フレームアームズ・ガール エブリ・デイズ   作:羽羊紅葉

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投稿遅くなりました
そして文字数がとんでもない事になりました……


轟雷達が反撃する日

先日のバーゼラルドの衝撃のパワーアップから数日後。

紅狼(くろう)達は頭を悩ませていた。

と言うのも、バーゼラルドが完全に強すぎるのだ。

轟雷もスティレットも、ほとんど一方的に敗北させられる。

そして右烏(ゆう)が調子に乗り出してイライラしてきた。

何とかあの長くなりすぎた鼻をへし折ってやりたいが、その為にはバーゼラルドを倒さなければならない。

という訳で、紅狼(くろう)と轟雷、戦勝(せんしょう)とスティレットの四人で対策会議を練られていた。

「まず何でバーゼラルドがあんなに強くなったか、だな」

「装甲が立派になってることが原因よ」

戦勝(せんしょう)の言葉にスティレットが答えを返した。

「以前のパーツの外れがなくなったのはもちろん、ゲート処理とかをしっかりやったみたいだったから、装甲の能力自体は最大限まで引き出されてるといっていいわ」

なるほど、と三人が納得する。

「じゃあ私達の装甲もそうすればバーゼラルドに勝てると言うわけですね」

「そうしてあげたいのは山々なんだけど……」

「俺たちもこれ以上にはできないな……」

轟雷の言葉を聞きながら、人間二人はパートナーの装甲を見つめながらそう返した。

そう、自分達の技術を駆使して組み上げた装甲だ。

そう簡単に越える物などできる訳がない。

「ちなみに俺たちの組んだ装甲で、どれぐらいの実力を出せるんだ」

「七、八割ほどよ」

「で、向こうは十割か……」

「そう言うことになるわね……」

つまり出力は向こうに軍配が上がる訳だ。

「それにそもそも私たちは相性が悪いんだから……」

「そうなのか?」

スティレットに言われて戦いを振り返ってみるが、轟雷もスティレットもやけに戦い難そうだった。

「私達の武装は全てビームでかき消されるのに、バーゼラルドはそのビームを主装備にしてる。この時点で不利ね」

「なるほど」

「それに接近戦に強い私達じゃ、接近する前に蜂の巣よ」

「ねえそれなんて無理ゲー?」

もはや無理難題と化した状況だ。

言いたくもなる。

「何とかならないかな?」

「その為の集会では?」

「でも有意義かどうかでは?」

「無意味ね……」

全員が肩を落とす。

こうなれば各機体の性能を全部生かすしかないだろう。

「そう言えばスティレット。バーゼラルドと飛行能力の違いってあるの?」

「そうね……。私の方は小回りが効くし、加速速度も速いんだけど、向こうの方が出力も速度も上ね」

そうなのか、と戦勝(せんしょう)は声を返す。

「じゃあ小回りを効かせて撹乱……、はしたね」

「ええ、バーゼラルドのビームに自ら飛び込んだわね……」

そう、割りと最初の頃に撹乱を狙ったスティレットが間違ってバーゼラルドの射撃に飛び込んでしまったのだ。

「とりあえずバーゼラルド戦で気を付けないといけないのは、飛行能力と射撃の二つね」

スティレットがばつが悪そうにコホンと咳払いしながらそう言った。

スティレットを上回る空中能力と軌道の読めない射撃。

この二つをどうにかしなければ勝ち目はないだろう。

四人は頭を悩ませた。

 

