とある科学の劣化魔導   作:fukayu

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幻想破砕砲

「まだだ、まだ終わるわけにはいかない!!!君をいや、お前を倒すまでは!!」

 

木山春生は満身創痍の中立ち上がる。その手には倒れていた時に握り締めたであろう砂利を手にしている。チカラの殆どは持っていかれてしまったが幸い多少戦えるだけの力は残っている。先程の膨大な量で持て余していた感があった時より調子がいいくらいだ。

 

「私はあの子たちの敵をとるまで止まれない!あの子たちの未来を奪ったお前だけは許せない!!」

 

まだ相手との距離はかなりあり、近距離型の能力である能力障害相手ならこちらが有利だ。

手に持った砂利を念動力で飛ばそうとした瞬間、先に相手が動いた。

 

「ならあんたがしっかり決着をつけなさい!黒子!!!」

 

「はいな!」

 

御坂美琴の電撃が地面に跳び、砂煙で狙いが定まらない。

 

「くっ!!」

 

「遅えよ!!」

 

一瞬。まさに一瞬だった。

視界が乱れた瞬間に風紀委員の少女の能力により、秋瀬七実は木山のすぐ横へ移動しており、その右手で木山の頭をつかむ。

御坂美琴は幻想猛獣との戦いを始めており、風紀委員の少女はそのまま橋の上まで跳んでいく。

たった一度っきりのアシスト。しかし、それを打合せ無しで彼らは決めてきた。

 

「悪いがこれで終わらせる!!」

 

(私はここで終わる訳には!!!)

 

頭の中にかつて自分の生徒たちを破壊した忌まわしい力が流れ込んでくる。そう感じた時木山の体は勝手に動いていた。

 

「うわああ!!!」

 

その手をつかみ女性とは思えね力で相手を投げ飛ばす。

 

「がっあああああああああああああ!!!!!!」

 

地面に思い切り叩き付けられた秋瀬七実はその衝撃に悲鳴を上げる。

 

(はあ、はあ、なんだ何が起こっている)

 

いくらなんでも研究漬けの自分にこんなパワーがあるはずがない。

しかし、遠くで超電磁砲と戦っているある意味では自分の半身ともいえるそれを見て理解する。

 

明らかに大きくなっている(”””””””””””)

 

「は、はははは!!!そういうことか!お前の能力はどうやらアレにとって餌のようだぞ!」

 

「なっ!!!!!」

 

ノイズを吸収して巨大化したそれは超電磁砲を追い詰めていく。

これ以上巨大化したらどうなるかなど想像するまでもない。

 

 

そこからは一方的な展開だった。

 

「ぐッううう!!」

 

炎弾が秋瀬七実の真横に当たりその衝撃で吹き飛ばされる。

 

「厄介なものだなそのノイズと言うのは……遠距離からの攻撃はほとんど着弾点がずれるのか」

 

「……まあ、そういうことだな」

 

秋瀬七実のノイズが……全ての攻撃が木山を通し幻想猛獣(AIMバースト)を成長させてしまう以上、もうこちらからの攻撃は出来ない。そうなってしまった以上能力抜きの戦闘力が皆無な秋瀬七実ににとってこの戦いの結果は絶望的だった。

空間転移(テレポート)の応用か細い光のレーザーのようなものが高速で秋瀬七実の真横を過ぎる。

 

「本当に忌々しい。その能力さえなければあの子たちは……」

 

手のひらから水の塊を発生させる。

レーザーの当たった箇所はまるで何かに削り取られたような円形のクレーターになっておりその中に秋瀬七実を押し込めるように水の塊をぶつけ叩き落す。

 

「そうだその能力(チカラ)さえ無ければ!」

 

次々に穴へ水を流し込んでいき、あっという間に秋瀬七実の身体は水の中へと沈み込む。

 

「っぷは!」

 

「何故だ!何故何も言わない!?なにか言う事があるだろう!!」

 

「…………」

 

しかし、秋瀬七実は何も口に出さない。あの実験について何も言わない。

 

「そうか……なら」

 

木山は御坂美琴とまではいかないがそれでも強力な電撃を掌に発生させる。これを水に身体が浸かっている彼に流せばいくらノイズで演算が乱されようと外れる事は無い。

 

「これでどうだ!これでもお前は何も言わないのか!?あの子たちに詫びの一つも口にできないというのか!?」

 

