで染みついちゃってるんです。今でもアイツのファンは()()()()()()に需要を求めてるんでしょう?

 

 おかしいな、とは思ってたんです。その3日くらい前にいきなり千冬姉から「お前の部屋がようやく手配出来た」って言われて急きょ引越させられたのに、同じ男子であるハズのシャルには「お前はもう少し待て」なんて言うし、シャルもシャルで訳知り顔で「解りました」って返すし。まぁ、念願の1人部屋に舞い上がってて気付かなかった俺も俺なんですけど、ね。

 

 箒はあんぐり口開けて呆けてました。セシリアは、目ェキラッキラさせてましたね……思えばあの頃から片鱗は見せてたんだな。んで、隣から騒ぎを聞き付けた鈴まで突っ込んできて「一夏ァッ!! アンタ、こんな()()()()()()()とォッ!?」って俺にまで飛び火して大騒ぎで。「俺だって知らなかったんだよッ!!」って叫んでも誰も聞いちゃくれないし、「否定してくれ」ってシャルの方を見ても当の本人は必死に笑うの堪えてるだけだし。

 

 結局、限界に達した山田先生が半泣きで「いい加減にしてくださぁあああああああああああああああいッ!!!!」って大声上げるまで一切収拾がつかなかったですね。あの時の山田先生、目がもうガン決まりしてて、今にも乱射魔(トリガーハッピー)しそうな危うい雰囲気があって、マジで怖かったッス。優しい人は怒らせるべきじゃない、って改めて痛感したっけな。後から聞いた話ですけど、シャルのことで学園の上層部から殆ど丸投げされて、暫くまともに家にも帰れてなかったらしいんですよ、あの時の山田先生。ほら、あの頃の千冬姉って“師匠”最優先にされてたじゃないですか。自然と1組の仕事が副担任の山田先生に流れてってたみたいで。ホント、給料とかどうなってたんだろうなぁ。今でも偶にお酒が入ると、その時のことで愚痴溢してるらしいッスよ。千冬姉、いつも苦い顔で「山田くんにはすっかり頭が上がらなくなってしまった」ってその話するんです。

 

 で、1週間遅れた分のカリキュラムを取り戻すのにかなり濃密に時間割が組まれてまして。倍速ぐらいで進む感じになってたっけな。幸い、俺は休んでる間も皆と予習復習してたんで、そこまでヤバそうって感じじゃなかったんです。いや、手前味噌になりますけど、これ入学当初に比べたら凄い進歩だったと思うんですよ。“師匠”の授業様様でした。ぶっちゃけ、他のどんな先生よりも解り易くて、毎日のように整備管理棟に通ってましたから。何回か、管理人室に泊めてもらったこともあるんです。勿論、皆には内緒で。借りたシュラフに包まって、夜遅くまで下らない話に花を咲かせて。楽しかったなぁ。

 

 と、話が逸れちゃいましたかね。

 

 暫くの間はこんなスケジュールで授業が進みます、って説明だけで、その日は一旦終わったんです。明日からの強行軍に皆が顔を青くしたり、逆にやる気出してたりしてる中で、昼メシ食ったらまた図書室か整備管理棟にお邪魔しようかな、なんて考えてた時でした。教室の入り口から、俺を呼ぶ声がしたんです――――

 

 

 

 

「その、織斑、くん」

「えぇと、初めまして、で、合ってたよな?」

 

 いそいそと教科書類をカバンに詰め込み、今日の昼は何を食べたものか、などと考えていた時、彼女は現れた。

 

 身長は150と少しといった具合。色素の薄い水色の髪は、歴史の教科書で見た青白磁の陶器に色合いが似ている気がした。肌は全然日に焼けておらず生白い。滅多に外出しないタイプなのだろう。お陰で眼鏡のフレームの赤が映えて見える。少なくともこの数ヶ月間、全く会話したことのない女子生徒だった。

 

「う、うん。4組の、更識(さらしき)(かんざし)です。よろしく、お願いします」

「おぅ、ご丁寧にどうも。こっちこそよろしくな。で、俺に何か用か?」

 

