秋瀬七実は別に御坂美琴の事を忘れたわけではない。
むしろあれほどのことを忘れることなどできない。
あのあと何やかんやあって自分に
秋瀬七実はこのある意味では因縁の少女に絡まれそうになっている。この一年放置されたのになぜ今になって?多方何かの拍子に思い出してムカついたのだろうと秋瀬七実は思う。
ほぼ不正解に近いものの微妙に当たっているのは
「なんか今失礼なノイズをキャッチしたんだが?」
秋瀬七実はノイズとして断片的になら地の文すら感じ取れる。さすが超敏感系主人公。
何はともあれ、秋瀬七実は御坂美琴のことを記憶している。あの時不完全な
ならば何故、ここで知らないふりをするのか?
答えは簡単。面倒だから。ただでさえトラブル続きのこの人生に因縁付きの
第一あの事件でお互い良い印象を抱いてはいない。一年も空いたのだから、知らないふりをしておくのがお互いのためだ。
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「アンタは私のことなんて眼中に無いって事かー!!!」
御坂美琴はいきなり髪の毛から雷撃の槍を飛ばしてきた。この雷撃はほぼ予備動作がない上に、最大出力10億Vという実は
「アブねえ!」
相手のAIM拡散力場のちょっとした揺らぎを感知して、何とか秋瀬七実は回避に成功する。
今だから出来るが、普段のリミッターが付いた状態ではろくに反応もできなかっただろう。
「いきなり何すんの!?」
秋瀬七実は半ギレの涙目になりながら、抗議する。騒ぎながらも次なる攻撃に備えて、次のリミッターを外そうとするしたたかさは流石
「こっちは勇気を振り絞って来たってのにアンタは知らんぷりかって言ってんのよ!もういいわ!とりあえずまずはここでゲコ太の借りを返す!リベンジはそれからよ!」
(えええー俺二回もボコられるの!?)
美琴の理不尽な言い分にかなり辟易しながらも、秋瀬七実は冷静に対処しようとする。
しかし、久しぶりの能力使用のおかげで体がノイズに耐え切れておらず、悲鳴を上げていたその体はまたしても能力の暴走を引き起こす。
「あ、まず!離れろ!?」
秋瀬七実の突然の変化に御坂美琴は戸惑う。しかし、1年前の失敗を思い出してすぐに後ろに下がった。
(何か来る!)
そう美琴が予想すると同時に秋瀬七実のボサボサの黒髪がわずかに逆立ち、微弱な電磁波を纏う。
電磁波を視覚出来る美琴は正体不明のこの能力に瞬時にいくつかの見立てを立てた。
(やはり、私の能力に干渉できる電気系統の能力?でもそれじゃさっきの
さすが学園都市で3番目の頭脳を持つものというところか。たった3度の接触で当たりに限りなく近い仮説を立てる。
しかし所詮は仮説、立証しようにも判断材料が少なすぎる。
「なら、試してみようじゃない!」
美琴は大胆にも、自分にかかるノイズを抑え能力を使用する。
一応暴走してもいい雷撃の槍手加減バージョンだ。
秋瀬七実は実はというと別に暴走などはしていない。
何重にもかけられたリミッターの一つを外したくらいで能力が暴走するわけがない。
ただ単にこれは暴走したふりをして、相手が不用意に攻撃を仕掛けられないようにしているに過ぎない。自身を取り巻く電磁波の渦も発動した
一度自身の能力で暴走した経験のある能力者はだいたいこれで能力の使用を控える。そしてその間に自分は何とかして逃げ出せばいいだけだ。
しかし、秋瀬七実の予想に反して御坂美琴は雷撃の槍を放ってきた。
「こいつ能力の暴走が怖くないのかよ!」
まあ最も秋瀬七実はそれができないわけだが…
自身に向かってくる雷撃の槍はみるみる大きくなっていき、今にもぶつかりそうなところで秋瀬七実はなんとか回避に成功する。
(やっぱりアイツに向かっていく雷撃は全部強力になっていく。あいつにそんなことをするメリットは無い。じゃあやっぱり
「あんた、その能力は一体何?」
「はあ、はあ、何だいきなり?ただの
息も絶え絶えになりながら秋瀬七実はそう回答する。
「
「そっちは制御可能な能力だけどこっちはそれが出来ないんだよ!?オン・オフも不可能。っていうかちょくちょく雷撃飛ばすのやめてくれない?」
試験的に雷撃の槍を飛ばしながら、美琴はあの事件の真相へとたどり着く。
「じゃあ1年前のアレは別に最初からああするつもりはなくて事故だったのね?」
「ああ、まあ最初はちょっとした出来心だったんだけど途中から制御できなくなっちまっただけだ。」
秋瀬七実があっさり自白したことであの時の誤解は解けた。
しかし、
「へえ、やっぱりアンタ私のこと覚えてたんだ?」
ここで新たな問題が浮上した。
「なんで他人のふりしてたの?」
「いや、それはただ単純にメンドくさ…いや、こんな
「子供?」
「そう、だって君今もそんな子供っぽいキーホルダーしているだろ。あの時だって確かカエルのやつしてたし。人生の先輩だから言うけど…アレは無いね!あんな子供っぽいのしてたら小学生に間違われるよ。君ももう中学生なんだから…アレ、どうしたの?」
自らのことを棚に上げ、次々と地雷を踏んでいく秋瀬七実。
先日もとある高校生からガキ扱いされた上に今度は自分の趣味であるゲコ太まであれはないと一蹴された。
1年前の件を許しかけていた御坂美琴は磁力操作によってチェーンソー状の砂鉄の剣を作り出す。
「え、さっきまで。許されかけていたよね。俺!?」
意味がわからない。御坂美琴はいきなり能力の暴走の危険があるにも関わらず近接戦を挑んできた。
自分はただアドバイスをしただけのはずだ。それがなぜこの状況になる。
秋瀬七実にとって接近戦は鬼門だった。ただでさえノイズのせいで動きが鈍るのに、
秋瀬七実に接近戦における対処方法がないのもそのひとつだった。
御坂美琴の砂鉄の剣は不自然に形を変え、その髪からは時頼雷撃の槍が飛び出す。
その全てを、命の危機に陥ったことでかろうじて出来るようになった演算を使って、ギリギリ逸らす。
この回避は美琴のAIM拡散力場を直接利用しているため、いくら美琴が攻撃しても秋瀬七実の身体が保つ限り必ずギリギリで回避が出来てしまう。
皮肉なことに、命の危機に陥ることで先ほどより完全かつ安全な回避が出来てしまっているのである。
このいつ終わるかしれない戦いを止めたのは二人より年下の子供だった。
「
「へ?」
完全に美琴に集中していた秋瀬七実はこの突然の来訪者の出現に気付けず、動きが鈍る。
その瞬間美琴の発した雷撃の槍が秋瀬七実の意識を奪う。
「お姉さま!流石にこれはやりすぎですの!?」
「だってコイツが勝手に止まるから!ちょっとあんた大丈夫!?」
先程まで割と本気で攻撃していた御坂美琴が慌てて駆け寄ってくる。
(甘いな。こんな奴相手に心配だなんて。どうせなら本気で殺しにかかってくればいいのに…こんな人間のクズ。)
薄れゆく意識の中、自身が発していた強烈なノイズが消えたせいか、普段の彼の雰囲気からは全く想像もつかないようなことを考えながら秋瀬七実は眠りにつく。だが、彼の能力が無意識に発するノイズにより長くは眠れないだろう。