秋瀬七実と言う人間はとても捻くれた性格をしている。
人に頼まれても、何かにつけてめんどくさいだの割に合わないだの俺には無理だなど理由をつけては断る素振りをしても最終的あるいはかなり早い段階で手のひらを返したように引き受ける事もある。
自分には関係が無いと言いながらとあるクローン達が関わっている実験を恐らくは成功間近という段階で阻止しようと心に決めていたりもする。……実験があると知っていてすぐに阻止しようなり何なりと思わない辺りからもこの男の性格を理解することは難しくはない。
ハッキリ言って非常に面倒くさい性格をしているのだこの秋瀬七実と言う劣能力者は。
「う~ノイズがひどい~今日はどっかで花火でもやってんのかよ~」
さも当然のように自分を治療してくれたカエルに似た顔の医者の忠告を無視し、病院を抜け出した秋瀬は夜の街を右手にギブスをつけたまま制服を羽織りながら、ゆらりくらりと今にも倒れそうな調子で人気の無い方、明りの無い方へと歩いていた。周りには人っ子一人おらず、車一つ通らないおかしな鉄橋の前にいた。
時刻はすでに午前零時を下回っていて当然ながら学生に対する完全下校時刻を大幅に過ぎている。
彼がなぜこんな時間にこんな場所にいるのかと言うと、
「窓から空を眺めてたらなんかスゲエ光の柱みたいのが出てたから、「うっわスゲー」ってテンション上がって外に出たら弱った体に寮に戻った学生共のAIM拡散力場を一斉に浴びて人の無い方(と言うか無害なスキルアウト達の方)へと歩いていたら、こんな人道理の無いところまで来てしまいましたーってか!クソ、どうして高位能力者ってのはこうもまとまっているのかねえ!?って優等生だからか。少しは俺に気を使って夜遊びくらいしろよ~」
「できれば俺がいないところで」と弱気に付け足すと秋瀬は、頭をガンガンと耳に入った水を抜くように叩き付けながら立ち止まる。
この厄介な能力はAIM拡散力場にばかり気を取られがちだが、意外に能力の範囲が曖昧で電化製品の発する微弱な電波や携帯や無線などの微かなノイズを拾う事がある。それでも調子のいい時限定だったこの何とも言えない副産物は最近は時々能力のノイズに交じって聞こえてくることが多くなり、携帯のモノなどはノイズから話している内容が大体わかるレベルまで解読出来る様になっていた。
「ここ何週間から前からなんだよなあ、それまではノイズを使い果たしてスッキリした気分の時だけだったのに。今日はここまでずっと聞こえてるし~」
まるで誰かに語り掛けるように両手を広げ一見誰も居ない鉄橋の真ん中をクルクルと陽気に回る。
回りながら次々と何も無かったはずの空間から出てくる全身黒スーツを着た男たちを見渡しながら秋瀬は話す。
「最近は女子中学生なんかとつるんでいたから、油断していたのかな?俺ってそういう電子機器の類って実は第3位並に得意なんだぜ?」
バチバチっと、男たちは纏っていたマントのようなものが青白い電撃を発するのにも気を留めず驚いたようにそれでもあらかじめ決めてあったかのような動きで秋瀬を囲む。数は十数人と言ったところだが装備を見る限り、学園都市のとある方面では有名な
最新なのは恐らくそのマントと使用している無線だけで他は頭を守るヘルメットからその他の防具、それに使用しているサブマシンガンまで明らかに型落ちとわかるものを使っている。第一、電磁迷彩を使って姿を隠すという手段はまともだが、それをノイズなどと言うある意味で電磁波などより厄介な方法で探知する相手に使用してくるなど
(俺の能力対策に無駄にハイテクなパーツを使ってない旧式の装備で固めて来たんだろうが、ステルス用のマントで妥協する辺り明らかに技術や資金云々が足りてねえみたいだし。第一連中なら俺の能力を知ったうえでそれに対応した装備で固めてくるだろうしな……)
『……対象を包囲……攻撃……開始』
「だから聞こえているっての!」
彼らの使う無線から流れるノイズを解読した秋瀬は言葉を発すると同時にポケットに入っていたガラス状のケースから白い粉末を少しだけ舐め取り、思いっきり自分を包囲している男たちの中で一番近いモノの方へと飛び込む。
それと同時に元々立っていた場所には十数か所から一斉に銃弾が浴びせられる。
