とある科学の劣化魔導   作:fukayu

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長かった能力紹介編もこれで最後です。
でもまだ”もうひとり”の方の紹介も残っているんだよなあ。


能力障害 後編

「よし、作戦成功!」

 

あの公園から逃げ出した秋瀬七実は大きくガッツポーズを取った。

実はあの水木とかいう能力者の能力を暴走させ、自分もいくらかダメージを負ったあと、直ぐに誰にも気づかれることなく公園から抜け出していたのである。

 

「痛っつ。流石に久々の能力発動は応えるな。」

 

秋瀬七実は痛そうに頭を抑える。

水木の能力で多少怪我をしたが、あの程度は問題ない、何時ものことだ。

問題はこの頭痛の原因-秋瀬七実の能力である能力障害(AIMノイズ)には副作用がある。

それは能力のオンオフができない事であり、無意識に他人に干渉して要らぬ怒りを買い、常にトラブルに巻き込まれることでもある。

しかし何よりも問題なのは実は自身の能力が自分にも効いてしまうことである。

自分が強大なノイズを発すれば、発するだけ自分にも同じかそれ以上のノイズが襲い来る。それにより、複雑な演算を要する自身の能力が使用できなくなり、必然的に無意識に発する無差別の微弱なノイズしか使えなくなる。これは発火能力(パイロキネシス)が自身の能力を使ったら自分も火傷したようなものであり、普通の能力者からしたら殆ど有り得ない事である。ましてや、自分の能力を使用するのに自分の能力が邪魔で演算ができないなど本末転倒だ。

 

「それで付いたあだ名が劣能力者(マイナス)なんてな。なんだよ日常生活で不便に感じる程度の能力って。」

 

実際には【日常生活に支障をきたし、本人のみならず周囲の人間にも極めて多大な被害をもたらす能力】であり、これはまともに発動すればかなりの被害をもたらす上に底が測れないため現在長天上機学園で調査している状態である。そのため今は不用意に発動しないように様々なストッパーであり秋瀬七実にとっては頭痛薬の変わりである、グローブやピアスをつけている。

 

しかし、そこで一つの疑問が浮かんでくる。何故先ほど彼は能力を使えたのであろうか。

 

「それは、毎日必死に逃げていた成果だぜ!」

 

意味わからないことを言っているが、本人曰くいつも逃げるって行為で一種の願掛けをしていたらその内能力の副作用からもある程度逃げれるようになったとのことで、学者たちは逃げるという一種の極限状態や危機状態に自身を追い込むことによって、集中力が増し、ノイズがあるにも関わらず能力が使えるのだろうと言われている。

しかし、たまに逃げていないにも関わらず能力が使えたりするので現在はその法則性を知るために様々な計測器をつけて、街を歩けば不良に当たる状態の彼を野放しにしている。

 

現在は人気の少ない先ほどの公園とは別の公園に来ている。

 

「喉が渇いた。」

 

そう言って、公園に置いてある自販機に向かっていく。

自販機の目の前に来たとき、秋瀬七実ははっと気づく。慌ててズボンのポケットから財布を取り出す。

 

「あちゃ~」

 

財布の中を見て秋瀬七実は頭を抱える。中には、54円しか入っていなかった。

 

「俺の全財産54円って。」

 

秋瀬七実にも一応口座はある。その能力から様々な研究に関与してきたからはそれなりに裕福で金には困らないはずだ。しかし、そこは劣能力者(マイナス)何故か知らないが研究中に起きた損害やその研究で作ったものが壊れたなどの全く自分には関係のないとこで残高が引き落とされてしまい、常に金欠状態だった。

最近など振り込み詐欺の保証だとかで自分の口座から引き落とされていたときは目を疑った。

そういうわけで基本的に秋瀬七実の通帳は空で全財産はこの財布に入っているものだけである。

 

「く、そ〜叩いたら出てこないかな?」

 

どうしても喉が渇いたので自販機は叩くなどの不審な行為をしていると、声をかけられた。

 

「どいてなさい。これはこうやってやるのよ。」

 

声をかけた主は秋瀬七海をどかし、

 

「チェイサー!!!」

 

思いっきり、自販機に蹴りを入れた。

自販機は壊れたように中の商品を吐き出す。

 

「あ、これはこれはすいません。」

 

「いえいえ、困っている人を見たら放っておけなくてって、何してんじゃゴラー!!」

 

仲良く飲み物を集めていた時いきなり相手がキレて電撃を発してきた。

 

「げっさっきの!」

 

