なお某野球漫画から名前を取っております。
◇◇10~12話に関するおことわり◇◇
知波単内の教練・会議において「」のセリフが続く展開となっております。
話のテンポと読みやすさ、意見が活発な様子を出したかったので、場面によってはあえてセリフの人物を出さないように(誰の発言かを重視していない)したのですが、分かりづらいなどご意見ございましたらお願い致します。
「隊長の訓示、誠に感泣至極でございました!」
「今日ほど知波単で戦車道をやっていてよかったと思った日はありません!」
車長が口々に西の訓示を褒め称えた。
「ありがとう! しかし大変なのはこれからだ!」
西がそれに答え、一同が頷く。
「しかし隊長・・・あれで良かったのでしょうか?」
「これからの知波単は変わらなければいけません。しかし”今までのままでよい”と誤解した隊員も多いのではないでしょうか?」
玉田が疑問をなげかけた。
「そうだな・・・」
「ただ我々に必要なのは、1つは”変わろうとする意識”、2つ目は”やるべきことを明確にすること”、3つ目は”自信を持つこと”だ。まだ我々自身がどのようにすればよいかも定まっていない。その時点で下手に迷わせることをしなくてもいいかとは思った」
「なにより私自身、これまでやってきたことの自信を失っていたからな。玉田もそうだろ?」
2人に教練前のことが思い出される。
「確固たる自分がなければ、これから変わることもできない。大丈夫! さっきのあいつらを見たら大丈夫だ!」
「はい!」
玉田もそれで納得したようだ。
「それでは本題に入るぞ!」
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「我々が戦うのに必要なのは・・・いかに相手に肉薄するかということだ。それは先の黒森峰との闘い、大洗との親善試合や大学選抜との試合、大洗との練習試合でも明らかだ」
「そのためにはどうすればよいか・・・まずはそれを考えてほしい」
西自身は意識はしていないだろうが、議論をリードする術も自然と身に付いたようである。
「1つは伏兵・・・」
「それは当然だな」
大学選抜との試合を経験している細見の発言に西が同意した。
「あとは相手の砲塔がこちらを向く前に接近して砲撃する必要があります」
福田がそれに続いた。
「うむ」
西が納得したように頷く。
「隊長、各校・各戦車でそれぞれ特徴があります。仮想敵があった方が想像がしやすいです」
「そうだな・・・」
「であれば、憎っくき黒森峰!」
「・・・は戦車の性能差がありすぎる。となれば・・・」
「やはり大洗女子学園だな」
西が設定した仮想敵を、一同が ”敵に不足なし!” とばかりに同意した。
「それならⅢ突やヘッツァーを抱える大洗には、先ほどの福田の策は当然だな」
「アヒル殿への恩義はありますが・・・装甲の薄い八九式は存在がうるさくなる前に叩いたほうがいいかもしれません」
「それには相手戦車1をこちらが複数で攻撃する必要があります」
「その通りだ!」
議論に納得したように西が答える。
「いかに相手を分断するか・・・これにかかっていると思う」
「そして私が考えるのは・・・敵車1輌に対してこちらが3輌で攻撃することだ。まず2輌が二手に分かれ、敵車の砲塔が向いた戦車の反対側に残りの1輌も行く」
「赤穂浪士が吉良屋敷を襲撃したような感じですね」
池田が西の言葉を補足?した。
「なるほど」
赤穂浪士の話に納得したかは分からないが、西の言わんとするところは皆に伝わったようだ。
「飛行機の戦法で、また2輌での話でありますが、互いにクロスするようにS字の旋回を繰り返す”サッチウィーブ戦法”もありますね」
「ほー、詳しいな、谷口(注オリキャラ・2年/新チハ車長)」
「ええまあ。戦車の性能で劣る分、なんとか戦法や特訓で補おうとは思っていましたので・・・」
さらに谷口が持論を披露する。
「いずれにせよ、肉薄はするが一撃離脱が必須だと考えます。ただそうなると・・・」
「うむ。注意しないとこちらが分断され、各個撃破されることになるな・・・」
「はい、その通りです」
西も谷口も戦法のイメージはあるが、同じ懸念を持っているようである。
「ただチハの利点でもある射撃の微調整が可能なところと、装填の速さ、搭載砲弾数の多さを活かして、早く動いて早く撃つ、そして連携を保ちながら。ここに勝機を見出すしかないと思います!」
「うむ、その通りだ!」
谷口の意見に西も同意した。
「願わくは攪乱した上で、火力を持つ戦車に誘導出来ればいいのですが・・・恐れながら申し上げますが、西隊長はチハ以外の車両の導入というのは検討しておられるのでしょうか?」
「大洗の者からも”なぜせめて一式や三式を導入しようとしないのか?”と嘲笑気味に言われたことがあります」
谷口の質問に池田が続けた。
「チハへの矜持を持ち得ない連中の戯言を相手にする必要はない。新しい戦車の導入については・・・全く考えてないわけでもないが、ただ導入の見込みがない車輌のことを考えても仕方がないとは今は思っている。ひとまずは現有戦力で出来ることを検討しよう!」
隊長としては戦力差をみすみす放置するわけにもいかないが、さりとて導入の見込みのない戦車をあてにするのは愚策であり、仮に新しい戦車を導入したとしてもそれだけで勝てるわけでもない・・・西の苦悩は他の隊員にも伝わった。
「素早い集散を図るためには、それを指示する者が必要となります。誰が適任でありましょうか・・・」
作戦を遂行するにあたり必要不可欠、そしてその任を誰が負うか。
誰もが聞きたい内容を名倉が質問する。
「それについては、私なりには決めている」
「福田!やってくれるか!?」
間髪入れずに西は答えたのだが、いわば隊の頭脳であり、作戦の成否を決める役割ともいえる任務に1年生の福田が指名されたことに少なからず驚きの声が挙がった。
しかし、そんな声を気にすることなく西が続ける。
「福田の戦況を見る目は確かだ。それは大学選抜との試合でも証明されている。加えて目に見える情報を言葉にして伝達する能力にも長けている。また福田の乗る九五式は、速度は速いが砲は37mmで装甲も薄いという事情もある。試合が始まってなるべく早く観測地点に向かい戦況を見るには最適だ」
「そして、仮想敵である大洗女子学園との関係も我々の中では一番近い。つまり相手の作戦や行動を予想出来るやもしれぬということだ。私は福田が適任と考えているが異論はあるか?」
「異議なし!」
「福田で良いと思います!」
理路整然とここまで言われると、隊員にも意義はなかったし、隊の中にも”西隊長が決めたことなら・・・”という空気も出来つつある。
「ありがとう! 明日から福田の指示で動くことになるが、福田の言葉は隊長である私の言葉であると思ってくれ!」
「どうだ福田! やってくれるな!」
西がさらにその任務に重みを持たせる。
ここまで言われると福田にも断る理由はない。
「恐れ多きことでございます!微力ではありますが、精一杯任務を果たすべく努力してまいる所存です!」
福田も力強く宣言した。
「そもそも戦車道の試合では、どこまでの行為が認められているのでしょうか・・・」
これまでの知波単の作戦会議ではそこまで及ぶことがなかったであろう内容を名倉が口にした。
会議はまだまだ続く・・・