パチュリーさんは現代の家で居候しています。   作:閏 冬月

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クリスマス回です。
だから、言います。メリークリスマス。


閑話 パチュリーさんと共に聖夜を過ごしました。

クリスマス。

それはキリストの生誕を祝うための祭り事。子どもならば、サンタさんからのプレゼントがもらえるということで気持ちが高じる日であろう。

カップルは互いにプレゼントを贈り合って、イチャイチャするのだろう。

 

学校ではやめてくれ。せめて、他人の目に入らないもしくはそういう奴らが跋扈しているスポットに行ってくれ。俺の精神がもたないんだ。

 

「やぁやぁ非リアの煉さんや」

 

「どうした、家族も出かけるからクリぼっちのAさんよ」

 

「ど、どど、動じてはいませんぞ!」

 

「落ち着けや」

 

クリスマス? そんなものは俺にはないのだ。友人Aと俺はクリぼっちなのだ。メリークリスマスじゃなくてメリークルシミマスなのだ。

そんな互いの俺とAは中学から、クリスマスの時にはAの家に集まり、リア充を呪おうというのが恒例となっていた。

その時のAの部屋からは重苦しい低音の呪詛が流れ出ている。そのため、クリスマス時にはAには近づくなという命令がAの家庭内で出ているらしい。

つまり、Aの家族はAから離れるために出かけるのだ。

 

「ふははは! お前も今年は家族がいない独りぼっちのクリスマスだ! 一緒に聖なる夜を呪おうぞ!」

 

「あ、すまんな。今年は用事あるから無理だわ」

 

「非リアを卒業したというのか、煉よ」

 

「ま、そういうことだから呪うなら1人で呪っとけ、万年クリぼっち」

 

そうこうしているうちにいつの間にやら授業は始まっていたようだ。当然ではあるが、騒いでいた俺とAは怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ただいま帰りました」

 

「おかえり、煉」

 

ヤバい、昇天しそう。

クリスマスの日を一緒に過ごしてくれる人がいる。その人が自分が大好きなキャラクター、パチュリーさんだという事実に俺はただただ、感動を覚えるしかない。

 

パチュリーさんはせっせと台所の片付けを終え、ブルーライトをカットする眼鏡をかけて、パソコンを起動する。

 

「煉、今日は外出しない?」

 

パチュリーさんからのお誘いとは珍しい。

外へ出る時は大体、俺の方から誘って、パチュリーさんの気分によって、外出するかしないかは決定される。

そう、この家において、パチュリーさんは圧倒的君主におられる御方。パチュリーさんのお誘いに対して、私めのような愚民に拒否する権利などないのだ。

 

「私のような雑種にそのようなお声かけなど……、なんと慈悲深きお方」

 

「煉、返答は」

 

「何をおっしゃいますか。私にYES以外の選択肢など存在しませぬ」

 

「なら早く準備しなさい。私も準備するから」

 

「仰せのままに」

 

 

 

 

 

 

 

 

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あれ、自宅のパートこれで終わり? という疑問を抱いた人に言っておこう。

その通りだ。

 

 

今現在、電車の中で揺られております。

パチュリーさんも電車に慣れてきたのか、最初の頃のような危うさというものはなくなっていた。それはそれで寂しいものがあるというのは、パチュリーさんには内緒である。

パチュリーさんの服装は薄紫のセーターに短めの黒いスカート、黒ストを履いて赤いチェックのマフラー装備。かわいいというものを通り越して尊い。後光が差しているようにも見える。

 

「何、じっと見てるの」

 

「かわいいので」

 

「そう」

 

短くパチュリーさんは返したが、マフラーの中に少しだけ顔をうずめたように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「パチュリーさん、ここは……?」

 

毎年、俺とAがこの日に呪おうとしている場所ではないか。そして今年も、Aが恐らく地図に釘を打ち込んでいるであろう場所ではないか。

 

「世間一般では今日はクリスマスというのでしょう?」

 

「ええ、まあ」

 

「それであれば、そういった場所に赴いて文化を見てみるというのが効率のいい学び方ではなくて?」

 

正論、正論なのだ。

パチュリーさんの言っていること、それはあまりにも正確すぎて、俺は少し泣きそうなのだ。ここは俺にとって毎年恨んでいる場所だ。

そんなところに大好きなパチュリーさんと一緒にいられる。そのことがどんなに嬉しいか。

 

「煉? なんで泣いてるの!?」

 

「あれ、なんででしょう。ここにパチュリーさんと一緒にいられることが嬉しすぎて」

 

いつの間にか、涙を堪え切れなかったようになっていたようだ。

涙を流しながらではあるが、俺はカバンからプレゼントを取り出す。

 

「あの、そこまで良いものじゃないですけれど」

 

パチュリーさんはプレゼントを手に取り、包装を外した。そして、包装に包まれていた箱を開けると、それは眼鏡だった。

パチュリーさんがいつもかけているものはブルーライトカットの眼鏡であり、何かお洒落な要素もクソもないような黒いゴツゴツとしたフレームのものだった。それであるならば、お洒落眼鏡とかプレゼントしても良いんじゃないかなぁと、ない頭なりに考えた結果だ。

 

「ふふっ、ありがとうね。煉」

 

「っ……」

 

いつも見ている笑顔だというのに、なぜだろう。その笑顔が綺麗で、いつもとは違うように見えた。イルミネーションのせいだろうか。

 

「どうしたの、煉」

 

「いえっ、なんでもないです」

 

激しい熱を帯びた顔は冬の夜の寒さですら、冷やすのには時間がかかりそうだ。

 

「それじゃあ、今日はこれをかけて過ごそうかしらね。煉、あなたに聞いておきたかったの」

 

彼女は知ってか知らずか、紫に光る木の前でこちらへ振り向いた。

 

「あなたにとって、私はどんな存在なのかしら」

 

その言葉は、俺にとって言葉を詰まらせるものだった。何か、答えなければいけない。しかし、答えが見つからない。当てはまる言葉が出てこない。

 

「答えは今すぐには求めないわ。だから、今はこの時を楽しみましょう?」

 

「……、分かりました」

 

ただ、彼女と一緒にいられることが幸せである。だから、パチュリーさんと一緒にいたい。

 

そのことがどのような感情なのか、俺には判らなかった。

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