ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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・奨学金の返済が終わった。
・年末からバタついていた一件が一段落した。
・↑2つによって貯蓄がほぼ0になった(給付金も消し飛んだ)
・自粛明けのバカども吐くまで飲むな吐くならトイレか外でやれ(真顔)
・ご唱和下さいッ、我の名をッ!!(地球の言葉はウルトラ難しいぜ)
・水樹さん結婚したねぇッ!!(クソデカ中村悠一ボイス)
・新作情報嬉しすぎてまたラチェクラ最初からやり直してた
・『クラシカロイド』なるドストライクアニメを見始めてしまった(恐らく最たる原因・ツイ垢見てる人はとっくにお察し)



Dancin' With The Stars Ⅴ

「私は手を出すな、と?」

「最初は、です。最初は」

 

 カデンソンとの模擬戦を3日後に控えた昼下がり。生徒会室のソファで出された茶を啜りながら、私は更識姉の提案を反芻した。意図せずして睨む様な形になってしまっていたようで、彼女は私を宥めるように両手を前に出し、少し慌てたようにそう付け足した。

 

「まずは私1人で戦わせて欲しいんですよ。ぶっちゃけた話、私たちが組んだところで、()()()()()()()()()でしょう?」

「…………」

 

 肯定、の意を込めて再度、無言で茶飲みに口をつける。戦場において『1+1』は必ずしも『2』にはならない。私とコイツの場合は特に。搦め手を交えて相手を徐々に、確実に追い詰める更識姉の戦闘スタイルにおいて、私のような()()()は確かに雑音(ノイズ)でしかないことだろう。加えて。

 

「それに、()()()があるとしたら、織斑先生だと思ってますから」

「……認めるのか」

「そりゃもう。どの程度やれるかは解りませんけど、十中八九、勝てないと思います」

「お前が謙遜とは珍しい」

「事実、ですから」

 

 この潔さも当代の『楯無』たる所以の1つか。苦笑と共に口元を『千軍万馬』と書かれた愛用の扇子で隠し、空いた手は『お手上げ』といった具合に掌を上に向けている。ソファの背凭れに深く身を預けながら細められた双眸には、しかし諦観の色は一切見られない。

 

「でもまぁ、それならそれで、()()()()()()()()()()()()ので。勝てないにしろ、隙を作る、くらいは意地でも」

 

 "黒豹"の過去の戦績を鑑みれば、その評価は妥当と言えよう。ヤツと同じことを成せ、と言われれば正直、私も難色を示さざるを得ない。

 

 最初に私が"黒豹"を認識したのは黒兎隊の教官を務めていた頃。彼女たちが担当した過去の案件、その資料の中に見つけた、ヤツの戦闘映像が発端になる。6年前、ドイツ・オーストリア国境に聳えるZugspitze(ツーシュクピッツェ山)の地下深くで密かに行われていた非合法な人体実験、その研究施設壊滅の一部始終が、そこには記録されていた。

 

 当時の最先端技術の粋を尽くした警備システムにIS3体を擁する相手との、所謂()()()。正直、正気の沙汰なら挑まない。正気でなくとも、まず挑む者はいない。それをあの男、たった1人で、僅か30分にも満たない時間で成してしまった。

 

 ライフルによる正確無比な一撃で武器を破壊。瞬時に距離を詰めての鉄拳による強烈な一撃。鮮やかだと、素直に思った。そして、コイツが一夏が夢中になっている『黒いIS』なのだと、かなり後になってから知った。気付いたのは日本に戻ってから1年ほどが経った頃、アイツが"黒豹"の記事を纏めたスクラップブックを見つけた時だった。

 

「一夏、コイツをどこで知った?」

「千冬姉、何か知ってんのかッ!?」

 

 珍しく興奮気味に詰め寄ってきた一夏の話を聞く内に、何となく察した。あの時。第2回MONDO GROSSO(世界大会)決勝戦の際、誘拐された一夏を救ってくれたのは、コイツなのだと。一夏はその一点に関しては今でも頑なに認めないが、当時の『見たこともない黒いIS』という発言と、これだけ熱を上げているのを見れば、語るに落ちるというものである。

