とある科学の劣化魔導   作:fukayu

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悪夢の記憶

夢を見た。

 

夢の中の自分は無邪気に笑っていた。たくさんの子供たちと一緒に同じくらい小さい自分が笑っている。

その中心には優しそうなシスターと神父様が笑っていた。神父様の手には十字架が握られており、それからまばゆい光があふれている。

みんな幸せそうにしている。   でも夢の中の自分は…

 

ああこれは本当に夢だ。

 

今の自分には似合わない。こんな薄汚れたクズのような自分には…あの中に入ることなど許されない。いや、昔もか。

 

そう思った刹那…その映像にノイズが入り、また別の映像に切り替わった。

 

そこにもまた自分がいた。たくさんの自分と同じくらいの子供たち、しかし先程とは違い、皆不安そうな顔をしている。

そこに不自然な笑顔を貼り付けた研究者が現れる。研究者の手には科学とは不釣合いな聖書や十字にかたどられた宝石がある。

 

子供たちに近づく研究者に一人の正義感の強そうな少年が立ちはだかる。

 

しかし、研究者はその少年をとても興味深そうに見つめるとそれを無視して子供たちへ手にしたものを配り始める。

 

「君にはこれがいいかな~それともこれかな~一体どれが似合うのかな~」

 

まるで服を選ぶような気軽さで、子供たちの運命を選んでいく。

 

子供たちの中でも様々な表情をしたものが現れる。不安・恐怖・喜び・憧れ…きっとそれは全てすぐに壊れるだろう。    その中で自分は…自分は…    ただ無表情だった。

 

またノイズが流れる。映像が変わる。

けれども幸せそうだったのは最初の一回目だけで二回目からはどれも同じようなものだった。

 

実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験実験

 

見えるのは血、悲鳴、そしていつも最後は狂気だった。

 

これが自分の記憶なのかはわからない。だってこれは、学園都市におけるノイズなのだから。

意識がないときだけ、自分はノイズを”受信”できる。

 

きっとどこかで今もこんな実験が行われているのだろう。

 

でも自分には関係はない、たとえ聞こえていても自分は逃げるだけだから。

 

 

 

また別のノイズが流れる。

 

これは自分の記憶ではないだろう。

 

映像が乱れすぎている。どうやらかろうじて受信できているだけだ。

 

映像は三つ。

 

一つは銀髪で小さな体をしたシスターだ。…どこかで見た気がする。  笑顔で笑う彼女にはしかしとても凶悪な呪いがついていた。彼女に巻き付く鎖はとても強固で外すにはおそらく壊すしかないだろう。

その際に鎖と一緒に壊れた器からにじみ出るものに自分は何故かひどく恐怖した。この少女の中を覗いてはならない、見てはならない、聞いてはならない。ただ、そんな気がした。

でも何故か自分はこの少女にどことなく親近感を得た。

 

一つは黒髪でウニのような頭をした少年。一見どこにでもいそうな平凡な少年だった。その右手以外は… その右手にだけは触れてはならない。触れれば自分は完全に壊れてしまう。壊れかけの自分はおそらく一切の容赦なく壊れるだろう。

自分はこの少年にただただ恐怖を覚えた。

 

そしてもう一つは…二人いた。

逆さまの男性と修道服の女性。

一人は銀髪でとにかく逆さまだった。もうひとりは、女性の身長の三倍はあるのではないかと思わせる金色のとても綺麗な髪の毛が印象的だった。

自分はこの二人を許してはならない。そう思うと当時に何故かこの二人は自分にとって何も関係無いように思えてしまった。

必要悪、道化、ミスリード…この二人を見ると何故かその単語が浮かぶ。

 

一体何故?何故?この二人だけではない。銀髪のシスターも右手の少年もなぜ自分はあった事等無いのにこうも感想を言えるのだ?

深く考えようとしたとき、再び自分にひときわ強いノイズが襲いかかってきた。

 

(うっ!!)

