夜になり周りは冷えてくる。そんな中、焚き火を囲うように俺たちは座っていた。ある1名を除いて。
「ん〜、ちょっとこれ眠ってると寒い気温ですかねぇ〜」
「優くん風邪引いちゃうかな?」
「ふむ、毛布とか持って来ればよかったか?」
風邪を引くというのは無いと思うが…念の為、毛布を取りに帰った方が良さそうだ。そう思い動こうとするとその前に君月が優の体に自分の制服をかけてやる。
その状況に誰もが驚き目を見開くーーなんとも失礼な行動だろうか…。
「……なんだよ。その顔ーーいや俺は火に近づきゃ寒くないしそれにー」
と、どんどん言い訳じみたものを並べていく君月。
「別に何も言ってませんけどーー」
「…そ、そうか?」
「はい」
そして君月は火に当たりに行く。なんとも微妙な空気…俺はシノアの方を見る。そこには何かを思いついたように不適に笑うシノアの姿が…シノアは三葉に近づき肩を掴む。
「おわ、なんだ?」
「なぁ、寒いだろ?俺の上着を着ろよ」
「へ?へ?」
急なシノアの芝居に動揺する三葉。だがすぐにシノアのやりたいことが分かり…
「やだ、君月くん優しい…すごく優しい…優しいアピールが凄ぉい…」
と乗る。そしてその芝居はさらに続く。
「凄いだろう?」
「でも私騙されないだってみんなに優しいんでしょ?」
「違う優!!俺が好きなのはおまえだけだ!!」
「えっ」
「優!」
「君月くん!」
そして抱きしめあう二人…もとい優と君月ーー
「「つづく」」
「つづくじゃねぇよ!!」
それを見ていた君月は二人に向かって叫ぶ。それを無視して二人はさっきの芝居について話始める。
「ったく、与一、翔こいつら殺していいか?」
「あはは、でも君月くんが優しいのは本当だと思うけどなぁ。」
「そうだな。基本的には優しいと思うぞ」
そう君月の優しさについて語っていると…
「危ない!アピールに騙されないで二人とも!!」
「そいつは危険だぞおまえら?」
そう言ってまだその話を引きずる二人。
「はああああ?ほんとなんなの?」
「だって、暇なんですもーん」
「うむ、確かにーー君月何か芸をしろ」
「てめぇがしろよ」
「それが上官に対する態度か!?」
「ああ!?」
「なんだ!?」
無茶振りをさせられる君月をみていると、さすがに君月が可哀想に見えてきた。まぁ、楽しんならいいだろう。
「でも…もうだいぶ経ったよね?優君大丈夫かな……?」
与一の言葉に騒いでいた二人も静かになる。
「鬼呪の訓練って二十時間なんだよな?もう過ぎてるぞ?」
「多分難航してるんだろう。優の鬼呪装備の強さからすると中にいる鬼は相当タチが悪いんだろう」
俺の問いに三葉が答えてくれたが次に君月が聞いた。
「優は眠ったまま何やってんだ?」
「心の中で話をしているんですよ」
君月の問いにシノアが答える。
「鬼とか?」
「ええ。鬼呪で押さえて込んでる拘束を少し緩める。鬼の力をたくさん出せるようになればより強くなれますから」
「そんなことしたら暴走するんじゃ……」
「いやまだだ。心の中で本格的に接触したら明確な反応が…」
そう言った直後、優の体がドンッ!!と動いた。
「始まった…?」
「よし、みんなで優が怪我しないように押さえるぞ!」
そう三葉が指示を出したときオオオオオオと近くで人ではない声。
「ヨハネの四騎士かーー。こんな時に……!」
「俺がバケモノは全部潰してやるだからおまえらは優を守れ」
「君月さん、あまり離れないでください。優さんが暴走したら大変なので…」
「わかった、近くで処理する」
そう言って駆け出して行く君月。
「おい!翔!刀を持っている手を押さえろ!」
「わかった」
そしてそれぞれが優を押さえ込む。その手から逃れようと暴れる優。
「…っ」
「まだだ、収まるまで持ちこたえろ!」
しばらくして、優の動きが止まる。
「成功したのかな…」
「気を抜くのは早いかもな」
君月も早くに戻り、みんなで優の顔を見る。すると優が丁度目を開けた。
「ゆ…優!!目が覚めたか!?」
君月は優に呼びかけて、それぞれはホッとした顔になる。
「…あれ、もしかして俺迷惑掛けた?」
「ううん、優くんおかえり」
「うん」
与一が喜びながらそう言うと優は少し照れたのか顔を赤くして下を向く。そこに君月がたずねる。
「成功したのか?」
「当たり前だろ?」
「ならいい。」
平気そうにしていて一番心配していたのは君月なのかもしれない。と心の中で思う。俺としては微笑みの目を向けていたのだが、君月にとってはそれが嫌だったらしく、「その目はなんなんだ」と言われてしまった。その声に「なんでもねぇ」と返す。