 

 以降、一夏ほどではないにしろ、私も"黒豹"に関するニュースをチェックするくらいのことはしていた。学園に来てからは放っておいてもあらゆる場所でヤツのことが議題に上がった。現れた災害現場。破壊した研究施設。性能や搭乗者の考察。けれど、結局のところ、私の興味はただ1つで。

 

「私が()()()()しますから、必ず一発で決めて下さい。長期戦はあの人の()()()()ですから」

 

 今後、否が応でもヤツの一挙手一投足に世界中が過敏に反応する。優秀な技術者であり、篠ノ之束とも友好関係にあり、"黒豹"の正体にして実質的に1人目の男性操縦者。各国政府はどうにかしてヤツを制御下に置きたくて仕方がないのだ。その為にも、『学園最強(更識楯無)戦乙女(織斑千冬)であれば"黒豹"は恐れるに足らない』という結果が欲しくて堪らない、という訳だ。

 

 私としても愚策としか思えない。1人、()()を知っているからだ。未だ各国政府を手玉に取り、生半な『鎖』など容易に引き千切って自由気ままに飛び回るあの()()()()()が、あれほど親しい態度で接するアイツを無策で放っておいている筈がない。仮に無策なのだとしたら、それは。

 

(そもそもからして、ヤツにはその必要すらない)

「あ~……織斑先生?」

「む?」

「その、殺気、収めてくれません? そりゃあ、まだ臨時休校中ですけど、全く人気がない訳じゃないんですから」

 

 いつの間にやら扇子の文字が『萎縮震慄』へと変化しており、額に微かに汗も滲んでいる。どうやら無意識の内にまた気が昂ってしまったようだ。やれやれ、最近はちょっとした拍子で()()なってしまう。これでは飢えた鮫も同然だ。血気盛んである自覚はあったが、まさかここまでとは。我ながら獰猛すぎていけない。

 

 十全に力を発揮することを許された機会など片手で数えるほどもなかったが故に、恥ずかしながら心躍らずにはいられない。()()()()は後にも先にも()()()()()()だと思っていた。あの喉がひりつくような焦燥感は実に味わい難いものではあったが、さすがに再び自ら“あれ”を望むほど愚かにもなれなかった。

 

 話を戻す。どうあれ、楯無の提案が現状における『(更識楯無)(織斑千冬)』の最適解であることには、私も異論は無い。純粋に『"黒豹"を制することが出来る』という結果が欲しいだけなのだから、何も戦うのは1度に限る必要も無いのだ。さっさと連中の求める結果を残し、空いた時間で思う存分付き合ってもらうとしよう、などと考えていた。

 

 

 

 

――――そうだ。少なからずそんな悠長な考えで私もこの試合に臨んでいたことは、認めざるを得ない。

 

 

 

 

 目の前、楯無の放つ“ミストルティンの槍”が"黒豹(ヤツ)"の純白の装甲によって凍結するよりも早く炸裂する。派手に舞い上がる蒸気はしかし、まるで時を止められたかのように片端から凄まじい速度で凍りついていく。仕損じたか? そう思った直後。

 

「――――」

 

 力尽きたように四肢を放り出して地べたへと倒れ伏していく楯無が()()()()()()()()()()()と認識した瞬間、私は脊髄反射で地を蹴った。

 

「こ、れ、は」

 

 同時、"黒豹"の体表へ、映像を巻き戻しているかのように収束していく氷片の群れは、まるで()()()()()()()()()と錯覚してしまうほどの見事な氷の鎧となって、"黒豹"をその中に封じ込めた。ヤツの放つ強烈な冷気を逆手にとり、“ミストルティンの槍”の爆発で辺り一帯に飛散したナノマシンの熱エネルギーを、今度は加熱ではなく冷却に急速反転させることによって、周囲の空間ごと"黒豹"を()()()にしたのだ。先刻まで“清き激情(水蒸気爆発)”しか見せていなかったのもあってか、"黒豹"は僅かながらも驚愕を露わにし、そしてその一瞬さえあれば楯無(アイツ)には充分過ぎた。