「……ああ、無理だ」

 

「なっ!!!!!」

 

秋瀬七実の口から出てきた言葉に木山は絶句する。しかし、それはすぐさま少年への怒りに変わる。

木山は電撃を消し、代わりに念動力で水ごと秋瀬七実を空中に持ち上げすぐさま地面に叩き付ける。

 

「っぐ!!!痛え……」

 

「何故だ!何故そこまで……君はただ命令されていただけなんだろう?あの時の君はただ大人の言う事を聞いていただけなんだろう?ならそれを言えばいいじゃないか!?」

 

傷つきながらも決して何も言わない秋瀬七実に木山は耐えきれず声をかけてしまう。

 

「……やっとか。やっと本音が出たか」

 

「!?」

 

その言葉を聞き、秋瀬七実はゆっくりと立ち上がる。

 

「あんたは本当はただそれを聞きたかっただけなんだろ?俺の口からあの時のことはただ命令されていただけだって……そう言ってほしかっただけなんだろ?」

 

「な、何を!?」

 

「さっきからわかっていたよ。あんたが本当は……いや、本当にやさしい人間だってことはな」

 

そして少年はゆっくり、ゆっくりと彼女に近づいていく。

 

「く、来るな!」

 

拒絶するための一撃はまるで見当違いの方向へ飛んでいく。

 

「その証拠にあんたはさっきから攻撃を全部『外している』」

 

「私が外している?それは君の能力のせいだろ?」

 

額を嫌な汗が流れる。この少年の次の言葉はわかっている。しかし、それを言われては、それを認めてしまってはあの子たちに合わせる顔が無い。

 

「そんなはずねえよ。だって俺のノイズは攻撃・防御・妨害全部あんたを通じてあの化け物に言ってんだからな!」

 

指を指す。少しばかり離れたところで超能力者と戦っている化け物を……その姿は先程の一撃以降一度もノイズで攻撃をしていないのにも関わらず膨れ上がっていた。

 

「つまりあんたは演算が正常にも関わらずわざと逸らしていたんだ。大体ほんとに殺したかったり、拷問したかったんならさっき超電磁砲に使ったような爆発を使えばいいんだ。ま、勿論あんなバリアなんて持っていない俺はそのままダメージを受けるがな」

 

ゆっくり近づいてくる。

 

「や、やめろ!」

 

「あんたはほんとは最初からそのつもりだったんだろ?誰も殺す気なんか無い。ただ、俺の口から謝罪の言葉さえ出ればそれで満足……」

 

あと少しでその手が届くところまで来る。

 

「やめろ、それ以上は言うな!!言わないでくれええええええ!!!!!

 

「だけど、俺は謝れない。認められもしないし、立ち向かえもしない!だがここで、あんたに掛かっている悪い呪い(ノイズ)を振り払ってやる事は出来る!」

 

その手が木山の頭に触れる……

 

「やめろおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」

 

木山の地面が盛り上がり、秋瀬七実をノーバウンドで5m以上吹き飛ばす。

 

「っぐは!」

 

その後何度も地面をボールのように跳ね返り、秋瀬七実は力なく倒れ伏す。

 

「はあはあはあ!!」

 

「なんだやれば出来んじゃねえか。今のは効いたぜ」

 

しかし、それでも秋瀬七実は立ち上がる。ゾンビのようにボロボロになりながらもただただ立ち上がる。

 

「何故だ!何故そこで立ち上がる!?」

 

「一応この街で最低の地位にいるからな。地面に倒れるのも、そこから誰の手も借りずに立ち上がるのも慣れている。……弱者の特権ってやつだ。それに、」

 

付け加える。痛む体を歯を食いしばって耐えながら、

 

「それに、ここで倒れたら、あんたが救われねえ!救われねえのは劣能力者()だけで十分だ!!!」

 

「なっ!!!!!」

 

この少年は一体何を言っている?なぜ自分を殺そうとした相手を助けようとする?この少年は……

 

『あなたのしたい事はなんですか?』

 

「うっ!!!」

 

頭に声が響く。何かの誰かの声が自分に問いかける。

 

「ウうウうウうウうウうウうウう!!!!!!!」

 

『教え子を目の前で奪われ、救う方法もわからない。……なら、あなたのしたい事は、するべき事は何ですか?』

 

(そうだ……私はこの声に囁かれて……)

