ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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俺「Vamos!!!!!!!!(物凄い勢いで服を脱ぎ捨て全裸になってジョッキ片手に踊り出す)」

めっちゃいい実写化だった……スタッフの皆さんホントありがとう……ホント原作通り“酒”と“裸”と“海”と“バカ”しかなかった……むしろ想定の数億倍酷かった……(最大級の誉め言葉)



Dancin' With The Stars Ⅶ

――――あの時は、本当に夢の様な時間でした。

 

 私は“先生”側のピットで直接"黒豹"のデータをリアルタイムで見せてもらっていた訳ですけど、あれは、そうですね。SF映画で『未知の技術』に出会った研究者、と言うよりは、いきなり現代にタイムスリップしてしまった侍の気持ち、の方が近い、かな。

 

 "黒豹"ってね、やっぱり()()()()んですよ。超高温~極低温だけじゃなく、深海等の高圧力下でも何の問題も無く活動できるし、耐腐食性だって未だに現行の機体を遥かに凌駕してるんです。武器の搭載量だって、あれ"Rafale"何台分になるんだか判ったものじゃあないし、しかもその1つとしてハズレ(アタリ)がないんですよ? そこに胡坐をかいて油断とか慢心とかしてくれるんならまだいいものを、当の“先生”が()()()()()()()()()()んです。凄腕の技術者であるだけじゃなく、百戦錬磨の元特殊部隊(Commando)で、大統領直属の部隊を率いた経験もあって、世界や、惑星や、銀河を救った回数なんて数えきれないくらいあるスーパーヒーローだ、なんて……正直、未だに完全に呑み込めてないくらいでして。

 

 初めて“先生”の過去や真実を知った時は「何それチートじゃんッ!!」って頭抱えて大声出しちゃいましたし、それまでも「どうやってこんな代物を」という好奇心と、それと同じくらい、ううん、それ以上の恐怖心が、私の中にはありました。

 

 大抵の人の場合、自分の二・三歩先を行かれるくらいなら『奮起』出来るし、十歩先くらいまでならまだ『嫉妬』出来るんですけど、それがもう五十歩とか百歩とかまでいっちゃうと、そこから一気に『諦観』に変わってしまうんですよ。「あれはもう根本から全く違う存在なんだ」と定義づけてしまって、敬愛したり、崇拝したり、忌避したり、畏怖したりしてしまう。それこそ、『天才(Genius)天災(Disaster)』と呼ぶことで。

 

 そうなると、自然と大きな隔たりが出来るんです。どこか物語の登場人物を見る様に、文字通りに次元の異なる存在と捉えてしまう。そうなってしまうと、遠慮だとか、容赦だとか、そういったものを簡単に忘れてしまうんです。内に秘めるべき感情を発露したり、言葉や態度にして表すことに、何の躊躇いもなくなってしまう。()()()()()()、とでも言い換えましょうか。そんなのが、あの頃のこの地球(ほし)には蔓延していました。

 

 最たる存在は言わずもがな、篠ノ之博士と織斑先生でしょう。当時のお2人を思い返すとまるで堪えていないようでしたけど、実際には腹の底に色々と溜めこんでいたそうで。考えなくても、当たり前ですよね。ISの発表当時、お2人はまだ10代の女の子だった訳ですし。

 

『――――世界が変わってくれないのなら、こっちから世界を変えてやろうって、そう思ったんだ』

 

 かく言う私も、博士のあの言葉を聞くまで「違う世界の住人」だと、そう思い込んでいましたから。それだけに、あの時の何もかもを諦めたような草臥れた笑顔が、泣き出しそうなのを必死に堪えているようにも見えて、落雷に打たれたような衝撃を受けたのは、未だに忘れられませんし。

 

 お2人と比べてしまうとあまりに失礼ですけど、私も、ね、曝されてたことがあるんですよ、()()()()()()っていうのに。私だけじゃない。家族や、言葉や、出生や、形こそバラバラでしたけど、あの会場にいた全員に、その経験があった。だからこそ、『そんなもの知ったこっちゃない』って当たり前の様に受け入れてくれた“先生”に皆甘えていたし、だからこそ、あの時の衝撃は()()()()だったんだろうな、って。

