最近、街では謎のガス事故が多発している。一家全員が気付いた時には意識を失っている。原因は分かっている。キャスターだ。魔力を集める方法はいくつかあるが、その一つに人から集める方法がある。血を吸ったり、人が生来持っている魔力を搾取すれば簡単に一定量手に入る。その規模が街全体なら誰だってこの事件はキャスターが噛んでいると予想できる。キャスターはアサシンと同等に直接戦闘を不得手とする。キャスター固有の陣地作成スキルを用いれば自身に有利な工房を作成できるが、霊脈に繋がっていない所で作った工房とそうでない工房は圧倒的に後者の方がキャスターにとって有利に働く。霊脈から魔力を補給できるため大掛かりな魔術も短く済むと言う利点がある。
そんなキャスターが狙われる事を承知にこんな大胆な魔力補給をするということは、それだけ切羽詰まった状況か、それだけ自分の力に自信を持っているのかどちらかだ。凛の学校には最近結婚した先生がいるらしく二人は寺に寝泊まりしているらしいが、寺の人間は誰も奥さんの顔を憶えていない。これは明らかに記憶操作が行われている証拠。キャスターは巨大な霊脈を持つ寺、柳洞寺に潜伏している事が判明した。
「それで?あの小僧は連れていくのか?貴重な戦力なんだろう」
遠坂邸のリビングの壁にもたれながらかれこれ20分ほど戦略を考えている遠坂凛に、ビッグボディは問いかける。
「駄目よ。衛宮君は連れて行けないわ。私達がこれから行こうとしているのは、拠点防御能力最高のキャスターの所なのよ。いくらあのセイバーが無敵の存在でも、魔力パスが上手く通ってない状態じゃあただの的よ」
「囮に使える」
「だからと言ってここでセイバーを捨てれば後が苦しいわ。まだアインツベルンは姿を現していない。パスさえ通せばセイバーは比類ない強さを発揮するわ。もしアインツベルンが強力なサーヴァントを用意すればセイバーの力が必要になる。今度のキャスター強襲は、被害を最小限に抑えるために私達だけにするわ」
「俺は難しいことが嫌いだ。だから、作戦は凛に任せるさ。俺はただ暴れればいいんだからな」
ガンと拳と拳を打ち合わせ、戦えることへの喜びを表した。凛も用意していた紅茶を飲み干し闘いへの闘志を燃やす。
「私たちから仕掛けるのはこれが初めてよ。敗北は許されないわ。遠坂の掟は『遠坂たるもの常に余裕に優雅たれ』よ」
「応よ!!」
凛は闘いの為に仮眠をとり、ビッグボディはさらに自らを追い詰めるため物置の彫刻を持って、スクワットに励むのだった。
深夜2時。遠坂邸の前には凛とビッグボディの二人が立っていた。
「さ、行くわよ。遅れないでね」
「凛が望めば道を作ってやるが」
「絶対止めて」
二人は柳洞寺へ向け移動するが、人に見つからないように移動すれば建物の上を通る事になり魔術で身体能力を上げた凛もこれには一苦労で結局凛は、ビッグボディにお姫様だっこで柳洞寺の長い階段の前まで着いたのだった。
「一生分の恥かいたわ」
「なんだかんだと言いながら凛も女の子だな。キン肉星で俺の妃にしてやろうか」
「遠慮するわ」
二人は長い階段を上がっていく。もう少しで山門と言う所で二人の行く手を阻む男が現れる。身の丈に迫る刀を背負い流れる様な長髪の美男子だ。
「アサシンのサーヴァント佐々木小次郎。この様な時間に美女と肉だるまが寺に何の用だ」
「バーサーカー!」
アサシン目掛けタックルを繰り出すも早い身のこなしにタックルは避けられる。バーサーカーはそのまま境内に足を踏み込む。
「いいのかしら?門番が簡単に侵入を許して」
「なに。私ではあの鋼の様な肉体に決定打を与える事が出来ないと思ったのでな。ああいった輩は女狐の方が得意だ。おぬしも行くがいい。私が相手にするのは、そなたの後ろの彼女だ」
凛は後ろを振り返る。そこには完全装備のセイバーが階段を駆け上っていた。
「セイバー!?どうしてここに・・」
「早く退けと言っただろう?」
グイとアサシンに服を掴まれそのまま境内に投げ飛ばされる。凛が境内に尻もちをついているときには既にアサシンはセイバーと剣を交えていた。凛は自分を待ってくれていたビッグボディに話しかける。
「なにかあった?」
「俺の記憶が正しければいいんだがな」
ビッグボディは境内の一角を指さす。凛がその方向を向くとそこには衛宮士郎が立っていた。すぐに凛は士郎の元に行くも士郎は凛の呼びかけに反応しない。目線を明後日の方向を向いている。しかたがないと、凛は士郎の顔を殴りつける。それでやっと士郎は反応する。
「いってぇ。なにしやがんだ!遠坂」
士郎は状況が分からず遠坂に叫ぶ。しかし、遠坂も後ろにいるバーサーカーも上を向いたまま士郎を見ようとしなかった。不思議そうに士郎も上を見る。そして、言葉を失った。