 

 

 

 

 

「ずっと考えていた……」

 

そうずっと考えてきた。

 

「……俺はマイナスだ。何をやっても、どう行動しても、全てが悪い方(マイナス)になる。どれだけ足掻いても、他人を……自分を不幸にする。俺には他人を救う事なんてできない」

 

自分のその沢山の思いを、心を(幻想を)狂わせてきた右手を見て、自虐気味に答える。

 

「《あの野郎(””””””)》みたいには誰かを救えねえ。いくらサイコロを振っても、どれだけいい目が出ても進むべきそのマス()が全てマイナスになっている」

 

この世界に奇跡なんて無い。それが秋瀬七実がこの能力(チカラ)を……能力障害(AIMノイズ)を手に入れた時からの持論だ。どれだけ願ってもどれだけ足掻いても所詮は無駄だ。その双六の上にいる限り全ては決まっていて、奇跡と呼ばれるものがあってもそれはただ、いい目を出していい結果が書いてあるマスに止まれただけだ。最初からそんな都合のいいマス(逃げ道)なんて無いこの人生には奇跡なんてものは必要ない。

 

(どれだけ足掻いても無駄なら諦めてただ誰かが引いたレールの上で従っていればいい。そう思っていた。だが皮肉なことに、本当に最悪なことに、俺はレールを外れる選択をしてしまった)

 

あの日……1年前のあの日出会ってしまったあの男によってずっと運命に囚われていた自分は、能力障害(AIMノイズ)は逃げだす切っ掛けを得た。……その拳によって

 

「俺を壊してくれたあの野郎にはたっぷり力を蓄えてからお礼参りに行くとして……」

 

今は目の前のこの女だ。確かに覚えているあの時の記憶は当然のようにノイズだらけでぐちゃぐちゃだけど、教え子のために涙を……声を枯らさんばかりに叫んだ彼女の事はあの時の記憶に残っている。

だけど、それでも、それでも自分は、

 

「俺には謝る事も、償う事も、最後まで立ち向かう事も出来ない。俺に出来ることは逃げる事だけだ」

 

『逃げる』その言葉を口にするだけで体中を這いずり回るような痛みが引いていく、体晶の効果切れ(制限時間)がきていて制御不能になっていたノイズが引いていく。

自分が昔から持っていたたった一つの魔法の言葉。全ての行動がマイナスにつながっている自分ができるたった一つの抵抗。無駄なことなら、逃げて、狂わして、その双六の目をノイズで書き換えてしまえばいい。

 

「ずっと考えてきた……こんな俺でも誰かを救う事が出来ないか……誰かの……誰かの絶望に染まった双六の目(幻想)を破壊して……狂わせてやれないか」

 

そうして、

 

「これがずっと考えてきた結果だ。俺のこの手は他人に触れてしまえばその人を壊してしまう、だったら近づかなければいい。近づかないで……流し込むのではなく、俺のノイズ事誰かの幻想(ノイズ)を吹き飛ばす。そのヒントはあいつがくれた!!」

 

離れた場所で戦っているこの学園都市の頂点の一人。1万人分を力を持つ幻想猛獣(AIMバースト)を、秋瀬七実のノイズでそれ以上に強化された怪物を相手にしても一歩も引かない彼女を見る。

数多の学生の頂点に立ち、並の兵器なら生身で超越し、音速の3倍でコインを放つという破壊力を代名詞に持つ彼女はしかし、ただの一人も傷つけていなかった。

少し本気を出せば人間など黒焦げにしてしまえる10億ボルトもの電撃も、高速で振動させて鉄すらも切断できる砂鉄の剣も、他人を傷つけるためではなく何かを守るために使う力になっている。

極めつけは超電磁砲(レールガン)だ。直撃させれば人一人殺すことなど容易いあの一撃を彼女はなんと『当てて破壊する』のではなく、『発射したときに発生する強烈な衝撃波』を利用する事で非殺の一撃にしている。

 

「去年の大覇星祭で見た時からずっと考えていた。人に使えばどう考えても殺してしまうような一撃をあんな方法で使うなんて……俺には想像もできなかった。……だけど、だからこそ!!俺にも、俺のこのどうしようもない能力でも誰かを救える事が出来ないかずっと、ずっと考えていたんだ!!!!」

 

「うううああああああああああああ!!!!!」

 

