とことん真面目に知波単学園   作:玉ねぎ島

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今回さらにオリキャラが登場します。
例によって某漫画家の某野球漫画からの登場です。後話で同じ漫画からもう一人出す予定です。


15.克服・後編(譲れぬ道)

画面は大洗女子学園と黒森峰女学院との決勝戦になった。

 

「速いな、黒森峰・・・」

 

「決して戦車の性能だけに頼ってるわけじゃないってことね」

 

「うちもあの迅速さを実現しないといけないな」

 

西の言葉に皆頷く。

平地でのスピードはチハも決して他校の戦車には劣っていないが、登坂能力に大きな差がある。それを埋めるのは事前の調査と、地図を読み解き最も効率的なルートを見つける能力。そして実現する操縦練度。

 

「あの煙幕も・・・大いに活用しないといけません」

大洗の煙幕作戦に驚きつつ玉田が言った。

 

「そうだな・・・連盟公認の煙幕装置があるとは聞いたことがある」

「福田、アヒル殿への恩義はあるだろうが、あの煙幕作戦の内容を大洗から可能な限り聞き出してもらえないか?」

 

「かしこまりました!」

西の依頼を福田は即座に快諾する。

そう・・・勝利への渇望を満たすには、あの大洗に勝たねばならないのだ。

福田は改めて自分に言い聞かせた。

 

画面では、大洗が高地に陣地を形成、それを黒森峰が包囲し、ヤークトティーガーを正面に押し出して包囲網を縮めようとしている。

 

「こうして見ると、いかにチハドーザーを使ったとしても、最終攻防戦を戦う陣地を形成するのは難しそうだな」

 

火力に圧倒されている大洗を見つつ西が言った。これが火力の乏しい知波単なら尚更だろう。

知波単が大洗に勝つには、徹底的に隠れて相手が撃つ前にをこちらが撃破するか、終始機動しつつ混戦に導き、その隙をついて撃破するしかないのかもしれない。

 

「となると、チハドーザーはあくまで野戦陣地の形成のために使用するということになりますね」

 

「うむ」

池田の発言に西が同意する。

もっとも導入可能かも現時点では定かでないチハドーザーでもあり、仮に何台か導入出来たとしても構築できる陣地には限度があるだろう。

 

そうするうちに、画面ではおちょくり作戦の後、大洗が黒森峰の包囲を突破しようとしていた。

 

「・・・だいぶ無理があるよね、この作戦・・・」

 

「というか38tもそうだけど、大洗って突撃好きだよね・・・うちらに ”何で突撃しかしないの?” とか言う割には・・・」

 

「 ”隙を見て突撃する” のと、”何も考えずに突撃する” の違いじゃないの?」

 

「「「(今、それを言っちゃいけない・・・)」」」

名倉の軽口に細見が悪気無く返しただけなのだが、その発言に西以外の隊員が心の中で突っ込みを入れる。

 

「うう・・・細見の言う通りだな・・・」

 

「「「(ほら・・・西隊長が落ち込んじゃったじゃない!)」」」

 

「し、しかしこの38tの陽動は凄いであります!」

福田が立て直すように言う。

 

「う、うちであれをやるのは誰が適当かな?」

玉田も福田の発言に乗っかろうととりあえず言ってみたのだが、よくよく考えると今後の作戦展開を考える時には非常に大事な役目だった。

 

「うーん・・・1台は谷口車、もう1台は中山車かな?」

気を取り直したように西が答えた。

 

「中山(注オリキャラ・2年/旧チハ車長)・・・ですか??」

池田が驚いたように声をあげる。

 

「谷口車はともかく、中山車の面子はお調子者が揃ってますし、そもそもあいつらは謹慎が解けたばかりですよ」

名倉もそれに続く。

 

中山車は中山を車長とし、山本(注オリキャラ・2年/旧チハ通信手)、山口(注オリキャラ・2年/旧チハ砲手兼装填手)、太田(注オリキャラ・2年/旧チハ操縦手)という面々であった。

決して不真面目ではなく、技量も低くはない(むしろ知波単の中でも高い部類)のだが、名倉の言うようにかなりお調子者というか、羽目を外すところがあり、4月には練習中に焚き火で焼き芋を作る、7月にも同じく練習中にザリガニ捕りを行い、都度2回の謹慎を受けていたのだった。

なお谷口はこの4人とは同学年ながら、途中編入者のため4人に対して敬語を使っているというのを添えておく。

 

「確かにあいつらの行動には問題があるところが多いが、言えば素直なところもある。そして最近は謹慎中の空白(ブランク)を取り戻そうと、谷口達の特訓に付き合っており、聞いたところでは技量は更に上がっているとのことだ」

 

「ついでに言えば、中山は繊細なところがあるし車長向きじゃない。集中力はある方だから、土壇場でも落ち着きがある山口と役割を変えようと思っている」

 

「確かに太田の操縦技術は元々かなり高いですし、盛り上げ役として山本もいる。陽動を行うには適任かもしれません」

西の意見に玉田が同意した。

 