 

 あの時の話をすると、皆決まってこう言うんですよ。『カデンソンさん(せんせい)をどこか遠くに感じた』って。普段から気さくに接してくれて、年の離れたお兄さんみたいに思ってた人の、本気になった姿。あの日、あの時になって初めて、私たちは本当の意味で『Alister Kadensonは"黒豹"である』と実感したんです。私たちは気付かない内に“先生”をこんなにも受け入れていて、同時に全く知らなかったんだ、と。

 

 そして、そんなことは有り得ないとは思いつつも、あの場にいた皆が、ほんのちょぴりでも想像してしまったんだと思います――――

 

 

――――『もし、本気の"黒豹(せんせい)"と戦うことになったら』って。

 

 

 

 

 

()ァッ!!」

 

 これで何度切り結んだことか。いや、相手は刀剣ではないのだから『切り結ぶ』という単語は適切ではないか。何にせよ何度この丁々発止を繰り返したか、最早定かではない。端から数える気など毛頭なかったが、優に百は超えている筈だ。この耳障りな金属音が鼓膜を劈くのにもすっかりと慣れてしまった。

 

 なんともはや、高々工具でよくやる。……いや、既に『高々』などとは言えんか。ここまで至っているならば、それは既に一つの“道”であろう。恐らくにして後にも先にもコイツ以外の誰も極めることのない唯一の“道”。

 

 叩けば『槌』。遮れば『盾』。掴めば『縄』。そして。

 

「そォらッ!!」

 

 徐に、カデンソンが随分と()()()()()フォームで片手のレンチを投げつけてきた。ヒュンヒュンと美しい軌道で回転しながら飛んでくるそれに僅かに驚きはしたものの、地を這うように身を落とし難無く潜り抜け、彼奴の喉元目掛けて襲いかかろうとして。

 

―――――ぞわり、と。再び首の裏に怖気を感じた。

 

「ッ!?」

 

 瞬間、本能に従ってアリーナの地面を抉るように右足を突き刺して強引に急停止、鋭角を描くように背後へ大きく宙返りをする。それは奇しくも先刻、アイツが私の一撃をそうしたのと同じように。

 

 そして、身体が空中で一回転し、真下を見下ろせるような体勢になって、やはりこの咄嗟の()()は正解だったのだと確信した。

 

「マジ? これも初見で見切っちゃうのォ?」

 

 カデンソンが投げた姿勢から突き出したままにしていた手に、まるでビデオを巻き戻しているかのように、放り投げたレンチが吸いこまれていくではないか。パシィ、と小気味よくそれを捕まえると、どこか呆れた様な声色と共に、ヤツは再び片方のレンチを肩に乗せた独特の休息の姿勢を取って、大きく距離の離れた場所に着地する私を見ている。

 

「つくづく曲芸師のような男だな、貴様は。次は何だ? その得物をハトにでも変えてみせるのか?」

「お望みとあらば。ハトじゃなくて、ニワトリやアヒルになっちゃうけど」

「……おちょくっているのか?」

「本気も本気、超本気ですとも」

 

 十中八九、こちらのペースを乱す為の出鱈目だとは思うのだが、こうもあれやこれやと()()()()()()のを次々に見せられてしまうと「本当にやりかねない」と思えてくるのだから実に厄介である。既にじわじわと相手の術中に誘い込まれているのは否めない。

 

 私はこういった手練手管が苦手な性分だ。銃火器の扱いなんて、ともすれば一夏にも劣るかもしれん。故にこそ、私はひたすらに磨き上げたこの一刀をもってして、如何なる相手をも叩き斬って来た。相手に口を開かせる間も、罠を仕掛ける暇も与えず、ただただ渾身の一撃をもって。そんな、風に舞う木の葉すら戯れに断ったこともあるこの刃が、しかしあの男には悉く届かない。

 

