女ヶ島の念能力者   作:C3PO

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第6話

 「もしも~し…センゴクさ~ん……あと十秒で奇襲掛けますよォ~」

 「分かった。我々は奇襲に合わせて突撃し、一網打尽にする」

 「はぁ~い」

 

 そう言って電伝虫を切ったボルサリーノは未だに宴会中の九蛇海賊団を見渡す。

 

 ──油断のし過ぎにもほどがあるよねぇ~

 

 胸中でそう呟くボルサリーノは最初に奇襲の標的である九蛇海賊団船長グレイスを確認。

 

 指先の照準をグレイスの頭部に合わせ自分の得意技である光のビームを放つ。

 

 

 

 

 

 直前に真横から覇気を纏った鋭い斬撃が自分に襲い掛かりグレイスへの不意打ちを急遽変更、慌てて躱したつもりだったが右脇腹に深くはないが浅くもない切り傷が走る。今の斬撃が轟音を立て地面に激突し、その大きな音で宴会中の九蛇海賊団がこちらに気づいた。

 

 奇襲は失敗だ。

 

 ボルサリーノは奇襲失敗の原因となった敵の姿を見て驚愕する。

 

 赤い髪を肩まで伸ばした身の丈よりも大きな薙刀を持った人形のように整った顔立ちの少女。

 その少女のあまりにも幼い見た目と見た目に似合わぬ覇気を纏ってこちらを見据えている様子にボルサリーノはつい質問してしまう。

 

 「きみぃ~もしかして九蛇海賊団の子かァ~い?」

 「そうだ」

 

 その返答を言った直後、少女──ベルゼリスは武器をボルサリーノに向かって切り上げる。

 その斬撃を紙一重で躱したボルサリーノは右手の指二本に光を集めベルゼリスの目に向かって発光させ目つぶしを行う。が、それを読んでいたベルゼリスは目をつぶったまま『円』でボルサリーノの動きを先読みしボルサリーノの左足を踏み逃がさないようにすると覇気と『凝』でオーラを集めた右ストレートを叩き込む。

 

 「ぐぅッ」

 

 ボルサリーノは武装色の覇気と六式の鉄塊を用いてベルゼリスの攻撃を受けたが、その見た目に反した一撃はボルサリーノのガードの上から体に伝わりボルサリーノは血を吐きながら勢いよく背後に吹きとばされる。

 

 『ボルサリーノ中将!?』

 

 次期大将確実と言われ悪魔の実の能力だけなら恐らく最強に近いと言われているピカピカの実の能力者であるボルサリーノが幼い少女に殴り飛ばされる光景はボルサリーノの強さを知っている海兵達にとって信じられない事だった。さらに追撃をかけようとするベルゼリスだが突如動きを変え背後に大きく飛び退く。

 

 直後、轟音と共に先ほどまでベルゼリスが居た地面が大きく抉れ小さいクレーターを作っている。 もしベルゼリスが気づかなかったら大きなダメージを受けていただろう。 

 

 「ボルサリーノ!? 大丈夫か!?」

 

 既に能力を使って大仏の姿になっているセンゴク大将は血を吐いて地面に膝を突いているボルサリーノに駆け寄る。しかしこちらへの警戒は怠っておらず、ベルゼリスが今攻撃したとしても通じないだろうことがわかる。

 

 ベルゼリス自身もボルサリーノはともかくセンゴク相手ではかなり厳しいと感じ、当初の予定通り海軍大将にはグレイスを宛がいその間に他の海兵を殲滅しようと考える。

 

 そしてボルサリーノが腹を抑え立ち上がると同時に九蛇海賊団も戦闘態勢に入り自分の傍に駆け寄ってきた。

 

 

 

 

 シャボンディ諸島41番GR

 

 今この場所ではセンゴク大将率いる海軍精鋭部隊とアマゾンリリー皇帝グレイス率いる九蛇海賊団が睨みあっていた。 

 

