フレームアームズ・ガール エブリ・デイズ   作:羽羊紅葉

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フレームアームズ・ガールのメンテの日2

「ねえ、誰かボクとバトルしてよ」

 

笑顔でそう言ってきた。

それに真っ先に答えたのは、紅狼(くろう)だった。

 

「いや、『バトルして』って言っても……」

「貴方のマスターはどちらへ?」

 

轟雷も続けて尋ねる。

というのも、フレームアームズ・ガール達は基本的にマスターがいる。

恐らくこのフレズヴェルクと呼ばれたフレームアームズ・ガールも轟雷達と同じくメンテナンスをしてもらうためにここに来ているはずである。

戦うのは別に構わないだろうが、マスターの許可なく戦うのはいかがなものだろうか。

そんな事を考えていると、

 

「フレズヴェルクのマスターはまだ決まってないの」

 

山田(やまだ)さんがそう言ってきた。

 

「そうなんだ、ボクだけまだ外に出られないんだ」

 

なるほど、それなら暇で暇で仕方ないだろう。

だが続いた言葉は、

 

「でもいいんだ。だってボクが一番強いんだから」

 

この爆弾発言である。

ちらりとフレームアームズ・ガールの方を見る。

もし怒っているのなら、止めなければならないからだ。

だが、誰一人として怒ってはいなかった。

どちらかと言えば『悔しいが、反論できない』といった感じだ。

 

「まあそれはそうよね」

「そうじゃないと、困るものね」

 

マテリア姉妹が話し始める。

どういう事か、と聞こうとした時、

 

「補足、フレズヴェルクは管轄が違います」

「管轄?一体どういう事や?」

「説明、我々は『人と仲良くする』事を目的とした部署で生まれたフレームアームズ・ガールです」

 

そこで一度言葉を区切ると、

 

「質問。マスター、私は目的を達成できていますか?」

「アホ抜かせ、ちゃんとできとるわ。そんな心配すんなや」

 

東馬(とうま)はアーキテクトの問いにしっかりと答える。

よく見れば他のフレームアームズ・ガール達もそれぞれのマスターを不安そうに見ている。

あの表情が乏しい轟雷ですら、そんな感じがするぐらいだ。

 

「大丈夫、轟雷と仲良く出来てるよ」

「ありがとうございます、紅狼(くろう)

 

そう言って紅狼(くろう)が周りを見渡すと、他のマスターも自分のフレームアームズ・ガールに似たような事を言っていた。

 

「再開。フレズヴェルクは『勝つ事』を目的にしています」

「目的が『勝つ事』?」

「そうよ。私達と違って戦う事、勝つ事のみを追求したフレームアームズ・ガール。それがフレズヴェルク」

「そうだよ、だから戦いたいんだ」

 

フレズヴェルクが胸を張りながらそう言った。

 

「戦って勝つ、それが全てなんだ。だからバトルしよう」

 

バトル脳、戦闘狂、言い方はそれぞれだが、マスター達は皆そんな感じの感想を思い浮かべた。

 

「じゃあ誰が相手をする?」

 

フレズヴェルグが笑顔でそう訊いてきた。

だが、誰も反応しない。

なので、

 

「逆に聞くけど、誰と戦ってみたいの?」

 

そう尋ねると、「う~ん」と唸ってから、

 

「ボク、轟雷と戦った事ないから、轟雷がいいな」

「いいでしょう、お相手します」

 

轟雷がそう答えた。

 

 

その後、山田(やまだ)さんがどこかに連絡すると、すぐさま研究員らしき人が2人ほどが入ってきた。

 

「おやおや、轟雷なんかが我々の研究成果(フレズヴェルグ)に勝てると思いですか?」

 

入ってくるなり、失礼な物言いだ。

山田(やまだ)さんも口元がひくついている。

 

「残念ながら、こちらは勝つ事(それ)が全てではありませんので」

「それは弱者の言い訳ですなぁ」

 

(うわぁ、なんだか怖い)

(笑顔で殴りあってる)

見ていた人間達は大体似たような事を思いながら、バトルの準備を進めていった。

それぞれのセッションベースに武装が取り付けられた。

轟雷はいつものウェポンセット。

それに対し、フレズヴェルクは他のフレームアームズ・ガールとは違ったモノが付けられていた。

先ほど見た時に跨がっていた物と色は一緒だが、形が違う。

スティレットのバックパックをかなり大きくし、何か色々と取り付けた、といった感じだろうか。

 

「こっちも準備できたよ」

 

フレズヴェルクが右腕をグルグルと回しながら、セッションベースに乗り込む。

 

「「フレームアームズ・ガール、セッション!!」」

 

