新都を一望できる高層ビルの屋上に遠坂凛は凛々しく立っていた。魔力で視力を強化し異変が無いか見渡す。遠坂は古来から冬木のオーナーであり、異変の対処、管理を行っている。今夜も遠坂凛はバーサーカーを連れて新都をパトロールする。キャスターが工房を放棄したことで今まで起こっていたガス事件は無くなっていた。新都を離れ家に帰る途中、大きな魔力の動きを察知する。二人が急いでその場に行くと同盟関係にある士郎とセイバーがサーヴァントの強襲にあっているようだ。相手はかなりの巨漢で、かなりの大きさの戦斧を軽々と振りまわしながら緻密な剣術でセイバーを追い詰めていた。それを面白そうに見ているのは紫のコートを着たまだ幼い少女だった。
「やっちゃえアーチャー。セイバーを殺して、シロウを連れていくんだから」
「容易い事よ、イリヤ」
圧倒的アーチャーペースで闘いは進む。最良であるはずのセイバーはパスが通って無い事とどうやら既にサーヴァントとの戦闘を終えたばかりでかなりの消耗があり、攻勢の転ずることが出来なくなっていた。
「凛」
「分かってるわよ。でもあのサーヴァントはあり得ない程の強さよ。パラメーターはほぼA、衛宮君に勝ち目は無いわ」
「だからと言って盟友を見殺しにするのか」
「違うわ。どうにか逃げる手立てを考えてるのよ。アンタ宝具使える?あのヘンテコ四人衆呼び出す奴」
「出来る」
「じゃああの戦車みたいなやつ呼んでちょうだい」
しぶしぶビッグボディは宝具を使いレオパルドンを呼び出す。本当は四人呼び出す物なのだが多少無理して来てもらった。どこからともなくレオパルドンが現れ、ビッグボディの前で膝を着く。
「何でしょうか。ビッグボディ様」
ビッグボディとレオパルドンの間に凛が入る。事態を知らないレオパルドンは不思議そうに凛を見つめる。
「早速悪いけど、アンタのそのキャノン砲でアイツの目くらましをしてもらうわ」
「ビッグボディ様、この小娘は何を言っているのでしょう」
「凛の言う通りにしてもらうぞレオパルドン。お前の自慢の戦車砲でアイツを粉砕してやれ」
ビシィとビッグボディはアーチャーを指さす。何が起こっているのかレオパルドンは分からなかったが、主の言う事に従いアーチャーに次々と砲弾をお見舞いする。突然砲撃され周囲に土埃が上がりアーチャーとマスターはセイバー達を見失う。
「セイバー!大丈夫か!」
これを好機と士郎がセイバーに駆け寄る。呼吸が乱れ、所々出血しておりこれ以上の戦闘は無理だと士郎は判断しこの場を去ろうと一目散にセイバーを連れて逃げるが、30m程離れてからアーチャーに感づかれ土埃からアーチャーの戦斧が士郎目掛けまっすぐ飛んでくる。咄嗟に士郎はセイバーを突き飛ばしセイバーを逃がす。恐怖から目を閉じるが、戦斧は飛んでこなかった。その代わりに目の前には大きな背中があった。
「誰かの為に身を捧げるその姿は様になっているな」
「バーサーカー!かっこつけてないでさっさとその戦斧を破壊して!!」
「遠坂!それにバーサーカー!」
アーチャーの戦斧を両手で受け止めたバーサーカーは、アーチャーの攻撃手段を封じるために戦斧をへし折る。丁度その時にレオパルドンの砲撃は止まり、土埃が晴れアーチャーは自分の戦斧の末路を見る。
「あぁー!アーチャーの戦斧が!」
驚いたのは本人よりもマスターだった。本人は今まで自分の危機を幾度も救ってくれた戦斧に祈り、戦斧をへし折った張本人に興味を示していた。
(私の斧を折るとはなんという馬鹿力だ。神の試練ではないが、この男はそれだけの力を持っている)
「ふ~ん。それにシロウの隣にいるのは遠坂凛じゃない」
邪悪な笑みを浮かべながら少女は屈託なく笑う。それとは正反対に凛は苦虫を噛み潰したかのような顔をしていた。
「イリヤスフィール・フォン・アインツベン。やっぱり来てたのね」
「当然じゃない。聖杯の獲得はおじい様ひいてはアインツベルンの悲願よ。そして、その悲願に見合うようなサーヴァントも召喚したわ」
イリヤは嬉しそうに笑いアーチャーの肩に座る。
「アーチャーは誰にも負けないわ。なんたって彼はギリシャ神話の半人半神の英雄、ヘラクレスなのよ」
凛の衝撃が走る。そして、僅かな後悔が生まれる。ヘラクレスと言えば数ある英雄達中でもの代表格の一人。武勇もさることながらその知名度も圧倒的に高い。最初から奴がヘラクレスだと分かっていたならばこんな無謀な事はしないだろう。