 成程。『黒豹』とは実に言い得て妙だ。決して群れを作らぬ孤高の狩人。木々の枝葉や()()()()に溶け込み、そのしなやかな四肢と鋭い爪牙をもって遥か上空から急襲、瞬く間に獲物の喉を切り裂き噛み千切る密林の王者。仕留めた獲物を咥えたまま樹上へと軽やかに持ち上げるしなやかさと逞しさも大きな特徴である。

 

「その機体、名付け親は(アイツ)か?」

「ん? そうだね。最初はオイラが考えたのが別にあったんだけど、ドクターに『うん、カッコいい、間違いなくカッコいいんだけど、それだけはやめとこ? 違う意味で一気に迫力なくなっちゃうから、ね?』って真顔で止められて」

「……この際だ、一応訊くが、当初は何と呼んでいた?」

「"黒虎"」

「…………あぁ、そういう」

 

 少し遅れて、その意味を理解する。もう随分と懐かしい記憶だが、いつだか一緒に地元のスーパーに買い物に行った時、立ち寄った鮮魚売場で一夏が購入した半額特売のシールの貼られたそれを目にして初めて知った、いつも口にしていたアレの名前。

 

「あの時はまさか、そんな名前のエビがいるなんて知らなかったもんでさァ」

 

“ほんのちょっぴりの贅沢”に最適。主婦たちの強い味方。学名を『Penaeus monodon』。品種名を『ウシエビ』。大抵は英名である『Black Tiger Prawn(ブラックタイガー)』の方が馴染み深いことだろう。かく言う私もよく殻剥きと()()()とりを手伝ったものである。織斑家の年越し蕎麦に乗せる天ぷらは決まってアレの、なのだ。

 

「という訳でNGくらって、度重なるドラフト会議の結果、最終的に"黒豹"になりましたとさ」

「そう、か。まぁ、その辺の与太話は置いておいて、だ」

「えぇ~……織斑先生から訊いてきたんじゃないですかァ」

 

 何とも微妙な空気が漂う。(アイツ)のことだから面白がってそのままGOサインでも出しそうなものだが、などと頭の片隅で考えつつ、改めて"葵"を構え直しながら、話題を切り替えようとする。仮面越しでも唇を尖らせ、不貞腐れたように肩を落とす様が容易に想像できた。この切り替えの早さがなんとも()()()、そして同時に末恐ろしいとも感じる。酷く自然体で、あれほどの戦闘をこなしている、ということの証左なのだから。

 

「1つ訊きたい、カデンソン。何故、銃火器を使わない?」

 

 そう、この男、更識姉とはあれほど派手にやり合ったというのに、私との戦闘では頑なに遠距離武器を使わない。こちらとしては自分の間合いで思う存分戦えて願ったり叶ったりな部分もあるものの、その反面でそれを「手を抜かれている」と思ってしまう自分も確かに存在する為、どうにも複雑な心地でならない。

 

「ん~……いや、まぁ、理由としては至極単純なんですがね」

 

 ゴリゴリ、とその巨大なレンチのアゴで器用に額を掻くようにして(ヘルメット越しでは意味が無いのではなかろうか)、小首を傾げながら返すカデンソンに無言で続きを促す。そして、出てきた答えは。

 

()()()()の映像をね、オイラも見てんですよ」

「……何の話だ?」

「いやぁ、愉快痛快奇々怪々、粉砕玉砕大喝采。あれ、世界記録(World Record)なんですってね。試合開始のホイッスルが鳴った次の瞬間には決着が着いていたという、伝説の国際戦デビュー」

 

 嗚呼、随分と懐かしい話だ。もう10年近く前になるか。第1回“MONDO GROSSO(世界大会)”、その初戦のことだ。余りに相手が悠長に構えているものだから、てっきり「何か策があってのことなのだろう」「しかしここまで来たなら考えても仕方が無い」「思い切り全力で斬りかかってダメなら、その時はその時だ」と全身全霊で瞬時加速(Ignition Boost)~大上段から袈裟切りを叩きこんだら、なんとその一撃で試合が決まってしまい、今や『誰にも塗り替えることは不可能であろう』として私の代名詞ともなっている世界最短の公式試合時間“0.31秒”を記録した、あの試合。