結局良い手が思い付かないまま、帰路に着くこととなった。

「結局、良い手が出なかったな」

「まあ、勝てるまでやろうか」

そう声をかけてから、部屋を後にした。

途中で宅配便の運送屋さんとすれ違ったが、特別問題なく自分の部屋に着いた。

轟雷が出たのを確認してから、鞄を投げ捨てるように置くと、

「轟雷、何かないか?」

「……すいません、やっぱり思い浮かばないです」

対バーゼラルド戦のアイデアはやっぱり浮かばない。

どうしたものかと考えていると、チャイムが鳴る。

「は~い!!」

『宅配便です』

ハイハイと、玄関に向かう。

荷物を受け取ってから部屋に戻ると、

「えっと送り主は……、『FAファクトリー』?」

轟雷が送ってきたところからだった。

首を傾げていると、

「とりあえず開けてみましょう、マスター」

カッターを持った轟雷がそう言ってきた。

まあ実際、開けないことには始まらない。

そして開けてみるとそこには……。

 

それから数日後。

右烏(ゆう)からの提案で、三つ巴のバトルロワイヤルを行うことになった。

「んだけど……」

バーゼラルドが嫌そうな声をあげる。

「二機とも装備が違わない?」

接続されたセッションベースの武器ラックを見比べながらそう言ってきた。

「そうですか?」

と轟雷が返事をする。

装甲は充電くんに取り付けられているが、転送されるものは武器ラックに取り付けられる。

その武器ラックに付けられた武装が、今までと明らかに違う。

轟雷はフリースタイル・バズーカはともかく、片手で持てる大きさで形状の違う銃が二丁、轟雷並の大きさのバズーカ。

よく見れば、充電くんに付けられている装甲からも滑空砲が消え、代わりに大型バズーカと腕がすっぽり覆えるサイズのシールド。

身軽さはどこへ行ったのだろうか。

「いつもと変わらないじゃない?」

かく言うスティレットも武器ラックが充実している。

いつもの二振りの日本刀とガトリング以外に、薙刀と狙撃用ライフル、棒と鉄球が鎖で繋がったハンマー、用途不明のパーツが複数、そして明らかに要らないであろうスラスターまである。

スティレットの装甲にはいつものスラスターはついているのでなおさらだ。

彼女は爆撃機にでもなる気だろうか。

「いや明らかに増えてるよ!!昨日より多いもん」

バーゼラルドは文句を言うが、

「えっと、ルールはどうする」

「『負けた方が勝った奴の言うことを一つ聞く』はいいけど、最下位だけにするか」

「お願い聞いて、おかしいよ」

右烏(ゆう)も文句を言う。

「何か二人ともおかしいって、何その武器の量!!

装甲だって少し違うし!!」

「じゃあやろっか」

「だから聞いて!!」

とりあえず右烏(ゆう)の声は無視していると、「大丈夫だよマスター」とバーゼラルドが声を出す。

「バーゼ、負けないから」

いつもの笑顔を右烏(ゆう)に向ける。

そして、

「「「フレームアームズ・ガール、セッション!!」」」

セッションベースから溢れた光が、バトルフィールドを形成する。

 

