青葉空は策士である。   作:STERNHEXE

5 / 5
だらだら書いてたので変な部分があるかも……。
後、サブタイの形式変えたい。なんでこんな無駄に縛りプレイしてるんでしょう?


雷、速さと

 

「そういう訳で、今日はご一緒できません」

 

 シュテルはやけに申し訳なさそうな顔をして、今日の放課後は用事があって、すぐには帰れないことを告げた。それは同時に、ブレイブデュエルに案内出来ないと言うことでもあった。

 

 名残惜しくはあるが仕方のないことだ。責任が彼女にある訳でも無いし、むしろそんなに困ったような表情をされてしまってはこちらが悪い気持ちになってしまう。

 

「じゃあ、今日は大人しく帰ることにするよ」

 

 そんなことを言いつつ荷物をまとめる。帰る途中で本屋にでも寄ろうかと考えつつ、そう言えば誤魔化し続けた友人に対する説明もしないといけない事を思い出した。ブレイブデュエルのロケテストについて喧伝することは果たして問題ないのだろうか?

 

「待って下さい。私は案内出来ませんが、代わりに紹介したい人がいます」

 

 その一言を聞いたとたん、脳内の様々な思考は一時停止して頭の隅へと追いやられた。え、今日もブレイブデュエルができるのか?

 

 

 

 

 

「紹介します、彼女がレヴィ・ラッセルです」

 

 荷物を持った俺と、荷物は教室に置いてきたシュテルは昇降口で件の案内人と合流した。遅まきながら留学生は三人いて、同じ場所にホームステイしていると言う情報を思い出していた。

 

 それに、昇降口までの短い間にどのような関係か質問したら、「手のかかる妹のような存在です」と恥ずかしげに答えた。なんでも小さな頃から一緒に育ったらしい。

 

「ふっふっふっ……。お前かー? 最近シュテるんが世話を焼いているのは!」

 

 アホがいた。人通りの多い昇降口で堂々と俺に指を突きつけ、高らかに声を上げるアホだ。手のかかる、と言った意味が良くわかる。思わず人違いですと言いたくなった。

 

 毛先だけが黒い空色のツインテールに淡い葡萄色の瞳、ハツラツとした表情。大人しめなシュテルとは真逆の印象を持った女の子だ。

 

「まあ、そうだけど……。青葉空です、はじめましてよろしく」

 

「レヴィ・ラッセルです。こちらこそよろしくー」

 

 険悪な雰囲気なのかと思ったが、そんなこともなく。挨拶したら丁寧に挨拶し返してくれた。これは後に知ることだが、レヴィはシュテルからかなりフランクではあるが、これでも礼儀作法に関しては結構口うるさく言われているらしい。そして、シュテルが正しいと言ったことに対してはなんの疑いも持たず実行している。

 

「じゃあ、ほら。早速レッツゴー!」

 

 などと、お気楽な言葉とともにいきなり手を引っ張られる。突発的なことに思考が追いついてこない。

 

「では、よろしく頼みますね。……レヴィを」

 

 見送るシュテルが最後に付け足した言葉に。俺は案内される側じゃなかったのか? と思いつつ、問答無用で校門へ向かおうとするレヴィへと頼みこむ。

 

「頼むから上履きだけは履き替えさせてくれ!」

 

 

 

 

 

 グランツ研究所へと向かうのがこんなに時間がかかるとは思わなかった。右に左に、様々なことに関心を示すレヴィの手綱を握り切ることはできず、様々な寄り道をすることになったからだ。

 

 しかしレヴィの、よく言えば親しみやすい性格故に、色々なことを話すことができた。

 

「レヴィは一つ年下なんだよね?」

 

 道中で買ったたいやきに齧り付くレヴィ。シュテルの身内にいい格好をしようと言う打算込でご馳走したたいやきの代金分ぐらい情報を引き出そうと思っていた。

 

「んーん。僕はシュテるんと同い年だよ」

 

「あれ、でも一年生じゃなかったっけ?」

 

 確か留学生三人は二年、二年、一年だったはずだ。シュテルに、やたら目立ってるもう一人。それからもう一人が目の前のレヴィのはずだ。

 

「うん。みんな飛び級してるんだけど、僕だけ日本語とか歴史が苦手だから一つ下なんだー」

 

「ふぅん。苦手な割に流暢に日本語喋るけどな……、ってみんな飛び級?」

 

「ああ、日本語っていうか国語がね。漢字とかが難しい……。でも滅茶苦茶カッコイイよね、漢字!」

 

「あ、ああ」

 

 状況を整理しよう。

 

 みんな飛び級してると、レヴィは言った。つまり彼女は最低一年。さらに、シュテルはプラス一年、つまり二年は飛び級している。その時点で二つ以上年下なのが確定する。言われてみれば確かに彼女たちの身長は他の女子に比べて割と小さい。

 

「具体的に何歳か聞いても良いか?」

 

「男性がレディーに年齢を聞くのはマナー違反って、シュテるんが言ってたよ? 青空」

 

 これは本人には迂闊に聞けそうもないなー。まあ、俺は多少の年齢差なんて気にしない……、と思うぞ? 多分。

 

 ……って青空って俺のこと?