木山春生が絶叫する。彼女は今強烈な意思(ノイズ)で行動している。本来のやさしさを……本当にやるべきことを救いたかったものを捨ててまで自分に能力障害(AIMノイズ)に復讐しようとしている。

 

「でも、そんなのは本当にあんたが望んだことじゃない!!!」

 

「ウうああああ!!!!お前に何がわかる!!!!」

 

「わかるさ!!俺にははっきりと見える!あんたを取り巻く恩讐が!誰かの……あんたを利用する強烈な意思(ノイズ)が今はっきりと見えている!だから!」

 

だから!いま彼女を救う!そして、それが出来るのは今この手に持っているあの子たちだけだ。

体晶が入っているガラス状のケースを取り出す。これは、彼女の教え子たちから作り出された負の産物。自分たちの力で拾ってくれた学園都市に報いたいと願った置き去り(チャイルドエラー)達の思いを踏みにじり、作り出された悪魔の結晶。

 

「結局、これは誰かを救うどころか沢山の命を奪ってしまったけど、それでもあんたを救う力に今してみせる!!」

 

体晶を舐め取る。途端に体中が興奮したように熱くなる。まるで高熱を出した時のように火照った体を無視して、構える。

木山春生に、救うべき相手に構える。

学園都市第3位の超能力者の代名詞と呼ばれるその一撃を放つために構える。

 

「撃ち出すのはコインじゃなく俺の(ノイズ)。体中を流れるノイズを指先にすべて集める」

 

足の先から頭のてっぺんまで体中の全ての部分からノイズをかき集める。

 

「ぐうううううううううう!!!!」

 

本来の使い方から逸脱した行為は秋瀬七実の体を破壊していく。体中の血管が切れ悲鳴を上げる。

 

(まだだ、俺一人の能力じゃ演算が足りねえ!だから……使わせてもらうぞ!)

 

幻想御手によって作られた1万人のネットワーク……現在秋瀬七実が繋がっているそれすらも利用して必殺の一撃を放てるレベルまでノイズを練り上げていく。

 

「お前は、あの子たちのあの子たちから奪い取ったものまで利用するのかああああ!!!!!」

 

秋瀬七実が体晶を使用したことに気づいた木山は充血したその眼で少年を睨み叫ぶ。

 

「そうだ!俺にはこんな事する資格なんて本当はねえ!本当は……ッグ!!」

 

何かを言おうとした瞬間秋瀬七実のためていた力が少し暴走する。

 

「そうだな、俺はあんたから逃げる事しか出来ねえんだ!だけど、こいつの始末だけは着けさせて貰う!!」

 

溢れ出る力を何とか抑え、必殺の一撃を形にする。

 

「これが、この一撃がずっと俺が考えてきたことの答えだ!そして、あの子たちから奪ってしまったものを今返す!!」

 

その指先に溜めたモノを、そのノイズを撃ちだす。第三位の超電磁砲と似たその一撃は溜めた弾丸(ノイズ)をノイズで撃ち出すことで完成する。

 

「ウおおオオオオオオオオ!!!『能力障害(AIMノイズ)ウウウゥゥゥゥウウウウ!!!!!』」

 

新たに生み出したノイズで撃ちだした一撃は巨大な衝撃はとなって木山春生へ向かっていく。

 

「いっけえええええええええええええ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「いっけえええええええええええええ!!!!!」

 

秋瀬七実から撃ちだされた一撃はまっすぐに木山春生に……自分に向かっていく。

いつか見たあの子たちを壊したものとは比べ物にならないそれは、当たれば確実に自分を破壊するだろう。

 

(まだ、まだ私は倒れるわけにはいかないんだ!あの子たちの仇を討つまでは!!)

