アスナの道標   作:オーバード

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情報屋aの献身

 ソードアート・オンラインが正式サービスを開始したのは二〇二二年十一月――つまり、ほんの一か月前のことだ。

 プレイヤーは皆、同じステータスを与えられ、「よーいどん」でスタートダッシュを切り、同じだけスキルやアイテムの取得チャンスがある。

 オンラインゲームの正式サービス開始時に限り、プレイヤーのスタート地点は全くの平等だ。

 ただ一つの例外を除いて。

 

 

 

 

 その《チュートリアル》はディアベルの感情を正から負へUターンさせた。

 ディアベルが混乱する頭で一番最初に考えたのはレベルアップについてだった。

 可視化された強さの絶対値を上げることのメリット、それに伴う死の可能性というデメリット。

 安全を手に入れるために命を懸けるという矛盾に悩まされ、二の足を踏んでしまう――という多くの人々が陥った葛藤をすることはなかった。

 負の感情が胸の内に渦巻く中、何もしないことが耐え難かったのだ。

 自らに降りかかった理不尽に対するストレスをひたすらモンスターにぶつけまくった。

 

 リアルな大イノシシが吠えながら突進してくる姿は、大の大人もパニックに陥るほどの迫力がある。

 ストレス解消のために命を懸けてモンスターと戦った、というと頭の吹っ飛んだ人にしか聞こえないが、ディアベルは例外だ。

 彼にとってはじまりの街周辺のモンスターとの戦闘で死ぬ可能性は、現実世界で交通事故に遭う確立と同じ位のものだ。

 慣れた動作でソードスキルを発動させ、弱点の(たてがみ)をシステムアシストをブーストさせて切り付ける。

 

 何度も何度も。

 何匹も何匹も。

 

 圧倒的な弱者であるイノシシに八つ当たりをする。

 それがディアベルにとっての《はじまりの日》だった。

 

 

 

 

 広い部屋だった。

 固い鉄ではなく、柔らかな木を感じさせる床と壁。

 木目の再現されたテーブルとチェアのオブジェクト。

 テーブルの上には小さな細長の花瓶が置いてあり、水晶のように透明な胴体から、一輪だけ花を伸ばしていた。

 一部のプレイヤーに占拠されている《黒鉄宮(こくてつきゅう)》――その名の通り冷たい鉄の印象を受ける意匠の巨大な宮殿。

 その一室だけが、その名を裏切っていた。

 

 雰囲気抜群な一室の主は幼い少女なのだが、なんとそこは彼女の《仕事場》なのだ。

 何をバカなと言ってやりたいのはやまやまだが、彼女の《仕事》はとても重要なものだった。

 その仕事の名は《カウンセリング》。

 現実世界ではフィクションの中でしか見聞きしたことがない最大級の胡散臭さを漂わせる精神治療だ。

 それでもこのゲームの中では際限なく需要があった。

 彼女の処置は的確で、たくさん人々が彼女のもとを訪れ、心の平穏を取り戻した。

 

 ディアベルもその人々の内の一人だ。

 彼女の言葉でディアベルの感情はUターンした――さながらあの《チュートリアル》を受けたときのように。

 もしかしたら《茅場》と《ユイ》、《チュートリアル》と《カウンセリング》、この二つの工程が茅場が想定した本当のチュートリアルなのかもしれない。

 正から負、負から正へと一回転した心は、まるでレベルアップしたかのように芯の強さがあったのを覚えている。

 

 迷宮区の二十階でボスの部屋を発見し、コボルトの王を一目見た帰り、ここまで生死を共にしてきた仲間たちと宿でお互いの生還を喜び合う。

 今日の第二回ボス攻略会議でこのことを発表すれば、アインクラッドの攻略全体のモチベーションも上がるだろう。

 逆に気を付けなければならないこと――モチベーションを低下させることはやはり《プレイヤーの死》だろう。

 これから始まるのは最も死の確率が高い《偵察戦》――防御能力型(タンクビルド)プレイヤーを中心としたヒット&ウェイの繰り返しだ。

 

