とことん真面目に知波単学園   作:玉ねぎ島

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2.欠如(突撃の精神)

時を戻して8月15日の戦没者追悼式。

 

英霊への感謝と追悼の意を捧げながら、西は先日の辻との会話を思い出していた。

辻の無念を晴らすためには私が頑張るしかない・・・

 

しかし、どうすればいいかの答えは当然ながらすぐには出てこない。

一方で、また別の思いを西は持っていた。

 

「戦時中は当然戦車道も中断していた。今こうやって戦車道に打ち込めることって本当に幸せなんだな・・・」

 

時をさらに進める。

 

~~~~~~~~

 

「福ちゃん、かわいすぎ!」

 

大洗女子学園の校庭で、福田はバレー部チームの4人とバレーボールをしている。

いつもは凛々しい顔で ”根性だ!” が口癖の大洗女子学園バレー部キャプテン・磯辺が、珍しくウルウル顔で福田に声をかけた。

 

他のバレー部員も ”昭和の古き良き女子って感じね” とか ”ブルマって福ちゃんのためにあるようなもんね” と囃し立てる。

 

「もー、ブルマは知波単学園では立派な制服なんです!」

ふくれながら福田が答える。

もっとも福田が入学する直前まではちょうちんブルマだったらしいが・・・

 

とにかく小柄でおさげの福田が体操着+ブルマな姿は、見る人が見たら欲情を隠すのが難しいだろう。

 

しかし、バレーの技術はなかなかのもので、河西の鋭角に決まるアタックを拾うのはさすがに難しいが、近藤のサーブはなんとか食らいついて拾おうとしている。

 

「しぶといねー、福ちゃん」

福田が拾ったレシーブを磯辺がトスをしながら声をかける。

 

「うちの小学校、中学校は男は野球、女はバレーみたいな田舎の学校でした。私の身長じゃアタックを打たせてもらえないから、ひたすらレシーブの練習をしていたであります」

 

「よーし、ここらで一旦休憩しようか!」

磯辺が皆に声をかけた。

 

「いい汗かいたであります。アヒル殿とのバレーボールは楽しかったであります」

皆がスポーツドリンクを飲む中、福田はミネラル麦茶を飲んでいる。

 

「一緒に戦車で戦うのも楽しかったけど、コートでバレーボールを追いかけるのはまた違う楽しみがあるよね」

 

「ブロックをかいくぐりながらアタックを打つのは久々の快感だったな」

 

「四人だと相手サーブ→レシーブ→トス→アタックで終わりだもんね」

 

福田と同じ1年生とは思えない近藤、河西、佐々木も汗を拭いている。

 

「でもどうしたの?相談したいことがあるって。まあアタシらは福ちゃんと一緒にバレーが出来て楽しいんだけどね」

磯辺が本題にふれようとした。

 

大洗女子学園と大学選抜との一戦の後、知波単の面々はアヒルさんチームとの交流も深めていたのだが、3日前に福田から磯辺に「相談したいことがある」と少し思い詰めた声で電話があったのだった。

 

「戦車道についてであります」

 

「今後どうやって戦っていけばいいかってこと?」

 

「さようであります」

磯辺の質問に福田が答える。

 

「うーん・・・でも突撃も立派な戦術の1つだと思うけどね・・・」

 

磯辺は突撃を否定することもなかった。

親善試合、大学選抜との試合と2試合共に戦う中で思うところはあったのだろうが、知波単の敢闘精神は認めるところがあったのかもしれない。

同じように近藤、河西も続けた。

 

「私達も ”戦車なんかバーッと動かしてダーッと操作してドーンと撃てばいいんだから” から始まったしね」

 

「実際知波単の人達の練度はかなり高いと思うし」

 

「確かに知波単で戦車をやる以上、突撃は切っては離せないものではあります。でもやっぱり突撃だけじゃダメなんだとアヒル殿と一緒に戦って思い知らされたのであります」

何かしらの光明を見出せないかと福田も必死である。

 

「突撃以外の作戦って・・・正直私らも根性しかないもんなー」

 

「だいたいの作戦や指示とかは西住隊長がやってくれるしね。まあ殺人レシーブ作戦とか自分らで考えてやったことはあるけど」

 

「まあでも八九式だと正面からぶつかっても勝てっこないから、いろいろ考えないといけないというのはあるよね」

 

「西隊長は何か考えとかはないの?」

改めて磯辺が福田に質問する。

 

「西隊長は・・・」

 

福田が口ごもる。

そもそも隊長交代式の日に福田が見た西の嗚咽する姿が、今日ここに来ることになった理由なのだが、それは他校の選手に話す必要があるものではないだろう。

 

「いろいろお考え下さっているとは思いますが、まだ具体的には・・・」

 

「そうか・・・でもアタシらも突撃以外の作戦を何かと言われてもなかなかスッとは出てこないしね」

 

「作戦というよりかは、もしかしたらマインドのところかもしれないわね」

近藤が腕組みをした腕にその大きな胸を載せながら答える。

 

「マインド・・・精神のことですか?」

 

「ええ。もう少し具体的に言うと、突撃を敢行するためにも共通の意思統一が必要ということ」

 

「確かに名物の総突撃といいながら、個々の戦車が気に逸って結局バラバラに突撃していたようには見えたな」

 

「あと突撃の効果が何を狙ってのものかも必要よね。相手の弱いところを突くとか、側面をついて分断するとか」

 

「親善試合でカチューシャさんがⅣ号の盾になってる間にダージリンさんにやられた。あれも突撃みたいなもんだしね」

 

脳筋と称されることの多いバレー部チームらしからぬ意見が次々と出てくる。

痛いところをつかれた、又思うところがあったのか福田は沈黙せざるを得ない。

 

「同じ突撃をするにも心を一つに合わせて、誰かがやられても別の人が突破する。あとは根性ってことだな!」

うまくまとまっているような、まとまっていないような形で磯辺が締めた。

 

「突撃の精神すら私達は欠けてたのですね・・・」

 

「そんなに沈むことじゃないよ!知波単のみんなならきっとうまくいくよ!」

磯辺が力強い言葉をかける。

 

「そうです。バレーも2セット先取されても諦めなければ逆転できることもあります。初めから全てうまくいくわけじゃないですよ」

佐々木も明るい声で福田を励ます。

 

「じゃあ再開するよ、バレーボール!」

 

5人がコートを後にしたのは夕陽が沈む間際のことだった。

 

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