バトルフィールドは荒野。

初めて轟雷とスティレットが戦ったフィールドである。

「う~ん、距離が離れちゃったかな……」

空中でポツンと滞空するバーゼラルド。

周りに轟雷やスティレットが見当たらない。

離れた場所からの開始のようだ。

「まっ、いっか。早く轟雷達を倒しちゃおっと」

武装がいつもと違うが、負ける気が全くしないバーゼラルドはそう言うと、再び辺りを見渡す。

轟雷達を見つけ次第移動するためである。

すると、何か光る物を見つけた。

そっちに顔を向けると、小さい弾丸が頬を掠めた。

「えっ、狙撃!?」

弾丸が飛んで来た方向にセグメントライフルを発砲、さらに側転しながら追加発砲する。

「今の……、スティレット?」

「正解よ!!」

スティレットが一気に距離を詰めながら、日本刀で斬りかかってきた。

弾丸が当たった様子もないので、恐らく避けられたのだろう。

それより問題なのは、スティレットの機動力だ。

前回までとは桁違いに速い。

バックパックが変わってるところを見ると、早速換装したのだろう。

斬りかかってきたスティレットをいなしつつ、バレルロールしながら回り込む。

すぐさまセグメントライフルを構えるが、それより先にガトリングの弾が飛んで来る。

この距離では有効活用できない狙撃用ライフルとガトリングを入れ換えたようだ。

「ねぇやっぱり武器が増えてるよね!!」

回避しつつバーゼラルドが叫ぶが、スティレットは知ったこっちゃないと言わんばかりにガトリングを連射、反撃の隙を与えない。

だが、攻撃手段は手に持っているセグメントライフルだけが攻撃手段ではない。

左のサブアームを動かして、ブレード部分を広げ、弾丸を発射した。

一度大きく左へ逸れるが、グイッと右へ軌道を変え、スティレットのガトリングを弾き飛ばす。

「しまっ……」

視線がそちらへ向いた一瞬の隙に両手のセグメントライフルを向け発砲、見事に直撃する。

「やった、バーゼ強い」

自画自賛するバーゼラルド。

「だから甘いって!!」

包まれていた爆風をスティレットが突っ切りながら、日本刀の切っ先をバーゼラルドに向けて突っ込んでくる。

何と無傷だ。

「えぇ!?」

その様子に驚きながらも、サブアームのブレードを閉じて電磁ブレードに切り替える。

そして後方に下がりながらサブアームを振るい、日本刀を焼き切る。

「ちっ」

舌打ちしつつ、今度はスティレットが後退した。

追撃を狙うべく突進してきたバーゼラルド目掛け、使い物にならなくなった日本刀を投げ付ける。

バーゼラルドは一旦移動を止め、電磁ブレードで完全に融かしてしまう。

そしてサブアームを振るって溶けた金属を飛ばすと、

「だったら、これで!!」

スティレットがどこからともなく取り出した大型キャノン砲で発砲してきた。

「何それ~!!」

バーゼラルドが叫びながらしゃがむ。

お陰で砲撃は頭上を通りすぎていった。

見ると青い大型のビーム砲のようだ。

着弾した所の爆風を見る限り、轟雷のフリースタイル・バズーカのビーム版といった感じか。

「ちっ、外した……」

舌打ちしたスティレットがその大型キャノン砲を背中に背負うと変形し、スラスターになった。

どうやら武器に変形できるスラスターのようだ。

そのまま地上すれすれを滑空しつつ距離を取ると、クルッと背面飛行に切り替え、左腕を突き出してミサイルを発射した。

「甘いよスティレット!!」

バーゼラルドが左手のセグメントライフルを発砲、右へ曲がるように軌道をとって二発のミサイルを射抜く。

そして右手のセグメントライフルは左への軌道で、爆風の横からスティレットを狙う。

直撃、爆発したのを確認して、

「どうスティレット?参った?」

「だから甘いんだってば!!」

爆風の中からスティレットが飛び出した。

何とスティレットの左腕から青い光が盾となって、攻撃を防いでいた。

(なるほど、さっきの攻撃で無傷だったのはそう言う訳だったんだ)

ガトリングを撃ち落とした後の一撃を無傷でやり過ごしたのはあのシールドのお陰だろう。

そして、スティレットは無意味に下へ行って距離を取った訳ではなかったようだ。

先ほどの攻防の際に落とした筈のガトリングがスティレットの手の中にあった。

どうやら攻撃を防ぐと同時に回収したらしい。

 

今の戦闘でスティレットは、自らの追加武装の性能をほぼ把握できた。

そして失ったのは日本刀一本のみ。

使いなれた物を失ったのは痛いが残りの大半はバーゼラルドが知らない武装の筈だ。

そう考えたところであることに気付く。

「「『『『轟雷はどこに行った?』』』」」

スティレットの言葉にバーゼラルドやマスター達が同時に呟いた。

 

(なるほど、あれが新しいスティレットの武装なんですね)