 

 "黒豹"のスペックデータ(真偽のほどは定かではないが)は頭に入れてきた。大した拘束にもなりはしないだろうが、勝てないと知りながら楯無が細い糸を手繰り寄せてつかみ取った好機。逃せる筈もなく。

 

「任せましたよ」

「あぁ、任された」

 

 言葉は不要。何よりも目が物語っていた。温存していたSEを全開稼働し、"打鉄"は瞬時加速(Ignition Boost)によって瞬きの間に最高速へと達する。"(近接ブレード)"を展開。構えは大上段。幾千万と繰り返してきた始まりにして必殺の型。()()()()()()。長年の経験からそれが解った瞬間、胸中を過ったのはほんの些細な寂寥感。

 

 楯無が"黒豹(ヤツ)"の何らかの手段で動きを封じ、そこから脱する前に私が速攻でもって一撃で屠る。正直に言えば、この作戦について腑に落ちない点も些かあった。出来ることなら、正面から堂々と、と。

 

 

 

――――今ならはっきりと言える。なんて浅はかだったんだ、と。

 

 

 

 ()()を視認したのは、既に振り下ろした"葵"の刀身が氷像と化した"黒豹"の肩口へと吸い込まれる、その直前。私の刃を遮る位置に突如現れた()()は楕円球型をしており、この緊迫した場に似つかわしくない程、随分と可愛らしい見た目をしていた。

 

(あんパン? 饅頭?)

 

 そう、丁度こんなゆるキャラがいたよな、って感じのクリッとした真ん丸な目に、頭頂部らしき部分からは可愛らしいアンテナが伸びる1頭身。その気の抜けてしまうようなデザインに思わずほんの刹那、思考を停止させられて。

 

『―――Bomb』

「ッ、クソッ―――」

 

 勢いのまま止まらない"葵"の刃が()()に触れた瞬間、やはりというか、それはそれは盛大な爆発が眼前を覆い尽くし、このままでは私はそれを歯噛みしながらもろに真正面から食らう羽目になる。そう判断するや否や、衝撃をまとも喰らわないよう即座に"打鉄"を背後へと跳び退るようにし、空中で"葵"を大きく振り回すように回転することで機体への負担が最小限になるよう分散させた。概念としては実際の『受け身』に近い。各装甲を耐衝撃性に優れた特殊繊維を編み込んだ帯で束ねている"打鉄"だからこそできる一種の荒業、とも言える。

 

 勢いのまま空中で身を翻し着地。未だもうもうと爆煙が立ち昇っている向こう、ゆらりと立ち上がる影1つ。そして。

 

『いいねぇッ!! そうだッ!! ()()()()()だッ!! ()()()()()()()()ッ!! ()()()()()()()()()()()()()()ッ!!」

 

 突如、その影が矢のような速度で黒煙を貫きながらこちらへと真っ直ぐに突撃してくる。その姿はいつの間にか見知った漆黒の装甲へと戻っていて。

 

This is OmniWrench(さぁ、ここからが本番だぜッ)!!」

 

 その肩に担いでいたのは"黒桜"戦の時にも見せた、余りに巨大で無骨な、工具(レンチ)だった。

 




 補足説明

・“ボムシールダー(Drone Device)”(出典『1』)
『1』に登場する防御用ガラメカ。原作ゲームでは使用すると複数個(確か6個)の饅頭の様な形をしたドローンが衛星のようにラチェットの周囲を浮遊して接近してきた敵や弾丸を迎撃する。その際に爆発もするが、威力はあんまりない。『2』以降に登場するシールドシリーズに比べるとどうしても性能として劣るものの、しかしこういった実戦でならそのデザインと爆発は十全に働いてくれるだろう、という考えから今回の起用に。