 

見えるのは最初の銀髪のシスター、その少女の口の中に何かが見える。光る何かは自分を読んでいた。

 

(あれは魔導書?)

 

魔導書-なぜ科学の住人である自分の口からそんなオカルトな単語が出てくるのか。

 

『やっと見つけた。われの新たな宿主。新たな器。』

 

頭の中にまるで全てを取り込んで喰らい尽くそうとしているかのような声が響いた。

自分は何かを言い返そうとするが、そこで意識が途絶え、いや覚醒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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目覚めたあと、最初に目に入ったのは白い天井だった。

 

(ここは、長点上機の実験室(あの部屋)か…)

 

そう感想を抱いたが違った。

あの部屋には自分のほかに人間などいない。

そもそもいま自分が寝ているベットなどない。基本ごろ寝だ。

 

「気がついたね?ここは病院だよ?一応君専用の部屋に近づけてみたんだが気分はどうだい?」

 

自分と天井の間にカエルのような顔が割って入った。

 

「なるほど、確かに俺専用だ。」

 

辺りを見回す。

自分のベット以外に余計なものひとつない真っ白な部屋。常人なら逆に狂ってしまいそうなほど何もない。

おそらく意識がない間は、人だけではなく、様々な物からもノイズを拾ってしまう俺への配慮だろう。

…先程のような強烈なノイズはたとえ周りに物や人がなくても拾えてしまうのだが。

 

「悪いけど君の能力はほかの患者の迷惑になるから、特別病棟に作らせてもらったよ?それと、君を運んできてくれた彼女達にはフロントで待っていて貰っているよ?」

 

彼女たちとはおそらく御坂美琴と彼女を「お姉さま」と呼んでいた風紀委員(ジャッジメント)の事だろう。わざわざ気を失った俺を病院まで運んでくれたということか。

親切なことだ。俺なんて、適当に救急車でも読んで後は知らんぷりしても誰も文句は言わないだろうに。

 

「って、なんでいつ起きるかも分からない奴の為に待たせてるんだよ!適当に起きたら連絡しますって言って帰ってもらえよ!」

 

「全く、君は変なところで律儀だね?それは僕が待っていてくれって頼んだんだよ?どうせすぐ見起きるだろうからね?それに彼女たちも別件で人に会う約束をしていたようだから、そこまで迷惑にはなっていないと思うよ?だいたい君はもう少し人付き合いをしたほうがいいと思うよ?」

 

なんで医者が患者のプライベートの心配までしてんだよ。と知り合いのこの医者に悪態を付きながら秋瀬七実は病院服を脱ぎ、ご丁寧に枕元に畳んであった制服に着替え始める。

このカエル顔の医者は、秋瀬七実の能力上怪我した時など、よくお世話になっている相手だ。

 

「もう行くのかい?彼女たちの要件はまだ少し時間がかかると思うけど?」

 

「もうって気を失ってたんだぞ?一体何時間寝てたと思うんだよ?」

 

呑気に秋瀬七実が脱ぎ散らかした病院服をベットの上に置きながらカエル顔の医者が尋ねてくる。

 

「だいたいここに来てから26分44秒ほどだよ?病院に運ばれてくる時間を入れても1時間はないと思うよ?」

 

その言葉を聞いて秋瀬七実もそしてカエル顔の医者も途端に無言になる。

 

「…数えていたのかよ?」

 

「毎回来る事に短くなっているね?睡眠はちゃんと摂れているのかい?」

 

実はというと取れていない。

以前はこの部屋と同じ長点上機の白い部屋のおかげである程度とれていたが、ここ最近は先程のような夢をほぼ毎日見るので全くと言っていいほどねむれない。

 

「関係ないだろ。俺にだって悩みの一つや二つあるんだよ。」

 

「カウンセリングでも受けていくかい?僕は専門ではないけれど、多少ならかじっているからね?なんなら、もう少し寝ていくといいよ?」

 

この男ならかじっているといってもおそらくそこらの専門医よりは優秀なはずだ。

しかし、

 