「しかし、ちょっと疲れたな。君月の修業は来週にしよう」
「ああ?三葉ふざけんな!すぐやれよ!」
「えーすぐはちょっといやだなぁ」
「あ、てめ与一まで!!」
喚いている君月を横に俺は優に話し掛ける。
「鬼とは仲良くなれたか?」
「わかんねぇけど、仲間になってやるって言っといた」
「ははっ、お前らしいな」
そして無事、優の修業が終わり次は君月の修業が始まる。
──────────
「なぁ、今は君月の奴落ち着いているしさ。翔…俺に稽古つけてくれ!」
「俺、優に教えられることなんてないぞ?」
「この通りだ!」
そして優は前屈みになって頭の上に手のひらを合わせて「お願いします」と言ってくる。
「まぁまぁ、翔さん。やってあげたらどうです?」
「しょうがねぇか…じゃあ、優、刀を構え…ってもう構んのが早ぇな…」
「早くしよぜ!」
じゃあっと刀を構える。
「言っておくけど、これは稽古だから鬼呪の発動は無しだかんな?」
「分かってる」
「じゃあ、来いよ」
俺の言葉の後、優がいた場所には土煙だけが残った。そして、すぐ目の前に優が現れる。優は刀を横に振ってくるので、それを強めに弾き、瞬歩で背後に回り斬月の柄尻で後頭部を軽くたたく。
「終了っと」
誰が見ても完全勝利である。
「くっそ〜、もう一度だ!てか何でもう俺の後ろにいんだよ!!絶対鬼呪使ったろ!!」
「使ってねぇよ。今のも身体能力だけだよ」
「もう一度だ!」って言うに優に「はいはい」と軽く返事をして最初の位置に戻る。
再び接近してくる優に少し呆れながらも上段から振るわれると思う刀を受け止めるべく構える。その瞬間に優が
「よくあの一瞬で斬月の死角に入ったな」
そう、優は斬月を構えた瞬間に判断したのだ。斬月は形状が長く、幅が普通よりも広い。一瞬であるが下に入られると俺の視界を遮ってしまう。そこを突かれたのだ。それからの刀の攻撃ではなく、初動の速い格闘にしたのも中々だと思う。
「流石に刀が大きいから見えないんじゃないかなって思ったんだ」
「いやそれでもだ。流石は優だな」
俺が褒めると「やっぱり?」と言って笑った。とそこで、さっきまで落ち着いていた君月が暴れ始めた。
「おい!お前ら手伝え!」
押さえつけていた三葉が苦しそうに言う。急いで君月の所へ行きそれぞれが押さえ付ける。何時間経っただろうか。
「シノア!これも俺の時と一緒か!?」
苦しそうに奇声を上げる君月を見ながら優はシノアに聞く。その言葉にシノアは首を振った。
「もう、三十時間も経っています。まずいかもしれません。」
「鬼に体を乗っ取られる可能性がある」
「いや大丈夫だ。君月ならきっと戻ってくる」
「翔さん…ええ、大丈夫でしょう。信じてあげましょう。君月さんを…」
そして、俺たちは君月を押さえ付けている手にさらに力を込めた。
──────────
「おい、まだ終わらないのか!」
「こればかりは…待つことしかない…優、もう少しの我慢…」
「来い『鬼箱王』」
それは、突然だった。君月の声が聞こえたかと思うと君月は優にむけて刀を振る。
「来い阿朱羅丸!!」
優はその攻撃を刀で防いだ。
「ちょ…君月くん暴走しちゃったの!?」
「…いや、目が覚めた。正気だ」
「ならなんで、斬りつけてくんだよ!?」
「憑依後、お前と俺、どっちが強いか決める必要があるだろ?」
君月はそう言って不敵に笑う。その提案に優は乗り刀を構えた。
「おい、やめろ。勝手に戦…「いいじゃないです、みっちゃん。みっちゃんもどっちが強いか気になるでしょ?」
シノアが三葉止めると優たちの方に目を向ける。
「開け!!阿朱羅観音!!」
優の周りに数本の刀が現れた。それを出したまま、優は君月に向かって走った。攻撃を仕掛けられた君月はその何本もの刀による攻撃をなんとか防ぎきる。
「…鬼箱に入るまでの九つカウントを始めろ、鬼箱王」
君月は左手を上に上げるとその上に大きな箱が出てきた。その箱はーーいやその箱にいる何かが箱を開けながら数を数え始めた。優はそれを見て後ろに下がる。
「おい、逃げてんじゃねぇよ‼︎」
「うるせぇ、だってそれ絶対やばいやつだろ!」
「…ちっ、勘のいい奴」
二人して騒いでいるのを横に俺はシノアに話し掛ける。
「二人とも特殊能力使ったな」
ええ、まぁあなたを含めて彼らたちはグレン中佐の秘蔵っ子ですから。それに次は翔さんの番ですよ」
「ああ、分かってるよ。迷惑かけるけど頼むな」
「はい、任されました」
そう言い俺は斬月に血を吸わせ俺は気を失った。