1.山口車が三式中戦車を撃破(知波単残12、大洗残5)
2.Ⅳ号が山口車を撃破(知波単残11、大洗残5)
3.B1bisが細見車を撃破(知波単残10、大洗残5)
4.細見僚車がB1bisを撃破(知波単残10、大洗残4)
※後書きにオリキャラや設定を記載しました
「まさか大洗がうち相手に煙幕を使ってくるとはな・・・」
全国大会優勝校でもある大洗が知波単を強敵とみなしたようでもあり、西はうれしくもあったのだが、いつまでもそうも言っておられない。なにせ煙の中に消えた戦車は高校戦車道の中でも最強、いや、大学選抜のセンチュリオンからも白旗をあげさせたあのⅣ号なのだから。
「福田! 大洗の別動隊は通過したか!?」
「申し訳ありません、確認出来ていません! かなりゆっくり、もしくは遠回りしている可能性があります」
「・・・しょうがない・・・福田! 再度観測地点に戻って状況を確認してくれ。谷口! 先遣隊の残り2輌はⅣ号に注意しつつ林の中の索敵にあたってくれ。Ⅳ号はともかく別動隊の動きは出来れば把握したい! 防衛線の各車輌は敵戦車を発見次第の発砲を許可する。通信している間の時間が命取りになりかねん!」
「「「了解しました!」」」
いつ、どこから攻撃してくるのか・・・見えない敵というのはこれほどまでに怖いものなのか。大洗の作戦とその遂行能力に驚嘆しつつ、これまでの知波単は、敵からしたらなんと分かりやすい、怖さを与えない戦いをしてきたのか・・・西は苦い思いをかみしめてもいた。
一方、6輌のうち2輌が撃破された大洗も態勢を立て直さざるを得ない。
「アヒルさん、カバさん、ウサギさん。こちらはあと3分ほどで目標地点に到達します。現在地を教えて下さい」
「こちらアヒルさん。あと2分ほどで285地点です。相手の後ろに回り込みます」
「分かりました。目標地点に到達したら攻撃に移って下さい。おそらく相手は塹壕を掘って潜んでいると思います。履帯をやられないよう注意して下さい」
「「「了解!」」」
「こちら福田! 煙幕晴れました。ただ・・・Ⅳ号は見当たりません」
観測地点に戻った福田が無念さを隠せず報告する。
そして、福田の報告を受けた直後、大洗の別動隊の3輌が知波単部隊の後方に姿を現した。
「大洗の3輌、後方から接近! 迎撃します!」
先ほど間接射撃を行った西、玉田、寺本のチハもⅣ号の動きが読めない以上、一旦掩体壕に身を隠していた。壕に車体をハルダウンさせたチハが一斉に砲撃を開始する。チハの装填は速く、しかも玉田の小隊は隙を見てダミーとして構築していた別の壕に移るという芸当をこなしており、実際に砲撃を行っている7輌よりも多い戦車が迎撃しているように大洗には思えた。
「相手の砲撃が激しいです。近寄れません!」
磯辺が動揺を隠せない様子で報告をする。
知波単の戦車は掩体壕に車体を隠しており致命傷を与えるのが難しい上、数多くの、そして低い砲弾が飛んでくる。この一戦に備え、旧砲塔チハも俯角15度に改良されており、壕の傾斜がどれだけであればハルダウンさせ、且つ地面すれすれを狙えるか。陣地構築を担っていた池田と名倉小隊の研究の成果であった。運が悪ければ車体下部、最悪の場合は車体底部に被弾する可能性もあり、うかうかと近づけない。
そうこうするうちに、実際にウサギさんチームのM3リーが履帯に被弾し動けなくなった。
「(鍛錬の成果が出ている。これはいける!)」
Ⅳ号の状況は依然つかめていないが、ほぼ狙い通りに戦況が進行していることに西は手応えを感じていた。
しかし、それを切り裂いたのは・・・
「よ、Ⅳ号が後ろから!」
福田が悲痛な叫び声をあげて報告したのだが、西も含め誰もその状況をすぐに理解出来なかった。
「Ⅳ号が崖から出てきました! 後ろ! 後ろです!」
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煙幕で身を隠した後、Ⅳ号はL字の角の内側の崖に向かっていた。
「どこへでも行ってやる。以前にそう言ったが撤回する。今後下見もなしでこんな道を通るのは御免だ」
冷泉麻子がそう言い切るほど、Ⅳ号は戦車が通常進む道ではないところを進んでいた。
L字の角の内側の林、一番狭いところは戦車1輌なら通れるが少し外れれば崖・・・ちょうど大洗の学園艦内にある、かつてⅣ号が落ちそうになった吊り橋を少し狭めたくらいの幅、そして少し高いくらいの高さの崖道を通っていた。しかも道は平坦ではなくかなりの勾配がある。また、もし道が行き止まりにでもなっていれば後退で戻れるかはかなり厳しい・・・そういう道なのだが、戦車道の試合会場に選ばれるくらいならおそらく奥の手でこの道を使う選択肢が残されている・・・みほ独特の勘と経験則を頼りに、麻子の操縦技術を駆使して、Ⅳ号はひたすら崖道を進んだのだった。