 人の命を預かる指揮官を名乗り出たディアベルに気負いはない。

 自分と自分の指示を完遂してくれるレイドメンバーであれば、必ず勝てる。

 彼の手にはその確信を得るだけの能力と意志、そして情報があるのだ。

 

 ――行ける

 

 クリア不可能という認識を俺たちで覆す。

 《はじまりの街》にいるあの少女のように人々の気持ちを負から正へ導く。

 

 《鼠》が連絡を取ってきたのはそんな決意を抱いていた時だった。

 

 

 

 

 

 

「遅い」

「いや……十分速いよ」

 

 うーん、と唸りながらもう一度右手に持つ新たなレイピア《ウィンドフルーレ+4》を構える。

 左足を前に出し、肩と肘が直角になるほどに右腕を引き絞る。

 細剣がライトエフェクトを纏い、スキルが立ち上がるのと同時に体を捻り、矢を放つように単発突き技《リニアー》を繰り出す。

 十人が十人とも速いと賞賛すること間違いなしな高速の突きだが、技を放った女剣士はまだ納得がいかないといった顔で不満を垂れる。

 

「やっぱり遅いよ」

「だから十分早いって!」

 

 あんまりな過小評価にキリトの突っ込みにも力が入る。

 

「発動までの時間も、システムアシストのブーストもこれ以上ないってくらい完璧だよ!むしろ早すぎだ!剣先がほとんど見えない!一体何が不満だって……」

 

 そこまで一息にまくしたてると今度は一転、随分と低姿勢で伺ってくる。

 

「……もしかして、その剣がお気に召しませんでしたか?」

「それはないよ!この剣はすごく良い。羽みたいに軽くて、狙ったところに当たって――」

 

 アスナはキリトが選んでくれた新しい相棒の使い心地をたくさんの言葉にしようとしたが、何か違うと思った。

 性能を理由にしたくないと感じ、言葉を切った。

 その代わりに口から出たのは、一言の主観的な印象だった。

 

「――まるで……この子自身の意志がわたしを助けてくれてるみたいだよ」

 

 自分の言葉に、とてもしっくり来た。

 この子は唯の道具ではない。

 アスナを助け、共に戦う戦友だ。

 

「なんか恥ずかしいことを言ってる気がするけど……剣のことを『この子』とか言っちゃってるけど……とにかく良い剣だよ!」

 

 それは選んだかいがあったよ、と黒い片手剣使いは嬉しそうに笑った。

 

「じゃあ何が不満なんだ?」

「だから遅いのよ――剣速が」

 

 ポカーンと呆けたキリト。

 不満たらたらのアスナ。

 

 細剣は低い攻撃力を、速さと攻撃回数で補うスタイルの武器だ。

 しかし、アスナほどのスピードがあっても両手斧で攻撃した方が合計与ダメージは多い。

 モンスターは与えられたアルゴリズムの通りに動くので、動きが鈍くなる両手斧でも攻撃をヒットさせるのはさほど難しくない。

 

「そこは正確さで補えばいいだろ。クリティカルをバンバン出せば斧を超えることも……」

「でもそれじゃあ正確さのある斧使いには及ばないよ」

「そんな使い手そうそういないよ」

「今はまだ、ね」

 

 いつかは出てくる――とアスナは言外に述べる。

 果ての見えない浮遊上の攻略はまだ一層も終わっていない。

 物知りな剣士さんは、おそらくあと二年はかかるだろうと言っていた。

 その間、最前線にいる斧装備の人たちは技を磨き続けるだろう――自分が生き残るために。

 そうなると当然の結果として、プレイヤースキルの向上によって、正確さのある(クリティカルをバンバン出す)斧使いは量産される。

 

 だからといって細剣使いの需要がなくなるわけではない。

 フェンサーにはフェンサーの長所があり短所がある。

 その短所が偶々(たまたま)与ダメージの少なさだった――というだけの話だ。

 そう……それだけの話なのだが……

 

「それは無謀っていうか……そもそもそういうバランス設計だから仕方がない。細剣で斧並みの攻撃力なんて反則もいいとこだよ。諦めることをお勧めする」

「嫌よ。なんか、こう――負けたくない!」

 

