とある科学の劣化魔導   作:fukayu

6 / 42
vs御坂美琴

秋瀬七実は別に御坂美琴の事を忘れたわけではない。

 

むしろあれほどのことを忘れることなどできない。

あのあと何やかんやあって自分に劣能力者(マイナス)などという不名誉な渾名や少女暴行犯(返り討ち野郎)等という身に覚えのないものまでついたが気にしてない。たとえそのせいで学校中の女子は疎か男子からも相手にされなくなり、一人特別教室送りになったとしても気にしていない。少女暴行犯(返り討ち野郎)の方は少しくらいフォローしてくれてもいいじゃんなどとはこれっぽっちも思っていない。ああ、思っていないとも!

 

秋瀬七実はこのある意味では因縁の少女に絡まれそうになっている。この一年放置されたのになぜ今になって?多方何かの拍子に思い出してムカついたのだろうと秋瀬七実は思う。

ほぼ不正解に近いものの微妙に当たっているのは劣能力者(マイナス)である彼らしい。曰く、他人の理不尽な怒りや恨みには敏感なのだとか。今時珍しい敏感系主人公である。  注この物語に秋瀬七実にその種の行為を抱く女の子は登場いたしません。

 

「なんか今失礼なノイズをキャッチしたんだが?」

 

秋瀬七実はノイズとして断片的になら地の文すら感じ取れる。さすが超敏感系主人公。

 

何はともあれ、秋瀬七実は御坂美琴のことを記憶している。あの時不完全な超電磁砲(レールガン)のせいで完全に焼ききれず、秋瀬七実の体の上に乗っていたコインをお守り替わりに携帯しているくらいには。

ならば何故、ここで知らないふりをするのか?

答えは簡単。面倒だから。ただでさえトラブル続きのこの人生に因縁付きの超電磁砲(レールガン)まで加われてはたまったものではない。

第一あの事件でお互い良い印象を抱いてはいない。一年も空いたのだから、知らないふりをしておくのがお互いのためだ。

 

劣能力者(マイナス)の特性-不必要な気遣いをして逆に相手に恨まれる。

 

「アンタは私のことなんて眼中に無いって事かー!!!」

 

御坂美琴はいきなり髪の毛から雷撃の槍を飛ばしてきた。この雷撃はほぼ予備動作がない上に、最大出力10億Vという実は超電磁砲(レールガン)よりも遥かに恐ろしいものだったりする。

 

「アブねえ!」

 

相手のAIM拡散力場のちょっとした揺らぎを感知して、何とか秋瀬七実は回避に成功する。

今だから出来るが、普段のリミッターが付いた状態ではろくに反応もできなかっただろう。

 

「いきなり何すんの!?」

 

秋瀬七実は半ギレの涙目になりながら、抗議する。騒ぎながらも次なる攻撃に備えて、次のリミッターを外そうとするしたたかさは流石劣能力者(マイナス)といったところか。襲撃され(やられなれ)ている。

 

「こっちは勇気を振り絞って来たってのにアンタは知らんぷりかって言ってんのよ!もういいわ!とりあえずまずはここでゲコ太の借りを返す!リベンジはそれからよ!」

 

(えええー俺二回もボコられるの!?)

 

美琴の理不尽な言い分にかなり辟易しながらも、秋瀬七実は冷静に対処しようとする。

しかし、久しぶりの能力使用のおかげで体がノイズに耐え切れておらず、悲鳴を上げていたその体はまたしても能力の暴走を引き起こす。

 

「あ、まず!離れろ!?」

 

 

 

 

秋瀬七実の突然の変化に御坂美琴は戸惑う。しかし、1年前の失敗を思い出してすぐに後ろに下がった。

 

(何か来る!)

 

そう美琴が予想すると同時に秋瀬七実のボサボサの黒髪がわずかに逆立ち、微弱な電磁波を纏う。

電磁波を視覚出来る美琴は正体不明のこの能力に瞬時にいくつかの見立てを立てた。

 

(やはり、私の能力に干渉できる電気系統の能力?でもそれじゃさっきの水流操作(ハイドロハンド)系の能力者の時と説明がつかない。あの時コイツは確かに能力に干渉していた。それにコイツに会った時から感じていたノイズみたいなものが一気に増えた。コイツの能力はこのノイズで相手に干渉するもの?)

 

さすが学園都市で3番目の頭脳を持つものというところか。たった3度の接触で当たりに限りなく近い仮説を立てる。

しかし所詮は仮説、立証しようにも判断材料が少なすぎる。

 

「なら、試してみようじゃない!」

 

美琴は大胆にも、自分にかかるノイズを抑え能力を使用する。

一応暴走してもいい雷撃の槍手加減バージョンだ。

 

 

 

 

秋瀬七実は実はというと別に暴走などはしていない。

何重にもかけられたリミッターの一つを外したくらいで能力が暴走するわけがない。

ただ単にこれは暴走したふりをして、相手が不用意に攻撃を仕掛けられないようにしているに過ぎない。自身を取り巻く電磁波の渦も発動した能力障害(AIMノイズ)が見せるノイズの一つに過ぎない。

一度自身の能力で暴走した経験のある能力者はだいたいこれで能力の使用を控える。そしてその間に自分は何とかして逃げ出せばいいだけだ。

 

