とことん真面目に知波単学園   作:玉ねぎ島

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登場人物が多くなった場合のセリフ回しをどうするか・・・
私も自分の無知を認識せねばなるまい。。。

小説内における時系列を。

7月中旬:隊長が辻→西に交代
8月中旬:この小説の始まり&大洗での親善試合
8月下旬:大洗女子学園と大学選抜との試合
9月下旬:大洗女子学園との練習試合
11月初旬:大洗女子学園との再戦 
11月下旬:新戦車導入
12月上旬:サンダースとの練習試合 ←←今ここ

あとがきに編成とオリキャラをまとめました


27.変貌(3ヶ月後の姿)

「じゃあ、ゲストの紹介をするわね! まずはプラウダ高校より、地吹雪のカチューシャ&ブリザードのノンナー!」

 

ケイの紹介アナウンスが終わると、盛大な拍手と耳を劈くばかりの指笛が鳴りだす。

”当然私が一番先に紹介されるべきでしょ!” と言うであろうカチューシャを見越して、いの一番にカチューシャを紹介したのだが、当のカチューシャは観客の多さと雰囲気にびっくりしているのか、さかんに辺りをきょろきょろと見回している。

 

「せっかくだからカチューシャ、なんか一言喋ってよ!」

係員がステージの中央にカチューシャを誘導したが、マイクスタンドの高さはちゃんとカチューシャの高さに合わせている。このあたりの配慮も抜かりはない。

 

「わ、私がカチューシャよ。きょ、今日はこんなパーティーに招待してくれて感謝してるわ。明日も頑張ってね。じゃ、じゃあね」

 

挨拶が終わるといそいそとカチューシャは元の席に戻った。

 

「意外と普通の挨拶でしたね」

 

「そりゃ、いきなりあそこに立たされて、これだけの聴衆を前にいきなり ”粛清してやる!” とは言えんだろ・・・」

 

”意外と普通” と言った五十鈴華はともかく、冷泉麻子も ”いきなりあんなところで喋らされるのは御免だな” と思っていたに違いない。

 

「サンキュー! 次はいかなる時も優雅、聖グロリアーナからダージリン&オレンジペコ!」

 

紹介されたダージリンは、さすがに堂々とした感じでマイクスタンドの前に立った。しかし自己紹介もなくいきなり出てきた言葉は・・・

 

「All you’ve got to do is own up to your ignorance honestly, and you’ll find people who are eager to fill your head with information.」

 

「「「・・・」」」

あれだけ騒がしかった観客も一瞬固まってしまう。

 

「ダージリンさん、こんなとこでもやっちゃうのね・・・」

 

「まさに ”こぼれた宝石を誰も拾ってない” 状況だな・・・」

 

「どういう内容の言葉だったのですか?」

 

華が問いかえるのと同時くらいで、ケイの合図で係員は着席しているオレンジペコのところにマイクを持っていった。

 

「オレンジペコさんが解説してくれそうだ・・・」

 

「聖グロリアーナのオレンジペコです。今のはウォルト・ディズニーの言葉ですね。・・・謙虚であれば、誰かが必ず教えてくれるということですね」

 

「西さん、なんとか変わろうとするあなたのこと、みんな応援してるわ」

オレンジペコのフォローを得たダージリンは満足そうに西に伝え、自分の席に戻った。

 

「元のダージリンさんの言葉は ”無知を自覚せよ” という内容だ。ペコさん、事を荒立てないように上手くフォローしたな」

 

(先の格言の訳:正直に自分の無知を認めることが大切だ。そうすれば、必ず熱心に教えてくれる人が現れる)

 

「でも、ダージリンさんもいろいろとやらかしちゃうことはあっても、こういう場でもまず第一に西さんのことを思う言葉が出るなんて偉い人だよね」

 

なんだかんだと麻子も武部沙織も、サラッと相手の意図を汲み取る、フォローするような言葉が出てくるのはさすがである。

 

「OK! では次は・・・戦車道に彗星のように現れたニューヒロイン達! 大洗女子学園の沙織&華&優花里&麻子・・・そして戦車道のスーパーヒロイン! みほよ!」

 

サンダース内でもその名は知れていたのであろう。先ほどよりもさらに大きな声援が大洗女子学園に向けられた。そして、ガチガチの状態でみほが舞台中央のマイクに向かった。

 

「み、みなさんこんばんわ! 大洗女子学園の西住みほです。こんなにぎやかな雰囲気の中で試合が出来るケイさんや西さんがうらやましいです! あ、明日は私も精一杯解説しますので、宜しくお願いします!」

 

これまでのみほの戦いは、勝って当然、もしくは絶対に勝たないといけない戦いばかりだった。もちろんみほとしてもその過程で自分なりの戦車道を見出すことが出来たし、そしてケイや西にとっては、明日の試合も当然勝たねばならない試合であるのは間違いないのだが、それでもこの楽しい雰囲気の中で、思う存分に戦車を動かしまくって、撃ちまくって、知恵も絞って・・・そういう試合をしてみたいとみほは素直に感じたのかもしれない。