 

「間違いなく、相手は斬られたことにすら気付いてなかった。正に()()()()。"戦乙女(Brunhild)"というよりは、"巴御前(ともえごぜん)"や"鈴鹿権現(すずかごんげん)"の方が相応しい気もしますが」

「誰が妖怪混じりの女傑だ。素っ首叩っ斬るぞ」

「おっと失礼。何にせよ、あの試合を見て、正直こう思った訳ですよ」

 

 

 

――――この人となら、思う存分()()()()()()()、って。

 

 

 

 ぞわりと電流が奔り、全身の血液が一斉に沸き立った。

 

「『二刀流の蛇腹剣使い(Chain Blade)』に『四足脚の脳ミソ円盤(B2-Brawler)』、『機械仕掛けの火噴きサソリ(Scorpio)』に『全身武装の巨大カマキリ(The Eviscerator)』、今まで色んなヤツと切った張った殴った撃ったしてきたもんですけどね、初めてだったんですよ。一目で、しかも映像だけで、こんなに()()()と感じたのは」

 

 ギアを上げて行く心臓が、内側から急かす様にどんどんと逸っていく。ただひたすらに「進め」「斬れ」「進め」「斬れ」と私自身を突き動かそうとする。

 

「オイラもそろそろ()()()なんですけどね、まぁ、男ってヤツァいつまで経っても心ん中は変わらんもんでして。歳とりゃ自然と落ち着くなんて、ありゃあ嘘ですよ。疲れが取れんで()()()()元気も残ってないってだけです。……まぁ、そんな愚痴はさておき」

 

 柄を握る手を強め、高鳴る動悸を宥めるように深くゆっくりと呼吸を繰り返す。静かに、しかし着実に、()()()()へと向けて本能を昂ぶらせていく。

 

「ただね、いっぺんでいいから、()()()()()()()で戦ってみたかったんですよ。世界チャンピオンとどこまで渡り合えるか試してみたかった。いやぁ、流石ですね。こんなに攻めあぐねたの、いつ振りかな。ぶっちゃけ()()()()()()()()()けど、近接戦闘(このまま)じゃ()()()()()()()()ですね。レンチ(こいつ)仕込み(Gimmik)や扱いにはそれなりに自信あったんだけどなぁ」

「……あぁ、そうだな」

 

 ここまでさんざっぱら至近距離で戦りあって、判ったことがある。本人の素養なのか、機体との相性なのか、我々の動体視力は()()()()と言っていいようだ。互いに相手の攻撃を()()()()的確な判断をもってかわし、かわされ、いなし、いなされ、防ぎ、防がれ続けている。言わば『後出しじゃんけん』を延々と続けているようなものなのだ。そりゃあ終わるはずがない。

 

「なんでまぁ、ここからはちょっと趣向を変えまして」

 

 "黒豹"の右手からレンチが消え、代わりに右腕部装甲のみが見覚えのない形態に変化した。透き通った浅葱色をしたその腕には、手の甲側にオレンジの、何か小型のエネルギータンクのようなものが窺える。そして、その掌を開くと、そこには野球ボール程度のサイズをした何かが握られていて。

 

「相棒にもこっそり隠れて練習してた()()()()()、ここでお披露目しちゃおうかなぁ、と」

『……ラチェット? 何をする気ッスか?』

「まぁまぁ、見てりゃ解るよ。んじゃま、織斑先生?」

 

 確か"黒豹"のシステム制御を潤滑にする為のサポートAIを搭載しているロボットだったか、彼の通信機越しの疑問の声に、カデンソンは悪戯っぽい声色で答え、徐にそのボールのような何かを真上へ軽く放り投げて――――

 

 

 

「――――ちょっと、付き合って貰えます?」

 

 

 

「な」

 

 キィン、と甲高い金属音がしたと認識した次の瞬間、()()は既に私の眼前にまで迫って来ていて。

 

「ん、だと」

 

 咄嗟に私はそれを正眼からの唐竹割りで縦真っ二つに断ち切りながら通過。直後、背後で盛大に2つの爆発が発生したことからようやく()()が爆弾の類であると理解して。

 