秋瀬はその光景を背中に感じて冷や汗を掻きながらも彼にすぐそこに迫られギョッとしている男の頭を思いっきり右腕で強打する。
右腕のギブスがひび割れるような音を立てるが気にせず、そのまま怯んだ男の後ろに回り男の首筋から直接頭に触れる。本当はヘルメットが少しでも割れてくれれば助かったのだが流石に学園都市製かすり傷一つついていない。どうやら怯んだのも男が相手のまさかの行動に本当に驚いただけのようだ。
「とった!」
「……こんな事をしても無駄だ」
男は秋瀬が人質を取ったくらいでどうにもならないと嘲笑うように他の仲間たちを見ながらつぶやく。
他の男たちは全員、捕まった男と秋瀬に銃口を向けながら無線で連絡を取り合っている。
それを見るでもなく無線の内容を理解するでもなく、秋瀬は男の言葉に応える。
「だろうな。あちらも正義のヒーロー様や警備員じゃあるまいし人質程度で躊躇するわけないだろ。今だって今度は外さないようにお前諸共俺を葬れるよう確認しているんだろうさ。俺にとって重要なのはお前だよ。こっちもヒーローじゃないんだ」
秋瀬が言った言葉を男が理解するより早く、まるで毒蛇が首に巻き付くように甘く細々とつぶやく。
「なあ、どうして俺の拘束を解けないと思う?いくらなんでも学生の、しかもスキルアウトに負けるような奴に捕まって何も出来ないなんておかしいと思わないか?武器を持っているならともかく今はこの固めたギブスとご存知の通り役に立たない能力だけだ。お前らずっと俺を監視してきたんだろう?俺の能力なんて能力者でもないお前らには無意味だ。そう思ってお前らも来たんだろう?」
「な、何故それを」
男は必死に体を動かそうとするが、全身から脂汗が出るばかりで指先一本も動かせてはいない。
「ふむ、ふむ。成程ねえ、やっぱ相当舐められていたわけだ。そりゃそうだよな超能力者なんて見るからに化け物そうな連中ならまだしもそれとは正反対の劣能力者なんかねえ?いや、別にいいんだよ。そっちの方がありがたいし、そのまま俺の評価が変わらない事を願う。今回もなんかの事故ってことで処理してさ」
「お、ま、え、きおく、を!?」
「俺の能力は知っているとは思うが能力者のAIM拡散力場を通じてその能力に干渉することだ。でもな、よく考えてみろ?脳と密接に関係がある能力を通じて人間の各機能――例えば電気信号とか記憶を司る海馬とかにノイズを送り込む事は出来るでしょうか?………ハーイ、時間切れ。出来ます!」
人間が身体を動かすために常に信号を直接送り続ける脳に異能の力である超能力すら捻じ曲げるノイズを流されれば人間はどうなるかそんな事は少し考えればわかる。恐ろしいのはこの劣能力者は流した後の事など恐らく全く考えていない事だ。他人の身体や記憶を好き勝手にしてその後元に戻りはしない取り返しのつかない事になってもこの劣能力者は気にせずいつもの日常に戻っていくのだ。それが一方的にでもこの化け物と繋がっていることでわかってしまう事実が只々恐ろしい。
何も知らずにこちらに銃口を向ける仲間とその凶器よりも恐ろしいことをさぞかし愉快そうに打ち明ける少年の声により既に正気を失いかけている。それでも、それでも辛うじて残った理性で必死に少年の意見を否定する。
「う、そだ。お前は、能力者以外にはそ、その力をつ、使えないはず……」
「そこなんだけどねえ。お前らは
男はたった今与えられた情報を頭の中で必死に整理しようとするも思考に靄がかかったように一つの事に全く集中できない。
痙攣する手足で何か少しでも逆転の手は無いかと探る。男の全身には学園都市製の試作用と名の付く様々な装備が着けられているその中の一つでもうまく起動させれば活路は開けるかもしれない。
「!?」
そこで男は予備の無線にランプがついている事に気が付く。これは様々なノイズを出すというこの劣能力者用に作戦前に各員に渡された本来使っているはずのものとは違うチャンネルで繋がれているものだ。
(これで、少しでも情報を伝えられれば……)
もう自分は助からない。あきらめとも取れる考えはすでに確信に近くなっていた。
(もう今考えている事以外の事が考えられなくなっている。だが、こいつも今は俺の身体を弄るのに集中しているはず……今ならば!)