 いかにも呆れてますという風な顔の黒い生き物に見守られ、歩きながら突きの練習を繰り返す。

 パーティーを組んでの迷宮区探索の帰り、幾分か距離の縮まった二人は並んで街を目指す。

 

 アスナにとっては初のコンビでの狩りだが上手くり(はま)り過ぎていた。

 出会って二日の二人だが相性がいいのか、元々コンビ向きな性質だったのか、パズルのピースがくっつくいたような一体感を感じた。

 

 二人で配分してもいつも以上に多い戦果に不満はないが、自分より強い人が隣にいると、どうしても比べてしまう。

 アスナもレベル、プレイヤースキル共にトップクラスのプレイヤーだが、キリトはそのどちらもアスナを上回る。

 キリトの強さはそれに限らず、膨大な知識と経験にもよる。

 まるで何ヶ月も前からこのゲームで剣を振っているような経験からくる妙な慣れがあるだ。

 

 つまり何が言いたいかというと――

 

「キリト君がクリティカル出し過ぎなのがいけないんだよ!」

「ええ!?俺のせい!?」

「キリト君が細剣の十八番のクリティカルをあんなに出すからこんなこと考えちゃうんだよ!」

「そんなの……だって片手剣だし……」

「それでも!」

 

 理不尽なことを言っているのは解るが、ここで『フェンサー以外クリティカル禁止!』と言うわけにもいかないので、自身のスキルの向上に心血を注いでいる――という訳なのだ。

 

 しかし、問題はそれだけではない。

 モンスター相手はまだいい。

 慎重にアルゴリズムを見極めれば、どんな攻撃でも当てられる。

 本当の問題は人間相手――PvPの時だ。

 何故ならば――

 

「ん?……あれは……」

「……ディアベルさん?」

 

 町の入口が見えてきた、というタイミングで二人は同時に青色を視界にとらえた。

 ディアベルは二人の姿を見ると爽やかな笑顔を見せながら近づいてきた。

 

「やあ二人とも。今帰りかい?」

 

 自分たちを待ち伏せていたとしか思えない青い騎士は、眩しい笑顔で当り障りのない口上を述べた。

  

「……こんにちは。ディアベルさん」

「…………こんにちは」

 

 キリトも予想外の自体に動揺しているのか、少し腰が引けている。

 一方アスナは性別バレを危惧して、出来るだけ低い声を意識して挨拶を返すに留めた。

 

「知ってるだろうけど一応自己紹介するよ。俺はディアベル。よろしく!」

「……なんでか知ってるみたいだけど一応自己紹介するよ。俺はキリト。……こっちがアスナ」

 

 ご紹介頂いたので、ぺこりとお辞儀をする。

 ディアベルはキリトの隣に立つフーデッドケープの不審者を見ても、その端正な顔には嫌な色一つも浮かべなかった。

 

「アスナさんもボスの攻略会議に参加してくれていたね。これからよろしく」

 

 こちらこそよろしく、という思いを先ほどより深いお辞儀で表現する。

 伝わったかどうかは解らないがディアベルは無言の礼を受け取った。

 そしてキリトの方に向き直ると、SAOで最初に表だってボス攻略を掲げた勇気ある騎士様はおもむろに「実はキリトさんを待ってたんだ」とサラッとカミングアウトした。

 

 

 

 

 

 

 キリトはディアベルをすっかり話し合いの場として定着してしまった自分の宿泊している宿に招待した。

 二人で話し合いたいという彼の要求をのみ、アスナは「また午後の会議で」という別れの挨拶と共に去って行った。

 キリトは昨日フェンサー様にしたように、ナイト様にソファーに座るのを進め、コップ二つにミルクを入れるとローテーブルに運び、向かいのソファーに向き合う形で座った。

 

 ディアベルは礼と共にミルクを受け取とると、一息に飲み干した。

 

「みんな一気飲みなんだな……」

「……ん?どうしたんだい」

「いや、なんでも」

 