 そんな、ほんの微かな隙を、カデンソンは見逃さなかった。

 

「――――ッ」

 

 意識を前に戻した瞬間、既にカデンソンは私の間合いの内側にまで潜り込んでいた。そこでようやく気付く。先程の金属音はコイツがそのレンチをバットのように使い、あの爆弾を勢いよく殴りつけて飛ばしてきた音なのだ、と。

 

 そして、ここまでの接近を許してしまった理由はそれだけではなく、その虚を突いた瞬間に行った、コイツの体捌きにもあった。単なる瞬時加速(Ignition Boost)とはまた違うそれはスラスターバーニアだけでなく、独特の歩法と体重移動からなる錯覚を利用した、古流武術における『滑り足』、所謂『縮地』に近いものだと感じられた。

 

 単純な速さで言うならば、恐らく瞬時加速(Ignition Boost)の方が上だろう。けれど、瞬時加速(Ignition Boost)はその仕組みから『軌道が極めて直線的になる』という欠点がある。複数のスラスターを搭載し使い分ける事で、加速中に軌道を多段的に変化させる『二連加速(Double Ignition)』等の技術や、中には類稀なる才能や研鑽の果てに曲線的な軌道を描く技術を会得した代表者も確かに存在するが、それでも始動の瞬間さえ読み取れたなら、御するのは然程難しくはない(と私は思っている)。

 

 けれど、()()は違う。PICと巧みな体幹移動、そしてスラスターの発動を短時間、ともすればコンマ数秒の時間に圧縮することで、始動の瞬間を()()()ばかりか、まるで『生身の人間の動き』をそのまま加速・延長させたような。

 

(コイツ、一体、どれほどの)

 

 鍛錬を。研鑽を。鉄火場を。修羅場を。

 

 これは紛れも無く『技術』だ。どれほどの者に師事し、どれほどの強者たちと戦い、どれほどの月日を費やしてきたかは知らないが、これほどの域に達するまで、この男が『挑み続けた全て』の結晶だ。

 

「ガ、グッ!?」

 

 レンチによる強烈な横薙ぎが右腹部の装甲に炸裂し、苦悶の声と共に私は大きくアリーナの壁面の方へ吹き飛ばされる。とうとうまともにダメージを食らってしまった。防御特化の"打鉄"でなければ、下手をすればこれで趨勢が決まっていたかもしれないほどの威力が、今の一撃にはあった。

 

『相棒、その、戦闘スタイルは』

「懐かしい、だろ? あれから、色々と調べて回ったのさ。ストラタスシティ(Stratus City)の"ナレッジホール(Hall of Knowledge)"。クリーリー彗星(Kreeli Comet)の"IRIS"。シグマンド(Sigmund)にも随分資料を漁って貰ったよ。……本当なら、本人から直接教わりたかったけど、ね」

『――――そうッスか。ウン、そうッスよね』

 

 衝撃でひっくり返ってしまった機体を反転させ、両足で地面を抉りながら減速。ようやく止まった辺りで睨めつけるように見上げる。何を言っているかは上手く聞き取れないが、その懐かしげな声色は、どこか哀愁を帯びているようにも聞こえた。

 

「カデンソン、今のは、何だ?」

「オイラの師匠の戦闘スタイル、なんですよ。レンチ1本と爆弾(コイツ)だけ、っていう。尤も、師匠の得物とはちょっと形が違うんで、割と我流が混じってますけど」

 

 こんな荒唐無稽な戦法に師匠、だと? 表・裏問わず様々な連中と戦ってきたが、少なくとも武器として工具を引っ提げてくるようなヤツに心当たりは欠片もない。

 

「確かに"黒豹(コイツ)"には、ありとあらゆる状況を想定して山ほど武器が積んでありますし、それら全てを完璧に使いこなせるよう訓練も積んできたし、そん中にはいくつか()()()()()もありますとも。でもね、結局一番()()()()()のは、小さい頃からず~っと触り続けてるレンチ(コイツ)なんですよ。織斑先生ならこの気持ち、解るんじゃないです?」

「……あぁ」

 

 首肯する。ISに乗る前からこっち、私はずっと刀1本で戦い続けてきたし、これからもそれを変える積りは毛頭ない。

 

「でしょ? オイラ、織斑先生の()()()()()()、好きなんですよね~」

「―――――は?」

 

 待て。今、コイツは何と? (すき)(すき)? 数奇? あ、あぁ、そうか、数奇者(ものずき)ということか? そういうことだな? そうなんだな?