 尋ねると、更識さんは勇気を振り絞るように何度か大きく呼吸をして、真っ直ぐにこっちの目を見てくる。真剣な瞳に、自然とこっちも背筋が伸びる。

 

「この後、ね。第1アリーナに、来て欲しいの」

「アリーナ? またどうして?」

「先生が、呼んでるから」

「先生? どの先生だ?」

「……カデンソン先生」

「カデンソンさん? 何だろう?」

「その、織斑くんだけじゃ、ないの。1年の候補生と、篠ノ之さんは、絶対に連れて来るように、って言われてて」

「何?」

(わたくし)たちも、ですの?」

「1年の、ってことは鈴もか。一体何だろう?」

「その、ちょっと、大声で言えないこと、なんだけど」

 

 その言葉に不思議そうな顔でぞろぞろと集まり始めるいつものメンバー。すると、更識さんは少し屈むように声を小さくしたので、俺たちは皆、彼女を囲むようにして耳を傾ける。そして。

 

「あの、ね――――」

 

 その理由を聞いた途端、昼メシのことなど完全に忘れた俺たちは驚きに目を見開いて互いの顔を見合った直後、揃って第1アリーナへと全力で駆け出すのだった。

 

 

 

 

 第1アリーナ、Aピット内。

 

「ゲフッ。よぅし、エネルギー満タンッ。御馳走様、クロエ」

「御粗末様です。梅粥の塩加減は大丈夫でしたでしょうか」

「絶妙。また腕を上げたね」

「ありがとうございます」

 

 空っぽになったタッパーを横に置き、カデンソン(ラチェット)は満足げにゲップを1つかまして膨らんだ腹をポンポンと叩いた。真横のビニール袋には同じようなタッパーが数個と、何本分ものバナナの皮。相変わらず、優に数人前は下らない量である。

 

「肝心な時にガス欠とか、御免だからなぁ」

 

 彼の大飯食らいには単純明快な理由があった。本来であればフサフサ毛皮の獣人のような姿である彼が地球人『アリスター・カデンソン』の姿でいられるのは、彼のベルトに搭載されたガラメカ"Hologuise(ホログラマー)"によって根本的な身体組成から作り替えている為、である。これが発動している限り、自身の正体がロンバックスという種の宇宙人であることが露見する心配はない訳だが、これを長時間維持する為には膨大なエネルギーが必要、要するに物凄い量のカロリーを消費することを、6年前道端でフラーッとぶっ倒れた際に身をもって学んだのである。

 

 あの時の彼は、某海溝にひっそりと居を構える篠ノ之束博士との出会いを果たし、彼女から直々にISについて色々と学んだ後に『世俗におけるISの認識』はどの程度なのかを知る為、また今後地球で生活する上での一般常識を学ぶ為、まずは1人の地球人として生活してみようと思い至り、当時ISの研究が特に盛んに行われ、また多くの企業が盛んに活動していた欧州の地へ降り立って間もない頃だった。

 

 しかし、その初日に根本的な壁にぶつかることとなる。現時点で発覚している"黒豹"最初の活躍譚としてファンたちの間で長く語り継がれている『Night Riviera(ナイト リビエラ)号事件(“Drop Zone”~“That's Impossible”参照)』で解る通り、彼が最初に『アリスター・カデンソン』の姿で地球に降り立ったのはイギリスで、その際に当面の生活資金として手持ちのボルトをゴッソリ換金していたのである。そう、それがよりにもよって全てポンドであり、必然彼の財布にはポンド紙幣しか入っておらず、パスポートは篠ノ之博士による完璧な偽造でやり過ごせたものの、すっかりボルトが全宇宙での共通通貨として流通している環境に慣れ切っていたラチェットはちょっと足を伸ばした隣国のフランスで買う物も変えず、換金所の存在も全く知らず、ならばいつものように稼ごうにもアリーナはないし、ブチのめしてもいいようなならず者(バカ)も見つからず、いよいよ空腹が限界に達して道端でぶっ倒れていた、という訳である。

 

「いやぁ、あの時アルに拾ってもらえなかったらどうなってたことか……」

 