 不愛想に返し、コップの中のミルクを一息に干す。

 濃厚な味が口と喉を大量に通り抜け、まろやかな感覚を残して消えた。

 うん、一気飲みが最高だな――と一人納得する。

 

「実は今日ボスの部屋を発見したんだ」

 

 ディアベルのパーティーはいつも以上のスピードでマップを攻略して行き、一日で二十階を踏破したそうだ。

 ボスの部屋を発見した時の彼らの歓声はすさまじく、近くで戦っていたキリトの耳にも届いていた。

 

「そうか。じゃあ今日の会議はボスの情報収集についてになるのか」

「そういうことだね。ボスの情報の入手手段は俺の知る限り三つある」

「三つ……?」

 

 ナイトの示した数字に疑問符を付ける。

 キリトは情報入手の手段は二つしか思い浮かばない。

 

「一つ目は《偵察戦》――実際にちょっかいを出して逃げる……これから行う予定だった正攻法というべき攻略法だね。二つ目は……《元ベータテスタ》に情報を提供してもらう方法」

 

 ディアベルはそこで言葉を切り、顔に苦笑の様なものを浮かべた。

 すぐに消えたその表情の意味するところは、同じ様な顔を良く浮かべるキリトにはすぐに解った。

 あれは、ある種の自己嫌悪の表情だ。

 そこから芽を出す一つの推測を今は引っ込める。

 

「三つ目は――クエスト報酬だ」

「……クエスト報酬?」

「フロア最後の町や村、迷宮区周辺にはその層のフロアボスの情報を開示するクエストが存在するんだ」

「そんなものがあるのか!」

 

 予想外の朗報に思わず前のめりになり、ディアベルに詰め寄った。

 それが確かなら開示される情報の量にもよるがプレイヤーの生存率が上がることは間違いない。

 まさかこのデスゲームにそんな親切設計があったとは……とそこまで考えてからある可能性に思い至り、体の動きを完全に停止させた。

 

 ベータテストになかった設定……ベータテストになかったクエスト……ベータテストにいなかったNPC……《Yui》……クエスト達成条件――結婚!?

 

 まさか――結婚――そんな――でも――茅場なら――と冷や汗をたらしまくるキリトだったが、続きがあった。

 

「先ほどアルゴさんからそのクエスト達成の一報が届いた」

 

 なに――――!?

 

 キリトは心中で絶叫した。

 

 まさかアルゴが情報のためとはいえ――結婚するだなんて!!

 そんな、まさか、アルゴ、お前、ベータテスターとしての責任をこんな形で取るだなんて――!?

 

 と本人が聞いたら怒り爆発間違いなしな誤解が頭の中で展開されて行く。

 

「……そのクエストってどんなやつだったんだ」

「どんなやつとは?」

「だから、その、虐殺系とか……」

「ああ、お使い系のものだったらしいよ」

 

 思わず安堵の息を零した。

 さすがの茅場もボスを倒すために結婚――なんて笑えないジョークはかまさないようだ。

 

「クエストの報酬はボスの装備から弱点、攻略法までと有益なものばかりだったよ」

「それは良かった」

 

 ようやく落ち着きを取り戻したキリトの頭にある疑問が浮かぶ。

 

「アルゴはその情報公開クエの存在をどうやって知ったんだ?……もしかしてあいつ全部のクエ網羅するつもりで、発見したのは偶然なのか?」

「いや、情報公開クエの存在は《はじまりの街》にいる少女に教えてもらったらしい。まあNPC……になるのかな?」

「へー。そのNPCなんていうだ」

「ユイって名前だったよ」

 

 なに――――!?

 

 再度心の中で絶叫。

 

 NPCに教えてもらう=クエスト報酬=《Yui》=結婚

 という方程式が脳内で一瞬にして完成する。

 

 アルゴ……やっぱりお前……ベータテスターとしての責任を……

 

 俺はこの世界に来てから、自分が生き残ることしか考えていなかった。

 ビギナーを見捨て、利己的なソロプレイを敢行してきた。

 だというのに、アルゴ――お前は違った。

 おそらくランダムで選択されたであろう男性プレイヤーに、ゲームの中とはいえ結婚を申込んだ。

 ひとえにボス攻略で犠牲者を出さないがために――!