「2輌が煙幕を使いながら攪乱し、そこに我々が連携しつつ突撃するという算段だ。うまくいくかは明日以降の教練次第だが、やってみる価値はあると思う」

 

「分かりました。やってみましょう!」

西の作戦に池田が同意し、他の隊員も頷いた。

 

そうして西達が話をまとめているうちに、画面は西住みほの八艘飛びを映していた。

 

「窮地に陥ろうとも仲間を救おうとする。こうした西住隊長の姿勢があるからこそ、隊員がついてくるのだろうな」

みほの姿を見て西がつぶやいたのだが、知波単の隊員の反応は意外なものだった。

 

「確かに同じ戦車道を志す者として、西住殿の姿には敬服致します。しかし、それはあくまで大洗女子学園の隊長としての話です。我々知波単が同じ状況に陥った場合は、迷わず前に進んで下さい!」

 

「玉田の言う通りです! 犠牲なくして我々は勝利を勝ち取ることは出来ません! 隊長が言った ”ONE FOR ALL,ALL FOR ONE” です。我々は皆の勝利があれば、たとえ自分は力尽きようともそれは報われるのです!」

 

玉田も池田も迷いもなく言い切った。

 

「お前ら・・・私にそんな重圧をかけるんじゃない!」

言葉だけ見ればただ発言者をたしなめる文言だが、西は嬉しそうに笑顔で言った。

確かに玉田と池田の言葉は ”自分達は途中で力尽きようとも、最後に残る西は必ず勝て!” と言っているようなものだ。

しかし、隊員がここまで言ってくれるのは隊長冥利に尽きるというもの。西はその感慨を噛みしめていた。

 

「大洗とて同じであります。マウスを撃破するために下敷きになった38t、ヤークトを用水路に屠るためにギリギリまで戦ったM3リー、敵戦車の侵入を防がんと防波堤となったポルシェティーガー・・・大洗に出来て我々に出来ぬはずがありません!」

福田も力強く宣言した。

 

そして画面はクライマックスを向かえようとしている。

 

「しかし、味方を待てばより有利になるところをあえて一騎討ちを仕掛けるとは・・・西住まほ殿も武人だな」

 

「西住流の後継者としての信念・矜持なのかもしれないですね」

西も玉田もその姿に感動を覚えている。

 

Ⅳ号が履帯を切りながらのドリフトを決め、ティーガーⅠもなんとかそれに応じるが、最後はⅣ号が黒森峰フラッグ車を撃破、西住姉妹の対決は妹のみほに軍配が上がった。

 

”本当にこれを相手にするのか・・・” 一騎討ちに堂々と応じて、戦車とは思えない動きで敵を仕留める。その姿を見ている知波単の隊員は背中に寒いものが流れざるを得ない。

 

かつての大学選抜との試合で、知波単4台とバレー部チーム1台が一瞬にしてセンチュリオンに撃破されたことがあったが、あの時はまだ ”敵ながらあっぱれ” と褒め称える余裕はあった。

戦車の動き自体はあの時のセンチュリオンの方が凄かったかもしれない。しかし画面の中のⅣ号には ”なにがなんでも、なにがどうなろうとも勝つ!” という執念・・・を超えた恐怖のような凄味がある。もちろんⅣ号の車長の西住みほは ”手段を選ばず勝つ” という精神の持ち主ではなかろう。しかし知波単が何の容赦もなく捻り潰された黒森峰の隊長車を相手に、それをさらに上回る凄味で敵車を屠ったのである。 ”負ければ廃校” という背負ったもの以上の何かをⅣ号に感じざるを得ない。

 

「「「(たとえ他の車両を撃破出来ても、このⅣ号は・・・)」」」

Ⅳ号1輌に全て葬り去られる、防ぎようのない銃口を目の前に突きつけられたような恐怖を、画面の前の面々は覚えた。

 

「「「(しかし、これを撃破せねば我々の道は開けない)))」

知波単にも譲れぬ道はある。そう。先人のように、画面の中の大洗のように・・・たとえ我が身は朽ちようと、今度は我々が守るべきもののために防波堤にならないといけない。

知波単の面々が決意を新たにするにはそれほど時間はかからなかった。

 

「見ての通りだ。戦力の劣る我々が勝つには、大洗がやったように ”いかに敵隊長車を孤立させるか” にかかっている。しかし、我々の敵である大洗の隊長車は西住殿が乗るⅣ号・・・だが我々も屈するわけにはいかない! 我々にも譲れぬ道はあるのだ!!」

 

「「「おお!!」」」

西の言葉に残りの面々が拳をあげて応えた。

 

「よし!! 大まかな作戦は今日話に出た通りだ! 明日から頼むぞ、みんな!!」

 

「「「はい!」」」

 

「・・・いや・・・このまま解散するのはもったいないから、スクールウォーズを1話だけでも見よう・・・」

 

「「「(・・・)」」」

 

結局、その夜はスクールウォーズを3話見て解散となった。

ちなみにイソップが行方不明になった11話から、イソップが亡くなった13話までである。

このくだりが後のこの小説において、とあるきっかけになることは・・・おそらくない。

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