 

その思いとは裏腹に身体は動かず、その巨大なノイズの波に飲み込まれていった。

 

「う、あああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

『センセー』

 

生徒の声が聞こえる。自分に懐いてくれたあの子だ。

 

『センセーのこと信じてるから』

 

――――すまない。私は結局君たちのことを救えなかった。

 

私は何もできなかった。あの実験の後何度もあの子たちを救おうとした。しかし、私一人の力では限界があった。ならば、学園都市最高の力を使えば……私は樹形図の設計者への使用を考えた。

 

『何故だ!人間の命が懸っているんだぞ!?』

 

これで23回目あらゆる手段を使って申請したがその全てが悉く却下された。

 

『何故だ!あの子たちを助けることがそんなに悪いのか!?そんなに間違っていることなのか!?』

 

何度も何度も計算して編み出した理論……後はそれが決して失敗しないように樹形図の設計者の力を誓ってシミュレートするだけなのにそれが通らない。

 

『いえいえ、それは簡単な話ですよ。統括理事会がグルなのです。』

 

ある日、男が私を訪ねてきた。

一目で目を奪われるような鮮やかな金髪を少し短めに切りそろえて、その髪を隠すように白いハット帽を深く被り、タキシードを着ておりその姿だけを見れば英国紳士と見間違えそうだがその上から羽織っている白衣が全てを台無しにしている。

 

『必要ならば私が協力しますよ?』

 

その男は貼り付けたような笑顔浮かべながら手を差し出してくる。あからさまに怪しい。

しかし、その時の私はその手を取る以外に選択肢はすでに無くなっていた。

 

 

 

「そのノイズを吹き飛ばす!!!!」

 

回想を続けようとした私の思考を巨大な衝撃波はその記憶(ノイズ)諸共外へ弾き飛ばす。

 

「あ、があああああああああああ!!!!!」

 

そのまま私は次の記憶(ノイズ)を観る事になる。

 

 

 

 

自分のことをプロデューサーと言ったその男は私が手を握ったその瞬間から様々な援助をしてくれた。

私一人では到底用意など出来ないほどの量の資料・資金・設備……一度私はなぜ彼がここまでしてくれるのかを尋ねてみた。

 

『協力する理由?おやおや、それは不思議なことを言います。協力者(プロデューサー)である私が大切なアイドルであるあなたを助けるのは当たり前でしょう?』

 

この男は時々おかしなことを言う。この私を捕まえてアイドルだなんだと言ったり……その服装と性格さえなければ私ですら尊敬するほどの才能があるというのに。

 

『それよりもここを見てください。』

 

男は持ってきた資料の一つを私に差し出す。

 

『最近、広まってきた情報なのですが、長点上機学園に劣能力者(マイナス)と呼ばれる能力者がいるらしいのです』

 

劣能力者(マイナス)?この街には無能力者から超能力者の六つの括りしか無い筈だが、何かの能力名だろうか。

 

『いえいえ、不思議な話ですが能力名は別にあるらしいのですよ。その能力名が興味深く……』

 

指示されるままに私は記事を読み進める。そして発見する、してしまう。

 

能力障害(AIMノイズ)!?』

 

かつて教え子たちと私の人生を狂わせたその名を……

 

 

 

 

「ウ、あああああ!!!そうだ私は私はそこでのうのうと暮らすお前を見つけて!!!!」

 

再び違う記憶(ノイズ)に移る。

 

 

 

 

能力障害――その名を発見した時から何かが狂ったのは知っていた。私の中の何かが形を変える。

 

『やはり駄目だ!これだけ資料がそろっていても完全にあの子たちを救えるわけじゃない!』

 

男のおかげで研究は尋常ではないスピードで進んだが、やはり最後のシミュレーションの段階で躓く。

どうしても樹形図の設計者の力が必要になる。そのための準備も一応していた。しかし、

 

『私の勝手な意思で本当に他人を巻き込んでいいのだろうか』

 

そのためには1万人ほどのデータが必要となる。

 

『あなたのしたいことはなんですか?』

 

私のしたい事……それは勿論……

 

『あなたの教え子たちを助けても、またどこかで同じことが繰り返されるのではないのですか?』

 

そうだ……それでは意味がない。あんな計画は二度と起こさないようにしないと……

 

『噂では能力障害(AIMノイズ)は今でも様々な実験に参加しているらしいですよ。そしてその実験には……彼が関わる計画には高確率で樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)が使用される。……さあ、あなたのしたいことはなんですか?』

 

そう言われて、いや言われる前からすでに私の中で答えは決まっていたのかもしれない。

 

 

 

 

「だから!!私はお前を利用して、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)を使い、あんな計画はもう二度と起こさせないようにする!」

 

強固な意志で気を取り戻した私は尚も能力障害(AIMノイズ)から照射し続けられるノイズに耐えながらも叫ぶ。

 

「お前さえ、お前さえいなければ!!あの子たちは!!」

 