その少女…御坂美琴はかなり頭に来ているようで、

 

「さっきは私をよくも無視してくれたわね。せっかく一応知り合いのよしみで助けてあげようと思ったのに。」

 

等といっている。

 

「いや、あの状況で超能力者(レベル5)なんかと関わりたがる奴なんかいないだろ。っていうか知り合いって何?俺常盤台のお嬢様にピンチの時に助けてくれるような知り合いなんていませんよ?」

 

「強がりはよしなさい。あの状況はどう考えても誰か助けてくださいって顔だったでしょうが。」

 

美琴は秋瀬七実が強がっていると思っているようだが本当に記憶にない。

 

「いやいや俺があの有名な超電磁砲(レールガン)と知り合いなわけないじゃないですか。こっちは学園都市の嫌われ者、そっちは人気者接点無いよ。」

 

いろんな意味で有名なあの超電磁砲(レールガン)と本当に知り合いなら秋瀬七実は間違いなく絡まれるたびにプライドなどそこらに埋め立てて毎回助けを求めるだろう。

秋瀬七実はそういう男だ。

 

「え?」

 

「へ?」

 

決定的な食い違いがそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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少し昔の話をしよう。

それは1年前の大覇星祭の時、その時秋瀬七実は今より少しやさぐれており、長点上機学園に来てまだ間もないこともあり、自分の学校内での立ち位置がまだ定まっていなかった。

その上一身上の都合により、すぐにでも目立たなくてはいけなかった。具体的には長点上機学園の代名詞になるくらいには。

 

そこで当時の長点上機学園のの上層部は秘密裏の工作で長点上機学園と永遠のライバル関係である常盤台中学との合同種目の代表として彼を出すことにした。

相手には当時から既に常盤台中学の代名詞となっていた超電磁砲(レールガン)を指名し、勝てばその知名度は自ずと上がり、負けてもそれなりに善戦すれば後は宣伝しだいでどうとでもなる。

 

完璧な計画だった。

 

ほかの高校には対抗馬となり得る生徒はおらず、完全な一騎打ちで秋瀬七実の能力もその頃はまだAIM拡散力場に作用する能力で無能力者(レベル0)よりもレベルが高いほうが効き易い程度の認識だったため勝率は十分にあると思われた。

本人にもなんとしてでも勝てと言っておいた。

 

誤算があるとすれば彼は当時から既に劣能力者(マイナス)だったことだけだ。

 

 

 

競技内容は障害物競走だった。しかし、当然ただの障害物競走ではない。超電磁砲(レールガン)対策に様々なものをひっそりと講じられ、逃げることで能力が発動する秋瀬七実のためにハンデと称して数mの距離が開けられていた。いわゆる八百長である。

さらには負けてもいいように放送は同時期で行われているほかの長点上機や常盤台に行かせ、観客も密閉されたドームに入れてあった。

 

 

秋瀬七実は直前にかけられた「死にたくなければ勝て…」という脅迫まがいの声援と後ろにある感じたこともないほど強大なAIM拡散力場により、柄にもなく緊張していた。

事前に相手が超能力者(レベル5)だということも聞いていたし当時強能力者(レベル3)程度と判定されていた秋瀬七実は御坂美琴に対しいくら能力を使用していても良いとルールで言われている。

しかし、そのプレッシャーたるは、今まであった人間の中でもトップクラスに入る。このクラスの人間は戦う相手を人間とも思わずに殺す相手だ。

そのため自分も本気で行かなければならない。

 

 

御坂美琴はとても機嫌が良かった。対戦相手については特に何も言われていなかったが、普段は恐怖の象徴である僚艦からは相手が永遠のライバルである長点上機学園であるためか「必ず勝て」とエールを送られた。

今はほかの競技でいないが先輩たちや同級生からも応援された。

そして極めつけはこれである。

 

「ゲコ太!ゲコ太!」

 

競技直前に出店で見つけたキーホルダーを見つめてうっとりする。

今はまだそこまで有名ではないが必ずブームが来ると美琴は思う。

美琴はキーホルダーをジャージにつけ、気合全開で望む。

この勝負必ず勝つ!