この作戦を聞いたときはやっと面倒な任務から解放されると思っていた。劣能力者などと言う世間では無能力者以下というレッテルを張られているものの監視など自分達にとってはデメリットでしかない、それならば超能力者などの他の危険分子の監視の方が箔がつくとこの少年の危険性を直視していなかった。しかしもっとよく観察するべきだったのだ。
この少年の異常さを。
そして次の瞬間秋瀬七実の口から放たれた言葉を聞き、その異常さを男はまじまじと感じる事になる。
「お前の持っている無線やらなんやらはワザと動かしてるんだぜ。まあ、俺の能力は無差別だからそれ全部ノイズまみれでロクに内容は聞き取れないだろうけど。時間稼ぎにはなるだろ?因みにお前の口や手足が動くのも死んでると思わせないため。お前が抵抗して俺を押さえてくれたら犠牲を出さずに済むしな。そういう希望が打ち砕かれると人間の思考は鈍るからな。それが集団だと尚更だ。っていうか色々走馬灯のように考えてくれてありがとさん。」
甘かった。この少年は、この劣能力者は決して無能力者以下の存在ではない。噂に聞く超能力者達が皆異常者ならばこの少年は。他人の命をいや自分の命さえも簡単に利用するこの化け物は一体何なのだ。
少年の手が男の腰にあるポケットに伸びた。そこにあるのは何とかと言う科学者が試作的に作ったという人間や動物の身体に張り付けて使用すれば相手の組織データやらから計算して肉体を粉々に吹き飛ばすのに最適な爆発を起こすと説明されたものだ。しかし何分試作品なのでまだまだデータに狂いがが有るとかで信用できないものだった。
死体処理用と渡されたものだが絶対に使用しないと思っていたにモノだった。それに少年は手を伸ばす。周りには十分に距離を取り人質はもう諦めるしかないと引き金を引こうとする男たち以外には今少年と自分しかいない。しかも二人は至近距離でくっついており仮に少年が自分に爆弾を張り付けて離れようとしても爆風か銃弾どちらかが少年を仕留めるのは確実、とそこまで思ったところで男はもう一度少年の異常性を理解する。
少年は、AIMノイズ秋瀬七実は笑っていたのだ。
「ま、さか」
そう言い終わる前に準備を終えた男の仲間たちが一斉に引き金を引き、二人諸共ハチの巣にする量の銃弾が一斉に発射される。
「よっと、これか」
それを察知していたかのように秋瀬は用済みになった男のズボンから小型の爆弾を取り出し、間接的にやろうとしていることを理解したのか壊れたように目を泳がせる男の正面に張り付けまるでその身体を盾にするような体勢で起爆する。
ドゴォ―ン!!!と、言うとんでもない爆音とともに辺り一面に閃光とスモークそして人間の肉片がぶちまけられる。
「グ、ガアアア!!!」
男を盾にしたとはいえほぼ至近距離で爆風を受けた七実は一気に鉄橋の端まで吹き飛び全身を走り回る激痛に襲われながらもユラリと立ち上がる。全身爆発の衝撃や銃弾のかすった後で傷だらけだがどれも致命傷とは言えない。どうやら銃弾も爆風も吹き飛んだ男の身体を盾にしたことで何とか防いでいたようだ。
「イテテ、クソッ!慣れているとはいえ、流石に病み上がりで瀕死になるとキツイな。っていうかこの爆弾スゲーな。破壊対象だけを確実に破壊するってどんな構造してるんだ?」
傷だらけの体のあちこちを触りながら使った爆弾について先程読み取った情報から調べていくがどうやらせっかく解読した男の記憶も爆発の衝撃で意味の無い只のノイズになってしまったようだ。護身用にいくつか持っておきたかったのだがしょうがない。
「貴様の能力は制御不能では無かったのか!?」