そこには一面に敷き詰められた巨大な魔法陣の空だった。
「て、てっ~~」
「撤退よ!!撤退!バーサーカー!衛宮君と私を連れてここから逃げて!!」
一目散に二人を抱えてバーサーカーは境内を疾走する。そして魔法陣から極太のビームが乱射される。バーサーカーを追いこむようにビームは掃射され、バーサーカーは出口目前で退路を断たれる。
「私の計算違いよ。どれだけ責めても構わないわ」
バーサーカーに小脇に抱えられながら凛は諦めたようにそうつぶやく。
「みみっちいぞ、凛。いつもなら俺に無理な命令をするはずだ。この戦況を覆せってな」
ビッグボディは二人を下ろしビーム掃射寸前の魔法陣を睨みつける。周りをビームの檻で囲まれ絶体絶命の状況の筈なのに凛は安心感を感じていた。馬鹿みたいに大きな背中に安心感を覚える。一瞬その背中にKNの文字が浮かび上がる。しかしそれはすぐに消える。
「いいわ、ビッグ。御望みどうりやってやろうじゃない。バーサーカー。あらゆる手を使ってでもこの状況をひっくり返しなさい」
「強力の神に誓おう!」
そして、魔法陣からビームが発射される。ビッグボディは両足を踏ん張り、全身の筋肉に力を込める。
「強力の神よ!俺に全てを粉砕する力を!」
「強力の1億万パワーだ!!」
ビームを体全体で受け止める。衝撃で一瞬意識が遠のく、しかしビッグボディは余裕の笑みを浮かべていた。
(たしかにこれはかなりの物だが。スーパーフェニックスのマッスルリベンジャーに比べれば、蚊ほども効かんわ)
「強力ラリアットオオオオォ」
強引な腕の振りでビームをかき消す。そして、キャスターの猛攻は止んだ。バーサーカーの目の前に黒い布が現れ徐々に人型を取りキャスターが現れる。
「あら、あの攻撃で膝を着かないなんてそうとうタフな様ね。それにさっき私のビームを防いだのは任意狂化ね。素晴らしいわ、どう?私の下僕にならないかしら」
「断る。知性で相手を封じ込めようとする奴を俺は信用しない」
「そう・・・残念だわ。じゃあ死んでもらおうかしら」
キャスターの一声とともに骨だけの怪物が現れる。その数はざっと40。そしてバーサーカーを襲うが、鋼の肉体は一切の攻撃を受け付けない。しかし
「人質ならどうかしら」
キャスターはバーサーカーの後ろのマスターに目を着ける。そして凛の後ろにキャスターが現れ凛の魔術回路に直接干渉し気絶させる。
「優秀なバーサーカーさん。これが見えないかしら」
誇らしげに人質の凛を見せつけるキャスターにバーサーカーは眉一つ動かさない。
「あら?予想外ね。もっと焦ってもいいのよ」
「これだから知略自慢は嫌いなんだ。もうすでに俺の宝具は発動している」
キャスターは何が何だか分からない。そして、それは起こった。
バーサーカーを囲む骨の化け物の群れに4つの爆発が起こる。
「これが俺の最強宝具の一つ!全てを分かち合った最高の戦友達!『強力チーム』だ」
「東!狂気の殺人マシーン!ペンチマン」
「西!秒殺の重戦車!レオパルドン」
「北!イスラエルの悪魔!ゴーレムマン」
「南!中東の最終兵器!キャノンボーラー」
「「「「「これが俺達の絆!友情!」」」」」
「さあどこからでもかかってこい。逃げも隠れもせん」
「・・・・・・くっ」
キャスターは凛を置いて姿をくらます。置き土産に80体ほどの骨の化け物を置いて。
「つまらんな。強力チーム!掃除だ、掃除」
「「「「応!」」」」
そこからは一方的な展開だった。ペンチマンのペンチクローでボロボロに砕かれ。レオパルドンの戦車砲でまとめて吹き飛ばされ、ゴーレムマンの巨体に潰され、キャノンボーラーのタックルで引き潰され、止めにビッグボディのラリアットで粉にされる。100体以上いた化け物は僅か10分で殲滅した。
「ご苦労だった。強力チームの仲間達よ」
ビッグボディは凛と士郎を小脇に抱え既に決着の着いた山門を下っていく。セイバーに士郎を渡し、自分達のすぐに家に帰る。
「ねえ」
家までの帰路でビッグボディの背中でおぶされていた凛は力無く呟いた。普段の勝気な凛からは想像も出来ない消えそうな声で。
「なんだ」
「アンタは強いわ。あんた一人でこの戦争が終りそうなほどにね。あんたならすぐに新しいマスターも見つけられる筈よ、どうして私の無理難題にこうも律儀に付き合ってくれんの」
「・・・・薄情な強力の化身にだって愛情くらいあるさ」
「/////」
任意狂化:任意で狂化が可能。その代わり狂化によるパラメーター上昇は低い。超人強度で言えば普段が1億パワー、通常狂化なら1億7千万パワー、任意狂化で1億4千万パワー。
宝具「強力チーム」
ビッグボディ率いる強力チームを超人墓場から呼び出せる。4人の強度は変わらない。
ランク:B++
レンジ:1人
種類:対人宝具