 

「と、言う訳で。第1回“MONDO GROSSO(世界大会)優勝者(チャンピオン)、"戦乙女(Blunhild)" 織斑千冬ゥッ!!」

 

 私の思考回路が妙な方向へシフトしかけた瞬間、カデンソンはまるで打ち取り宣言をする投手のように握った爆弾をこちらへと突きつけ、そして。

 

「荒れるぜぇ~ッ…………止めてみなァッ!!」

 

 大きくふりかぶって、そんな掛け声と共に思い切り投げつけてきたのだった。

 




 補足説明

・“コメットブーメラン(Comet Strike)”(初出『1』)
 ラチェットの基本アクションの1つで、オムレンチを真正面に投げつけブーメランのように引き戻す、というもの。ポーズ画面の説明によると、レンチの内部に仕込んであるチップだかで操作しているらしい。初期はしゃがんだ状態でないと使えなかったが、『FUTURE2』から移動しながらでも使えるようになったのが絶妙に『痒いとこに手が届く』改良で嬉しかった(作者の感想です)

・“メルモビーム(Morph-o-Ray)”(出典『1』)及び“メルモクワッガー(Qwack-o-Ray)”(出典『3』)
 以前ちょろっと話した“メルモシリーズ”のガラメカで、有機無機問わず、それぞれ一定時間ビームを当て続けた相手をニワトリとアヒルに変えて無害化する、という一見ファンシーだけども字面に起こすとかなりえげつないガラメカ。クワッガーの方は強化していくにつれて変化したアヒルが敵に突撃してったり、爆発したりする。最終強化系までもってくと炎を纏ったアヒル(?)がラチェットの頭上を緩やかについてきて敵に近付くと突撃して炎上する。何を言ってるかわからねーと思うが、実家にいた当時、弟はプレイしている俺の隣でこれを初めて見て「ポケモンだ」と言ってました。俺もそー思いました。

・“チェーンブレード(Chain Blade)”(出典『2』)
「食物連鎖界のエリートたちを紹介しようッ!! 挑戦者たちに容赦なく襲い掛かり、連続500試合で未だ無敗ッ!! バイオ部門きっての怪物だァッ!!」
 惑星マクタールのガラクチックアリーナでのステージボスの1人。片刃の蛇腹剣二刀流を操るバカデカい剣闘士。結構カッコいい(作者の主観です)見た目しておいて、攻撃パターンが乏しく体力も比較的低めなので、ぶっちゃけ序盤のボルト稼ぎのカモである。

・“B2-ブロウラー(B2-Brawler)”(出典『2』)
「4本の脚が挑戦者を薙ぎ倒す様は迫力満点ッ!! 戦闘マシンをよろっているカーボノクス合金の6トンボディは獲物を刈り取るスペシャルメイドッ!! 『情け』の2文字は全くゥ、無用ゥッ!!」
 ↑のチェーンブレードと同じく、惑星マクタールのステージボス。脳ミソ丸見えの円盤に特殊合金で作られた長い4本の脚を振り回して広範囲を薙ぎ払ってきたり、反撃するのが難しいほどの頭上から左右に積んだブラスターで撃って来るシンプルに強いボス。ガラメカ強化がまだまだな序盤だとちょっとキツい。結構愛嬌のあるデザインをしている(やはり作者の感想です)