「だから色々ドーピングしてんだよ。大体制御不能な能力とは言ったけど応用力の一かけらも無い能力だとは一言も言ってないっての!一応応用範囲だけならあの第3位にも負けてねえ自信はあるよ。……ただ上手く使えねえだけさ」
男達の一人が投げかけた疑問に嫌々ながらと言う感じで答えていく。特に最後の一言は秋瀬にしては珍しく恥ずかしそうにどこか拗ねた感じになっていた。
「まあ、大体理解したけど一応確認。お前らは学園都市の上層部から命令を受けて俺を監視、それで俺が先日……幻想御手の時に見せた力を上層部が危険だと判断してっと言う感じでよろしいかな?大分自分なりに脚色を加えて見たけど……何分ぶっちゃけた事を言うとあんま正確にはわかんないんだよな。だってノイズだし」
物理的な武器など何も持たない少年は全身武装の男たちを相手に両手を広げ近づいていく。それと同時に武装した彼らは一歩、また一歩と後退を重ねてしまう。超能力者のように目に見えて強力な能力もスキルアウト達のように徒党を組んだ数の力も無いこの少年に対してそれらとは比較にならないほどの恐怖を覚える。そしてその感情を覚えたころにはもう勝負は終わっていた。
勝負は決した。血の池と化した鉄橋の上には勝利者である秋瀬七実と敗者である襲撃者の最後の一人しかいなかった。他の者は皆自分たちの持っていた銃や爆弾と同じもので殺害されており、当初は十数人いた部隊の生き残りはわずか一人となってしまった。
武装した部隊が超能力者でもない一人の少年によって壊滅させられた。それだけで異常な状況だが一番異常なのは秋瀬七実がその能力を数回しか使っていない事にある。2,3人こそ秋瀬本人が武器を奪ったりどうにかして仕留めたものの大多数は全く別の人間に殺されていた。
早い話が同士討ちである。恐怖と無線機越しに流し込んだ恐怖というノイズが伝染した彼らが銃を乱射するのにそう時間はかからなかった。
その惨劇を只一人生き延びた他の隊員たちよりいくらか幼い顔つきの少年は目の前からゆっくりと近づいてくる相手を前に最早立っている事さえ出来なくなっていた。
「2分てとこか」
体晶を使い秋瀬がその能力を制御できた時間である。因みに数日前は連続使用したとはいえ30分ほどは持っていた。驚くべき持続性の無さである。今回は一度使えば取り返しのつかない(能力が解除されない)という劣能力の特性に助けられたが、早急に対策を考えなければ次は使用した瞬間に効果が切れるなんてことも考えられる。
(使いずらさは何処まで行っても変わらんねぇ。ま、今は)
そんないつもの事を考えていてもしょうがない。まだ終わってはいない以上無駄な事を考えても無意味だ。
目の前で起こった、いや自ら起こしたこの惨劇を見ても顔色一つ変えなかった秋瀬は相手が残り一人になったところでやっと安堵の表情を見せる。この表情が油断の表れならどれだけよかっただろうか。少なくともそうなら隙だってつけるし、同じ人間だと今更ながらも思う事が出来ると最後の一人となった少年は思う。
目の前で尻餅をついて後ずさる少年に秋瀬七実はゆっくりとゆっくりと近づく。理由は簡単。急に近づいて撃たれてしまうと負けだからだ。恐らくこの少年は無能力者だ。それは冗談抜きに秋瀬七実の能力障害の天敵といえる存在だ。
(さあて、どうするかね)
秋瀬七実の能力者対策は主に「相手方の自滅」これに限る。
例えるなら能力者というのは一つの回路だ。中心の根幹となる自分だけの現実から様々な回線を通じて能力を発動させる回路。超能力者である御坂美琴ならば雷撃の槍を発生させる回線と磁力を発生させる回線と言えばわかりやすいだろうか。実際にはもっと細かい演算式が彼女の中で発生しているのだが、大まかに言えば能力障害はその中でも自然と外に出ている回線――つまりはAIM拡散力場にノイズを流している。演算の途中に割り込みで全く関係の無い計算を流しているようなものだ。当然そのノイズを演算に組み込んでしまうと能力は本来想定していたモノとは全く違う現象を起こす。つまりは暴走だ。
