左門くんはサモナーって言うけれど   作:作物

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プロローグ

食欲、睡眠欲、物欲、この『欲』というものには悪魔が付き物らしい。

 

 

 

 

 

 

「おはよう左門君」

 

今日も天使ヶ原はクラスの外れ者である左門召介にご丁寧に挨拶をする。

 

左門は何も言わずに顔だけ天使ヶ原に向けると心底めんどくさそうな顔を向け小さく首だけを動かす礼をした。

 

「これで天使ヶ原さんの挨拶を返さなかったのは何日連続だ?」

 

机二つ分離れた場所で炭酸飲料を片手に俺はそうつぶやく。

 

時期は早いものですでに5月の中ごろに差し掛かった所。

 

大型連休を越えた算文高校2年B組はクラスらしくなってきた。

 

イケメンはイケメンと、オタクはオタクといったようにグループ分けがはっきりとしてきている。

 

だがこのグループに属していない人達がいる。

 

まずは左門召介(さもんしょうすけ)。彼は転校生だが転校初日の自己紹介でひとつやらかしてしまった。

 

サモナーやっています、という中二病全開の自己紹介。これには高校2年にもなった我々B組は固まり、彼と交わす言葉は自然となくなっていった。

 

次に九頭竜芥(くずりゅうかい)。彼は単純に2年B組一のクズだと言われている。

なぜそういわれているのかは詳しくは知らないが、カブトムシを密輸しただとか、大食い大会で口に入れずにそのまま袋にいれ帰ろうとしただとか、真偽はわからないがなかなかに強烈なうわさを聞く。

 

最近はよく左門とつるんでいるようだが何をやっているかは知らない。

 

次に天使ヶ原桜(てしがわらさくら)。彼女は誰とでも平等に接する。逆に言えば平等以上の関係を築けていないように見える。

彼女は素手でゲロを受け止め、なおかつ自分の両手にかかったゲロよりもゲロを吐いた人物を気遣ったことから天使といわれているらしい。熱心な隠れファンがおりファンクラブが結成されているほどだ。

 

最後にこの俺、陰時昭光(おんじしょうこう)だ。俺は人とかかわる事が面倒でただ流されるままに生きてきた。人と挨拶はするがそれまでで、その後のたわいもない雑談をする相手はいない。色の付いた透明人間。それが俺だ。

 

「はいみんな席つけー」

 

初老の教師が聞いただけで眠たくなる声を扉を開ける音と共に発した。

 

一時間目からこの授業ということは神は俺に眠れとでも言っているのだろうか。

 

30分後俺は器用にシャーペンを持ちノートに書き込まんとする姿勢を保ったまま浅い眠りに落ちていた。

 

この一回目を10秒以上閉じると完全に眠ってしまうゆらゆらした感覚が俺はたまらなく好きだ。

 

その感覚を楽しみながら黒板に書きこまれていく何だが魔法の呪文のような理科の単語を見ていく。

 

黒板の横に目を滑らすとなぜかそこには象のようなモノが二足で立ち授業を受けている俺に向けて何か光線を出している。

 

その光景を見て俺は眠気が吹っ飛びその象のようなものを凝視した。

 

鼻はまさに象で鼻の横には見事な象牙が生えている。

 

すると俺はなぜか腹が急激に減ってきた。

 

腹の音が出そうになるが必死に両手で腹を押さえる。

 

しかし悲しいかな、腹の音が無慈悲に教室に響く。

 

教室は一瞬の静寂のあとクスクスと笑い声がし、次第に授業そっちのけで腹の声の主を探す流れが始まった。

 

だがその流れは一瞬で終わった。

 

天使ヶ原桜が朝ごはん食べれなかったのでおなかすいちゃったんです。と照れくさそうに言った。

 

正直に言おう。天使かな?

 

女の子が腹の音を出しちゃいましたなんてはずかしくて言えないだろう。

 

だが彼女は言った。

 

もう一度言おう。天使かな?

 

ファンクラブがあるなら今度入らせてもらおう。

 

なんだよてっしーかよ。という声の中、俺は左門がニヤニヤしながら俺を見ていたのを見逃さなかった。

 

 

 

 

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