バーゼラルドとスティレットの激戦中、轟雷は近くの障害物に隠れて戦闘を観察していた。

新規武装はどれも厄介なものばかりだ。

それでもバーゼラルドは必死の抵抗で戦局を維持し続ける。

実力はほぼ互角、でもそれは私もです。

それにバーゼラルドの射撃の特徴も分かった。

スティレットが狙撃していたのを確認してから、轟雷はバックパックの二対のキャノン砲を稼働、両肩に担ぐようにバーゼラルドに狙いを定める。

 

「むぅ~、あれは厄介だな~」

スティレットの狙撃を回避しながらバーゼラルドはそう思っていた。

ビーム武装は攻撃では打ち消されはしない。

だが、絶対に消えないわけではない。

射程距離の限界と言うものがあり、それ以上を飛ぶことはまずない。

そしてスティレットの狙撃用ライフルは完全にその距離を越えている。

無論曲げずに真っ直ぐ撃てば射程距離は伸びる。

だがそれでもギリギリで、直球でスティレットに当たるとも思えない。

でもそれは弾がある時の話である。

唐突に弾が飛んで来なくなり、

「ちっ」

と言う舌打ちが聞こえた。

弾切れか弾詰まりか、とにかくすぐに撃てない状況になった。

その最後の一発を横に避ける。

ふと横の方で何か光った?

そう思ったバーゼラルドが顔を向ける。

そこにあったのは二つの大型の弾丸。

「へ?」

以前にも似たような事があったな、と思うと同時に辺りが爆風に包まれた。

 

「うわぁ……」

弾切れを起こしたスティレットがガトリング片手に反撃を試みようとした矢先、二発のキャノン砲がバーゼラルド目掛けて飛んで行ったのが見えた。

それらがバーゼラルドにぶつかり、今まで見たことないサイズの爆風が起きたのを見て思わず言葉が零れた。

そしてコントロールを失ったバーゼラルドが弾丸とは反対側から飛び出して、地面にヘッドスライディングするところまで見えた。

「……轟雷、アンタ漁夫の利を狙ったでしょ?」

「何の事ですか、スティレット」

キャタキャタと言う音を立て、降りてきたスティレットの隣に轟雷がやって来た。

素知らぬ顔をする轟雷に「まあいいわ」と呟くと、

「酷いよ轟雷!!不意討ちなんて卑怯だよ!!」

バーゼラルドが滑空しながらそう叫んだ。

「卑怯ではありません、作戦です」

「それ絶対作戦じゃないわよ、策略って言うの」

轟雷の言葉を訂正しつつ、スティレットが再び上昇する。

「轟雷、手を貸しなさい。バーゼラルドを倒すわよ」

「了解、臨むところです」

「やれるものならやってみろ~」

バーゼラルドが一度急停止すると側転運動の動きをしながら、セグメントライフルの引き金を引いた。

二発が下から打ち上げるような軌道でスティレットを、上から振り落とす軌道で轟雷へ向かう。

スティレットはすかさず左腕のパーツからビームシールドを展開しつつ防ぐ。

一方轟雷は、新規武装の大きな盾で弾き飛ばした。

「ふぅん、やるじゃない」

「その言葉、そっくりお返しします」

轟雷がそう叫ぶと、バーゼラルドに向かって飛び出した。

「ダメよ轟雷!!」

「バーゼに真っ向から来るなんて」

バーゼラルドがニヤリと笑いながら、右手のセグメントライフルを向け発砲する。

轟雷は両手にバズーカを転送すると同時に、左足のキャタピラーを逆回転、右側に滑りながら左手のバズーカを発砲する。

結果として、バーゼラルドの砲撃は左へ逸れ、轟雷の弾丸は真っ直ぐバーゼラルドへ向かう。

バーゼラルドは即座に電磁ブレードでバズーカの弾を切り抜ける。

発生した爆風は、バーゼラルドの背中を押し、彼女の加速に手を貸す。

「へへ~ん、当ったないよ~」

「それはこっちも同じ事です」

轟雷がそう言い返した。

確かに先程から、バーゼラルドの射撃と反対向きに回避していっている。

距離を取るどころかむしろ接近していっている。

(もしかして曲がり方が分かったのかな?)