しかし、秋瀬七実の予想に反して御坂美琴は雷撃の槍を放ってきた。

 

「こいつ能力の暴走が怖くないのかよ!」

 

能力障害(AIMノイズ)の弱点の一つに自身に向かってくる能力をオートで暴走させてしまうというのがある。これは、ただ単純に自分へのダメージを倍加させてしまうことになり、しっかりとした演算をして対処しなければ即命取りになる。

まあ最も秋瀬七実はそれができないわけだが…

 

 

 

自身に向かってくる雷撃の槍はみるみる大きくなっていき、今にもぶつかりそうなところで秋瀬七実はなんとか回避に成功する。

 

(やっぱりアイツに向かっていく雷撃は全部強力になっていく。あいつにそんなことをするメリットは無い。じゃあやっぱり能力の暴走(アレ)は制御ができないって事?1年前の能力の暴走(アレ)もアイツが意図的にやったわけではない!?)

 

「あんた、その能力は一体何?」

 

「はあ、はあ、何だいきなり?ただの劣能力(マイナス)だよ。お前のものよりよっぽど劣る。」

 

息も絶え絶えになりながら秋瀬七実はそう回答する。

 

劣能力(マイナス)?超能力とどう違うのよ?」

 

「そっちは制御可能な能力だけどこっちはそれが出来ないんだよ!?オン・オフも不可能。っていうかちょくちょく雷撃飛ばすのやめてくれない?」

 

試験的に雷撃の槍を飛ばしながら、美琴はあの事件の真相へとたどり着く。

 

「じゃあ1年前のアレは別に最初からああするつもりはなくて事故だったのね?」

 

「ああ、まあ最初はちょっとした出来心だったんだけど途中から制御できなくなっちまっただけだ。」

 

秋瀬七実があっさり自白したことであの時の誤解は解けた。

しかし、

 

「へえ、やっぱりアンタ私のこと覚えてたんだ?」

 

ここで新たな問題が浮上した。

 

「なんで他人のふりしてたの?」

 

「いや、それはただ単純にメンドくさ…いや、こんな劣能力者(マイナス)と君みたいな子供を関わらせてはいけないと思ってね。」

 

劣能力者(マイナス)は不用意に気を使って地雷を踏む。

 

「子供?」

 

「そう、だって君今もそんな子供っぽいキーホルダーしているだろ。あの時だって確かカエルのやつしてたし。人生の先輩だから言うけど…アレは無いね!あんな子供っぽいのしてたら小学生に間違われるよ。君ももう中学生なんだから…アレ、どうしたの?」

 

自らのことを棚に上げ、次々と地雷を踏んでいく秋瀬七実。

先日もとある高校生からガキ扱いされた上に今度は自分の趣味であるゲコ太まであれはないと一蹴された。

1年前の件を許しかけていた御坂美琴は磁力操作によってチェーンソー状の砂鉄の剣を作り出す。

 

 

 

「え、さっきまで。許されかけていたよね。俺!?」

 

意味がわからない。御坂美琴はいきなり能力の暴走の危険があるにも関わらず近接戦を挑んできた。

自分はただアドバイスをしただけのはずだ。それがなぜこの状況になる。

 

秋瀬七実にとって接近戦は鬼門だった。ただでさえノイズのせいで動きが鈍るのに、能力障害(AIMノイズ)によって暴走した能力が誰にもわからない変化を遂げるので対処が追いつかない。

秋瀬七実に接近戦における対処方法がないのもそのひとつだった。

 

御坂美琴の砂鉄の剣は不自然に形を変え、その髪からは時頼雷撃の槍が飛び出す。

その全てを、命の危機に陥ったことでかろうじて出来るようになった演算を使って、ギリギリ逸らす。

この回避は美琴のAIM拡散力場を直接利用しているため、いくら美琴が攻撃しても秋瀬七実の身体が保つ限り必ずギリギリで回避が出来てしまう。

皮肉なことに、命の危機に陥ることで先ほどより完全かつ安全な回避が出来てしまっているのである。

 

このいつ終わるかしれない戦いを止めたのは二人より年下の子供だった。

 

風紀委員(ジャッジメント)ですの!ってお姉様!なんですかこの状況は!」

 

「へ?」

 

完全に美琴に集中していた秋瀬七実はこの突然の来訪者の出現に気付けず、動きが鈍る。

その瞬間美琴の発した雷撃の槍が秋瀬七実の意識を奪う。

 

「お姉さま!流石にこれはやりすぎですの!?」

 

「だってコイツが勝手に止まるから!ちょっとあんた大丈夫!?」

 

先程まで割と本気で攻撃していた御坂美琴が慌てて駆け寄ってくる。

 

(甘いな。こんな奴相手に心配だなんて。どうせなら本気で殺しにかかってくればいいのに…こんな人間のクズ。)

 

薄れゆく意識の中、自身が発していた強烈なノイズが消えたせいか、普段の彼の雰囲気からは全く想像もつかないようなことを考えながら秋瀬七実は眠りにつく。だが、彼の能力が無意識に発するノイズにより長くは眠れないだろう。

 

能力障害(AIMノイズ)-それが出すノイズは何も音や映像だけではない。もしかしたら、普段の秋瀬七実の人格すらも自身の能力が生み出した巨大な偽物(ノイズ)なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。