 

 

試合のホイッスルがなり秋瀬七実はは全力で走り出す自分は逃げ足に自信があるが別に足が速いわけではない。何か策を講じなければ負けるだろう。

そう思った矢先物凄いスピードで何かが追い上げていた。

それに気を取られた瞬間秋瀬七実は自分の身体が落ちているのを感じた。

そういえば、確かここに落とし穴があるといっていた。走馬灯のようにその考えが浮かんだ。

その瞬間体が勝手に動いていた。

 

人間は極限状態に陥ると何かよくわからない力が出る。加えてこの時の秋瀬七実は少しやさぐれていた。

その結果がこれだ。

秋瀬七実が上にいて御坂美琴が下にいる。落とし穴のなかは泥だらけだったご丁寧に電気が流れても穴の外にはいかない構造だった。

 

何が起こったかというと穴に落ちそうだった秋瀬七実が後ろから追い上げてきた御坂美琴の足をつかみ、逆に穴の中へ叩き落とし、その反動で自身が穴の上へ上がった。それを秋世七実は本能で行っただけである。

観客から見ればよくてファインプレー悪く言っても女の子には酷いだろくらいだった。

この時長点上機の勝利は確定したはずだった。

 

しかしここからが不味かった。

 

なんとしてでも勝て。

当時の秋瀬七実にとってそれは相手を行動不能にすることと同じだった。

秋世七実は穴の中にいる御坂美琴に対して迷わず能力を行使する。当時何の制限もついていなかったその能力を…

 

 

御坂美琴は穴に落とされる瞬間能力を使用しようとした。しかし、いつもなら簡単にできる演算に不可解なノイズが入ってしまい、結果能力は使えず、成す術もなく穴へと叩き落とされた。

 

(ゲコ太…)

 

ジャージにつけていたキーホルダーのことを考えながら。

 

少しして(2、30秒程)自分を穴に落とした生徒がしゃがんで手を出してきた。

初めは助け出してくれようとしているのかと思った。

 

「競技中なんだから別に気にしないのに。お人好しね。……アンタ!?」

 

しかし、すぐに違うとわかった。

そう気づいたときにはそれはすでに始まっていた。

 

全身から大量の電気が流れ出る。普段は出す事はない量の電気はしかし、何の形にもならずにただ消費されていく。

 

「な、なにこれ!?」

 

これが相手の能力だということは分かっている。しかし超能力者(レベル5)である自分の能力を暴発させる能力など聞いたこともない。同じ電気系統の能力者でも不可能だ。それにこの少年からは電磁波などは一切出ていない。

そうこうしているうちにも美琴の電力はみるみる消費されていく。超能力者(レベル5)である美琴の電力が底をつくこと等まず無い。しかし目の前の能力者はそれをやろうとしている。

 

「っく!」

 

美琴は相手に向かって雷撃の槍を放つ。しかしそれは相手にではなく美琴の周囲に広がり放った時とは規模も出力もケタ違いの雷撃の柱となり、ドーム型の競技場の天井を破壊した。

 

「あ゛あ゛ア゛ア゛ァァァーーーー」

 

考えられない出力だった。美琴特製に耐電処理をしているジャージはともかく、なんの処理もしていないゲコ太が黒ずみになるくらいには…

美琴はこの状況を作りだしている相手の顔を見た。

 

「なっ!!!」

 

無表情だった。ただただ無表情。相手をなんとも思っていないそんな顔だった。美琴は初めて人に本当の嫌悪感と恐怖を抱いた。

 

 

 

 

秋瀬七実は必死だった。

いくらなんでも出力が桁違いすぎる。普通の能力者相手なら少し能力が暴走するだけだ。しかしこの少女は違った。

何もかも桁違い。ちょっと風船をつついたらそれは、いくつもの風船とつながっていて連鎖爆発してしまった気分だ。もはや途中ではやめられない。途中で止めれば能力の負荷でこの場諸共に吹き飛ぶだろう。

先ほどの雷撃の柱がいい例だ。自分は特になにもしていないのにあの威力なんとか避けこそしたが、おそらくあれがこの少女の全力で普段は手加減しているのだろう。しかし今はタガが外れてしまっている。この状況でもしあれ以上の反撃…例えば彼女の代名詞超電磁砲(レールガン)など撃たれれば、とんでもないことになる。

秋瀬七実は必死に能力の副作用であるノイズと戦い続けて、結果その表情は傍から見て無表情とも見えるがこれは顔の筋肉を操作する余力すら残っていないだけであり、本当なら鼻水を垂らして泣き叫んでいたところだろう。

御坂美琴と目が合う。彼女も混乱しているようで怒りで体が震えているようだ。

そして彼女は意を決してズボンのポケットからコインを取り出す。

 

(まずい!)