 「ベルゼリス…あれが海軍大将とやらか?」

 「ええ。あの黄金の肌の巨大な男がそうです。私では厳しいのでグレイス様にお願いしたいのですが…」

 「無論あれの相手は妾がやる。手を出すなよ。おまえはあれの横におる黄色い男を相手にせい。あれも中々強いようじゃ。他の者では厳しかろう」

 

 グレイスは余裕の表情で海兵たちを見、ベルゼリスに指示を出す。実際にセンゴクを見れば実力差が分かるかと思ったがグレイスには無理だったようだ。 

 

 「よくも舐めた真似をしてくれたな…! 九蛇海賊団!! お前たちはここで終わりだぁ!!」

 

 そのセンゴクの怒号を合図に海軍と九蛇の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 九蛇と海軍が戦っている場所より少し離れた位置にある開けた場所。

 

 そこでは海軍中将ボルサリーノと九蛇海賊団船員のベルゼリスが戦っていた。

 

 グレイスとセンゴクの一騎打ちをお互いに邪魔をさせないように二人の戦闘場所から離れボルサリーノとベルゼリスも一騎打ちをしていた。互いが互いの強さを先の戦闘で把握し頭同士の一騎打ちを邪魔されたらまずいとお互いに理解したからである。

 

 『天叢雲剣(あまのむらくも)

 ボルサリーノは自分の身長ほどもある光の剣を作りベルゼリスと白兵戦を行う。

 

 『死蔵の薙刀(バンデッドグレイブ)

 ベルゼリスも自分の能力の薙刀を駆使しボルサリーノと切り結ぶ。

 

 二人は互いに攻撃を命中させ、防ぎ、躱し、受け流し、払い、逸らし、そして鍔迫り合いになりお互いが同時に睨みあう。

 

 「いやァ~…君ィ~とんでもなく強いねェ~…今幾つだァ~い?」

 「八歳と半年」

 「ええぇ~…冗談きついよォ~…わっしと互角に遣り合える八歳が居るわけないでしょォ~…」

 「本当だ。別に信じるかどうかはお前が決めることだ。おまえが好きに判断しろ」 

 

 ベルゼリスは話を終わらせ腕に『凝』をすると強引にボルサリーノを弾き飛ばし追撃に覇気を纏った斬撃を飛ばす。それをボルサリーノは余裕をもって回避しお返しにと指先からビームを連続で飛ばしてくる。

 

 ベルゼリスは『円』と見聞色の覇気でボルサリーノの攻撃を感知しビームの隙間を舞うように抜け、ボルサリーノに接近する。

 

 「接近戦だと分が悪いねェ~…悪いけどもう終わらせるよォ~…」

 

 ボルサリーノはそう言うと月歩で上空まで跳び上がりベルゼリスに向けて技を放つ。

 

 『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)

 

 ボルサリーノは両手の親指と人差し指で円を作り、そこから無数の弾丸を放つ。小さな弾丸が光速でベルゼリスに向かって降り注ぐ。ベルゼリスはまたもや光の隙間を抜こうとするが隙間の間隔が狭く止むを得ず武装色の覇気と全身にオーラによる防御を行う『堅』で耐える。

 

 『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)

 

 

 『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)』 

 

 

 『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)

 

 

 まるで嵐のようにボルサリーノは光の弾丸を一人の小さな少女に向かって狙い撃つ。

 何千、何万、と言うほどの弾丸の雨を降り下ろしようやくボルサリーノは地面に向かって降りる。

 

 「これだけやれば流石に死んだよねェ~…子供を殺すのはいい気分じゃないけど、捕まってインペルダウンに行くよりはここで死なせてやったほうがいいよねェ~…」

 