 まさかあの鼠を思わせるマーカーの付いた顔の裏に、こんなにも誠実な心を隠し持っていただなんて……

 

 アルゴは盛大な誤解とともに、キリトの中で聖人の様な人物像を獲得した。

 

「今日の会議でアルゴさんは自分が持つボスに関する情報をすべて公開する、と言ってくれた。それも無料で」

「―――」

 

 もう何度目かの驚愕。

 自分の持つ情報のすべてというからには、つまりベータテストの時の情報も含まれるのだろう。

 そんなことをすれば、もしこの先ベータテスターが糾弾されるようなことがあった場合、彼女はその矢面に立たされることになる。

 そういえば彼女は《エリア別攻略本》も初版以降は無料配布していた。

 

 アルゴ……お前ってやつはどこまで……

 

 感銘を受けているキリトに、ディアベルはいきなり素っ頓狂なことを言い出した。

 

「キリトさんには《刀スキル》についての情報を売ってほしいんだ」

「刀スキル――!?」

 

 あまりに予想外な単語の登場に目を張るキリトだったが、ディアベルは真剣な表情でいる。

 なぜここで第十層に登場したモンスター専用カテゴリーの刀がでてくるのか。

 キリトは今までの話の流れから、その答えを高速で導き出した。

 

「まさか、ボスが!?」

「そう、第一層のボス《イルファング・ザ・コボルドロード》は四段あるHPゲージが最後の一段になると武器を刀カテゴリーの《野太刀》に持ち変える。使ってくるのは当然、刀のソードスキルだ」

 

 そこまで聞けばすべて理解出来た。

 ディアベルがキリトに会いに来た理由から、自分がこれからすべきことまで。

 

「キリトさん。もう気が付いていると思うけど、俺もアルゴさんやキリトさんと同じ――」

「いや、いい。もう解ったから」

 

 そう、もう解ったのだ。

 ディアベルは元ベータテスターだということも。

 なぜアルゴの代わりにディアベルがキリトに接触して、《刀スキル》のことを持ち出してきたのかも。

 

 アルゴは元ベータテスターについての情報だけは絶対に売らない。

 それでも二人の間で『キリトは《刀スキル》について知っている』と話題に上がるのは、『キリトなら《刀スキル》について知っているはず』というのが二人の共通の認識であった場合に限られる。

 故にディアベルは元ベータテスターだと解る。

 

 そして、もしアルゴが俺から刀スキルの情報を買っていくだけならば、そこで俺はボス攻略に情報面で貢献したことで、『自分は元ベータテスターの責任を幾らか果たした』と自己満足したまま、ボス攻略からあぶれたプレイヤーとして傍観者でいただろう。

 しかし、ディアベルの協力があれば話は違ってくる。

 未知のソードスキルの恐ろしさはβ時代に《刀スキル》を完全に把握するまで、何十回と再挑戦を繰り返す破目に遭ったキリトが一番理解している。

 ディアベルにとっては犠牲者ゼロでのボス撃破が第一条件だ。

 その為に自らベータテスターであることをキリトに打ち明けた。

 

 つまり、ディアベルの話というのは――

 

「俺に――ボスと戦えってことだな」

「ああ……そうなる」

 

 背中に多くのものを背負っている騎士の瞳には、ある種意志が見えた。

 それは即ち、己の剣でこのデスゲームを終わらせるのだという意思を秘めた、攻略者の瞳だ。

 騎士は迷い瞳でキリトを見つめたまま、手を差し出した。

 

「俺たちとボスを倒そう――みんなのために」

 

 元ベータテスターでありながらもみんなの先頭に立つ騎士ディアベルの覚悟と、アルゴの壮絶な献身(誤解)を知った今、キリトの心が動かないはずがなかった。

 

 ああ――やってやる!

 アルゴ……お前の犠牲は無駄にはしない。

 必ず犠牲者ゼロでボスを倒す!

 




色々とキリト君が誤解してます。
途中からアスナさんがいなくなりましたけど、基本はアスナさん中心で進めていくつもりです。

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