「さ、ヘラクレス。アイツらをやっちゃって。貴方の最強の宝具で」
「言われればやるが、本当に良いのか。我の宝具は強力だが、周りに被害が出たら最悪の状況になりかねんぞ」
「あなたを信頼してるからこう言ってるのよ」
ヘラクレスはイリヤを肩から下ろし三歩下がって大弓を取り出す。そして、そこに一本の弓矢をつがえ思い切り引き絞る。
「不死さえ死に至らしめたこの矢、受けるがいい」
『魔物殺しの致死矢』(ヒュドラの毒矢)
バーサーカーの心臓目掛け毒矢が放たれる。ヘラクレス最強の宝具。100の頭を持つ怪物ヒュドラを倒し、その胆汁から取り出した猛毒を塗った毒矢。ヘラクレスの師、不死のケンタウロス ケイロンを殺したこの矢は、対人宝具でありながら神すら絶命させるまさに最強の宝具と言える。その矢がバーサーカーに迫る。限界まで引き絞られた弓から放たれた矢は、バーサーカーの反応を超えて進みこのままバーサーカーを貫こうとした。
「ケケケケケケケケ!!」
「カーカカカカカッ!!」
4人の前とアーチャーの前に黒装束の男たちが現れる。バーサーカーの前の男は顔を猛毒の矢の前に晒す。咄嗟の出来ごとに凛は反応できなかったが、男のすぐ目の前に矢が迫っている事は理解出来た。突き刺さる。そう思った時には矢じりが顔面を貫いていた。
「ケケッ。おら俺に注目しな」
イリヤとアーチャーの前の男が飛び上がりアーチャーの胸に強烈な蹴りを加える。そして、アーチャーの巨体がその蹴りで倒れる。
バサッと二人の男が黒装束を脱ぎ棄てる。そして、その場にいた全員が驚きの声を上げる。
「なんなのよこいつ!機械じゃないの!」
「あ、あんた・・かかか顔が」
イリヤの前に現れたのはステカセに頭と手足が生えた奇妙な生物。凛の前に現れたのは矢など刺さっていない顔に大きな穴の開いた真っ黒の体に胸に大きくBHと書かれた男だった。
「さあ!良い子は帰っておねんねしておきな。『ねんねんころり』」
ステカセの生物が体のスイッチを押すと足のイヤフォンからあの子守唄が聞こえる。イリヤはその子守唄を聞くと突然強烈な眠気に襲われる。いくら魔力で意識を保護してもその眠気は治まらずそして、倒れながら眠り込んでしまう。
「ほら、お前の大事な嬢ちゃんがおねむになっちまったぜ。連れて帰んな」
右手?をひらひらさせながら困惑するアーチャーにステカセは少女を渡す。マスターが倒れ、目の前には未知の生物一人でどうにかなる状況ではないと、アーチャーはその場を引いた。
その場に残ったバーサーカー以外の3人は謎の人物に警戒心を抱いている。
「キン肉マンビッグボディだな」
顔に穴の開いた男がバーサーカーに尋ねる。
「いかにも俺がビッグボディだ」
「確かに強力の神の化身らしく脳筋野朗だ。ケケケ」
ステカセの化け物がニタニタ笑いながらビッグボディに近づく。
「ステカセ、あまり粗相を冒すな。こいつの超人強度は1億パワー、挑めば死ぬのは我々だ」
「で、悪魔超人の貴様らが俺に何の用だ」
「では率直に言わせてもらいましょう。ビッグボディ、あなたに我々悪魔超人の新たな旗印となってもらいたい」
「どういう事だ」
「ご存じの通り我々、と言ってもこの場には2人ですが。7人の悪魔超人と悪魔六騎士には仕えるべきお方がおります。しかし、あのお方も今では表舞台に立つことも無く完全引退となっています。我々には新たな象徴が必要なだ。悪魔の名に恥じぬ力を持つ者を」
「それで俺に白羽の矢が立ったわけか」
「その通りだ」
奇妙な二人の男はビッグボディの前で訳の分からない事で話し合っている。凛は意を決してバーサーカーの前に立つ。
「アンタ達、バーサーカーに用があるならまず私に話しなさいよ」
あからさまに二人の気分が悪くなっていくのが分かる。そこへバーサーカーが助け舟を出す。
「俺は別に構わない。王位継承に敗れやることがないからな。しかし、今俺にはやるべき事がある。それに協力してくれるのなら、その話乗ってやろう」
「良いだろう。では、我々も貴様らの争いに加わってやろう。俺はブラックホール」
「俺は百の顔を持つ超人 ステカセキングだ」
一人青い顔をした遠坂がさらに降り積もる不安に押しつぶされそうになりながらビッグボディは新たな仲間を2人手に入れた。
アーチャー(ヘラクレス)
筋力:A+
耐久力:A
魔力:B++
敏捷:A
幸運:A+
宝具:A+++
宝具
『魔物殺しの致死矢』
レンジ一人
対人宝具