 

 

 

 

美琴の体は震えていた。

下手をすれば簡単に他人を殺せる。そんな表情をした相手に体が震える、心が麻痺する。

そして驚くべきはたかだか障害物競走ごときでそんな表情をしていることだ。この少年と自分では住んでいる世界が違う。

超能力者(レベル5)だなんだと持て囃されても美琴はまだ中学1年生の子供だ。完全に恐怖に飲み込まれている。

しかし、おそらく救助はまだ来ない。大人たちは近づけないのか突然のこの状況に対処できていないのか。どちらでもまだ時間はかかる。

しかし、その間に美琴は力尽きるだろう。自分の電力が残り少ないのを感じる。

今はまだ自分の能力が暴走しているため近づかれることはない。しかし、力尽きれば自分に抵抗する手段はない。

 

(それだけはいや!)

 

美琴の防衛本能とそしてなにより自らのプライドがこの少年に負けることを拒絶した。

震える手でズボンのポケットから一枚のコインを取り出し、構える。

 

 

 

そして、

 

((間に合ええぇぇェェ!!!!))

 

互いに声も出せずただ必死に無表情と鬼の形相で互いの力をぶつけ合う。

能力障害(AIM障害)超電磁砲(レールガン)互いの力がぶつかり合う。

片や能力を暴走させ全てを削り、片や残った力で全てを撃ち出す。

 

 

その結果勝ったのは…

 

 

 

 

 

御坂美琴の撃ちだした超電磁砲(レールガン)は普段の100分の1以下の出力だった。間違いなく過去最低の出来だ。

これでは相手を倒すことなどできない。スピードも出ていないため簡単に避けられるだろう。

 

(負けた…)

 

そのまま美琴は気を失った。

 

 

 

 

削りきれなかった。

そのひとことだった。

御坂美琴から放たれたコインは秋瀬七実の足場ごと貫通し、彼を撃ち抜いた。

 

例え100分の1以下でも超電磁砲(レールガン)超電磁砲(レールガン)なのである

ノイズのせいで簡単に気を失いそうだった秋瀬七実はこのオーバーキルで簡単に気を失った。

 

奇しくも美琴の意識が失われるより前だった。

 

(糞、何時ものことか…)

 

そんなことを考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

さて、当事者二人はそんなことを考えたが、周りのものはそうではなかった。

 

この衝撃のやり取りも周りから見ればただ単に、【高校生の男子が中学生の女子をいじめて遊んでいる。しかも電撃プレイかよ!】だ。

なにせ、いきなり男が少女を穴に落としたと思ったらしゃがんで指をさし、そのままそこにいるのだ。

今は障害物競走中、それなのに助けるならともかくただ指を指しているなど、挑発しているようにしか見えない。

しかも相手は超能力者(レベル5)超電磁砲(レールガン)誰も彼女を心配する者はいない。

 

「何やってんだ?」

 

口々に観客は皆そう言う。

その後穴の中から御坂美琴が激昂し、天井に向けて雷撃の柱を飛ばすが、最初は皆驚いていたものの、誰かの「まぁ超能力者(レベル5)だし。」の一言でみな納得した。

超能力者(レベル5)それはこの学園都市でそれだけの意味を持つ。

 

そうこうしているうちに御坂美琴の代名詞である超電磁砲(レールガン)が少年を貫き、

 

「やばいんじゃないの?あれ!」

 

「あんなの直撃したら…」

 

超電磁砲(レールガン)の威力を知っている一部の者たちは戦慄したがどうやら超手加減バージョンだったらしいとのことで安心する。

ただそれだけのことだった。

 

 

 

 

 

その後【女の子をおちょくってたら反撃にあって返り討ちにあった】という不名誉な結果に集結したこの自体は結果として長点上機の一部の上層部や教師陣を丸事すり替えるまでになった。

 

試合自体は両者気絶していたのでかろうじてゴールに近づいていた秋瀬七実の勝利に終わった。

しかしその結果をそのまま世間に伝えるわけにいかず、上層部は秘密裏に自体の揉み消しに掛かり、(余談だがこの自体には学園都市統括理事会や学園都市の暗部まで駆り出され徹底的に情報統制された。事件の映像は勿論観客の記憶のすり替えまで行われ、騒ぎになることはなかった。)その結果教師陣のサポートを受けられなかった生徒は数々の負けるはずのなかった試合に負けてしまう。

生徒のほとんどが演算に不自然なノイズが混ざったと言い訳し、この年の大覇星祭は長点上機学園史上最低記録に終わった。

因みに秋瀬七実、御坂美琴はその持ち前のスタミナによって次の日の競技から復帰している。

 