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そうしてL字の内側の崖道をショートカットしてきたⅣ号が、福田は後ろからと言ったが、厳密に言えば知波単の防衛戦の右側に突如出現したのである。
「が、崖を超えてきたのか!?」
西はまだ完全に状況を把握し切れていない。チハが立てこもる掩体壕は、Ⅳ号が侵入してきた方向からは唯一身を隠せない構造になっている。Ⅳ号はあっという間に迫り、近くにいた池田小隊の2輌を撃破した。
「全車! 壕から脱出し丑(戦車の向きで2時方向)へ向かえ!」
西に考えるゆとりはなかった。
立てこもっていた壕を捨て、防衛戦から見て前方にあるL字角の狭路を目指した。いつもの知波単なら簡単に撃破されるほどの操縦練度ではないのだが、突如現れたⅣ号とそれに伴う戦況の変化についていけなかったのであろう。どうしても回避行動が単調になってしまい、名倉車とその僚車、そして西車の盾になるような形で玉田の新チハが撃破された。
「た、玉田!」
「ご武運を! まだ戦いは終わっておりません! 諦めたら負けです!」
玉田の言葉にようやく西は冷静さを取り戻した。
しかし味方の車両は西の他は寺本、谷口、福田、細見僚車のみ。数の上でも一気に5対4まで削られ、しかも谷口、福田、細見僚車はまだ戦場に到達出来ていない。
「くそ! 今度はこっちか」
谷口と細見僚車はⅣ号を見失って以後、林の中で索敵していたところ敵戦車が知波単防衛ラインの後方に出現。その援護をしようと林を抜けたところ、今度は防衛ラインの弱点である右方向からⅣ号が侵入、西車はL字の角に逃げ込んだ。知波単の戦車が一気に5輌喪失した間、2輌は完全に戦場の蚊帳の外に追いやられていた。
「私は隊長の援護に向かう! Ⅲ突と八九を隊長車に近づけないようにしてくれ!」
M3リーはまだ履帯修理を行っている。谷口は福田と細見僚車に残りの2輌を引き付け、Ⅳ号から引き離すよう指示した。
西と寺本はなんとかⅣ号の砲撃から逃げ回っている。
「西隊長! 今そちらに向かっています。Ⅳ号を撃破するには2輌を囮にして、残りの1輌が仕留めるしかありません」
「分かった! 私が引き付けるから谷口はその間に体当たりでもして止めてくれ! その間に西隊長は撃破を!」
谷口の意を汲み取ったように寺本は瞬時にその作戦を伝えた。
Ⅳ号の後方から2輌が進み左右に分かれ、1輌が相手の砲を引き付けている間に残りの1輌が死角から攻撃する。仮想敵として大洗女子学園が設定され、その攻略法として何度もやってきた動き。小隊は違えどいずれも隊長車である。その動きにはまるで無駄がない。
しかしⅣ号は一瞬のうちに停止。 ”0.5秒でも停止射撃の時間をくれれば確実に撃破してみせる” との五十鈴華の言葉通りに、即座に寺本車を撃破した。想定よりも寺本車が早くに撃破されてしまったため谷口車の攻撃が間に合わない。それでも迷わず谷口は砲撃しながらⅣ号に突進する。
1発は谷口車の砲撃がⅣ号に命中しただろう。しかしそれは致命傷ではなく、そしてその間に・・・Ⅳ号はフラッグ車である西車を撃破していた。
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試合が終わり、両校の生徒が交歓会も兼ねた遅めの昼食をとっている。
「いやあー。まさか大洗さんがうち相手に煙幕を使ってくるとは。負けたのは悔しいですがちょっと嬉しいですよ!」
西がいつもの通る声で西住みほと話していた。
「西さん。今日の戦いはお見事でした。うちの課題も多いですし、正直勝った気がしません」
「いつまでも現有戦力のままでは・・・ということですな」
「はい。会長さんやレオポンさんチームのメンバーが抜けたら・・・考えてないわけじゃなかったのですが、急がないといけないと思い知らされました。今日は有難うございました」
「いえいえこちらこそ! また相手して下さい! なんせ諦めが悪いですから、うちは」
大洗女子学園としても8輌が6輌になっては来年の戦いも覚束ないだろう。快進撃を支えた大きな要因でもある自動車部チームが抜けることのダメージも大きい。みほとしても当然考えないといけないことではあるが、それはこの小説の書くところではないだろう。
「まさかチハドーザーを使っているとは! あれだけの陣地が短時間で作れたのも納得です」