 そう、本人はあの時のことを何てことのないような笑い話の1つ程度にしか捉えていないだろうが、こちらからすれば『九死に一生』もののファインプレーだったのだ。そりゃあ助けを求められれば一も二もなく引き受けるし、全力を尽くすのが当然な訳である。

 

「さて。そろそろ時間かな」

 

 炭酸の抜けたコーラを一気に喉に流し込むと、彼はゆっくりと立ち上がって柔軟体操を始める。呼吸を絶やさず、リラックスした状態で全身の筋肉を伸ばすように、何度も何度も入念に。そして"黒豹"を展開した瞬間、ピットのゲートがゆっくりと開いていく。

 

「行ってくるよ」

「行ってらっしゃいませ」

 

 深々と頭を下げるクロエに振り向きながらサムズアップをして、アリーナ内へと躍り出る。がらんとしている観客席には、瞳を爛々と輝かせてこちらを見ている顔馴染みの1年生たちだけ。……いや、全員がそうではないか。約1名はまるで親の仇を見るように睨みを利かせているし、もう1人に至っては大分不安そうな表情をしている。まぁ、今から戦おうとしている相手を考えれば、最後の彼女の反応は当たり前か。

 

(凰さんはすっかり敵意剥き出しだな~、解り易くていっそ清々しいね。篠ノ之さんは、そんな心配しなくても大丈夫だってのに)

 

 元々、心根の優しい娘なんだろう。特異な環境で精神的な余裕をなくしていた入学当初は相当にささくれ立っていたが、最近はそんな刺々しさも随分と鳴りを潜めているようだった。良い傾向だと思う。

 

「わたしたちを前に余所見ですか? 随分と余裕ですね~、セ・ン・セ・イ?」

「おっと」

 

 今度はこっちが刺々しくなってやんの。アリーナの中央、悪戯っぽい笑み満開で待ち受けていた対戦相手の眼前に降り立つ。成程、"霧纏の淑女"の名に相応しく、随分と涼やかな透明感を帯びており、装甲も随分と少ない。主任権限でどういうコンセプトの機体かは知っているが、果てさて『学園最強』と言って止まないその実力は如何ほどのものか。正直、ワクワクしてしょうがない。

 

 そして。

 

「…………」

「ワ~オ、なんて研ぎ澄まされた殺気。ゾクゾクするね」

 

 そんな彼女の後ろで仁王立ちしたまま全く微動だにしない1機の"打鉄"。その搭乗者は静かに閉じていた両の瞼をゆっくりと開き、力強い視線をこちらへ向けてくる。長らく現役から離れていた筈だが、それで尚()()か。大したものである。(EX)とはいえ、世界チャンピオンは伊達ではない、か。

 

「それじゃ、覚悟して下さいね、先生。わたしも久し振りに、本気出しますので」

「お手柔らかに、ヨロシク」

「冗談」

 

 IS学園生徒会長、更識楯無。IS学園教員にして初代“ブリュンヒルデ”、織斑千冬。間違いなく、世界でもトップクラスに位置しているであろう実力者2人と"黒豹"。業界人でなくとも垂涎ものであろうドリームマッチの号砲が、今正に、鳴らされようとしていた。

 




サブタイトルの元ネタ
“ラチェット&クランクFUTURE(PS3)”のスキルポイント
“スターダンシン(Dancin' With The Stars)”
 ヌンダック小惑星環でグルーブトロンを使って5体以上の敵を同時に踊らせると獲得できる。特定の小惑星の上でないと達成できないので、ひたすら該当箇所を探す他にない。……ガラメカの性能としてもヤバいのに『FUTURE』はこのダンス関連のスキルポイント多すぎるんだよなァ。内1つは気付くのが遅いと周回必須になるし(´・ω・`)

 どうも、作者のGeorge Gregoryです。

 はい。これもまた、書き始めた頃から書きたかったシーンの1つです。勿論、シナリオ的にもちゃんと理由あっての対戦です。その辺に関しては次回。

 さ~て、どう料理してやろうか……(ΦωΦ)フフフ

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

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