 そう言ってため息をつきながらボルサリーノはベルゼリスを憐れむ。

 天竜人を殺害した海賊団の一味というだけで一生追われ続けるだろう。できれば幼い子供を殺したくなかったが生け捕りにできるような相手ではないしできたとしてもまず確実にインペルダウン行きは免れないだろう。まだ十歳にも満たない子供だがインペルダウンで一生拷問を受け続けるか極刑になるかのどちらかしかない。

 それならいっその事ここで殺してやるのが彼女にとって一番いいだろうと考え微塵の容赦もなくボルサリーノに攻撃させた。

 周りは土煙に焚かれて見えないが見聞色に反応はないのでまず間違いなく死んだのだろう。

 念のため死体を確認しようとボルサリーノは自分の攻撃で起きた土煙が収まるのを待っていた。

 

 しかし、ズバッっという音と共にボルサリーノの足から血が噴き出しボルサリーノは膝を突く。

 

 「あれェ~君どうして生きてるのォ~…わっしの攻撃は当たってたし…耐えられるような攻撃でもないし…見聞色の覇気で調べたけど君の声は聞こえなかったよォ~…一体どういうことなんだァ~い…?」

 

 背後からボルサリーノの脚を深く切り裂いたベルゼリスにボルサリーノは疑問を投げかける。

 現れたベルゼリスはもともと露出が多かった九蛇の民族衣装がボロボロになり背徳的な見た目に変わり、体中から血を流しているがまだまだ戦闘は続行可能だろうと言うように覇気が満ちている。

 

 ベルゼリスは『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)』を武装色の覇気と『堅』で耐えきった後『死蔵の薙刀(バンデッドグレイブ)』を消し自分も『絶』になり土埃に紛れる。そしてボルサリーノの背後から現れ『死蔵の薙刀(バンデッドグレイブ)』を具現化し移動の要である脚を切り裂いたのだ。

 

 

 「敵に自分の手札を明かすほど馬鹿じゃない。分からないまま死ね」

 「まあそうだよねェ~…でもわっしはまだまだ死なないよォ~…」

 

 ボルサリーノはそういうがそれが虚勢だということは明らかだった。

 『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)』は大したダメージにはならず脚も深く切り裂かれては月歩で空にも逃げられない。ベルゼリスとこの脚で白兵戦など勝負にすらならず勝敗はすでに決まっていた。

 

 ベルゼリスはボルサリーノにゆっくりとした速度で歩き出す。

 それを警戒するボルサリーノだが突如ベルゼリスの持っていた薙刀が消え、驚愕する。

 

 (能力者だったのかい? しかしなんで武器を消した? 自分が能力者だとばらしてどんな意味がある?)

 

 分からない。ベルゼリスの行動が分からず敵の目の前で思考し一瞬の隙が生まれ、ベルゼリスはボルサリーノに急接近し何も持っていない腕を振る。

 

 瞬間……

 

 「えっ」

 

 ボルサリーノの体は肩口から斜めに切り裂かれ、ボルサリーノは再び膝を突く。

 

 ベルゼリスがボルサリーノに見えるように『死蔵の薙刀(バンデッドグレイブ)』を消したのはこの一撃のためである。

 

 念能力の応用技『隠』は自分のオーラを見えにくくする技だ。ベルゼリスの『死蔵の薙刀(バンデッドグレイブ)』はオーラを使って具現化した武器なので『隠』を使うことで他人からは見えなくすることも可能である。

 ボルサリーノの目の前で武器に『隠』を使うことで無手を装うと同時に相手を驚愕させ隙を作り、近づいて切り裂く。これがベルゼリスが行ったことである。

 

 「まいったねェ~……こんな子供にやられちゃうなんて……夢なら覚めてほしいよォ~……」

 呼吸するのも苦しそうなボルサリーノに近づくベルゼリス。

 

 「夢じゃない…お前は油断して子供の私に負けたんだよ」

 

 そう言ってベルゼリスは『凝』で右手にオーラを集めボルサリーノに降り下ろす。

 

 その一撃でボルサリーノの意識は途絶えるのだった。

 

 

 

 

 

 


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