・“オムレンチ(OmniWrench)”(出典:全作品)
 お待たせしましたラチェットの代名詞。彼の近接攻撃は全作品漏れなくこの『でっかいモンキーレンチ』でぶん殴る、という何とも技術職らしい戦法となっている。シリーズ作品によってはスキン(見た目)を、それこそ"黒桜"戦で使って見せたレーザーソードや、他にも斧・カトラスサーベル等、色々なものに変更出来たりするのだが、このオムレンチ、武器としてだけでなく、ちゃんと工具としてギミックを解くのにも使われている。初期3部作では精々が『ネジを回す』くらいしかないのだが、後々シリーズが続くに連れてコイツで出来ることはどんどん増えて行く。具体的にどんなことが出来るのかは、次回の本編で書く積りなので楽しみにして頂けると。
 余談ですが、『Omni-』とは元々はラテン語で『すべての』だとか『全○○』みたいな意味で使われる単語で、そう考えるとオムレンチ(OmniWrench)は『どんなネジでも回せるレンチ』みたいな意味になるのかな、というのが俺の解釈になります。どうやらラチェクラワールドにおける商品名のようですしね。




 どうも、最近やたらと美味い蕎麦が食いたくて仕方が無い作者のGeorge Gregoryです。年々値上がりしてきますよね、お蕎麦……

 某MJさんの映画のタイトルにも使われました『This is it.』は所謂「ここからが本番だ」とか「これで決まりだ」とかそういうイントネーションになります。本更新ラストの『This is OmniWrench.』は劇場版『Ratchet & Clank』のクライマックスシーンでの台詞でもあり、吹替では「これがオムレンチさ」と直訳されていましたが、俺としては「コイツで決まりさ」「やっぱ最後はコイツなんだよな」的な意味になるんだろうな、と解釈しています。「必殺、俺の必殺技」とか、そういうのに近いんだろうな、と。

 更新が遅くなって、しかも短めの内容で面目ない。大体の理由は前書きにあるんですけど、うん、年末からのゴタゴタが片付いた代償にお財布すっからかんになっちゃったし、『自粛明け=自粛止めていい』って訳じゃないのに馬鹿共は己の限界も弁えず飲んだくれてその辺に吐瀉物ブチ撒けてくしで、心身共に疲れちゃってたんですよ。なんか夏バテの気配も感じるし。

 お陰でちまちま進めていた『レイトン教授シリーズ』の攻略も止まっちゃってるし(あれ面白いんだけど謎解きに物凄いカロリー使うんですよね)、ポケモンも精々ヘビーボール目当てに毎日くろぼんぐり収穫するくらいになっちゃったし(『ヘイハチ』と名付けたウーラオスは一撃の型にしてゴロンダと並べてニヤニヤしてます)、積み本積みゲー全然減らないんだけどなんかリフレッシュしたいなぁ、と思ってた矢先に『ウルトラマンZ』なんて神作品スタートしちゃったし、以前から勧められてた『クラシカロイド』ってアニメが無料配信始まったっていうから見てみたら史実ネタとか大好きな俺氏のドストライク作品で考察止まんなくなっちゃったし、精々定期的に『ガン×ソード』『ばらかもん』『HELLSING OVA』を見直すくらいにしか使ってなかったdアニメストア(IS本篇もこれで見てる)で全話配信してるって知っちゃったからもうテンション爆上がりで……いや、まぁ、はい、言ってしまえば、創作の方に全くスイッチが入らなかったんです、ごめんなさい。

 プロットだけなら臨海学校の終わり辺りまでほぼほぼ出来てるんで、後はスイッチがこっちに入ればその辺までガバーッと進められるんですが、いかんせん気分屋な性分でして、どうか気長にお待ちいただければ、と。ぶっちゃけ最終回までの大まかなプロットももう出来ちゃってるんですよね~……身体が後5つくらいあればなぁ、と毎日思う次第。病気の類には全く罹ってませんので、その辺の心配は御無用です。今まで通り、マイペースに更新続けて行きますので、どうぞお付き合い下されば、と思います。

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

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