とある科学の劣化魔導   作:fukayu

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最初に言っときます。すいません。前中後編になってしまいました。


能力障害 中編

秋瀬七実のピンチに現れた超能力者(レベル5)の一人超電磁砲(レールガン)御坂美琴。

果たして彼女の現れた目的とは、そして超能力者(レべル5)劣能力者(マイナス)―学園都市の頂点と底辺の邂逅が意味するものは?

 

 

 

 

 

 

 

意味がわからなかった。

俺はたくさんの男たちに追い詰められてこの公園まで来ていた。

万事休すかと思った時に、いきなり中学生くらいの女の子が現れ、電撃が公園中を走った。

遠くて何を言っているのかよくわからないがどうやら男たちはこの正体不明の少女に萎縮しているようだ。

全員の視線が少女に集中しているのがわかる。

 

「チャンスか?」

 

今なら逃げ切れるかもしれない。この少女に後を任せて自分は逃げる。なぜだかわからないがこの少女なら大丈夫だと自分の中の直感が告げている。

 

しかし、しかしだ。

本当にいいのだろうか。いくら大丈夫そうでも相手はまだ子供だ。下手をすれば大怪我かもしれない。そんな子をひとりでおいて逃げるなど………

 

 

 

「ま、いっか!」

 

そんなこと俺の知ったことではない。勝手に首をつっこんだ彼女が悪い。

誰だって自分が大事なのだ。正義感などでここに残っても何故か俺だけやられるような気がする。

ならば迷うことなどない。

 

 

 

 

「俺たちをどうする気だ?」

 

男たちはひどくビクつきながら目の前の絶対強者に問う。

 

「大人しくしてれば何もしないわよ。それに、私が用があるのはそっちの方で………ってアンタ何逃げようとしてんのよ!」

 

「っげ!!!!」

 

美琴を置いて逃げようとしていた秋瀬七実は走り出す直前で見つかり完全に出鼻をくじかれた。

これにより一瞬でこの場にいるすべての者の標的が秋瀬七実へと定まる。

美琴に注意が向いていないこの状況で逃げ切ることはもはや不可能に近い。ならば、どうにかやり過ごすしかないわけだが…

 

(あんまこれは使いたくないんだが…)

 

秋瀬七実はボサボサの髪をグシャグシャに掻きながら自身の両手につけているグローブを見る。

ボロボロになった革製のそれは単なるアクセサリーではなく、長点上機が自身のために作成した能力制御装置である。

秋瀬七実の発するノイズは能力者のAIM拡散力場を通じて様々な影響を及ぼす。音はもちろん、全く覚えのない映像を頭の中に流すことだって出来る。その本来の応用性は超電磁砲(レールガン)にも匹敵する。

しかし、放っておけば不用意に周囲に様々なノイズを発生させ、能力者の演算に影響を及ぼす彼の能力は能力開発を行う学園都市にとって格好の研究材料であると同時に非常に厄介なものだった。

そのため研究者たちは彼の体中にノイズを抑制させる拘束具をつけた。これにより普段の彼が発するノイズはただの不愉快な”音”だけとなった。

 

「どうにか見逃してもらえないでしょうか?」

 

そんなことを言いながら秋瀬七実はグローブではなく、肩まで伸びたボサボサの黒髪の中に普段は隠れている耳につけたピアスに触れた。その手は自然と震える。

 

(これは第一の封印。当然使うことで副作用もあるが…ええい、しかたない!)

 

思いっきり引っ張った!

当然ピアスは耳からちぎれ、耳からは血が飛び出る。

突然の出来事に美琴もスキルアウトも判断が一瞬遅れる。

その一瞬が命取りになるとも知らずに。

 

(この場にいる奴らで能力者なのは、……3人か。電撃を出したあの子は当然として、スキルアウトのくせに能力使えんのかよ!しかも強能力者(レベル3)大能力者(レベル4)…高位能力者様じゃねえか。それにしては力場が不安定というか、どこかにつながっている感じだが…まあいい。こいつらを使う!)