長点上機学園は生徒の親にいわゆるモンスターペアレントを多数抱えている。そしてその影響力は学園都市の上層部にまで及び、結果長点上機学園職員や上層部そして関係ない一部の生徒まで辞めさせられる事となった。

 

そして事件の当事者にして主犯の秋瀬七実はその試合の真の意味を理解した一部のものによって、”超能力者(レベル5)に匹敵し、しかし能力のない無能力者(レベル0)に負ける。しかも、能力としては果てしなく不安定で非生産的なこと”から、劣能力者(マイナス)と名付けられた。

 

しかしその名称がいつしか曲解して正しい意味を理解していないものから、無能力者(レベル0)以下の能力と間違われ、蔑称として劣能力者(マイナス)として呼ばれることになったというわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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御坂美琴はあの日気がついた後、暫く恐怖で体が震えていた。病院のナースさんが泥に浸かって体が冷えたからと勘違いしていたが美琴は訂正する気になれなかった。

競技のあと、美琴は念のため病院に連れて行かれただの電池切れと診断されながら競技について聞いてみると、最後に放ったあの一撃はなんと直撃していてあの男を倒していたと言われた。協議の結果は判定負けで見ていた者は皆美琴が勝ったと審議会に問い詰めたが、「これは競走(レース)であってバトルではありません。」と一蹴されたそうだ。

たとえあれがバトルでも美琴は負けていたと思う。

それだけ自分は呑まれていたあの場はなんとか持ち前の負けん気で乗り切ったが、次にあった場合正気を保てる自信がない。

後に戦った相手の通り名が【長点上機の劣能力者(マイナス)】になったと聞いたがそんな事はどうでもよかった。

 

美琴はこの事件を自身の防衛本能で秋瀬七実の存在ごと記憶から消した。

 

 

 

 

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それから1年が経ち今より少し前、御坂美琴は自身の能力を打ち消す自称無能力者(レベル0)の少年に出会った。

 

自身の右手があらゆる異能を打ち消す魔法の右手だとのたうちまわるこの少年を見て、美琴は何故か記憶から消して街で見かけても自然と視界に入れないようにしていた少年を思い出す。

 

自身の全力をぶつけても立っていられる少年を見てあの時のことを思い出す。

 

もしあの時能力の無意識で付けているリミッターが外れているあの状況で超電磁砲(レールガン)を撃っていたらどうなっていたか。通常は50mほどで焼き切れるコインでもあの時目の前にあったのは少年ではなく、地面だ。今でもその世はだけで人間を宙に浮かせることができる超電磁砲(レールガン)を本当の最大出力ではなったらそうなるか美琴でも想像つかない。

もしかしたらほかに走っている生徒や係員、観客まで巻き込んでしまっていたかもしれない。その場合はどれだけ軽く見積もっても死傷者が出ただろう。

もし、彼がそれを止めようとしてくれたなら…もし途中からその手が本当に差し伸べられていたのいたのだとしたら…

 

「なあんだ。悩むことないじゃない。」

 

いつしか美琴は笑っていた。

目の前には劣能力者(マイナス)よりも恐ろしいすべてを打ち消す真の無能力者(レベル0)がいるのだ。

 

「こんなふざけた奴がいるんだもの、あんなの全然たいしたことないじゃない。」

 

「お、おいビリビリどうした具合でも悪いのか?」

 

無能力者(レベル0)の少年が心配そうにこちらを伺っていた。

なぜ?と思い美琴が顔を上げるとやっと自分が笑いながら泣いていることに気がついた。

 

「泣くことはないじゃない。もう一回リベンジできるんだから。あーー!そう思うとあの日のゲコ太!新品だったのに!急に怒りが湧いてきた!」

 

美琴は涙をぬぐい、まずは目の前の的に集中する。

こちらもアレと同じ無能力者(化け物)。前哨戦とはいかないが、無視していい相手ではない。

 

「とりあえずアンタ!勝負よ!」

 

「いきなり泣きながら笑ったと思ったらそれですか。ハア、不幸だーーーーーー!!!!!」

 

周囲に少年の叫びが木霊し、電撃が飛ぶ。

 

美琴は思った。とりあえずはもう一度あの少年に合わなければならないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前編は能力の大まかな内容、中編はその使用用途と副作用、そして後編は副作用続きとフルパワー能力障害について書いてみました。
能力について分からないことがあればどんどん質問お願いします。

とりあえず次回は現代の秋瀬七実vs御坂美琴です。
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