試してみよう、とバーゼラルドが呟くと、右手のセグメントライフルを三連射。

轟雷は右側へ避け、ビームは全て左へ曲がった。

そして右から大きく回り込み轟雷へ、バーゼラルドは脇の下とサブアームの間から左手のセグメントライフルを突き出しながら発砲。

今度は左へ回り込みながら接近してきた。

そして手持ちのバズーカを連結、二発同時に発砲する。

バーゼラルドも即座に轟雷の方へ向き直ると同時に側転運動で回避。

「……轟雷、やっぱりバーゼの武器の軌道読めてるでしょ?」

「えぇ、バッチリです」

 

「轟雷、どういうこと?」

つい紅狼(くろう)は轟雷に問いかける。

『バーゼラルドのセグメントライフルは、縦横無尽に動ける訳ではなかった、と言うことです』

『そだよ~。右手の方は右から左に、左の方は逆になってるんだよ』

轟雷がバーゼラルドと共に解説してくれる。

その時にそれぞれの手を少し上に上げながら説明してくれたので、少し分かりやすい。

『でも上下にも曲がってたわよね?』

スティレットが不思議そうに問いかけた。

そう何度か交戦した時、バーゼラルドは真上真下を撃ち抜いていた。

それに先ほども上下に変化していた。

『それは恐らく、撃つ直前で銃を傾けたのではないですか?』

『少し程度なら上下にも曲げられるんだよ、でも真上真下は傾けないと無理かな~』

なるほど、と人間三人とスティレットが納得したように声を出した。

 

「でもいいの、バーゼラルド?試合中に自分の武器の性能をバラしちゃって」

「大丈夫だよ~」

スティレットの言葉にバーゼラルドがケラケラと笑いながらそう返した。

そして、「だって」と前置きしてから、

「分かっていても全てを避けきれるわけないし~」

確かにその通りだ。

どう来ると分かっていても、フェイントを一つ入れるだけで回避の成功は確実に落ちる。

完全に避けきるのは、それこそその攻撃のデータを持った無感情の機械位だ。

だが、スティレットや轟雷はそうではない。

いくら学習能力があるとはいえ、短時間でどうにかなるものでもない。

「じゃあお喋りはここまで、いっくよ~」

バーゼラルドはそう言うとクルッと回転しながら上昇、即座にセグメントライフルを片手ずつ轟雷とスティレットに向け発砲する。

(轟雷にもできるんだ、私にだって!!)

発砲の瞬間、バーゼラルドの手を見る。

見えた、右手!!

だから変化する方向は横!!

そう判断して左へ避けようとして、すぐさま左斜め上に軌道を変える。

何故ならビームは左上から右下へ変化したからだ。

(しまった、体の傾きを計算に入れてなかった……)

そう、バーゼラルドは轟雷とスティレットの両方を狙うために体を傾けていたのだ。

(いや回避はできた、今はそれだけで良い)

読み間違いを悔やむのは後、スティレットは右手にガトリングを転送すると同時にバーゼラルド目掛けて発砲。

バーゼラルドは真下へ落下するように回避する。

それに構わずスティレットは真下へ振り下ろすように射線を動かす。

バーゼラルドはそのまま地上すれすれまでいくと滑空して離れていく。

(これでいい)

今のスティレットの狙いはバーゼラルドにダメージを与える為ではない。

バーゼラルドが突然発生した煙幕に突っ込んでしまった所を見ながらスティレットはそう思った。

 

(しまった、スティレットの攻撃に気をとられて轟雷を見失ってた)