 

高位の電撃使い(エレクトロマスター)が電磁波が見える様に、高位の空力使い(エアロハンド)が風の流れを読めるように、秋瀬七実は他人のAIM拡散力場を視認できる。その質や量そして種類によって相手の強度(レベル)や能力をある程度測ることができる。

ただこれは自分の意志でオフにできず、能力者で溢れているこの学園都市では入ってくる情報が多すぎて脳がパンクする恐れがあるため普段は耳につけたピアスなどで抑えている。

 

「気が狂って錯乱でもしたか?」

 

秋瀬七実が強能力者(レベル3)相当と予測した少年が近づいてくる。

周囲や地面が若干湿っていることから、AIM拡散力場からして水系の能力者だろう。

能力の補助のためか大量のペットボトルを両手やジャケットにつけている。

 

相手の演算にノイズを発生させる能力障害(AIMノイズ)は相手に特定のノイズを流すことでその能力さえも暴走・暴発させることができる。ただこれは、相手が能力の発動させないといけない上、相手が演算している最中に相手に合ったノイズを選択し、演算に無理やり別の信号や映像を混ぜることで能力の誤作動を狙うことであり、相当複雑な演算が必要である。

 

しかし、今の秋瀬七実にはそれができる。

 

「心配しなくてもいいよ。それよりあんたほかの奴らとなんか雰囲気が違うけどもしかして能力者?」

 

ペットボトル男(仮)と名付けた少年にしか聞こえないような声で囁くように喋る。

すると、彼は目に見えるほど機嫌が良くなり若干興奮しながら話し出す。

 

「わかるか?つい最近、強能力者(レベル3)になったんだよ!そうかわかるか!」

 

「そうなんだ。でもそれおかしくない?なんで強能力者(レベル3)のあんたがあんな奴らとつるんでるの?見たところリーダーでもなさそうだけど?」

 

相手が怪我したところで、一番初めに前に出てくる奴にあまりリーダーはいない。よほど自信でも無い限り下っ端に行かせるだろう。つまり、迷わず出てきたこいつは元々こんな性格か、ポジションなのだろう。

 

「いや、それはあいつらダチだし、それにあのなかには大能力者(レベル4)の奴もいるんだよ。」

 

「でも強能力者(レベル3)に上がった今ならあんたがトップになれる可能性もあるんじゃないの?だって高々1つの違いだよ?」

 

嘘だ。能力者にとってレベルが1つ違うだけでとてつもなく大きな壁がある。

それを知りながら、秋瀬七実は高々と説得をする。そう、彼以外のたくさんの人間にも聞こえるように。

 

「おいお前、まさか裏切る気か?」

 

「へ?」

 

「そいつに近づいたのもそいつと組むためか!?」

 

そう、全ては彼らに仲間割れを起こさせるため。このままでは能力を使わずに数の暴力でやられてしまいそうだった。現状を打破する一手を投じる。

 

(人は誰でも上に立ちたいという願望があるもの。それにこの状況その気はなくとも………)

 

「う、うるせえ!俺はただこの野郎が変な音を出しやがるからぶちのめそうとしただけだ!?」

 

結果裏切る勇気もないペットボトル男は身につけたペットボトルの蓋を外し、能力を使おうとする。

 

(チャーンス!本人にその気がなくても能力さえ使ってくれれば!)

 

秋瀬七実はグローブを右手だけ外し、その手をペットボトル男に向ける。

 

(標的の誤情報を流す!後は最近なりたての強能力者(レベル3)なら簡単に騙されてくれる。)

 

相手のAIM拡散力場を通じ、ノイズを混じらせる。普段はありえないノイズすらも計算に入れてペットボトル男は能力を発動してしまう。

 

ペってボトルから溢れた水は秋瀬七実だけではなく、周囲を囲んでいた20余りの生徒や御坂美琴へ向かっていく。というより、ほとんどの水は状況を静観していた糸目の少年と御坂美琴へと向かっていった。

その水はまるでドリルのような螺旋状の回転を抱き対象へとぶつかる。

 

なんの能力も持たない少年たちは防ぎきれず負傷する。

しかし、

 

「「ふんっ!」」

 

糸目の少年と御坂美琴は自分の目の前にバリアのようなものを張って攻撃を防ぎきる。

 