「あんたの記憶(ノイズ)確かに観たぞ!ああそうだよ……俺さえいなければきっと……でも!あんたは気付いてないのか?途中から目的がすり替わっていることを……最初にあんたが望んでいたことはそんなものじゃねえだろ!」

 

「何!?」

 

目の前の能力障害は口から血を吐きながら必死に私に訴えかけてくる。

 

「あんたが最初にやろうとしたこと……あんたが誰を助けたかったか……それを思い出せ!!」

 

再び私は流れてくる大量のノイズに意識を飲み込まれる。

 

 

 

 

『センセー』

 

『木山センセー』

 

またあの子たちの声が聞こえる。

何度も何度も夢に出てきた……その笑顔をもう一度見るために私は能力障害を……倒すと決めた。

もうあんな悲劇は繰り返さないと……そう決めたんだ。

 

「違うだろ!あんたが最初にやりたかったことは違うだろ!」

 

何を言っているんだこの男は……私は最初からお前を倒すことだけを……

 

『センセー』

 

再び教え子の声が聞こえる。……そうだ私はこの子たちを……

 

そこで私は矛盾に気づく。確かにあんなことを繰り返させないために能力障害を倒すことも大切だ。しかし、私が本当にやりたかったことは何だっただろう?

 

『あなたのしたいことはなんですか?』

 

「あんたがやりたかったのは違うだろ!」

 

―――ウうウ、私の頭の中勝手にでしゃべるな!私が……私が本当にやりたかったことは……

 

『センセーのこと信じてるもん!私たちずっとセンセーが来るのを待ってるよ!』

 

あの子たちの幻影(ノイズ)が私の前に現れ、その手を差し出してくる。

 

『だから、センセーお願い。私達が目を覚ましたら……また私たちのセンセーになって下さい!』

 

―――そうだ!私はもう一度あの子たちを目覚めさせるため!もう一度あの子たちのあの笑顔を見るために!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は負けられないんだ――――――――!!!!!!!!!!!!」

 

木山春生が絶叫する。

 

「そうだ!それだ、その感情だ!あんたが本当に望んでいたことは復讐なんかじゃねえ!やさしい……やさしい木山センセーらしい本当にやさしいことだったんだ!」

 

秋瀬七実の放つ圧倒的なノイズに流されて、木山春生の身体から余計なモノ(黒いノイズ)が現れる。

 

「だから俺は!その一途な感情を利用した余計なモノ(ノイズ)を吹き飛ばす!……これが…この力が、ずっと考えてきた俺の誰かを救う可能性(ノイズ)だーーーーー!!!!」

 

自分に残ったすべてのノイズを解き放つ。木山に入り込んだ全ての邪念(ノイズ)を吹き飛ばすその一撃は、

 

「ようやく思い出したよ……」

 

木山のその一言を合図に全ての幻想(ノイズ)を破壊した。

倒れ行く木山に背を向けながら、

 

「名付けて……幻想破砕砲(ノイズバスターキャノン)!!……ッケ、我ながらヒデェネーミングセンスだ」

 

木山の憑き物が取れ、どこか安堵したような表情を見ずに秋瀬七実はひとり言のようにつぶやく。

その眼には何かに引き寄せられたように秋瀬七実のノイズとは別に(”””””””””””)木山に寄り添うように集まっていく思念(ノイズ)が映っていた。

 

念話能力(テレパス)の一種か……木山センセー……結局あんたの教え子から作ったこの体晶がこいつらを引き寄せただけで、俺は実は何もしていなかった落ちっぽいな。結構頑張ったつもりなんだが……参ったなこりゃあ」

 

肩まで伸びきった黒髪をボリボリと掻きながら、その視線を別の場所へ向ける。

 

「……さてと、あとは」

 

その先にはその能力をフルに発揮して奮闘する第三位の超電磁砲と最初に見た時から十倍ほどに膨れ上がった幻想猛獣(ノイズの化け物)が戦っていた。




最後のは劇中でも言っているように秋瀬七実の使った体晶が被検体の子供たちから作られたものだったのでその中の一人――カチュウーシャでお馴染みのあの子の能力が木山先生に届いたというところです。
なので今回の戦い実は秋瀬七実ことナナミンは先生に取り憑いてた黒いノイズを追い出す事しか活躍していません。

某漫画の某過負荷風に言うなら、

ナナミン『また勝てなかった』
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