いきなり現れた煙幕の中で周りを見渡しながらバーゼラルドは後悔した。

この全面砂埃の煙幕では目は役に立たない。

すぐに飛び出した方がいいのだろうが、飛び出した先で轟雷が武器を構えていては意味はない。

居ない場所に出る可能性も高いが、轟雷の機動力とスティレットの援護があれば追いつくのも容易なはずだ。

かといって上空に出れば今度はスティレットが攻めて轟雷が援護するだけだ。

だが、この煙幕なら轟雷達からもバーゼが見えないはず。

スラスターを切って着地した矢先、弾丸が装甲を掠めた。

(えっ、何で……。いや、そう言うことか)

着地した音で場所を把握された、流石轟雷。

轟雷はバーゼラルドやスティレットと違い地上戦に特化したフレームアームズ・ガール。

つまり轟雷に地上戦を挑むのは負け戦も同然だ。

ならばすぐさま上空に逃げるべきだが、上記の通りスティレットが待ち構えているだろう。

(だったら!!)

バーゼラルドは目を閉じ、セグメントライフルをバックパックに戻す。

下手な反撃は厳禁、相手に居場所を教えるようなものだから。

ならば、回避に徹する方が賢明。

そう判断しての行動だった。

実際動かなかった間、攻撃がこなかった。

そして、煙幕が晴れると同時に上空に飛び出した。

すぐさま追撃が来るが、バーゼラルドの飛行能力ならば回避は難しくない。

轟雷の攻撃が届かず、スティレットの狙撃用ライフルしか届かない位置を取ると、

「今度はバーゼの番だよ!!」

バーゼラルドがそう叫ぶと同時にフルバーストモードを展開する。

基本的に弾幕を張りつつ、大ダメージを与える大技だが、エネルギー残量がゼロになってしまう。

追撃が困難になるが、その点は電磁ブレードで補う。

だから今はダメージを与える。

両手のセグメントライフルと浮遊パーツとサブアームの右側を轟雷へ、左側をスティレットへと向ける。

「そう簡単には」

「いかないわよ!!」

そう叫ぶと轟雷は右に、スティレットは左へと動き始めた。

セグメントライフルの特徴を逆手に取った回避行動。

確かにその動きならば回避できるだろう。

そのままならば、の話だが。

バーゼラルドはニッと笑うと、発砲する直前で両手を交差させた。

轟雷達はそれに気付いたが、行動を起こす前に弾が発射された。

右から左へ曲がる曲線ビームに混じって全く逆の軌道を取る弾丸が三割ほど。

足を止めるのは不味いが、コレはどう動いても回避できない!!

そう判断した轟雷は両肩の大型シールドを前に突き出す形で防御を試みる。

数発が装甲を掠め、耐久を削っていくが、全段直撃よりはいくらかマシだろう。

横目で見れば、スティレットもどうやら同じような状況だ。

シールドは先ほどまでと比べて面積が広がっているが、数発に一発は貫通されている。

恐らく強度と引き換えに面積を広げているのだろう。

そしてビームの雨が止む。

轟雷はシールドを動かして状況を確認する。

轟雷もスティレットも、防御していたにも関わらず半分以上も耐久を持っていかれた。

やはり火力も範囲も侮れない。

だが、反撃のチャンスが巡ってきたようだ。

バーゼラルドが苦々しそうな表情を浮かべていた。

セグメントライフルの残量が無くなったようだ。

「今度はこっちの番よ!!」

スティレットはそう叫ぶと左腕を突き出し、ミサイルを発射。

すぐさまガトリングガンを連射、弾切れになったそれを放り投げスナイパーライフルで狙撃。

最後にスラスターを変形させての一撃を流れるように繋いだ。

だが、バーゼラルドも負けていない。

初撃のミサイルを電磁ブレードでぶった切ると同時に旋回、ガトリングの回避を試みる。

そこを狙った狙撃をギリギリで発砲可能になったセグメントライフルで撃ち落とし、最後の一撃は腕を交差させてガードした。

それでも大きく耐久を持っていかれたが、

「へへ~ん、バーゼはまだ戦えるよ~」

バーゼラルドはまだ笑顔を崩してはいなかった。

「でしょうね……。轟雷、後は任せたわよ!!」

「任されました、スティレット!!」

バーゼラルドがバッと後ろを向く。

そこにはシールドを横に広げ、そこにバズーカを取り付け、さらに肩にバックパックを可動させたバズーカ、両腕に形の違うライフルを持った轟雷が全ての武装を向けて立っていた。