(やっぱり、念動系か。必要なものがなくて能力を多用するから、ノイズが混ざってもあんま意味が無いんだよなあ。っつうか痛て~)

 

体中を負傷しながら秋瀬七実は思考する。劣能力者(マイナス)である彼は能力を暴走させることはできても、制御はできないのである。

 

それよりも深刻なのは能力を暴走させてしまった少年である。

 

「水木っち何?裏切るの?」

 

水流の攻撃を防いだ念動系と思われる糸目の少年はペットボトル男(水木というらしい)に呼びかける。

全くその気がないのに、裏切り者扱いされそうになるという状況にもはや頭がついていけない水木はそれでも必死に言い訳をする。

 

「し、篠宮さん違います。お、俺、そんな気なくて!」

 

「やっぱ水木っち、”アレ”で強度(レベル)上がったからって調子乗ってんのかな?上位能力者の仲間入りだって?…本当の能力者ってのを見せてあげるよ。」

 

必死の言い訳も聞かず、篠宮と呼ばれた少年は手を振り上げる。

すると、先ほど水木が使用した水が地面に落ちたにもかかわらず泥などの不純物が一切ない状態で空中に持ち上がる。

そして先ほどと同じようにドリルのような形で空中に静止する。

 

「俺の能力は電気や水、風など他の専門能力者が操れるものをある程度操れる簡易操作(インスタント)。ま、その名の通りちょっとしか操れないし、あんま難しいのは無理だけど、水木っち程度なら本人よりも上手く使えるよ。」

 

そう言いながら、水のドリルを少し高く上げ、その場で手を振り下ろす。

当然ドリルは水木の体へと一気に飛んでいく。

 

「う、うわああ!!!」

 

水木を上空から襲ったドリルは全てその強い力で水木の持つペットボトルに直撃し、地面へと縫い付ける。

 

「あ~あ、自慢のジャケットもボロボロになっちゃったね。高かったんでしょそれ?まあ元々ペットボトルたくさん入れてたせいで、ブヨブヨになってたけど。」

 

「し、篠宮さん話し聞いてください。」

 

「俺、怒ったら話聞かない性格なの知らないわけじゃないでしょ?でも、いいよ。オハナシしよっか?」

 

そう言って篠宮はニヤっと笑って目を見開いた。

彼らの中では日常となっている”篠宮さんの処刑タ~イム”に他のスキルアウトたちは呆れながら見ていた。

 

「それに今日じゃなくても、一回誰がリーダーなのかもう一度示さなきゃいけない気がしていたし。」

 

そう言って篠宮はほかのメンバーを一瞥した。

呆れていた者たちは瞬時に顔をこわばらせる。

確かに、最近あるアイテムのせいでメンバー全員の強度(レベル)が上がっており、大能力者(レベル4)の篠宮が統率していたこのチーム内で不穏な空気が流れていた。

そういった面でも何故この場で攻撃してきたのかは不明だが、不穏分子の一角である水木をここでシメルことにする。

 

その日公園中に男の悲鳴が木霊した。

 

 

 

その少し後

 

 

「全くお姉様が飛び出したあとを追いかけていたら仕事とは、ついていませんのね…」

 

ひとりの少女が公園に現れた。

 

風紀委員(ジャッジメント)ですの!あなたたちですか。この公園で暴れていたのは?」

 

白井黒子が公園に登場したとき、そこにいたのは顔中腫れながら許しを請う地面に貼り付けにされた男と糸目でいい汗かいたと言わんばかりに爽やかな少年、そしてその少年を見ながら戦々恐々としている20人あまりの少年たちだけだった。

 

「い、一体どういう状況ですの、これは。」

 

報告では、一人の少年をたくさんの男たちが追いかけていた。とだけで、この貼り付けにされている男がそうなのだろうか。

 

「うん?これはただのお仕置きだよ!」

 

妙にすっきりした少年が爽やかに答える。

 

「お仕置きって…まあいいですわ。関係者はこれで全部ですの?なら少しお話を聞きたいのですが?」

 

「あ、他にも超電磁砲(レールガン)と長点上機の奴がそこにいるよ。………あれ?いない。」

 

そう、そこにはもう秋瀬七実も超電磁砲もいなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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