 

その後、アンツィオ高校の面々が紹介され、いよいよこのイベントのメインゲストともいうべき知波単学園の西が紹介される順番になった。

 

「それでは最後に・・・ジャパーニーズ淑女、大和撫子、吶喊少女・・・ミス絹代!」

明日の対戦相手ということもあり、大洗女子学園へのものに負けないくらいの声援があがった。

 

「みなさんこんばんわ! 知波単学園の西絹代であります! この度はこのような盛大な会を催して頂き、本当に有難うございます! 思えば我々の戦いは・・・ここにいる他校の方、プラウダ高校、聖グロリアーナ女学院、大洗女子学園、アンツィオ高校、そしてサンダース大付属の戦車乗りの方の足を引っ張ってしまうところから始まりました・・・」

 

歓声が収まるのを待ってから、さらに西は続ける。

 

「そして、その悔しさ、苦しさを経て、まず我々は自らの無知を認識するところから始まったのであります」

 

そう言った西は、ダージリンの方に視線を向けて軽くうなづいた。先ほどダージリンが言った ”ignorance” を踏まえてのものであったのだろうが、かといってそこに怒りや困惑が混ざっている様子はなく、そして西に視線を向けられたダージリンもそれを理解しているかのようにうなづき返したのであった。

 

「まだまだ我々は未熟者です。明日皆さまを楽しませるような試合は出来ないかもしれません。しかし明日の試合は私どもにとっては・・・足を引っ張ってしまった方々への恩返しでもあると考えています。ご覧下さる皆さまにも何かが伝わる、何かが残る戦いが出来るよう、最善を尽くして頑張ります!」

 

西の堂々とした様子は、戦車道を知らない多くの観客にも伝わるものがあったようで、さらに一段と大きな声が飛んだ。西はそれに丁寧にお辞儀を返している。

 

そしてその姿は・・・オレンジペコにとっては、知波単の戦車隊はバンカーの相手に無謀に突っ込んでくる、増援の要請の数を勘違いする、円形広場の階段をブザマに転げ落ちるようなイメージでしかなかった。それがために知波単のことを少なからず冷ややかな目で見ていたのだが・・・今、目の当たりにする姿はオレンジペコが知っているそれとは全く違うものであり、ただただ驚きでしかなかった。

 

「以前の西さんとはまるで・・・3ヶ月やそこらでここまで変わるものなのでしょうか・・・」

 

「何かを理解し、何かを変えたから今があるのでしょうね。でも、理解することから苦悩が始まるとも・・・おそらくこの3ヶ月、彼女にとっては苦悩の連続だったのでしょうね」

 

さすがにダージリンには苦悩を慮るだけの思慮はある。

 

「明日の試合はどうなるのでしょうか・・・」

 

「普通に考えれば、シャーマン20輌が相手では勝負にならないとは思うけど・・・カチューシャはどう思って?」

ダージリンはノンナを挟んで横に座っているカチューシャに質問を投げた。

 

「さっき絹代と話したけど・・・ペコと一緒ね。自分が知ってる絹代とは変わりすぎていて・・・正直想像がつかないわ」

 

「いずれにせよ・・・ ”ダービーは常に強い馬が勝つ。でも一番強い馬が勝つとは限らない” もしかしたら知波単には既に勝つ資格があるのかもしれないわね」

 

ダージリンらしくきれいにまとめた頃、ようやく歓声は収まって、西はダージリン達とは反対側の舞台袖の席に戻っていった。

 

「OK! 絹代のいるチハタンズは確かに強敵だけど・・・でも私達も負けないよ! でもその前に・・・今夜は目一杯enjoyするよ! Are you ready?」

 

「「「yeahhh!!!」」」

 

歓声を合図に、盛大な前夜祭のパーティーが始まった。

 

ステージでは、サンダースのバンドが演奏したり、コントを演じたりしている。その中でも、ケイがボーカル、ナオミがベース、アリサがキーボードをつとめる戦車隊のバンドは一際華やかで、大きな声援を浴びていた。タンクジャケット着用の姿しかほとんど見たことがない者にとっては、華やかに演じるその姿は驚きであり、羨望でもあった。

 

「うわー、カッコイイ! ミポリン、今度うちもやろうよ!」

 

「そうですね、私達もそろそろあんこう踊りから卒業しないと・・・」

 

「ふぇぇ~!? でも私、縦笛しか出来ないよ!」

 

なおあんこうチームには、ケイから ”ぜひあんこう踊りをやってよ!” というオファーをなんとか断ったという経緯があったのだが・・・

 

「お、今度は西殿達が演奏するみたいですね!」

 

ステージには和太鼓が4つセットされている。

 

「ハッ!」

はっぴを着た西の掛け声で、西、玉田、細見、池田が見事な演舞を始めた。和太鼓などは見たことがないであろう、そして一糸乱れぬ演舞を見て、サンダースの聴衆から大きな歓声があがる。

 

「白褌じゃないのですね。残念・・・」

 