今回のステージは初めてスティレットと戦ったものと似ている。

唯一違う点と言えば、岩や瓦礫のような遮蔽物がない事ぐらいだ。

轟雷が辺りを見渡すと同時に銃声が響いた。

音がした方を見ると、その方向から2発程弾丸が跳んできていた。

跳んできたそれらを右側の肩装甲で弾き、すぐさま左手で持っていたアサルトライフルで発砲する。

その方向の空中で火花が散る。

恐らく撃ち落とされたのだろう。

そう思った矢先、何かが突っ込んできた。

すぐさま横に移動し、それを回避する。

 

「へぇ~、突進(これ)を避けきるんだ」

 

旋回しながら、突っ込んできたソレことフレズヴェルクがそう叫んだ。

空中でピタリと浮遊すると、右手に持っていた武器で発砲してきた。

 

 

「やっぱり、今回の戦いも轟雷が不利かな」

 

鷲翔(しゅうが)がボソッと呟いた。

それには残念ながら同意せざるを得ないだろう。

実際のところ、戦闘機と戦車のような関係だ。

『ある条件下でなら』戦車が勝てると言われているが、残念ながらその条件は満たしていない。

 

「確かに不利でしょうけど、それでも轟雷は私たちに勝っているわ」

 

スティレットが真っ先に食らい付いてきた。

飛行型である彼女からすれば当然の事だろう。

横でバーゼも頷いている。

 

スティレット(きみ)達の時とは、状況が違う」

 

鷲翔(しゅうが)がそう断言する。

 

「君達の時は遮蔽物があった。盾で受けきれなくても、遮蔽物で凌げるって手段があった」

「でも、今回はそれがあらへん。つまり、盾で受けきれへん時は一方的やろうな」

 

鷲翔(しゅうが)の言葉に東馬(とうま)も混じってきた。

圧倒的に不利な状況を、ほとんどがただただ見ているしかできない。

 

 

「あははっ、避けてばっかりじゃないか!!反撃して見せてよ!!」

 

段々と笑い声を上げながら、フレズヴェルクが攻撃を続けていく。

側転、両腕を交差、その場で回転、すれ違い様、様々な軌道を描きながら攻撃していく。

 

「っく……!!」

 

あまりの猛攻に轟雷が呻き声をあげる。

一方で高笑いしているフレズヴェルクの表情も笑っているとは程遠いものだった。

理由は『どの攻撃も直撃はしていない』からだ。

確かに弾速は早い。

だがバーゼラルドのセグメントライフルと違い、銃弾の軌道が読みやすい。

つまり肩装甲で受ける、移動するで避けることはできる。

だが、轟雷からの反撃も難しい。

最高速度・速度や高度の上げ下げがスティレットやバーゼラルドよりも早い。

攻撃を当てようとしても、向こう側の方が避ける技術が上で当てようがない。

 

「……本当に『最強を目指したフレームアームズ・ガール』だけありますね」

 

アサルトライフルでの一撃を回避されたのを見て、そう小さく呟いた。

 

「う~ん、こうも拮抗しているのは面白くないな……」

 

フレズヴェルクがつまらない様子で呟くと、空中でホバリングしつつ、もう3発ベリルショットランチャーを撃つ。

それを左の肩装甲で防がれるのを確認すると、

 

「やっぱり接近戦だ」

 

すぐさまベリルショットランチャーを持ち直し、まっすぐ轟雷目掛けて突っ込んできた。

轟雷もそれに反応すると、背部キャノン砲を向け、発砲した。

フレズヴェルクは避ける素振りも見せずに直撃する。

が、何故かダメージを受けた様子もない。

そして砲撃をもろともせずに突っ込んでくる。

 

「はあああ!!」

 

突進の勢いをそのままに接近すると、勢いよく右腕を振り上げた。

 

(ここっ!!)

 

フレズヴェルクが腕を振り上げるや否や、轟雷も右の肩装甲を盾に突進する。

轟雷が狙っていたのは、フレズヴェルクの攻撃の瞬間だった。

確かに火力や機動力は高い。

だが、どんなに高性能でも攻撃の瞬間に防御はできないはずだ。

そう判断しての突進だった。

硬い肩装甲でぶつかり、よろけた所に追撃を仕掛ける。

それが今できる最善の手段だと判断した。

 

(ダメージを受けていないのは何らかの防御武装でしょうか?)

 

ふとそう脳裏を過った轟雷の目にフレズヴェルクの顔が映る。

その顔は、笑っていた。




前回からの投稿が随分遅くなってしまいました
万が一楽しみしていた方がいらっしゃったら、申し訳ありませんでした。
そして、もう更新されないと思われていた方、残念でしたと言わせてください
流石に次はここまで遅くならないようにするつもりです
それではお目汚し失礼しました

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