秋山優花里が嬉しそうに、ただ少し申し訳なさそうに西に言った。
「私達はあなたがた大洗の戦い方を研究しました。その結論の一つが、地形と戦車の特性を最大限利用するということでした。チハドーザーを我々の戦いに使えるのは先人のおかげでもあります」
「正直私はチハばかりで戦うのを理解出来ないでいました。ただ今日こうして戦って・・・知波単の皆さんがチハに拘る理由が少し分かったような気がします。申し訳ございませんでした!」
戦車好きが高じて、戦車そのもので相手を見てしまうところが秋山にはあったのだろう。必然チハに拘る知波単を少し見下すところがあったとしても不思議ではないが・・・ただ今日の一糸乱れぬ知波単の戦いぶりを見て思うところがあったのだろう。それまで抱いていた思いについて、秋山は素直に西に詫びた。そしてチハドーザーをバックに知波単の面々と共に写真に納まっていた。
「厳しい戦いになるのは想像はしていたが・・・よく短期間でここまで立て直したものだ」
「いえ、前回の練習試合の後の冷泉殿の言葉があったからこそです。チハを最大限生かすというのが我々に与えられた使命であると。それに気付かせてくれたのが全ての始まりでした」
「うちも戦力を拡充するというテーマはあるが・・・それ以上に今後他校がうちを倒すことを明確な目標として、研究されて戦うことになる。前の全国大会のような戦いは出来ないのは分かっていたが、想像以上に厳しいものだと思い知らされた。礼を言う」
「こちらこそ。また宜しくお願い致します」
冷泉麻子の言うように、大洗の隊員は短期間でここまで知波単を立て直した西に興味津々だったのだろう。自然と西の周りに人だかりが出来ていた。
同じように知波単の隊員の周りにも・・・しかしその熱気とは裏腹に、知波単の隊員にはどこか冷めたところがあるようであった。試合に負けた悔しさなのか、ベストを尽くしても勝てなかった絶望感なのか・・・
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交歓会が終わり、各校とも帰りの準備を急いでいる。
西もその指揮を執っていたのだが・・・不意に姿を隠したのを玉田は見逃していなかった。
「玉田か・・・どうした?」
「西隊長・・・今日は今日として、また明日から戦いが始まります」
「なんだ、そんなことを言いにわざわざ来たのか」
「西隊長。私は1年半以上、おそらく知波単の誰よりもあなたの近くにいます。隊長としての苦しみを除くことは出来ませんが、あなたが今どう思っているか・・・せめてあなたの思いを共有させて下さい」
玉田の言うこと、言いたいことが理解出来たのだろう。西は玉田のところに近寄り、そして腰の辺りに崩れ落ちた。
”試し斬りなどと思い上がったことを・・・だから私は負けたのだ。隊員はあれだけ頑張ってくれたのに・・・西の馬鹿野郎! 大馬鹿野郎!”
玉田の腰元にすがりつきながら、西は自分を責め続けた。
「西隊長、悔しさはその場で爆発させないとその痛みに慣れてしまいます。慣れてしまうと次の戦いに踏み出せません。私も共に踏み出していきます。だから今は・・・」
西の悔しさが乗り移ったかのように、玉田も腰元でうなだれる西の肩に手を置きながらも涙をこらえることが出来なかった。
あの日も・・・前回の大洗との練習試合の日も私は泣き崩れていた。玉田の言うように、悔しさを爆発させたからこその前進だったのかもしれない。しかし歩みを進めるごとにその傾斜は険しくなる。明日からの戦い、傾斜はさらに厳しいものになるが・・・ただもう二度と隊員にこんな悔しい思いはさせたくない。そして私自身も・・・
明日からの苦しみに対峙するためのエネルギーを備えるかのように、西は泣き続けた。
●●オリキャラ(OG除く)●●
◇谷口車(新チハ) ~11話で登場~
・車長:谷口/2年(2年時に編入) ・操縦手:丸井/1年(2回目の1年生)
・砲手:五十嵐/1年 ・通信手or装填手:久保/1年
◇山口車(旧チハ) ~15話で登場~
・車長:山口/2年 ・操縦手:太田/2年
・砲手:中山/2年 ・通信手:山本/2年
・半田(池田車・通信手)/2年 ~19話で登場~
それぞれちばあきおのキャプテン、プレーボールからです。
●●16話で決定した小隊名●●
◇小隊名
玉田車=割り下、細見車=牛肉、池田車=豆腐、名倉車=長葱、寺本車=卵
※小隊僚車は小隊名に「ご飯」がつく(ex.玉田小隊僚車=割り下ご飯)
◇別働車
谷口車=バント、山口車=牽制、福田車=みかん、西車=隊長車