「華は何に期待してるのよ!」

 

2曲で演舞は終わり、西はケイとがっちり握手をし、そして特等席にいる他校のゲストのところに歩み寄ってきた。

 

「ケイさーん、ホントもうカッコよかったです!」

 

「サンキュー、沙織! ホントはあなた達にもあんこう踊りやってほしかったんだけどねー」

 

ケイにそういたずらっぽく言われ、ブーと膨れる沙織の横では、ダージリンが西に声を掛けていた。

 

「西さん、見事な演奏で心が洗われるようでしたわ。何から何まで大学選抜との試合の時とは違う姿を見て、正直驚いておりますの。まさに ”3日会わざれば括目して見よ” ですわね」

 

「有難うございます、ダージリンさん。仰るように全ては自分の無知を知るところからの始まりでした」

 

「でも、自分を無知と認識するのは非常に辛いこと。そしてそれを克服するのも大変ではありませんで?」

 

「正直、いろいろと思い悩むことは多かったですが・・・ただ私一人で何かが出来たわけではありません。陰でいろいろと動いて下さった先輩、自らを押し殺してまで知波単のために役職に就いてくれた者、そして苦しい鍛錬を一緒に乗り越え、私に付いてきてくれた隊員達・・・そうしたいろんな人の支えがあっての今であります。苦しいとかどうすればいいのかというのはありましたが、辛いというのはほとんどありませんでした」

 

そういう西には何の迷いもブレも見られなかった。

 

「なるほど・・・1本の矢では折れてしまうが、3本の矢では折れないということね。これはまた大変なライバルが出てきてしまいましたわね、ペコ」

 

「はい・・・」

聖グロリアーナが知波単をライバルを認めた瞬間であったが、それを聞いても西には浮つくところがまるでなかった。

 

「しかし・・・進歩のスピードが早すぎます。何より気迫がずば抜けています。これだけ迷いがなく気迫が漲っているのは・・・同じ戦車乗りとして嫉妬を感じてしまうほどです。タイプは違うでしょうが、これだけ迫力のある戦車乗りというのは、他には西住まほさんくらいではないでしょうか・・・」

 

「まったく・・・プラウダにとって余計な高校がまた出てきちゃったものね!」

 

地吹雪やブリザードと称されるカチューシャやノンナも、西の変貌ぶりを認めざるを得ない。

もっとも強豪校と知波単との間には、依然歴然とした戦車の性能差が横たわっており、力関係は実際にはそれほど大きくは変わっていないだろう。ただ戦車を動かすのは中に乗っている人であり、その人が以前とは大きく変わっている。そして戦車道の試合においては、戦車の性能だけが勝敗を決めるものではないことを、先に大洗女子学園が証明している。

 

今感じている脅威が本当のものなのか、幻想のようなものなのか・・・明日の試合である程度分かることになるだろう。

そうこうするうちに、2時間のパーティーはあっという間に終わった。

 

そして、パーティーの終了から1時間後。

明日の試合会場となる草原で、2つのヘッドライトが交錯しようとしていた。




◆西車(隊長車/フラッグ車)・・・一式中戦車
 ⇒車長:西、装填手:倉橋/2年(オリ)、通信手:半田/2年(オリ)、
  操縦手:戸室/2年(オリ)

 ※(オリ)は作者のオリジナル設定。以下同じ。
  オリキャラはちばあきお氏の漫画、キャプテン、プレーボールから名前を頂いてます

◆玉田車(割り下小隊)・・・四式中戦車
 ⇒車長:玉田、砲手:松川/2年(オリ)

◇玉田僚車(割り下ご飯)・・・新チハ
 ⇒車長:浜田

◆寺本車(たまご小隊)・・・新チハ
◇寺本僚車(たまごご飯)・・・旧チハ

◆池田車(陣地構築隊/豆腐小隊)・・・チハドーザー
◇池田僚車(陣地構築隊/豆腐ご飯)・・・チハドーザー

◆名倉車(陣地構築隊/長葱小隊)・・・チハドーザー
◇名倉僚車(陣地構築隊/長葱ご飯)・・・旧チハ

◆谷口車(突撃隊/バント)・・・新チハ
 ⇒車長:谷口/2年、操縦手:丸井/1年(留年)、砲手:五十嵐/1年、
  装填手:久保/1年、通信手:小室/1年
  ※全てオリキャラ
  ※谷口は2年時にサンダース大付属から編入

◆山口車(突撃隊/牽制)・・・新チハ
 ⇒車長:山口/2年、操縦手:太田/2年、砲手:中山/2年、
  装填手:山本/2年、通信手:鈴木/2年
  ※全てオリキャラ

◆細見車(突撃隊/牛肉小隊)・・・一式中戦車
 ⇒車長:細見、操縦手:加藤/2年(オリ)、砲手:島田/2年(オリ)

◇細見僚車(突撃隊/牛肉ご飯)・・・旧チハ
 ⇒車長:横井/2年(オリ)

◆福田車(偵察隊/みかん)・・・九五式軽戦車
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