・“スコルピオ(Scorpio)”(出典『3』)
「さぁて、今夜の生贄――――じゃなくて、挑戦者はァッ!?」
『全滅バトルショー』というアリーナステージに登場するボスの1体で、キャタピラ状の脚部に、両腕には火炎放射機、尻尾の先端には射出可能な丸鋸状のディスクを搭載したサソリ型ロボット。至近距離での攻撃はかなり激しいので、射程のあるガラメカがないと結構キツい印象。逆にいえば距離さえ取れればそれほど脅威的ではない。

・“エビサレイター(The Eviscerator)”(出典『4』)
「待ち受けるのは相手をザクザク切り刻む天才シェフッ!! 拍手で迎えましょうッ!!」
 以前の後書きでも説明した非人道的TV番組『ドレッドゾーン』の四天王的存在『ターミネート4』の一角を担う、全身改造を受けた昆虫型戦闘マシン。至近距離では両腕のチタニウムブレードで斬りかかり、距離を離すとミサイルの弾幕とホーミング式のレーザーで攻撃してくるという、こちらもシンプルに強いボスキャラ。他の3人がか~な~り濃ゆいキャラをしていてムービーも豊富なのに対して、彼は一切喋らないし露出も少ない、のだが、どうやら一番ヒーローを殺していたのはコイツらしい。そりゃ上から2番目に配置されてんだから強いわな。

・“フュージョンボムグラブ(Fusion Grenade)”(出典『THE GAME』)
 上記作品で最初に入手するガラメカで、爆弾を投げつけるグローブ、という非常にシンプルなもの。『1』の初期装備でもあるバクダングラブ(Bomb Globe)のリメイク、と言ってもいい。

・“ストラタスシティ(Stratus City)及び ナレッジホール(Hall of Knowledge)”(出典『FUTURE』)
 惑星コルトグにある夕焼けのような赤い空が特徴的な発展都市、その中央に位置する情報管理施設。ポララ銀河のありとあらゆる情報を管理しており、ラチェットはここでロンバックスの母星、惑星ファストゥーンの存在を知る事になる。

・“クリーリー彗星(Kreeli Comet)及び スーパーコンピュータIRIS”(出典『FUTURE』)
 宇宙海賊スラッグ船長が占拠していた年中雪に覆われた彗星と、そこにある超高性能コンピュータ。究極の兵器『ロンバックスの秘密』の手掛かりを知る存在として登場する。ゲーム本編登場時には既に老朽化が進んでおり、修理しても僅かしか情報を聞き出せなかったが……?


 どうも、最近『アイドルマスターXENOGLOSSIA』のデレマスVer.なネタが頭の中にポンと湧いて来てどうしたもんかな、と考えている作者のGeorge Gregoryです。『Trinity Field』と『Tracing Pulse』は永遠に摂取できるしすっかり『流れ星キセキ』を聞くと勝手に泣けてくる体質になってしまいました(ぁ

 すまんの、もうちょっとだけ続くんじゃよ……俺も早く臨海学校編とか、それまでの幕間的エピソードとか書きたいんじゃよ……でもここで手ェ抜きたくないんじゃよ……実は結構重要なフラグ建てる章でもあるもんでの……

 レンチと爆弾のみの戦術、そして『師匠』。『FUTURE』3部作を遊ばれた方なら、誰の事を言っているか、解ってもらえたかと思います。原作知らんでも、以前ちょろっと後書きに書いてもいるので、ピンと来た人もいるのでは。そうです、『あの人』のことです。近衛軍の司令官であの戦法だったのだから、きっと正規軍の基本的な戦い方は『あぁだった』んだろうなぁ、という想像と「とことんまで調べればそれくらいの資料はどこかに眠っているだろう」という妄想から、本作に反映させてみました。シンプルに俺が『ラチェットの中に今も息づいている彼』を書きたかったというのもあります。隠れ住んでいた家は、まだ残ってる訳ですしね。

 ずっと引き摺り続けて、いつしか平気になるまで擦り減ったってね、なくなりゃしないと思うんですよ。それこそ死ぬまで。特に『彼』はラチェットがようやく会えた同胞でもあり、両親と親しい関係にあった存在でもあった訳ですし。『THE GAME』時空だとどうなってるんでしょうね、ロンバックスは……相変わらず珍しい種族ではあるようですが。

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

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