「まずですね……」
俺はパチュリーさんにパソコンの使い方を教えようと考え、ノートパソコンを開いたのだが。
パチュリーさんは息が聞こえるほどの近さにいる。
正直なところ、心臓がバクバクと鳴って落ち着こうにも落ち着けない。
「電源の入れ方分かります?」
「それぐらい判るわよ」
少し頬を膨らませながら、不機嫌に答えるパチュリーさん。ただただ可愛いの一言に尽きる。贔屓目無しに見ても、今、この状態のパチュリーさんを可愛いと思わない男はいないだろう。出来ることならば今すぐ写真を撮って永久保存にしておきたい。
「早く」
未知の物と俺とでは、ランクとしては未知の方が上のようで。哀しい。
役に立たねば。
「パスワードを入力します」
「今日、ここまで行ったのだけれどもパスワードが分からなかったのよね。何処かに書いてある紙とかあると思って探したのだけれど無くて」
どうやら、予想どおり俺が学校に行っている間に触ろうとしていたらしい。
パスワードの紙を鞄に忍ばせておいて正解だった。
と思いつつも、俺自身が学校にその紙を忘れているという事実はある。絡みのウザい友人に見つからないことを願うばかりである。
「パスワードは……」
maripachesikouと打ち込み、パスワードを解除する。
「パスワードはmaripachesikou……と」
どうやら一回見ただけで覚えたらしい。
さすがの記憶力です、パチュリーさん。
勘がいい方はお気づきになられただろう。このパスワードは日本語に戻すと『まりぱちぇしこう』。つまりは魔理パチェ至高という意味だ。
特段、深い意味はない。
魔理パチェのカップリングは最高だ。ただそれだけのこと。
「そしてデスクトップという画面になると、ここから自由にネットを使ったり、文字を打ち込んだりできます」
「成る程……。煉、何か私に見せて」
「仰せのままに」
パチュリーさんから冷ややかな視線を感じるが気にしない。
我々の業界、少なくとも私にとってはご褒美です。
「マゾなのかしら?」
「そんなことはないです」
とりあえずインターネットブラウザを起動し、G○○gle大先生を開く。
Yah○○先輩でもいいのだが、何故だろう。
信頼感が違うのだ。
「検索……。ク○クパッドでも教えようかな」
クックパ○ドを検索。
ウ○ルスバスターがちゃんと作動していることを確認しながら、パチュリーさんに手渡す。
クックパッ○はすでに入っている。
「ここから……どうするの?」
「このカーソルをここの空白に入れて、形が変わりますから、左のボタンを押します。それから……」
______________
パソコンの使い方をパチュリーさんに教えたら、すぐに覚えた。
ウイルスが入ってしまわないか。いや、入るだけなら問題ない。入ってしまった上で、パチュリーさんが混乱しないか。混乱して、パソコンを壊さないか。
それだけが1番の不安要素だ。
そして現在、朝のリベンジとしてクック○ッドから取ったレシピを見ながら、パチュリーさんは夕飯を作っている。
献立としてはハンバーグだそうだ。
とりあえずパチュリーさんが見えていない今がチャンスだ。拝んでおこう。
「ありがたや、ありがたや……」
「煉、サラダ油ってどこ……何をやってるのかしら」
「後ろめたいことなど一切しておりませぬ。ただただパチュリーさんのことを拝んでいただけでございまする。あ、サラダ油は冷蔵庫の隣にある棚の1番下に入ってます」
「そういうのがなければ、良い人だとは思うのだけれど……」
こういう風に呆れられることも、俺がパチュリーさんのことが大好きであるからこそ、気持ちの良いものとして受け止められる。
「出来たわよ」
「それでは、食べましょうか」
パチュリーさんが来てから、何かが劇的に変わるわけではない。
俺の中の優先順位が入れ替わるだけだ。
だから、この平凡な日常を。
「パチュリーさん、サラダには塩は必要ないですよ」
「え?振った記憶はないのだけれど……。あ…、あの時に塩の入っている容器を倒してしまった時に……」
「塩分の摂り過ぎには注意してくださいねー」
ひっそりと噛み締めておこう。