「いやいいよ。これは劣能力者()の問題だ。わざわざあんたまでこっち側に来る必要はない。」

 

そう、これは自分の問題なのだ。他人を巻き込んではいけない。たとえ巻き込んでも自分はその人すらおいて逃げ出してしまうだろう。

 

今より深い地獄へと…

 

 

 

 

 

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病室を出てフロントまでいると御坂美琴たちはすぐ見つかった。

四人がけのテーブルで秋瀬七実の知らない白衣の女性と座っている。

 

秋瀬七実が近づくと御坂美琴がすぐに振り向いた。

まだあちらから見える位置ではないのだが、おそらく秋瀬七実の発するノイズに感づいたのだろう。

 

(流石は超能力者(レベル5)といったところか。こりゃ逃げてもすぐに見つかるな…)

 

遠くから頭だ下げて逃げようと思っていた秋瀬七実は諦めて近づく。

声が届くくらいの距離になったところで御坂美琴が、

 

「さっきはごめん!まさか当たるとは思わなくて!」

 

と、誤ってきた。

美琴が意図的に出してきた砂鉄の剣に当たったならともかく、秋瀬七実のノイズのせいで暴発していた雷撃の槍に勝手に秋瀬七実が当たったわけで御坂美琴には非があまりないわけだが。仮に砂鉄の剣が当たっていたとしても、おそらく手加減されて大した傷にはならなかっただろう。

 

「いや、別にいいよ。いつものことだし。それより別に待っていなくても良かったのに…こんなカエルの言うこと聞かずにさ。」

 

そこにはあえて触れず、後ろからついてきたカエル顔の医者を指差す。

余談だが、この時御坂美琴はこのカエル顔の医者を見て、「リアルゲコ太!」と興奮していたのは別の話だ。

 

「ま、いいや。俺はこの通り平気だから。心配しなくていいから、お仕事頑張って~」

 

と、いつまでも病院などにいるわけにいかない秋瀬七実は若干強引に話を切り上げ、病院から出ていこうとする。

が、

 

「何処へ行くんだい?」

 

後ろにいたカエル顔の医者に肩をがっちりと掴まれる。

 

「は、離してください先生。俺はこれでも忙しいんです。」

 

「ほう、また外をぶらついて不良に絡まれることがかい?」

 

その言葉に黙ってこちらを伺っていた風紀委員(ジャッジメント)の少女の目が光る。

 

「それよりも彼女たちに協力してあげたらどうだい?どうせ暇だろう?」

 

「は?なんで俺が?」

 

急に声を潜めて秋瀬七実にしか聞こえないボリュームでカエル顔の医者がつぶやく。

 

「その事件のせいで患者が増えてこちらとしても困っているんだよ?患者は少ないに越したことはないからね?」

 

「だからってなんで俺が!?」

 

面倒なことには極力関わりたくない秋瀬七実は全力で抵抗する。

 

「今回の事件君の能力が役立つと思うんだよ?それに、」

 

カエル顔の医者は秋瀬七実に悪魔の言葉を吐き出した。

 

「君毎回治療費払わずに出てっているね?口座も毎回空っぽだし、今もお金無いだろう?…どうだい、今回の件を解決してくれたら今までのことは水に流してある程度は治療費を払わずに逃げても見逃してあげるよ?」

 

悪魔の宣言であると同時に非常に魅力的な提案だった。

毎回怪我をしてお金が払えない秋瀬七実にとっては最高の条件だった。特に無料にするではなく、見逃すっていうのがいい。

 

秋瀬七実はボサボサの黒髪を掻きながら、

 

「しょうがないな。俺がそのお困りの事件手伝ってやるよ!」

 

御坂美琴たちの方へ歩いて行った。

解決すると言わないあたりが劣能力者(マイナス)らしい。

 

 

 




次回からは幻想御手編突入です。
原作に早く入りたかったのですが、この編のラスボスがとても主人公の能力にマッチしていたので。
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