この回線の数は人によって個人差はあるが概ね強度が上がるほど複雑になっていく。そして、それに応じて演算も複雑になる。だから適当な回線にノイズを流せばどこかで間違える事もあるだろう。勿論演算が未熟な低能力者達の方が簡単なミスを居てくれるのだが、その場合暴走しても元の能力が貧弱なせいで大した効果が無い。だからもっとも相性がいいのは高位能力者なのだが……
(超能力者の皆様方は演算が複雑云々以前にその能力を使いこなす演算処理能力がある。だから、早い話ノイズが流れて使い物にならなくなった回線は切り捨ててしまえばいいんだよな)
何度か戦闘した超電磁砲もその戦闘方法をとれば秋瀬など敵ではないし、おそらく彼女もその事には気付いているはずだ。不意打ち以外では彼女にはもう能力障害はまともには通用しないだろう。
第一それ以前に学園都市最低である秋瀬と頂点である彼らには深すぎる溝がある。だから秋瀬にとってまともに戦えるのはワンランク下の大能力者の方々だ。彼らならば特殊な演算方式を使用する例外以外はある程度は自滅させられる。
長々と説明したが、何が言いたいかというと能力障害は能力を暴走させる危険のある超能力者から低能力者までが対象という訳だ。その下は対象外。つまりは目の前の彼のように。
「無能力者ってのは性質が悪い。暴走させようにも普段から能力が使えなくて回線が詰まっててノイズが脳まで届かねえし、AIM拡散力場が邪魔でそいつらみたいに壊せないし」
秋瀬はそこらで倒れている能力者でない者達を冷たい眼で一瞥してから、生き残りの少年を見る。
回線のある奴らにはその回線を介してノイズを流せる。ではそれが無い人間には?途中から入り込めるようなものが無い能力開発を受けていない連中には残念だが力技を使うしかない。つまりは先程やったように脳に直接ノイズを流し込むしかない。こんなものソフトを通じずにハードに直接書き込むようなものだしそもそも規格が合っていないのだから流し込まれる方が無事なわけがないのだが、襲撃してきた相手にそこまで構ってやる義理は無い。そもそも能力障害という能力の使い方としても間違っているような気もするがこれを考えたのは秋瀬七実本人ではない。本人ともいえない事も無く、限りなく本人であるが。
この少年にも全く以て気を使ってやる必要などないのだが、無能力者というより能力者全般にはこの方法はあまり使えない。もう少し面倒な手順が必要であり、力技で壊せるのはあくまで能力開発を受けていない人間限定である。昔は出来たはずだがズルはするなと言う事だろうか?
「ま、しょうがないか」
「な、何?!」
メンドクサイことからは基本的に逃げる性格だ。部隊の殆どが死んだことでこの少年の危険度は格段に下がった。背を見せたらドーン!と言う事もあるがその時はその時だ。運が悪かったと思って諦めよう。
それにわざわざ秋瀬が手を下さなくても部隊が全滅してただ一人生き残ったこの少年の末路など想像に難しくない。
「もうお前いいよ」そう一言言おうとしたとき少年の首が落ちた。
「あ、」
それはまるで熟れた果実が自分の荷重に耐え切れなくなったように自然に地面へと落下する。
「やあ、こんにちハ。イヤ、こんばんわカナ?」
率直に言うと新たにやってきた相手は今まで相手にしてきた奴らと比べてもヤバイ匂いがプンプンしていた。