 

 

 

 

 

「よーし、青空。早速いってみよー」

 

「へぇ……。街、と言うか摩天楼ってやつか」

 

 ブレイブデュエルの世界に降り立った青空こと俺とレヴィ。今日のステージは天高くそびえたつビル群。海上廃都市だ。ビルの合間を縫って飛ぶレース系のバトルでよく使われるらしいが、ここで戦うのも戦略性があって面白そうだ。と、スク水にマントを羽織っただけのような姿のレヴィから目を逸らしながら考察する。防御力なさそう……。

 

「シュテるんからは高速機動と近接戦闘をやるように頼まれてるから、まずは高速機動から」

 

 ……何とも頼りになる師匠です。関係性の構築をどこかで間違ったような気がしなくもない。

 

「『大体の人は空を飛ぶことに慣れていない。それは飛ぶ感覚がそもそも存在していないからである。だから手っ取り早く経験するのが一番早い』ってシュテるんが言ってたから……」

 

「から?」

 

「『抱えて全力で飛ぶ』。その内慣れてくれば自分で自由に飛べるようになるよ」

 

 やっぱり何か間違ってるような気がする。

 

「本気で言ってるのか? て、コラ。離せ!」

 

「しゅっぱーつっ!」

 

 レヴィは後ろから俺を抱えると凄まじい加速とともに飛翔を始めた。左右のビルはあっと言う間にはるか後方へと流れていき、眼前にはみるみる近づく障害物達。

 

「急速ターン&再加速!」

 

「うわわわぁ~~~!?」

 

 巡る巡しく変わる風景に目を回し、情けない声を上げる。今日、この場にシュテルが居なくて本当に良かったと思った瞬間だった。

 

 

 

 

 

「レヴィはどう言うイメージで飛んでるんだ?」

 

 最初こそ心の準備が出来ていなかったせいで醜態を晒したが、人間慣れるものである。もう都市を三週ほどしてるわけだが……。

 

「ふーん、聞いて驚けー。僕は雷の化身なんだぞ。だから速いし強いしカッコイイ!」

 

 そう言いながら一瞬、青い電気を纏った魔法陣が現れて加速。カーブでかかるGを受け止め、スピードが落ちたかと思ったら再び加速。即座に最高速を取り戻す。

 

 確かに、瞬発的な速度はさながら雷そのものだ。

 

「なるほどな……。レヴィ、もう離しても大丈夫だぞ」

 

「えー、でもそれじゃ一緒に飛べないよ」

 

 まだまだ初心者の俺ではそのスピードについてはいけないだろうと言う、侮った考え。

 

「試してみるか?」

 

「むー、今の速度が最高だと思ってる? 一人になればまだまだ速度は上がるんだよ?」

 

「じゃあ……。こんなルートで勝負しよう」

 

「オッケー。格の違いってやつを教えてやるー!」

 

 

 

 

 

 そもそも俺の装甲は厚い方ではなく、速度も並以上はあると思われる。速度の平均をDくらいに仮定すれば俺はC、相手はA。このままなら引き離されて勝負にすらならないだろう。

 

 まずはシールドを使う。指向性のシールドを手のひらサイズの円錐形へと変え、進行方向へと向ける。円錐は思惑どうりに空気の層を切り裂いて俺に対する空気抵抗を減らしていく。また、レヴィを追う形の俺はその後ろへとぴったり張り付き、スリップストリーム効果で俺の後ろからは常に追い風が吹く形になる。これで速度だけならBってところだろう。

 

 それでも最高速に勝るレヴィとの差はじわじわと離れていく。が、しかし。

 

「なんで引き離せないんだ!?」

 

 一見すれば引き離されているだけに見えるのに、その差が大きく離れる事はない。なんて、大層なことをしている様だが、なんて事はない。加速力に物を言わせるレヴィは俺の提示した細かいカーブが多いコースにあっていないだけ。対する俺は体勢を一定に保ち、飛行機が空を飛ぶように全身の角度を変えながら滑るようにカーブを曲がる。体にかかるGも最小限だ。

 

 多少のことならまだしも、二度も三度もと回数を重ねるごとに、コーナーでの差が縮まっていく。対して短い直線では最高速は生かしづらい。

 

 とは言え俺も着いていくのに必死で、なんでなんでと喚くレヴィに皮肉の一つも言う余裕はなく、レヴィの速度に引っ張られているからこそ、その後ろにくっついていられる訳で、当然抜かすことは出来ずかと言って諦める事もせず。お互いが疲れ果てるまでこの鬼ごっこは続いた。

 

 

 

 

 

「や、やるな……。この僕に着いてくるなんて」

 

「ま、まあな……。そっちこそ、そこまで持久力があるとは思わなかったぞ」

 

 最終的にビルの屋上で仰向けに寝転がった俺達二人。遅まきながら登場したシュテルに、近接戦はどうしたんですか? と半ば予想していましたと言わんばかりの顔で呆れられたのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。