そして、

「コレが、私の、フルバーストです!!」

そう叫ぶと同時に全ての武装がほぼ同時に火を吹いた。

「ちょ、ま……」

バーゼラルドが両手をバタバタさせるが、それでどうにかなる訳もなく直撃した。

そしてそのまま真下へ墜落すると、

[バーゼラルド LOST]

の文字が宙に浮かんだ。

 

バトルフィールドから戻ってくるなり、

「結局轟雷がおいしいところを持っていっちゃうのね」

スティレットがそう愚痴っていた。

「そんな事はありません。スティレットが頑張ってくれたから、私も攻略方を見つけられたのです」

「まっ、そう言うことにしておくわ」

轟雷とスティレットがそんな会話をしながら握手を交わす。

よく見れば、スティレットの口元が少し弛んでいた。

満更でもないようだ。

「あ~あ、二人は仲良くしてて羨ましいな~」

少し離れたところで、バーゼラルドが胡座をかいていた。

「そ、そんな事ないわよ」

「そうですよバーゼラルド」

スティレットは少し動揺し、轟雷は普通に答えていた。

「どうだか~」

と口を尖らせるバーゼラルドに轟雷が歩み寄ると、

「バーゼラルドとも仲良くしたいと思ってますよ」

バーゼラルドの右手を取る。

続いてスティレットが左手を取りながら、

「私だってそうよ。ほら、早く立ち上がりなさい」

二人でバーゼラルドを引き起こした。

「うん、ありがと」

バーゼラルドが笑顔でそう答えた。

 

その様子を少し離れたところで見守っていた右烏(ゆう)が、

「いい話だな」

そう呟いた。

そんな彼の肩に紅狼(くろう)が「そうだな」と言いながらポンッと手を置くと、

「じゃあ罰ゲームの話をしようか」

無慈悲にそう言い放った。

右烏(ゆう)は「えぇ!?」と叫びながら起き上がると、

「今そう言う流れじゃないよな」

そう言い返す。

「いや、最下位のやつが罰ゲームを受ける、って話だし……」

「それに右烏(ゆう)、最近調子に乗ってたしな~」

紅狼(くろう)戦勝(せんしょう)もそう切り返し、右烏(ゆう)が「うぅ……」と呻き声をあげると、

「せ、戦略的撤退!!」

そう叫び、玄関へ駆け出した。

「あっ、待てっ!!」

「逃がすか!!」

紅狼(くろう)達も慌てて右烏(ゆう)を追いかける。

そして、右烏(ゆう)がドアノブに手を掛け、力一杯押したとき、「ゴンッ」と言う鈍い音が響いた。

「「「ゴン?」」」

三人が顔を見合わせてから、扉をそっと開けて外を見る。

そこには顔を押さえて踞る人間が一人いた。

恐らくソイツに当たったのだろう。

と言うか、コイツ見覚えがある。

慌てて全員で扉を閉めようとするが、それより先にソイツは足を入れて閉まらないようにした。

そして扉に手を掛けると、

「待てやゴラ!!」

完全に怒った男、鷲翔(しゅうが)が低い声でそう言い放った。

 

「あのさ、別に騒ぐなとは言わないよ。でもある程度周りの迷惑を考えてから行動を取ってね」

鷲翔(しゅうが)が鼻を押さえながらそう言った。

赤くなってるところを見ると、流石に痛かったらしい。

そしてテーブルを見ると、セッションベースを残して轟雷達は消えていた。

人が入ってくるのを察して隠れてくれたらしい。

無論鷲翔(しゅうが)は疑問に思って問い掛けて、

「まあこれが何でも構わないけど、迷惑かけないでね」

こなかった。

「……えっと、何か飲む?」

「何か炭酸系がある?」

「俺も同じ奴」

「お茶か微糖のコーヒーはある?」

鷲翔(しゅうが)がそう言ってきたので、

「お前眠いの?」

「今日明日が休みだから、昨日徹夜で読書してた」

(コイツ本当に呑気だな)

