とことん真面目に知波単学園   作:玉ねぎ島

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6.先人(民族の防波堤たらん)

「まずは西大佐だな。なんといっても硫黄島の戦い・・・」

 

「想像しただけでも涙が出るぜよ」

 

「生きて再び祖国の地を踏むことなきものと覚悟せよ!」

 

「日本が戦に敗れたりと言えど、いつの日か国民が、諸君等の勲功を称え、諸君等の霊に涙し黙祷を捧げる日が必ずや来るであろう!安んじて国に殉ずるべし!」

 

エルヴィンと左衛門佐が映画の台詞を口にする。

玉田と池田も続く。

 

「我々の子供らが日本で一日でも長く安泰に暮らせるなら、我々がこの島を守る一日には意味があるのです!」

 

「予は常に諸子の先頭に在り!」

 

「東京の南約1,080㎞、グアムの北約1,130㎞に位置する太平洋の孤島で、援軍も頼めない戦い・・・十中八九戦死するしかない状況で1ヶ月以上に渡る防衛戦・・・それを支えた精神とはいかなるものであったか・・・とても想像が及びません」

 

「結果として守備隊の95%以上が戦死したわけですからね・・・日ごと戦友が戦死し明日は我が身かと考える夜は・・・布団の中で安心して明日を迎えられる幸せを感じるであります」

 

西と福田も感想を述べた。

 

「山岡荘八が ”海軍が砲撃を我慢してたらもっと損害を与えられていたのに” とえらく悔しがっていたな」

 

「詳しいんだな。左衛門佐」

 

「『小説・太平洋戦争』は中学1年の時に読んだからな。印象が強い」

福田も続く。

 

「『小説・太平洋戦争』は私も中学の時に読みました。”天皇は国民統治の象徴、でもってバリバリ自由主義寄りの条文なのに、なんで社会主義をかかげる政党が憲法守れとか言ってるんだ?”みたいなことを言ってたのを覚えています」

 

「(・・・バリバリとか使うんだ、福ちゃん)」

 

「(多分民〇党は嫌いなんだろうな、福ちゃん)」

 

「でも結局硫黄島ではチハは戦車としての活用はなく砲台として使われていたんだろ?馬術の金メダリストとしては、騎兵隊とはいわずとも縦横に駆け巡る戦車隊を率いてもらいたかったなというのはあるな・・・」

 

「それらも含めて西大佐、そしてチハの運命だったということでしょう。そして我々はそうした先人の思いを忘れぬことがなきよう、チハと一緒に戦っています」

 

エルヴィンの話を受けて、玉田がその顔には似つかわしくない?運命論者のような話を返した。

 

「「「「ああ・・・やはりそういうことか・・・」」」」

 

歴女チームの4人は、当然「先人の思い」ということについては他の人よりも格段に感度が高い。彼女らに ”なんでもっといい戦車を導入しないのか?” というのは無粋以外のなにものでもないんだろうなと4人とも即座に理解した。

 

「一方、占守島ではチハは戦車として大活躍をしているな」

 

「何年か前に占守島で”今にも動きそうなチハ”が見つかって話題になっていた」

 

「 ”戦車隊の神様” 池田末男大佐が率いる陸軍戦車第11連隊だな。その精神は今も、北海道に駐屯する第11戦車大隊に受け継がれている」

 

「陸軍戦車学校時代の教え子に司馬遼太郎先生がいたようだな。Wikipediaによると ”司馬は池田から大いに薫陶を受けた” らしいぜよ」

 

「うちの池田は・・・福田にとってはそんな存在ではないな!」

 

「そんなことはありません!池田先輩は立派な先輩であります!」

 

「そういう空気を読まない煽りを入れるもんじゃない、細見」

 

細見の軽口を、空気を読めないことに定評がある西がたしなめる。

 

「池田大佐といえば出撃前に言った ”諸氏はいま赤穂浪士となり、恥を忍んでも将来に仇を報ぜんとするか?あるいは白虎隊となり、玉砕もって民族の防波堤となり後世の歴史に問わんとするか?赤穂浪士たらんとする者は、一歩前に出よ!白虎隊たらんとする者は手を挙げよ!” だな。白虎隊というのがいかにも深い」

 

「はい、左衛門佐殿。白虎隊は敗れた会津藩の部隊です。一方赤穂浪士は結果として仇討ちには成功しております。本来なら敗戦した部隊たろうとするのはおかしな話です。

そして時の大日本帝国は既に無条件降伏をしていました。仮に彼らが戦勝したとしても、戦局に影響を与えることはありません。

しかも、彼らは一先ずの安穏な生活を半ば手に入れた状態でした。であれば”生きてこそ国に奉じ得る”と考えて当然です。しかしそれでも・・・」

 

「白虎隊となり、民族の防波堤になり得んとした・・・その精神に感嘆するしかないな」

 

左衛門佐と西は、会話を交わしながら「自分なら同じ状況で白虎隊となり得ただろうか?(いやそうではあるまい)」との反語をかみしめていたであろう。

 

そして実際の占守島の戦いは、日本側の死傷者が数百、ソ連側の死傷者が2~3千と日本が半ば勝利したものの、西の言う”戦勝したとしても、戦局に影響を与えることはない”との言葉通り、勝った側が降伏し武装解除される憂き目に遭い、そして不当にシベリアへ抑留されるというものである。

 

「白虎隊といえば少し話は違うが・・・」

おりょうが続ける。

 

「靖国神社には時の明治政府の敵、いわば賊軍であった会津藩を含めた幕府軍は祀られていない。実際に靖国神社にも行ったが反乱者のような扱いだった。

池田大佐は愛知県の豊橋出身で幕末時には佐幕色が強い地域ではあったが、それでも戊辰戦争後80年足らずの後に、民族の防波堤の象徴として白虎隊を挙げ、皆がそうあろうと奮い立ったのは感慨深いものがあるぜよ」

 

「なんにせよ、白虎隊たろうとした彼らの存在がなければ、北海道もやられていたかもしれないな」

 

「チハ乗りとして以前に・・・日本人として!感謝と哀悼を表さざるを得ません!」

 

カエサルの言葉に、それまで聞き役がほとんどであった池田が力強く答えた。

歴女チームから先人の話を聞いたからだろうか。明らかに池田の表情にも変化が表れている。

 

そして話は続く・・・

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