全員がそう思った。

「いいじゃん、課題はちゃんと終わらせたし」

「何でそっちの方が終わってるんだよ……」

いいじゃん人の勝手でしょ、と口を尖らせてから言う。

コイツ何気に人の心読むなよ、と思っていると鷲翔(しゅうが)が思い出したように、

「そう言えば右烏(ゆう)、ゴールデンウィーク明けに教室にプラモ置いてただろう?」

えっ、と右烏(ゆう)が驚いた声をあげた。

恐らく身に覚えがないのだろうと思っていると、

「多分紅狼(くろう)が勧めたんじゃないのか?美少女もののやつ」

右烏(ゆう)が冷や汗をだらだら流していると、

「何の話だ?」

「多分バーゼラルドの事……」

ヤバい、知られたかと考えていると、

「ああいうの置くのはあんまりよくないと思うけどさ、せめてゲート処理ぐらいはちゃんとしてよ」

ため息を吐きながら、鷲翔(しゅうが)がそう言った。

「えっ、お前直したのか?」

「そうだよ、悪いか」

思わず「悪いわ!!」、と叫びそうになったがグッと堪える。

と言うのも、恐らく鷲翔(しゅうが)はフレームアームズ・ガールを知らない。

つまり悪い理由を教える為には、それを教える必要がある。

そして、バーゼラルドの装甲が直ったのも理由が分かった。

鷲翔(しゅうが)が修理したからだ。

鷲翔(しゅうが)は僕たちの中で唯一プラ板等を加工して作る、フルスクラッチと言われる作業ができる。

ソイツに言わせれば、パーツの修理ぐらい容易くできる。

そして作り込む癖があるのだが、それがバーゼラルドの実力の底上げに繋がったのだろう。

「後前にも言ったけど、先輩達はもう来ないってさ」

「聞いたような気もするが、どうしてか聞いたか?」

「プラモ作ってる暇なんてないんだってさ」

全員が「ああ……」と全員が納得したように呟いた。

「じゃあ邪魔したね」

鷲翔(しゅうが)がそう言って部屋を出ていったのを確認してから、

「バーゼラルド」

右烏(ゆう)が短く自分のフレームアームズ・ガールを呼んだ。

バーゼラルドも「何~?」と言いながらベットの下から出てきた。

轟雷やスティレットがノソノソと出てきた所を見ると、全員ベットの下に隠れていたようだ。

鷲翔(しゅうが)に直してもらったのか?」

「うん」

「動くっていう事は?」

「バレてないはずだよ」

ならいいや、と右烏(ゆう)が言った。

本来なら良くないだろう。

だが、誰も文句は言わなかった。




今回は読んでの通り、三つ巴の対戦となりました。
正直変に細かくしすぎたか、いつもみたいに分割すればよかったと少し悔いていますが、そのまま行くこととしました。

話は変わりますが、アニメを見ている方で
「バーゼラルドにこんな武装があったか?」と思われる部分があったと思われるので解説を。
電磁ブレードはアニメ(恐らくプラモの取説にも)なかったのですが、ノベル版FAガールにこれを使用した描写があります(熱を持つと言う点もこの辺が由来です)。
細かく説明があったわけではないのですが、バーゼラルドのレビュー等を見て、「恐らくこのパーツだろう」と言うことで採用しましたが、まさかここまで活用すると思いませんでした。

最後に、今さらですが、私が書いている他の作品と同様に不定期更新です。
楽しみにしていた方、本当に申し訳ありませんでした
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